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他所
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よそ
ふりがな文庫
“
他所
(
よそ
)” の例文
飯縄山のすぐ北に
駢
(
なら
)
んでいる黒姫山の蒼翠は、この
畏
(
おそ
)
れ入った雲の群集を
他所
(
よそ
)
にして、空の色と共に目もさむるばかり鮮かであった。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
そういう問題を
他所
(
よそ
)
にして、国中が空転している恰好に見える。こういう激しい空転をしておれば、熱をもってくるのが当然である。
科学は役に立つか
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
しかしソロチンツイの陪審官は通らなかつた。それに
他所
(
よそ
)
のことなど彼には用がなかつた——彼は自郡のことに忙殺されてゐたのだ。
ディカーニカ近郷夜話 後篇:02 降誕祭の前夜
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
「その御心配なら絶対に御無用に願いたいものです。患家の秘密を
無暗
(
むやみ
)
に
他所
(
よそ
)
で
饒舌
(
しゃべ
)
るようでは医師の商売は立ち行きませんからね」
霊感!
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
際立つた出世はしないでも、愚圖ら/\してゐても、
他所
(
よそ
)
の子達のやうに間違ひをし出かさないのを何よりも仕合せだと思つてゐた。
仮面
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
▼ もっと見る
もっともあの晩は
他所
(
よそ
)
へ行って居合わさなかったがな。ウフフフ。門前町で次の日まで居続けて、その翌日帰って見るとコレコレだ。
天狗外伝 斬られの仙太
(新字新仮名)
/
三好十郎
(著)
外へ出ると、三つ股の源吉と子分の安は、彌助の連れ
娘
(
こ
)
お吉を縛り上げて、彌助の驚きと嘆きを
他所
(
よそ
)
に、此處を引揚げるところです。
銭形平次捕物控:066 玉の輿の呪
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「そして
早
(
はよ
)
う戻って
来
(
こ
)
にゃあかんに。晩になるときっと冷えるで。味噌屋がすんだらもう
他所
(
よそ
)
へ寄らんでまっすぐ戻っておいでやな」
最後の胡弓弾き
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
「僕は
他所
(
よそ
)
から来て町の見物をしている者です。これがなるほど民衆図書館なのですね。蔵書をひと通り拝見させて頂けましょうか」
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
銀座などとちがって、狭い山ノ手のカフェでは、孤独な客が
他所
(
よそ
)
のテーブルを眺めたりしながら時を費すことはそう自由ではない。
ある崖上の感情
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
一寸親子の愛情に譬えて見れば、自分の児は
他所
(
よそ
)
の児より賢くて行儀が
可
(
い
)
いと云う心持ちは、濁って垢抜けのしない心持ちである。
私は懐疑派だ
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
不図気がつくと、納屋の
檐下
(
のきした
)
には、小麦も大麦も刈入れた
束
(
たば
)
のまゝまだ
扱
(
こ
)
きもせずに入れてある。
他所
(
よそ
)
では最早
棒打
(
ぼううち
)
も済んだ家もある。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
「
他所
(
よそ
)
の火事は大きいほど面白い」という顔つきで、
紅蓮
(
ぐれん
)
の焔を吹きあげながら、なおも燃えひろがって行く日若座を眺めている。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
わざわざ遠廻りしてまで
他所
(
よそ
)
の風呂へ行くといった様に、
勢
(
いきお
)
い、それは
好
(
す
)
き
好
(
ず
)
きのことではあるけれど、噂で持ちきっていたものである。
電気風呂の怪死事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
その
他所
(
よそ
)
