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鬼魅
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きみ
ふりがな文庫
“
鬼魅
(
きみ
)” の例文
と、その拍子に女はコートの右の
袖
(
そで
)
に男の手が
触
(
さわ
)
ったように思った。で、
鬼魅
(
きみ
)
悪そうに体を左に
反
(
そ
)
らしながら足早に歩いて往った。
水魔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
鶴生
(
つりう
)
(福島県西白河郡西郷村大字)の奥なる
高助
(
たかすけ
)
と云ふ所の山にては
炭竈
(
すみがま
)
に宿する者、時としては
鬼魅
(
きみ
)
の怪を聴くことあり。其怪を
伐木坊
(
きりきぼう
)
又は
小豆磨
(
あずきとぎ
)
と謂ふ。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
狐狸
(
こり
)
の
妖異
(
ようい
)
や、鳥の
面
(
つら
)
をした異形の
鬼魅
(
きみ
)
、そのほか
外道
(
げどう
)
頭とか、
青女
(
あおおんな
)
とか、そういった
怪物
(
あやしもの
)
が横行濶歩する天狗魔道界の全盛時代で、極端に
冥罰
(
めいばつ
)
や
恠異
(
かいい
)
を恐れたので
無月物語
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
唐
(
たう
)
の
開元年中
(
かいげんねんちう
)
の
事
(
こと
)
とぞ。
戸部郡
(
こぶぐん
)
の
令史
(
れいし
)
が
妻室
(
さいしつ
)
、
美
(
び
)
にして
才
(
さい
)
あり。たま/\
鬼魅
(
きみ
)
の
憑
(
よ
)
る
處
(
ところ
)
となりて、
疾病
(
やまひ
)
狂
(
きやう
)
せるが
如
(
ごと
)
く、
醫療
(
いれう
)
手
(
て
)
を
盡
(
つく
)
すといへども
此
(
これ
)
を
如何
(
いかん
)
ともすべからず。
唐模様
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
と申しましても私自身その行動に就いては或る
鬼魅
(
きみ
)
の悪い疑問を持っているのでありますが、然も己が罪悪を認めるに
聊
(
いささ
)
かも
逡巡
(
しゅんじゅん
)
する者でなく会う人
毎
(
ごと
)
に自分は人殺しだと告白するにも拘わらず
陳情書
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
▼ もっと見る
暑い
陽
(
ひ
)
を吸うていた
磧
(
かわら
)
の
沙
(
すな
)
は
鬼魅
(
きみ
)
悪くほかほかしていた。その時
莚包
(
むしろづつみ
)
と
焼明
(
たいまつ
)
を持って背の高い男が、
鵜
(
う
)
を持った角顔の男のほうを見て
赤い土の壺
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
鳥の面をした
異形
(
いぎょう
)
の
鬼魅
(
きみ
)
、
外法頭
(
げほうあたま
)
とか、
青女
(
あおおんな
)
とか、
怪物
(
あやしもの
)
が横行濶歩する天狗魔道界の全盛時代で、極端に冥罰や恠異を恐れたので、それやこそ、忠文の死霊の祟りだということになった。
無月物語
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
とうとううす
鬼魅
(
きみ
)
が悪くなって、その
夜
(
よ
)
の練習を中止したことがあったが、こうした錯覚や幻想は決して珍らしいことではない。
追っかけて来る飛行機
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
生徒は
鬼魅
(
きみ
)
が悪くなったので、
寝床
(
ねどこ
)
を飛びだして二階へあがり、
洋燈
(
ランプ
)
の
燈
(
ひ
)
を明るくして
顫
(
ふる
)
えていると、間もなく二人の生徒が帰って来た。
女の姿
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
そのうちでも最も
烈
(
はげ
)
しかったのは、函館市の東南になった大森浜であった。従ってここには、多くの哀話とともに
鬼魅
(
きみ
)
悪い話が残っている。
焦土に残る怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
武士は声をかけられて初めて
吾
(
われ
)
に返った。そこには一
挺
(
ちょう
)
の
山籠
(
やまかご
)
を据えて
籠舁
(
かごかき
)
が休んでいた。武士は一刻も早く
鬼魅
(
きみ
)
悪い場所を離れたかった。
山寺の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
姪は
鬼魅
(
きみ
)
悪くなって寄宿舎を逃げ出そうと思ったが、ふと其の男を
何処
(
どこ
)
かで見たことがあるような気がしたので、いろいろと考えているうちに
阿芳の怨霊
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
わたしはその車にいるのが
鬼魅
(
きみ
)
がわるいので、なんの事も思わず、その客に
跟
(
つ
)
いておりたのです、その客は皆電車の前を横に切って往くのです。
雪の夜の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
それは曇った日の夕方のことで、
鼠
(
ねずみ
)
色に暮れかけた湖の上は
蝸牛
(
かたつむり
)
の
這
(
は
