)” の例文
吾輩が臓腑はらわたのドン底のかすの出るところまで饒舌しゃべり尽してしまっても、わかったのか、わからないのかマルッキリ見当が付かない。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「怪談ですよ、心細いな、こいつは食べるものじゃありません、それ、よく言うでしょう、猫が化けたとか、いたちを垂れたとか」
大学生ということになれてしまったらどうか知らないが、自分にはまだ大学生ということを、からのようには、どうしても思えない。
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
ふみすぎにけり、で杉を使ったなどは随分せつない、歌仙の歌でも何でも有りはしない、音律不たしかなせつのような歌である。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
渋谷へ行ったみな子に東京駅であうはずがあるものかなどという理屈は、こういう異常時の人間の心理を知らぬものの理屈だ。
秘密 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
彼は直立不動の姿勢を取り、両膝をぎゅっと締め合わせ、横面よこづらをぴしゃりと来るぐらいとも思わず、いよいよ図に乗ってきた。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
ゆだんするとをするぞと、心をいましめていたのだが、ついに、しごとに熱中していて、今その屁を音もたてずにしてしまったのである。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
その客たちは、熱心に舞台を見ているわけではなく、盛んにコップの音をさせたり、ぺちゃくちゃしゃべったりをひったりするのであった。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「はははは。撲る方から先に要心してやがる。そんなンじゃねえや。おい、ッぴり腰はみッともねえぜ。しっかりやんな」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
誰かが、つづけさまにをたれると、みんながはやしたり、笑つたり、歌をうたひました。けれど誰も手を休めず、ドン/\、栗をひろひました。
栗ひろひ週間 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
「悔恨の無い文学は、のかっぱです。悔恨、告白、反省、そんなものから、近代文学が、いや、近代精神が生れた筈なんですね。だから、——」
(新字新仮名) / 太宰治(著)
「そんなこたあでもねえさ」と老人は云った、「いかずちの船大工に頼めばすぐつくろってくれるだ、いいとも、おらが持ってって頼んでやるだよ」
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
の音で隣りの独房にいる同志の健在なことを知る——三・一五の同志の歌で、シャバにいたとき、俺は何かの雑誌でそれを読んだことがあった。
独房 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
をコクとかうそをコクとかいう下品なことばが暗示しているように、つまりは狭いところを無理に通して、附いているものを落そうという行為であった。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
人はほとりにありてかれまさに死せんとする時かならずをひるをさける。狐尾をうごかさゞるを見て溺死おぼれしゝたるをり、尾をり大根をぬくがごとくして狐をる。
「その代り今後ますます貴様を軽蔑けいべつしてやるからそう思えだろう。僕は君の軽蔑なんかとも思っちゃいないよ」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
忠家はこのを聞いた時に「心うきことにも逢ひぬるかな。世にありて何かはせん。出家しゆつけせん」と思ひ立つた。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「待て、ええ、でもない喧嘩けんかと違うぞ。裁判だ。罪がきまつてから罰することだ。騒ぐない。噪々そうぞうしい。」
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
恐ろしい渾身こんしんの力であった。が、若い者も娘も一斉に笑いだした。それは、腰をきる際に無理な筋肉の緊張のために、プッとを放ったのが可笑おかしかったらしい。
あまり者 (新字新仮名) / 徳永直(著)
糞、尿、など多く用ゐたるは其角きかくなり。其角の句はやや奇を求めてことさらにものせしが如く思はる。
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
上原は渋江氏に対して余り同情を有せぬ人で、優善にはかすという渾名あだなをさえ附けていたそうである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
つれ歸りて百日の説法せつぱふ一ツとはおのれが事なり此六右衞門は人の世話も多くたがかゝる事をいはれし事なし五十兩と云大金を何につかつたこんな馬鹿ばかとは知らずしておのれが事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あやかさんという人は一人の男ぐらいとも思っていないので、世界中の男が、つまり自分のよりどり随意の品物に見えるというような楽天家じゃないかと私は思う。
不連続殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
その自動車はいずれも理不尽に駆ける。路行く人を河童かっぱと駆ける。だから丸ビルをそこに見ておって、その門口に突進するまでが大変である。命から/″\である。
丸の内 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
これは福富の織部おりべなる者面白くをひる事に長じ、貴人面前にその芸を演じ賞賜多くて長者となる。