の男は宿屋の戸口のすぐ内側のところをうろついてばかりいて、鼠を待ち構えている猫のように岩角の方を窺っていた。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
案外気立ての
柔
(
やさ
)
しそうな岡田のことゆえ、気の毒がって
他所
(
よそ
)
へ移ったのかも知れない、などとも太田には考えられるのであった。
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
それに子供が多いから女中や婆やは手一杯で頻に愚痴を
零
(
こぼ
)
す。
他所
(
よそ
)
の家では主人は少くとも日中は勤めに出るから主婦はその間息がつける。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「お民さんが来てから、何となく勝手が違って、ちょっと
他所
(
よそ
)
から帰って来ても、何だか自分の内のようじゃないんですよ。」
女客
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
重明も野村も
未
(
いま
)
だ死という事がよく呑み込めなかったので家の中の騒ぎも
他所
(
よそ
)
に、二人は庭で遊んでいた。そうしたら乳母にひどく叱られた。
黄鳥の嘆き:——二川家殺人事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
まあ、父さんも、どんなに
幼少
(
ちひさ
)
い
子供
(
こども
)
だつたでせう。
東京行
(
とうきやうゆき
)
の
馬車
(
ばしや
)
の
中
(
なか
)
には、
一緒
(
いつしよ
)
に
乘合
(
のりあは
)
せた
他所
(
よそ
)
の
小母
(
をば
)
さんもありました。
ふるさと
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
おれの知っているある
他所
(
よそ
)
のものが、大きな望みを持って、この江戸に足をふんごみ、いのちがけで大願を成就させようとあせっているのさ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
このあいだまで
大工
(
だいく
)
たちが、ここで
他所
(
よそ
)
へ
建
(
た
)
てる
家
(
いえ
)
の
材木
(
ざいもく
)
を
切
(
き
)
り
込
(
こ
)
んでいたのでした。ここは、
町裏
(
まちうら
)
の
原
(
はら
)
っぱであります。
雪の降った日
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
作業の途中で中止して
他所
(
よそ
)
へ移転するというような事があるものか、ないものか、これは専門の学者にでも聞いてみなければ判らない事である。
小さな出来事
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
それも
他所
(
よそ
)
行き気分でなく、ちょっとゆかたがけといったような軽い気持でね。だから何となく気楽な悠長な気がするよ。
早稲田神楽坂
(新字新仮名)
/
加能作次郎
(著)
他所
(
よそ
)
の家へでも行つた風にちよこなんとしてゐた竹丸に向つて、「見に來ては可かんというたるのに、何んで見に來た。」
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
「かの子さんはお
嬢様
(
じょうさま
)
育ちだから
一平
(
いっぺい
)
さんが世話をしないと
他所
(
よそ
)
へ出られないからいつでもついて行って
貰
(
もら
)
って居る。」
家庭愛増進術:――型でなしに
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
ことに書物をよみに
他所
(
よそ
)
まで出かけてゆくなどゝ、家持ち子持ちのする事ではないと云ふ激しい反感が
切
(
しき
)
りに起された。
乞食の名誉
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
その為め構内車夫等は私の家の前にいつぱい
俥
(
くるま
)
を
列
(
なら
)
べて客の寄り勝手を悪くしたり、
他所
(
よそ
)
から客を乗せて来る場合は他の宿屋へ送り込んだりした。
ある職工の手記
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
「なんだい、なんだい、
他所
(
よそ
)
から来やがったくせにして、お父さんみたいな顔して、威張ってやがら。……おらの、おらの、ほんとのお父さんは」
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
(彼らはお城下の案内に通じた、この城下の奴ばらなのだ。俺は不案内の
他所
(
よそ
)
の者だ。つけられたが最後まけそうにもない。ヨーシその儀なら!)
