いゝ)” の例文
『まあ、何と申上げていゝか解りませんけれど——』とお志保は耳の根元までもあかくなつて、『私はもう其積りで居りますんですよ。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
が、ではない。ばさりととなへたはおとで、正体しやうたい二本にほん番傘ばんがさ、トじやひらいたはいゝが、古御所ふるごしよすだれめいて、ばら/\にけてる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
願くは、今自分の見て居るうちに、早く何處かの内儀おかみさんが來て、全體みんなでは餘計だらうが、アノ一番長い足一本だけでも買つて行つて呉れゝばいゝに、と思つた。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
『何うしてもきませんか。それぢや全快なほつても死でしまひます。いゝから此儘で手術をなさいと申すのに』
泉鏡花作『外科室』 (旧字旧仮名) / 宮崎湖処子(著)
あゝ、またの先生の書いたものなぞを読んで、神経を痛めなければいゝがなあと。彼様あゝいふ本を読むのは、君、可くないよ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
はや谷川たにかはおとくと我身わがみ持余もてあまひる吸殻すひがら真逆まツさかさま投込なげこんで、みづひたしたらさぞいゝ心地こゝちであらうと思ふくらゐなんわたりかけてこはれたらそれなりけり。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何とか先に手紙でも來れや、職業くちの方だつて見付けるに都合がいゝんだ。昨日は實際僕喫驚びつくりしたぜ。何にも知らずに會社から歸つて見ると後藤の肇さんが來てるといふ。
漂泊 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
の応接室で読まうか。人が来ると不可いけない。教室がいゝか。小使部屋が可か——否、彼処へも人が来ないとは限らない。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ことがけを、うへはうへ、いゝ塩梅あんばいうねつた様子やうすが、とんだものにつていなり、およくらゐ胴中どうなか長虫ながむしがとおもふと、かしらくさかくしてつきあかりに歴然あり/\とそれ。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それではどうしたらいゝでせうと問ひますと、「マア能く考へて見て、何とかしたら可ぢやないか。」
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
いえなん貴僧あなた。おまいさん後程のちほどわたし一所いつしよにおべなさればいゝのに。こまつたひとでございますよ。)とそらさぬ愛想あいさう手早てばや同一おなじやうなぜんこしらえてならべてした。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おや、さうですか? 私は江戸川へ行くんですから、須田町で乘換へたつていゝぢやありませんか?
我が最近の興味 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
それ見給え、そういう芸があるなら売るがいゝじゃないか。売るべし。売るべし。無くてさえ売ろうという今の世の中に、有っても隠して持ってるなんて、そんな君のような人があるものか。
朝飯 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ところで、わたしが、おうらすくみちとして、すゝむべき第一歩だいいつぽは、何処どこでもい、小家こいへ一軒いつけんさがことだ。小家こやでもいゝ辻堂つじだうほこらでもかまはん、なんでもひとない空屋あきやのぞみだ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
可愛い兒供こどもの生れた時、この兒も或は年をつてから悲慘みじめ死樣しにざまをしないとも限らないから、いつそ今斯うスヤ/\と眠つてるうちに殺した方がいゝかも知れぬ、などと考へるのは
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
愉快おもしろいな、愉快おもしろいな、お天気てんきが悪くつてそとあそべなくつてもいゝや、かさみのて、あめるなかをびしよ/″\れながら、はしうへわたつてくのはいぬしゝだ。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
どうだへ、君、函館はいゝかね。』と、何時しか紙莨を啣へて居た楠野君が口を開いた。
漂泊 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
ひよつとかして、わしはう出来できくば、相談対手さうだんあひてれるだでの、いゝか、さあ、ござらつせえ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
『まあいゝさ。但し當分は先づ食ツて行けるだけでも、仕方がないから辛抱するさ。』
漂泊 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
たゞ、ねえ、さうおもつて、れば、いゝのだから、いつてはなりませんよ。いゝかい。そして先生せんせいはらつておにくみだつて、さういふけれど、なにそんなことがありますものか。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
『同じ江戸川へ行くんなら、何處で乘換へたつていゝぢやありませんか?』
我が最近の興味 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
たいな! はねへたうつくしいねえさん。だけれども、まあ、いゝ母様おつかさんらつしやるから、母様おつかさんらつしやつたから。(完)(「新著月刊」第一号 明治30年4月)
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
『全體で二百圓あれアいゝんですつて。』
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)