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飜
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こぼ
ふりがな文庫
“
飜
(
こぼ
)” の例文
新字:
翻
どうかすると女は読み掛けた本の上に
俯伏
(
うつぶ
)
しになって居眠りをしている。額からほつれて
飜
(
こぼ
)
れ掛かった髪が、本の上に渦を巻いている。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
何
(
ど
)
うしたい。源「ハツ/\。金「おゝ/\お湯も
何
(
なに
)
も
飜
(
こぼ
)
れて
大変
(
たいへん
)
だ。源「ド
何卒
(
どうぞ
)
お湯をもう一杯下さい。金「サお
喫
(
あが
)
り。源「へい
有難
(
ありがた
)
う。 ...
黄金餅
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
その細君の笑つて涙を
飜
(
こぼ
)
す様子が如何にも可哀らしかつたので、己は我慢が出来なくなつて、細君の小さい手を握つて、手の甲に接吻した。
鱷
(新字旧仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
車道と人道の
境界
(
さかい
)
に垂れたる幾株の柳は、今や夢より醒めたらんように、吹くともなき風にゆらぎ
初
(
そ
)
めて、凉しき暁の露をほろほろと、
飜
(
こぼ
)
せば
銀座の朝
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
叔父なればとて常不断
能
(
よく
)
も貴様の無理を忍んで居る事ぞと見る人は皆、
歯切
(
はぎしり
)
を貴様に
噛
(
か
)
んで涙をお辰に
飜
(
こぼ
)
すは、
姑
(
しゅうと
)
に
凍飯
(
こおりめし
)
食わするような冷い心の嫁も
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
▼ もっと見る
お別れにお互に涙を
飜
(
こぼ
)
したことは、まだ覚えていらっしゃって。お互に口に出さないつらさを感じましたわね。
田舎
(新字新仮名)
/
マルセル・プレヴォー
(著)
ブランは涙を
飜
(
こぼ
)
してゐる。「さうさな。もう己はおしまひだ。どうせ己は島から外へ出る事は出来ない。己は年が寄つた。もう生きてゐる事は出来ない。」
樺太脱獄記
(新字旧仮名)
/
ウラジミール・ガラクティオノヴィチ・コロレンコ
(著)
どうかするとペエテルの腰を掛けてゐた跡に、娘の手から
飜
(
こぼ
)
れ落ちた草花が二三本落ちてゐることがある。
老人
(新字旧仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
路傍には、萩が咲き、葛の廣葉が風にひるがへる間から、紅紫の花が
飜
(
こぼ
)
れる。落葉松の密林、白樺の疎林、杉が處々に孤立してゐて、下の谿間を見おろしてゐる。
霧の旅
(旧字旧仮名)
/
吉江喬松
(著)
月明りに透かしてその針の止まつてゐる所を見て、わたくしは涙をばら/\と
飜
(
こぼ
)
して、その時計を海に投げ込んでしまひました。時計は七時に止まつてゐました。
うづしほ
(新字旧仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
助
(
たす
)
ける事も
出來
(
でき
)
ぬとは兄と
言
(
いは
)
るゝ甲斐も
無
(
なく
)
悔
(
くや
)
し涙が
飜
(
こぼ
)
るゝと手を
拱
(
こま
)
ぬけば弟の十兵衞は
眞實
(
しんじつ
)
ぞと思へばいとゞ氣の
毒
(
どく
)
さに
兄樣
(
あにさん
)
然
(
さ
)
までに御心配下されますな御心切を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
一輪の深い濃い殷紅色の大きな花は既に半ば崩れて三四片鉢の上に
飜
(
こぼ
)
れ、鉢に餘つたのが二三片更に床の上に飜れてゐる。雄蕋も亦半ば摧けて黄い花粉が散亂してゐる。
俳諧師
(旧字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
着物も羽織もくすんだ色の
銘撰
(
めいせん
)
であるが、長い袖の
八口
(
やつくち
)
から
緋縮緬
(
ひぢりめん
)
の
襦袢
(
じゅばん
)
の袖が
飜
(
こぼ
)