くしゃみばかりしてベエたれ通しで肉おっぴり出す程だによ、婆ア様に宜しく云って下せえ、左様だら
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
かゝなかにも社会しやくわい大勢力だいせいりよくいうする文学者ぶんがくしやどのは平気へいき平三へいざ行詰ゆきづまりしともおもはず。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
荷車が驚いて道側みちばた草中くさなかける。にわとり刮々くわっくわっ叫んであわてゝげる。小児こどもかたとらえ、女が眼をまるくして見送る。囂々ごうごう機関きかんる。弗々々ふっふっふっの如くらすガソリンの余煙よえん
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
それと共に、母の小言などはとも思はぬ態度そぶりやら、赤黒い顔、強さうな肥つた体、巡査、鉄砲、雁の血、などが一緒になつて、何といふ事もなく叔父をおそれる様な心地になつた。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ぎゅう、ミルクに、ソップにバタ、しゅしゅらしゅんげ(ひげの事)の長いナッポレオンだね、そうら三杯酢は、すっぱいものだね、猫とんびにかっぱのったれかっぱ、とって投げほい」
新古細句銀座通 (新字新仮名) / 岸田劉生(著)
がしょう、がしょう、と思うて、おれも八人斬ったが、天下国家とやら、このおれには、とんと夢で踏んだのようなもんじゃ、匂いもせん、音もせん、スウともピイともこかんわい。
流行暗殺節 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
自分だけのことを云えば、その時の私には落第などは河童かっぱだった。ただ母のことが省みられた。そのことから受ける母の打撃を思うと流石に私も臆さないわけにはいかなかったのだ。
前途なお (新字新仮名) / 小山清(著)
彼等をシベリアへよこした者は、彼等が、×××餌食えじきになろうが、狼に食い×××ようが、とも思っていやしないのだ。二人や三人が死ぬことは勿論である。二百人死のうが何でもない。
渦巻ける烏の群 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
マ何処を押せばそんなが出ます……アアアアつまらない心配をした、此方ではどこまでも実の甥と思ッて心を附けたり世話を焼たりして信切を尽していても、先様じゃアとも思召おぼしめさない
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
とまた顔をしかめた。私は元来葛根湯というせんじ薬が大好きでのようなことでもすぐ女房に葛根湯を煎じてもらうのであったが、何もグスに葛根湯を勧めるのは親切気なぞあってのことではない。
葛根湯 (新字新仮名) / 橘外男(著)
不意に、格子障子があけられて、奥からゴマ塩頭のツルツルと滑つこい皮膚を持つた六十あまりの童顔のぢいさんが、店へ出てきて、私の前で手をついて、つぴりごしをしながらペコペコ頭をさげた。
イボタの虫 (新字旧仮名) / 中戸川吉二(著)
「あ、こわい、こわい。沈香じんこうもたかず、もこかずにいるんだな」
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
彼女をつくづく天稟てんぴん淫婦いんぷであると感じたことがありましたが、それはどう云う点かと云うと、彼女はもともと多情な性質で、多くの男に肌を見せるのをとも思わない女でありながら、それだけ又
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
愚にもつかない理屈——いやはや、じつにやりきれん。
の神の赤きほこらの真つ昼間大肌になりて汗ふきにけり
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「僕はあんなやつとも思ってやしない……」
でもこき出しひッたらよかろう
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
トント外国の漫画に出てまいりますっぽこドクトルそのままで……読みさしの新聞の裏面に「花嫁殺し迷宮に入る」という標題が
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
主人の丹右衞門は剛腹だから、おどかしの手紙が三本や五本來たつて、とも思つちやゐないが、側にゐる奉公人の私共が心配でならない。
きっと石太郎は、学校がひけると、毎日是信さんとそういう情景をくり返しながら、修業しゅぎょうをつんでいるのだろう。まったくかれは屁の名人だ。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
「そんなこたあでもねえさ」と老人は云った、「いかずちの船大工に頼めばすぐつくろってくれるだ、いいとも、おらが持ってって頼んでやるだよ」
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
更にその際の唱えごととして「隣の婆々ばばをひった」という類の下品な言葉があり、またふふらのふんというような鼻の音の声色をはやしにしている。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ケツネのつらは、口がとがってひげがある。あの髭は右が三本、左が四本、ケツネのというものは、たまらねえ。
貨幣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
さらばといって自殺したとて世間の奴らはとも思って見やしない。だから死ぬのもばかばかしい。なんだかいまいましくてたまらないような気がする。
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
余のごときは、探偵にの数を勘定かんじょうされる間は、とうてい画家にはなれない。画架がかに向う事は出来る。小手板こていたを握る事は出来る。しかし画工にはなれない。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)