トップ
>
埒
>
らち
ふりがな文庫
“
埒
(
らち
)” の例文
お由良と幾松が、幼な友達といふ
埒
(
らち
)
を越えて、樂しい將來を夢みる間だつたことは、お關の説明をまつまでもなく明らかなことです。
銭形平次捕物控:122 お由良の罪
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
試合の催しがあると、シミニアンの太守が二十四頭の白牛を駆って
埒
(
らち
)
の内を奇麗に地ならしする。ならした後へ三万枚の黄金を
蒔
(
ま
)
く。
幻影の盾
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そこで竿をいたわって、しかも早く
埒
(
らち
)
の
明
(
あ
)
くようにするには、竿の折れそうになる前に切れ
処
(
どこ
)
から糸のきれるようにして置くのです。
幻談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
その果てが、もつれに一そう、もつれを深め、相互、「かくては
埒
(
らち
)
もあかじ」とばかり、ついに
陸奥
(
みちのく
)
の火の手になったものだという。
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これならば
立退
(
たちの
)
くであろう、と思うと、ああ、
埒
(
らち
)
あかぬ。客僧、御身が仮に落入るのを見る、と涙を流して、共に死のうと決心した。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
出来上った人と云う意味はまあ簡単に
埒
(
らち
)
を明ければ、一家を成した人と思えば好い。或は何も他に待たずに生きられる人と思えば好い。
出来上った人:――室生犀星氏――
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
一方、被害民が県庁へ請願してもこれも
埒
(
らち
)
があかない。こんなことでは、この火急を要する事態が何時解決されるかまことに覚束ない。
渡良瀬川
(新字新仮名)
/
大鹿卓
(著)
「例の一件はなにぶん
捗
(
はか
)
がいかねえので申し訳がありません。まあ、もう少し待ってください。年内には何とか
埒
(
らち
)
をあけますから」
半七捕物帳:27 化け銀杏
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
それがこれこれになるといって、すぐ
埒
(
らち
)
の行く民さんらしい
即答
(
そくとう
)
の妙を現わしたが、手間代なぞどっちに廻っても自身のものだからと
生涯の垣根
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
出しては読み出しては読み、差し上げる手紙を書く
料簡
(
りょうけん
)
もなく、昨夜
一
(
ひと
)
ばん
埒
(
らち
)
もなく過ごしました。先夜はほんとに失礼いたしました。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
老婆がその通り、給仕に出た小僧もまた不愉快千万な奴で、遙々楽しんで来たこの古めかしい山上の幻の影は
埒
(
らち
)
もなくくずれてしまった。
青年僧と叡山の老爺
(新字新仮名)
/
若山牧水
(著)
御仮屋の北にあたる
埒
(
らち
)
の
際
(
きわ
)
に、源の家族が見物していたのですが、両親の顔も、叔母の顔も、若い妻の顔すらも、源の目には入りません。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
いつまで
経
(
た
)
っても少しも
埒
(
らち
)
があかぬので、一体どうなっているかと、随分
厳
(
きび
)
しいことを、手紙でいってよこしたことはたびたびあります。
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
窪垣内
(
くぼかいと
)
と云う
字
(
あざ
)
へ行って見ると、そこには「昆布」の姓が非常に多いので、目的の家を捜し出すのになかなか
埒
(
らち
)
が明かなかった。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そしてこの内心の闘ひがやうやく彼の心の
埒
(
らち
)
を越えて立ち現れたとき、それは情欲の上に蔑みと憎悪とが勝利を占めた形に於いてであつた。
垂水
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
「君。待つてゐ給へ。兎に角僕がこれから急いで君の上役の所へ駆け付けて見よう。どうせ我々がこゝで彼此云つても
埒
(
らち
)
は明かないから。」
鱷
(新字旧仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
苛
(
じ
)
れったいというか、
苛立
(
いらだ
)
たしいというか、我々の方でも少し
急
(
せ
)
き込んだ傾きはあったが、どうにも
埒
(
らち
)
があかないのであった。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
埒
(
らち
)
もない対話をしているのに、
一一
(
いちいち
)
の
詞
(
ことば
)
に応じて、一一の表情筋の
顫動
(
せんどう
)
が現れる。
Naif
(
ナイイフ
)
な小曲に
