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凹
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へこ
ふりがな文庫
“
凹
(
へこ
)” の例文
探りながら歩いてゆく足が時どき
凹
(
へこ
)
みへ踏み落ちた。それは泣きたくなる瞬間であった。そして寒さは衣服に
染
(
し
)
み入ってしまっていた。
過古
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
ガラッ八の
凹
(
へこ
)
む顔を見て、女は始めて微笑みましたが、そのまま物優しく小腰を屈めると、
踵
(
きびす
)
を返して竹屋の渡しの方へ急ぎます。
銭形平次捕物控:040 大村兵庫の眼玉
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
とうとう平あやまりのこっち
凹
(
へこ
)
み、
先方様
(
さきさま
)
むくれとなったんだが、しかも何と、その前の晩気を着けて見ておいたんじゃアあるまいか。
註文帳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
鷲尾は倅の
凹
(
へこ
)
んだたよりなげなウツロな眼や、でッかちになった頭などを、まるで夢心地でシゲシゲと
凝
(
み
)
つめながらやっと抱えあげた。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
と答えたら、赤んべんが、肉のない頬を
凹
(
へこ
)
まして、
愚弄
(
ぐろう
)
の笑いを
洩
(
も
)
らしながら、三軒置いて隣りの坑夫をちょいと
顎
(
あご
)
でしゃくった。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
兄の岩太郎は、顔や胸を泥に穢したまま
鳩尾
(
みぞおち
)
をフイゴのように
脹
(
ふく
)
らしたり
凹
(
へこ
)
めたりしながら、係長がはいって行くから睨みつづけていた。
坑鬼
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
そうして何等かの策略で吾輩を
凹
(
へこ
)
ませるために、君をここへ連れて来るんだな……と気が付いたから、ドッコイその手は
桑名
(
くわな
)
の何とかだ。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
と
執念
(
しゅうね
)
く争いて中川を
凹
(
へこ
)
まさんとするは子爵家の姫君に対して
窃
(
ひそか
)
に野心ありと見えたり。他の人々もこの問答を面白く感じぬ。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
久「誠にお立派なお
住居
(
すまい
)
でございます、斯ういうお広いお
宅
(
うち
)
は初めて拝見致しました、あの
凹
(
へこ
)
んで居ります処は何と申します」
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
活動写真の
布
(
カンバス
)
へ皺が寄るように、時々、街路の光景が歪んだり、
凹
(
へこ
)
んだり、ぼやけたり、二重になったりして、瞳に映った。
恐怖
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ですから、兵曹長をはやくはやくとせきたてて、すぐ前を走っている
塹壕
(
ざんごう
)
のような
凹
(
へこ
)
んだ道を、先にたってかけだしました。
怪塔王
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
その広言を
凹
(
へこ
)
ましてやろうと、一人が後ろから
撲
(
なぐ
)
りかかった。しかし、小次郎の体は地へ低く沈み込み、不意を襲った男は前へもんどり打った。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
俺は頬に手をやったが、その頬は自分でも気持が悪いくらいげっそりと
凹
(
へこ
)
んでいる。卵みたいな顔と干物みたいな俺の顔とは妙な対照だったろう。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
『ハ。
奈何
(
どう
)
せ私も然う思つてだのでごあんすアハンテ、お戻しすあんす。』と、顔を曇らして言つて、頬を
凹
(
へこ
)
ませてヂウ/\する煙管を強く吸つた。
足跡
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
壁の一角を与うれば、背中および両
脛
(
すね
)
の緊張と、石の
凹
(
へこ
)
みにかけた両
肱
(
ひじ
)
および両の
踵
(
かかと
)
とをもって、魔法でも使うように四階までも上ることができた。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
みちはだんだんせまくなってまん中だけが
凹
(
へこ
)
んで来ました。ハーシュは車をとめてこどもをふりかへって見ました。
車
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
小さな
隅
(
すみ
)
あるいは
凹
(
へこ
)