れ出ている。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
足溜りなく
轉
(
こ
)
ける
機會
(
はずみ
)
に手の物を取落して、一枚はづれし溝板のひまよりざら/\と
飜
(
こぼ
)
れ入れば、下は行水きたなき溝泥なり、幾度も覗いては見たれど是れをば何として拾はれませう
にごりえ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
喬木はしんしんと両岸に立ちふさがって、空を狭くしているが、木の幹が
斑
(
まだ
)
らに明るくなるので、晴れてるのだとおもう、どうかすると梢の頭から、水が
飜
(
こぼ
)
れたように、ちらりと光って
谷より峰へ峰より谷へ
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
毎
夜
(
よ
)
珈琲店
(
キヤツフエ
)
に夜
更
(
ぶ
)
かしをして帰つて寝巻に着
替
(
か
)
へようとする度、
襯衣
(
しやつ
)
の下から迄コンフエツチがほろほろと
飜
(
こぼ
)
れて部屋中に五
色
(
しき
)
の花を降らせた。
併
(
しか
)
し
巴里
(
パリイ
)
で第一に
盛
(
さかん
)
な祭は三月のミカレエムだと云ふ。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
卷々
(
まきまき
)
の祕密の文字の
飜
(
こぼ
)
れ散る、——
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
己は
苦
(
にが
)
い涙を
飜
(
こぼ
)
して泣きたくなる。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
さざめき
散
(
ち
)
りし
飜
(
こぼ
)
れ
葉
(
は
)
は
白羊宮
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
、
薄田淳介
(著)
そうして
寝台
(
ねだい
)
の側へ椅子を持って行って病人の手をつかまえて涙を
飜
(
こぼ
)
した。その涙は、もう側にいる男の事を考えなくなっても止まらなかった。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
大路
(
おおじ
)
の砂は見る見る乾きてあさ露を
飜
(
こぼ
)
し尽したる
路傍
(
みちばた
)
の柳は、修羅の巷の戦を見るに堪えざらんように、再び万丈の塵を浴びて枝も葉も力なげに垂れたり。
銀座の朝
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
取落せり其の財布の中には命にも
替難
(
かへがた
)
き金廿兩入置たれば若
何方
(
どなた
)
ぞ
御拾
(
おひろ
)
ひ成れし御方あらば何卒御渡し下されよとほろ/\涙を
飜
(
こぼ
)
しながら申しける故
在合
(
ありあふ
)
人々
興
(
きよう
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
皆
(
みな
)
白錦
(
しろにしき
)
の
御旗
(
みはた
)
でございます。
剣
(
つるぎ
)
の
様
(
やう
)
なものも
幾
(
いく
)
らも
参
(
まゐ
)
りました。
其
(
そ
)
の
中
(
うち
)
に
御車
(
みくるま
)
を
曳出
(
ひきだ
)
して
参
(
まゐ
)
りまするを見ますると、
皆
(
みな
)
京都
(
きやうと
)
の人は
柏手
(
かしはで
)
を打ちながら涙を
飜
(
こぼ
)
して
居
(
を
)
りました。
牛車
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
蘭軒は一々証拠を挙げて論じてゐるが、わたくしは此に蘭軒が鮑本
香薷散
(
かうじゆさん
)
の
条
(
くだり
)
を論ずる一節を抄出する。「香薷散犬が
飜
(
こぼ
)
して雲の峰。」これは世俗の知る所の薬名だからである。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
噫悪かつた、逸り過ぎた間違つた事をした、親方に頭を下げさするやうな事をした歟
噫
(
あゝ
)
済まないと、自分の
身体
(
みうち
)
の痛いのより後悔にぼろ/\涙を
飜
(
こぼ
)
して居る
愍然
(
ふびん
)
さは、何と可愛い奴では無い歟
五重塔
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