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
これによってただちに
他所
(
よそ
)
からの借物であると断言することは、注意深き
老翁
(
ろうおう
)
のあえてなさざるところであると思う。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
小学校へ行くようになって、
他所
(
よそ
)
の子供の言葉を憶えて来てうっかり言うと、
斯
(
こ
)
ういう風に言うのだと直されて了う。
回想録
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
で、私は、かりにも養父であるこの中村を、まるで
他所
(
よそ
)
の人のように、いつも「
小父
(
おじ
)
さん、小父さん」と呼んでいた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
それは姉の美佐子が、時折、
他所
(
よそ
)
に泊まって来るところから出発した。それに、美佐子の生活は、伸子の眼から見れば相当に
贅沢
(
ぜいたく
)
なものであったから。
秘密の風景画
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
双鶴館
(
そうかくかん
)
の
女将
(
おかみ
)
はその女と懇意の間だったが、女に子供が幾人かできて少し手ぜま過ぎるので
他所
(
よそ
)
に移転しようかといっていたのを聞き知っていたので
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
法然が流された後というもの、月輪殿が朝夕の歎き
他所
(
よそ
)
の見る目も傷わしく、食事も進まず、病気もあぶないことになった。藤中納言光親卿を呼んで
法然行伝
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ロミオ とうに
棄
(
す
)
てゝしまうた
身
(
み
)
ぢゃ。
予
(
わし
)
は
爰
(
こゝ
)
にはゐぬ、これはロミオでは
無
(
な
)
い、ロミオは
何處
(
どこ
)
か
他所
(
よそ
)
にゐよう。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
他所
(
よそ
)
ゆきの顏つきをして、此の人々が二階へ通ると、三田は一足先に來てゐて、おりかと話しながら待つて居た。
大阪の宿
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
ちかごろ或る日、十何年も
他所
(
よそ
)
にあづけ放してあるトランクをあけて見ると昔のエハガキブックや本や手帳にまぢって、二十歳前後の写真を二束見つけた。
喧嘩咄
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
其若い妻が泣きの涙でいるということを知っては、
其儘
(
そのまま
)
に
他所
(
よそ
)
の事だと澄ましかえっては居にくいことである。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
庭の向こうの原っぱで、おねえちゃん! と、半分泣きかけて呼ぶ
他所
(
よそ
)
の子供の声に、はっと胸を突かれた。
女生徒
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
私は
他所
(
よそ
)
のお母さんやお父さんが、三人も五人もの子供を引きつれて平気で街を歩いてらっしゃるのをみると、それだけでへえっと舌を巻いてしまうんです。
女の一生
(新字新仮名)
/
森本薫
(著)
「衣川さんが
他所
(
よそ
)
からお帰りになって、それが分ったので、
吃驚
(
びっくり
)
して警察へ訴えたんだそうでございます」
秘められたる挿話
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
そこで形に引っ掛かり、こうでなければならぬということになると、その心持は、すでに
他所
(
よそ
)
行きの作意ある心持となって、人に見せるための字になっている。
習書要訣:――美の認識について――
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
画家
(
ゑかき
)
といふものは、
何
(
ど
)
うかすると
他所
(
よそ
)
の葡萄を欲しがつたり、
相弟子
(
あひでし
)
の女画家に惚れたりするものなのだ。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
横
(
よこ
)
ッ
降
(
ぷ
)
りにふりかかる
雨
(
あめ
)
のしぶきも、
今
(
いま
)
は
他所
(
よそ
)
の
出来事
(
できごと
)
でもあるように、まったく
意中
(
いちゅう
)
にないらしかった。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
最初
(
さいしょ
)
の
恋
(
こい
)
に
破
(
やぶ
)
れた
私
(
わたくし
)
には、もともと
他所
(
よそ
)
へ
縁
(
えん
)
づく
気持
(
きもち
)
などは
少
(
すこ
)
しもなかったのでございましたが、ただ
老
(
お
)
いた
両親
(
りょうしん
)
に
苦労
(
くろう
)
をかけては
済
(
す
)
まないと
思
(
おも
)
ったばかりに
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
兄弟は別として、苟くも
他所
(
よそ
)
の男とは口を
利
(
き
)
くのさへ憚るやうな気持が何処かにあつて、そのために、つい最近まで結婚の話など身ぶるいするほどいやであつた。
双面神
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
私たちは
裃
(
かみしも
)
をつけて、太夫らしく
他所
(
よそ
)
行きになって、泣いたり、大声を立てたりして見せる父に対し、一様にきまり悪さと楽しさとの混じった感情を抱いていた。
光り合ういのち
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
それから魔法の袋だって! それはまた
何
(
ど
)
んな仕掛になってるものやら? いや、いや、
他所
(
よそ
)
のお人! あたし達はそんな不思議な物のことは一向知りませんよ。
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
“他所”の意味
《名詞》
該当の所とは別の場所。
他の場所へ移ること。
(出典:Wiktionary)
他
常用漢字
小3
部首:⼈
5画
所
常用漢字
小3
部首:⼾
8画
“他所”で始まる語句
他所行
他所者
他所目
他所事
他所他所
他所見
他所々々
他所乍
他所眼
他所村