んだところが、たくさんあって、それもまた、ブランスビイ博士の経済的工夫力によって、やはり寝室になるように造ってあった。
ウィリアム・ウィルスン
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
極度に
凹
(
へこ
)
むと、裏のほうがふくれて来る。つまり、あの自尊心の倒錯である。原田もここは必死、どもりどもり首を振って意見を開陳し
矢鱈
(
やたら
)
にねばる。
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
和服では
裾
(
すそ
)
が寒くて
堪
(
たま
)
らない上に、私のやせぎすは、腹が内側へ
凹
(
へこ
)
んでいるために、日に幾度ともなく、帯を締め直す
煩
(
はん
)
に堪えない事もあるのである。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
そして、この
凹
(
へこ
)
みの真中に、果して、山羊の皮で作った小さなテントがあった。ちょうどイギリスでジプシー人が持ち𢌞っているようなテントだった。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
門野
(
かどの
)
というところの向う山には、山男が石に歩みかけた足跡がある。岩が
凹
(
へこ
)
んで足の形を印している。いかほどの強い力だろうかといったそうである。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
自分が何々博士を訪ねて、種々議論したうち、少し
癪
(
しゃく
)
に
障
(
さわ
)
ったことがあったので、こうこういってやったところが、だいぶ相手も
凹
(
へこ
)
んだようだったと。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
捏
(
こ
)
ね返した痕跡が割れ目を生じたころは、雪は一方に
堆
(
うずたか
)
く盛り上られ、一方では
掬
(
すく
)
われたようにげっそりと
凹
(
へこ
)
む。
奥常念岳の絶巓に立つ記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
吉次越の絶頂の
凹
(
へこ
)
んだ処に木と草とで忽ち速成のバンガローを造って、悠々と尻を落ちつけて、指揮したと云う。
田原坂合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
と威厳ある一ト睨で、帝釈天は
凹
(
へこ
)
んで面をふくらせたのは、溜飲が下った。山本さんは更に主任達の方を向いて
監獄部屋
(新字新仮名)
/
羽志主水
(著)
それでも政宗は遠慮せずに三千塚という首塚を立てる程の激しい戦をして蘆名義広を
凹
(
へこ
)
ませ、とうとう会津を取って
終
(
しま
)
ったのが、其翌年の五月のことだ。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
三方にある
廃
(
あ
)
れた庭には、夏草が繁って、家も勝手の方は古い板戸が
破
(
こわ
)
れていたり、
根太板
(
ねだいた
)
が
凹
(
へこ
)
んでいたりした。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
梯子
(
はしご
)
と僕と鞄が、すっかり仲よく
船尾
(
スタアン
)
の
凹
(
へこ
)
みへへばりついて、ぜんたい斜めに宙乗りしていた。陸から漕いで来た僕の
はしけ
(
ボウテ
)
は
梯子
(
ジャコップ
)
の下に結び着けてある。
踊る地平線:08 しっぷ・あほうい!
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
字を書けの、歌を
詠
(
よ
)
めのと言われては、がんちゃんもいささか
凹
(
へこ
)
むだろうが、歩けと言われる分には本職です。
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
藍皮阿五は横合いから手を出して「そんなことは一切
乃公
(
おれ
)
に任せろ」と言ったが、王九媽は承知せず、「お前にはあした棺桶を
舁
(
かつ
)
がせてやる」と
凹
(
へこ
)
まされて
明日
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
しかし太った紳士がその
隣
(
となり
)
から慌てて立ち上ろうが、汽車が動き出そうが、太った紳士が再びその
傍
(
かたわら
)
へ大きなお
尻
(
しり
)
をどっかと下して座席が
凹
(
へこ
)
もうが、二等室の
一隅
(
いちぐう
)
蝗の大旅行
(新字新仮名)
/
佐藤春夫
(著)
ライオン歯磨の桐箱も今は
錫
(
すず
)
のパイプとなるからに親指の跡
凹
(
へこ
)
みし古下駄の化身、そも何となるべき。
偏奇館漫録
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
酒を飲まない
奴
(
やつ
)
は飲む者に
凹
(
へこ
)
まされると
決定
(
きま
)
っているらしい。今の自分であってみろ! 文句がある。
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
凹
(
へこ
)
んだ鑵や、虫けらや、ぶくぶく浮き上る真黒なあぶくや、果実の皮などに取り巻かれたまま、蘇州からでも昨夜下って来たのであろう、割木を積んだ小舟が一艘