sensible
(
サンシイブル
)
な伴奏がある。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
かりにも
没義道
(
もぎどう
)
に取り扱ったとは……葉子は自分ながら葉子の心の
埒
(
らち
)
なさ恐ろしさに悔いても悔いても及ばない悔いを感じた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
小山は
徐
(
おもむ
)
ろに席に就き「中川君、非常に面倒で大きに弱ったがやっと今日
埒
(
らち
)
が
明
(
あ
)
いたよ」とこの一語は天の
福音
(
ふくいん
)
としてお登和嬢の耳に響きぬ。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
誠に
埒
(
らち
)
もない話であるが、斯うした癖が高じると狂になるのだなと思って、其時、僕は微の字の付かぬ苦笑を漏らした事を一寸告白して置く。
愛書癖
(新字新仮名)
/
辰野隆
(著)
西鶴の『
胸算用
(
むねさんよう
)
』に橙のはずれ年があって、一つ四、五分ずつの売買であったため、
九年母
(
くねんぼ
)
を代用品にして
埒
(
らち
)
を明けた、という話が出ている。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
「……ちょっと待ちな、あそこへ手桶が流れて来る、手じゃ
埒
(
らち
)
があかないからあいつを取って来て掛けよう、ちょっとのまがまんしてるんだ」
柳橋物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
一向
埒
(
らち
)
明かずとあってカリブ人、また鼠を遣わすとこやつ
小賢
(
こざか
)
しく立ち廻ってたちまち獏の居所を見付けたが、獏もさる者
十二支考:11 鼠に関する民俗と信念
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
遊興の
取持
(
とりもち
)
を勤めと心得ている
埒
(
らち
)
もないてあいばかりだが、新規に目附になった
押原右内
(
おしはらうない
)
という男は、お家騒動で改易になった
越後
(
えちご
)
の浪人者で
鈴木主水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
つまり正面から掛け合っては、
埒
(
らち
)
が明かない上に金がかかるから、それで悪辣の手段を講じておいて善後策を上手にやる。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
われ裏面より
埒
(
らち
)
に近き處に席を占めしに、こゝは歌者の席なる
斗出
(
としゆつ
)
せる棚に遠からざりき。背後には
許多
(
あまた
)
の
英吉利
(
イギリス
)
人あり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
晋では当時
范
(
はん
)
氏
中行
(
ちゅうこう
)
氏の乱で手を焼いていた。斉・衛の諸国が叛乱者の尻押をするので、容易に
埒
(
らち
)
があかないのである。
盈虚
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
家柄は禰宜様——神主——でも彼はもうからきし
埒
(
らち
)
がないという意味で、禰宜様宮田という
綽名
(
あだな
)
がついているのである。
禰宜様宮田
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「ここの電話じゃ急のことには
埒
(
らち
)
があかないから、わたしお隣の
緑軒
(
みどりけん
)
でかけてきましたわ」お絹はそう言って、
鼻頭
(
はながしら
)
ににじみでた汗をふいていた。
挿話
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
それから、女二人の旅券だの船だの信用状だのを、自分一人で
掻
(
か
)
き込むようにして
埒
(
らち
)
を開け、神戸まで見送って
呉
(
く
)
れた。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
蒲田が一切を引受けて見事に
埒
(
らち
)
開けんといふに励されて、さては一生の
怨敵
(
おんてき
)
退散の
賀
(
いはひ
)
と、
各
(
おのおの
)
漫
(
そぞろ
)
に
前
(
すす
)
む膝を
聚
(
あつ
)
めて、
長夜
(
ちようや
)
の宴を催さんとぞ
犇
(
ひしめ
)
いたる。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
けれど穴に引きこもって、考え込んでいるだけでは
埒
(
らち
)
があかぬとあって、いよいよ厩橋の城下へ繰り出すことにした。
純情狸
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
栃本へ行って話をしたが一向
埒
(
らち
)
が明かない、といったようなことを話して、一服してぞろぞろ下りて仕舞った跡は急に淋しさが増したように感じた。
奥秩父の山旅日記
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
時々は遠からぬ
新宿
(
しんじゅく
)
へなりと人知れず遊びに出掛けたき心持にも相なり候へども、これまた同様にて