)
った跡のようにところどころ
鬼魅
(
きみ
)
悪く光っていた。
水郷異聞
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
章一はそこに暗い
鬼魅
(
きみ
)
悪いものを見たが、それよりも己に
縋
(
すが
)
って己あるがために生きているように思われていた女が
一握の髪の毛
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
女房は
鬼魅
(
きみ
)
わるくなって、金を持ったまま後すざりして
庖厨
(
かって
)
の方へ引込んで往ったが、
怕
(
こわ
)
くて脊筋から水でもかけられたようにぞくぞくして来たので
海坊主
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
T機関士はうす
鬼魅
(
きみ
)
が悪かったが、それでも勇気を出して客室の方へ進んで往った。客室はがらんとしていた。
飛行機に乗る怪しい紳士
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
二人は吾妻橋の
袂
(
たもと
)
の交番の前を通って往った。入口に立っていた一人の巡査は、
小女
(
こむすめ
)
と
壮
(
わか
)
い男の姿をじろじろと見ていた。山西はそれがうす
鬼魅
(
きみ
)
悪かった。
水魔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
船頭同志はがたがたと
跫音
(
あしおと
)
をさしながら橋板を渡って往った。その二人の黒い影が
鬼魅
(
きみ
)
悪く忰の眼に見えた。
参宮がえり
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
平三郎は刀の異状に力を得て、若党と三人で
松明
(
たいまつ
)
を
点
(
つ
)
けて庭の
隅隅
(
すみずみ
)
を調べて廻った。曇った空に
鬼魅
(
きみ
)
悪い
冷冷
(
ひえびえ
)
する風が出ていた。庭には何の異状もなかった。
水面に浮んだ女
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「やんでるよ、すぐ
御飯
(
ごはん
)
にするから、
瓦斯
(
ガス
)
を
点
(
つ
)
けて、表の戸を開けておくれよ」主翁は寒い風に当りたくなかった。それに家の外には
鬼魅
(
きみ
)
悪い暗い夜があった。
黄灯
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
血で汚れた
鬼魅
(
きみ
)
悪い首を見て女達は逃げ走った。村の騒ぎが大きくなったので、土地の役人が出て来た。
轆轤首
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
老婆はぎろりと眼を光らして、
黄
(
きい
)
ろにしなびている
頤
(
あご
)
を右の方へ一二度突きだした。道夫は
鬼魅
(
きみ
)
がわるいので、もう何も云わないで老婆の頤で指した方へ往った。
馬の顔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
こう云って女はぶ
鬼魅
(
きみ
)
そうにして、そそくさと出て往った。飯田は呆然としてその後を見送っていた。
怪僧
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
蒼白
(
あおじろ
)
い
鬼魅
(
きみ
)
悪い肉体の感じは緑青色の蛇の腹の感じといっしょになった。彼はまた胃のぬくみを感じた。彼は
喫
(
く
)
いさしの二串目の雉子焼を置いて急いでビールを飲んだ。
文妖伝
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
名音は変だから続いて縁側へ駈けあがって、
室々
(
へやへや
)
の障子を開けて見たが怪しい男の姿は見えなかった。名音は
鬼魅
(
きみ
)
が悪いので自分の室へ入るなり寝床の中へもぐりこんだ。
法華僧の怪異
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
エルマは町の人と思ったので
鬼魅
(
きみ
)
悪く思いながらも馬を止めた。馬はおびえたように
嘶
(
いなな
)
いた。
警察署長
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
旧幕の
比
(
ころ
)
であった。江戸の山の手に住んでいる
侍
(
さむらい
)
の一人が、某日の
黄昏
(
ゆうぐれ
)
便所へ往って手を洗っていると
手洗鉢
(
ちょうずばち
)
の下の
葉蘭
(
はらん
)
の間から
鬼魅
(
きみ
)
の悪い紫色をした小さな顔がにゅっと出た。
通魔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
あまり外がはっきり見えるのが
鬼魅
(
きみ
)
がわるいから、見るのをよして、また窓際に
頬杖
(
ほおづえ
)
をしていたのですが、なんだか
己
(
じぶん
)
の顔を見ている者があるような気がするので、ふと見ると
雪の夜の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
そこには鬼火が出るとか狸がいるとかと云うので、少年の橋田君は
鬼魅
(
きみ
)
がわるかった。
朝倉一五〇
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
由平は
鬼魅
(
きみ
)
がわるかったが、強いて気を強くして箸を執った。そして、椀の蓋を取ろうとしたところで、別な
蒼
(
あお
)
い手がすうっと来て由平の手を押えた。由平ははっとして顔をあげた。
阿芳の怨霊