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
ガルールは、それから夢中になって
船床
(
ゆか
)
を探し廻った。そしてふと穴のような
凹
(
へこ
)
みへ首を突込むと
ラ・ベル・フィユ号の奇妙な航海
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
それは、最初鏡を磨く際に、模様のある低い部分が、一端は
凹
(
へこ
)
むのですけど、やがて日を経るにつれ盛り上ってきて、結局、不思議な
像
(
かた
)
を反射するようになるのです。
人魚謎お岩殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
やがて、この弱々しい月光の下で、二つの小さな頭の影が、一つになって仕舞うと、彼は、葉子の頬についている、小さい愛嬌
黒子
(
ぼくろ
)
が、自分の頬をも、
凹
(
へこ
)
ますのを感じた。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
そして、地の
凹
(
へこ
)
みに足をとられて、立木へ倒れかかって、やっと、左手で、木に
縋
(
すが
)
って支えた。
近藤勇と科学
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
米国の応募兵のなかに、脳の後頭部が
削
(
そ
)
いで取つたやうに
凹
(
へこ
)
んだ頭をした兵卒の一人があつた。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
ところが、重味で真ん中の
根太
(
ねだ
)
が
凹
(
へこ
)
んで困りましたが、それなりでとうとう翌年の二月に仕上げ、農商務省へ納めました。やっとシカゴの博覧会出品に間に合ったことであった。
幕末維新懐古談:74 初めて家持ちとなったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
眼の上の眉のひさしがやや眼にのしかかり気味でそれが眼に陰影を与える。眼と嘴と額との国境のような
凹
(
へこ
)
んだ三角地帯に、
剛
(
こわ
)
い毛に半ば
埋
(
うも
)
れるように鼻孔がこの辺のこなしを引締めている。
木彫ウソを作った時
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
狭い澄んだ額のまわりに
漣
(
さざなみ
)
のように揺らいでる細やかな髪の毛、やや重たげな
眼瞼
(
まぶた
)
の上のすっきりした
眉
(
まゆ
)
、
雁来紅
(
がんらいこう
)
の青みをもった眼、小鼻のぴくぴくしてる繊細な鼻、軽く
凹
(
へこ
)
みを帯びた
顳顬
(
こめかみ
)
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
虫は、凝ツと翅を休めると、どんなに、私の腹が大きく脹れたり
凹
(
へこ
)
んだりしても、一向に頓着なく、何か憂鬱なことでも想ひながら遊動円木にでも乗つてゐるかのやうに図々しく、落ついてゐます。
晩春の健康
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
硝子窓に
潰
(
つぶ
)
され、
凹
(
へこ
)
んだ鼻をしているその顔がまるで、泣きだしそうな
羞恥
(
しゅうち
)
に
歪
(
ゆが
)
んでおり、それを
堪
(
た
)
えて、友達と笑い合っては、
道化
(
どうけ
)
人形を
踊
(
おど
)
らせ、あなたは、こちらの注意を
惹
(
ひ
)
こうとしていました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
一口で
凹
(
へこ
)
まされて仕舞うでしょう。何にも知らないんですもの。
お久美さんと其の周囲
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「正太もまた、こんなことに
凹
(
へこ
)
んで了うようなことじゃ
不可
(
いけない
)
」
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「お縫様の死はどうするね?」半九郎
凹
(
へこ
)
まずきき返した。
染吉の朱盆
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
眼の
凹
(
へこ
)
むのを覚えた。
放浪の宿
(新字新仮名)
/
里村欣三
(著)
ガラツ八の
凹
(
へこ
)
む顏を見て、女は始めて微笑みましたが、其儘物優しく小腰を屈めると、
踵
(
きびす
)
を返して竹屋の渡しの方へ急ぎます。
銭形平次捕物控:040 兵庫の眼玉
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
死人のように
頬
(
ほっ
)
ペタを
凹
(
へこ
)
まして、白い眼と白い
唇
(
くちびる
)
を半分開いて……黄色い素焼みたいな
皮膚
(
ひふ
)
の色をして眠っているでしょう。
狂人は笑う
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
凹
常用漢字
中学
部首:⼐
5画
“凹”を含む語句
凸凹
凹所
凹凸
凹間
凹地
凹字
凹路
笑凹
凹字形
凹面鏡
凹垂
落凹
凹入
凸凹路
平凹
中凹
茉莉凹巷処
起伏凹凸
陥凹
盆凹
...