埒
(
らち
)
明き申さず。
榎物語
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「おい、
老
(
お
)
い
耄
(
ぼ
)
れ! 娘を借りようかの。このとおり、野郎ばかりで
埒
(
らち
)
の明かぬところ。酒の酌が所望じゃ——。」
煩悩秘文書
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
硝子窓
(
がらすまど
)
から形ばかり
埒
(
らち
)
を結った自然のまゝの
小庭
(
こにわ
)
や甘藍畑を見越して、黄葉のウエンシリ山をつい鼻のさき見る。小机一つ火の気の少ない箱火鉢一つ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
燃えあがる悲しみやよろこばしさを、不自由もなく歌える詩と云うものを組しやすしと考えてか、
埒
(
らち
)
もない風景詩をその頃書きつけて
愉
(
たの
)
しんでいました。
文学的自叙伝
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
よろしう御座んす
慥
(
たし
)
かに受合ひました、むづかしくはお給金の前借にしてなり願ひましよ、見る目と
家内
(
うち
)
とは違ひて
何処
(
いづこ
)
にも金銭の
埒
(
らち
)
は明きにくけれど
大つごもり
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
が、かれこれ二時間あまりも歩き廻ったけれど一向に
埒
(
らち
)
が明かず、激しく疲れが出、空腹を感ずるばかりだった。
天馬
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
というのも、
畢竟
(
ひっきょう
)
町人が非常に火事を恐怖したところから、自然、大勢の人心を頼みにしました。何んでも非常の場合とて、人手を借りねば
埒
(
らち
)
が明かない。
幕末維新懐古談:16 その頃の消防夫のことなど
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
始て
怖気付
(
おじけづ
)
いて
遁
(
に
)
げようとするところを、
誰家
(
どこ
)
のか小男、
平生
(
つね
)
なら持合せの黒い
拳固
(
げんこ
)
一撃
(
ひとうち
)
でツイ
埒
(
らち
)
が明きそうな小男が飛で来て、銃劒
翳
(
かざ
)
して胸板へグサと。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
囲炉裏を前にして、おのぶを口説いていた「こび権」は話の
埒
(
らち
)
があかないのに業を煮やしていた。いや、業を煮やしているように見せかけていたのである。
本所松坂町
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
以上炭の
噂
(
うわさ
)
まで来ると二人は最初の木戸の事は
最早
(
もう
)
口に出さないで
何時
(
いつ
)
しか元のお徳お源に
立還
(
たちかえ
)
りぺちゃくちゃと仲善く
喋舌
(
しゃべ
)
り合っていたところは
埒
(
らち
)
も無い。
竹の木戸
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
人と人との間の
埒
(
らち
)
が倒れ去ってしまう気分、心は見ず知らずの人にも打ちひらかれるし、口は平生なら恥ずかしくて言えそうもないことを語る気分である……
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
質問の要点には少しも触れないで、聞いていると枝葉の話ばかりで続くのである。それでいて、
此方
(
こちら
)
には口一つきかせないで、一人で
埒
(
らち
)
もなく喋るのである。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
倫理の
埒
(
らち
)
を越えて、もとより重々の遺憾を感じながら、野性を暴露した最後の非常手段を取ろうとします。
食糧騒動について
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
われもし政宗公の時代に生れていたならば、と
埒
(
らち
)
も無い空想にふけり、また、俗に
先代萩
(
せんだいはぎ
)
の
政岡
(
まさおか
)
の墓と言われている三沢初子の墓や、支倉六右衛門の墓、また
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
さっぱり
埒
(
らち
)
があかず、赤瀬春吉も、民政党の奴どもが反対しているのだから、一遍正式に願書を拵らえて一般の輿論に訴えてみるがよい、などとは云うものの
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
二三度人を介して談判したが、
埒
(
らち
)
があかない。そのうちに面倒くさくなって、そのままになっている。
『十八時の音楽浴』の作者の言葉
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
埒
漢検1級
部首:⼟
10画
“埒”を含む語句
埒外
放埒
一埒
放埒者
埒口
凡下放埒
不埒
不埒者
不埒千万
埒内
埒明
無埒
我儘放埒
放埒無頼
放埒無慚
放埒不覊
埒無
放埒病
新馬埒
横道不埒
...