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
朝陽を受けて水に映った
己
(
じぶん
)
の影の上に、その時大きな物の影がふうわりとかかったが、それは人間の手のような、また見ようによっては蟹の鋏のようにも見える
鬼魅
(
きみ
)
の悪いものだった。
蟹の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
この見すぼらしい姿を一眼見た用人は、気の毒と思うよりも寧ろ
鬼魅
(
きみ
)
が悪かった。
貧乏神物語
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「なにが
鬼魅
(
きみ
)
がわるいものか、あんな人は親切だよ、べろべろ
舐
(
な
)
めてくれるよ」
雪の夜の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「それがさ、ほんとに
鬼魅
(
きみ
)
のわるい話だよおまえ。
肝
(
きも
)
をつぶしちゃいかんぞ」
雪女
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
傍へ寄って往ったら
鬼魅
(
きみ
)
を悪がるかも判らないが一つ聞いてやろうと思った。
蟇の血
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
青暗く沈んでいた淵の水が急に動きだしたかと思うと、白い大きな
藍
(
あい
)
色の魚の背が見えて来た。人間の大人ほどある
鬼魅
(
きみ
)
悪い大きな岩魚が白い腹をかえしながら音もなく浮んだのであった。
岩魚の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
また
壮
(
わか
)
い女があまり慣れなれしくするのもうす
鬼魅
(
きみ
)
がわるいので
躊躇
(
ちゅうちょ
)
した。
港の妖婦
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
鶴は依然として
暢気
(
のんき
)
そうに頸を傾げていた。丹治は
鬼魅
(
きみ
)
悪くなって来た。
怪人の眼
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
父親の左の眼が青く
鬼魅
(
きみ
)
悪く見えた。父親はじっと
伜
(
せがれ
)
の顔に眼を移した。
藍瓶
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
夫人の耳には正義の
詞
(
ことば
)
が鋭い力を持って響いた。夫人は
鬼魅
(
きみ
)
が悪かった。
白っぽい洋服
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
茶かすつもりであった
詞
(
ことば
)
の
端
(
はし
)
に何か神秘的なものがつながった。賢次は
洋燈
(
ランプ
)
へ眼をやった。
心
(
しん
)
の切りようでもわるいのか、洋燈は
火屋
(
ほや
)
の一方が黒く
鬼魅
(
きみ
)
わるく
煤
(
すす
)
けていた。広巳はその時
頷
(
うなず
)
いた。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
そのぼうとした光の中には
鬼魅
(
きみ
)
の悪い毒どくしい物の影が
射
(
さ
)
していた。
蟇の血
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「おや、まあ、まるで生きてるようだね、
鬼魅
(
きみ
)
が悪いじゃないの」
偶人物語
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
謙蔵はうす
鬼魅
(
きみ
)
悪く思わないでもないが、生死の判らない病人の
許
(
もと
)
へ帰って往くのに、汽車賃以外に一銭の
小使
(
こづかい
)
のないのを心苦しく思っている処であったから、その心は
黄金
(
きん
)
の
指環
(
ゆびわ
)
に
惹
(
ひ
)
きつけられた。
指環
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
章一は
鬼魅
(
きみ
)
が悪いので
袴
(
はかま
)
と
羽織
(
はおり
)
を
鷲掴
(
わしづか
)
みにしてそこを飛びだした。
一握の髪の毛
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
讓の口元から頬にかけて
鬼魅
(
きみ
)
悪い
暖
(
あたたか
)
な舌がべろべろとやって来た。
蟇の血
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
宅悦はお岩の
鬼魅
(
きみ
)
のわるい顔を避けながらもじもじしていた。
南北の東海道四谷怪談
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
と云って、
魘
(
うな
)
されるので、女房の
留
(
とめ
)
が
鬼魅
(
きみ
)
をわるがって
位牌と鼠
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
菊江は
鬼魅
(
きみ
)
が悪くなったので、急いですたすたと歩いた。
女の怪異
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
“鬼魅”の意味
《名詞》
きみ 【鬼 魅】
幽霊や妖怪、化け物等。
(出典:Wiktionary)
鬼
常用漢字
中学
部首:⿁
10画
魅
常用漢字
中学
部首:⿁
15画
“鬼”で始まる語句
鬼
鬼神
鬼子母神
鬼火
鬼灯
鬼門
鬼瓦
鬼婆
鬼気
鬼界