巣を喰ってもいるし、運搬は不便だし、一向引き合わぬと愚痴を
飜
(
こぼ
)
しながら、ドシドシ
斧
(
おの
)
を入れさせる、その伐木を何に使用するかと問えば、薪材にして、
潰
(
つぶ
)
すより
外
(
ほか
)
、致し方ないと言っている。
上高地風景保護論
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
兎に角
飜
(
こぼ
)
さないように願います。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
庭にあるほどの草も木も
静
(
しずか
)
に眠って、
葉末
(
はずえ
)
を
飜
(
こぼ
)
るる夜露の音も
聞
(
きこ
)
えるばかり、いかにも
閑静
(
しずか
)
な夜であった。
画工と幽霊
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「あなたの
生
(
いき
)
ていらっしゃる最後の一秒まで、わたくしはお側を離れません。あなたの唇から
洩
(
も
)
れる
溜息
(
ためいき
)
や、あなたの
睫
(
まつげ
)
から
飜
(
こぼ
)
れる涙を、わたくしの唇で受けて上げます。」
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
笛を切つたら、すぐ死ねるだらうと思つたが息がそこから漏れるだけで死ねない。深く/\と思つて、力一ぱい押し込むと、横へすべつてしまつた。
刃
(
は
)
は
飜
(
こぼ
)
れはしなかつたやうだ。
高瀬舟
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
駄目だから止せてえと、御処刑を受けても殺されても、
己
(
おら
)
ア死んだ両親の恨みを晴らさねえば子の道が済まぬと云うのを聞いて、私は隣座敷で胸が一杯になって涙を
飜
(
こぼ
)
しながら聞いて居やした
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
付
(
つけ
)
宜
(
よき
)
樣
(
やう
)
にして
呉
(
くれ
)
られんと
男泣
(
をとこなき
)
に泣ながら氣の
毒
(
どく
)
さうに言けるにぞ
女房
(
にようばう
)
のお
安
(
やす
)
は
恨
(
うら
)
めしげに
夫
(
をつと
)
十兵衞の顏を見つゝ餘りの事に
涙
(
なみだ
)
も
飜
(
こぼ
)
さず
唯
(
たゞ
)
俯向
(
うつむい
)
て居たりける茲に十兵衞夫婦が
間
(
なか
)
に二人の娘あり
姉
(
あね
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
底は髪の毛一筋も見え透く
雪解水
(
ゆきげのみず
)
であるが、
碧
(
へき
)
きわまって何でもこの色で消化してしまう、水底の石は槍ヶ岳の刃の
飜
(
こぼ
)
れた石英斑岩、蝶ヶ岳から押し流された葉片状の雲母片麻岩、石そのものが
梓川の上流
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
池袋も
的
(
あて
)
にはならぬと愚痴を
飜
(
こぼ
)
していると、それから二日経ち、三日経つ中に、石は次第に数が減って、五六日の後には一個も降らぬようになったのも不思議
池袋の怪
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
笛を切つたら、すぐ死ねるだらうと思つたが息がそこから漏れるだけで死ねない。深く/\と思つて、力一ぱい押し込むと、横へすべつてしまつた。刃は
飜
(
こぼ
)
れはしなかつたやうだ。
高瀬舟
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
去年の
飜
(
こぼ
)
れ種が生えたりする度に、それをあちこちに植ゑ替へるに過ぎない。
田楽豆腐
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
金剛石
(
こんごうせき
)
の露
飜
(
こぼ
)
るるあだし貴人の服のおもげなるを
欺
(
あざむ
)
きぬ。
文づかひ
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
飜
漢検1級
部首:⾶
21画
“飜”を含む語句
飜々
飜然
飜弄
飜筋斗
飜案
飜斗
飜斗返
飜訳者
飜訳
翩飜
飜意
飜譯
飜刻
飜牌
飜訳方
飜訳局
飜訳大監
飜魚
飜覆
飜躍
...