)” の例文
木村と往来しているある青年文士は、「どうも先生には現代人の大事な性質がけています、それは nervositéネルウォジテエ です」
あそび (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「侍たる者を裸にして、庭上を引きずり廻ることは、更に行儀にあらず、作法がける。水あびせの事重ねて申し出てはならぬ」
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しまりのない肉づきのいい体、輪廓りんかくの素直さと品位とをいている、どこか崩れたような顔にも、心をきつけられるようなところがあった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
この議論中に天下の正論大いに起るべし。また水戸『日本史』の後もこれ無く、天朝『六国史』の後もく。 天皇の御諡号しごうも光孝天皇までなり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
そこで医者の許しを得て、少しばかりのいちごを食う事を許されて、毎朝こればかりはかした事がなかった。
くだもの (新字新仮名) / 正岡子規(著)
しんは武州南葛飾郡新宿の農家に生れもとより文字を知るものにもあらざりしかど、女の身の守るべき道と為すべき事には一としてくところはあらざりき。
礫川徜徉記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
舞踏を善くするなにがしの如く、わが舞場に出でゝ姿勢の美をくをうらむものあり、文法に精しき某の如く、わが往々とうに代ふるに句を以てするを難ずるものあり。
ここにさぐりここにあがなひ、これを求めて之を得たり、すこしくえらむに稗官小説はいくわんせうせつを以てし、実をひろひ、疑ひき、皇統を正閏せいじゆんし、人臣を是非し、あつめて一家のげんを成せり。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また「いかにかねぎつる」と詔りたまひしかば、答へて白さく、「朝署あさけに厠に入りし時、待ち捕へつかひしぎて、その枝を引ききて、こもにつつみて投げてつ」
正しく認識する道は、「多く聞きて疑わしきをき……多く見てうたがわしきを闕く」ことである。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
「世の中はむなしきものとあらむとぞこの照る月は満ちけしける」(四四二)がある。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
元来尊敬は外にして親愛は内なり。内に親愛の至情なきも外面に尊敬の礼を表することはやすきが故に、舅姑に対して朝夕の見舞をく可らずと教うれば、教の如く見舞うことも易し。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
これは適当な人物がなければ、いたまゝであつた。老中は年寄とも云ひ、譜代の五、六万石から十万石の大名を任じ、一切の政務を執り、大名の取締をつかさどつた。定員は五人である。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
君のけて女君ばかり位にある時を、なかつすめらみことと言ふのではなかつた。
万葉集研究 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
船王は閨房けいぼう修まらず、池田王は孝養にけるところがあり、塩飽王は上皇がその無礼を憎まれており、ただ、大炊王だけは若年じゃくねんながら過失をきいたことがないから、と、押勝の筋書通り
道鏡 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
恐らく深夜の静寂と薄明りのなかでは外界の印象がけていること、また恐らくは眼をさましたばかりの人間の脳髄の働きの鈍さが、そうした瞬間彼に自分の状態をはっきりと認めさせ
かく白して其殿あみおかの内に還り入りますの間、いと久しうして待ちかねたまひつ、故れ左のみゝつらに刺させる湯津々間櫛ゆづつまぐし男柱おばしら一箇ひとつを取りきて一火ひとつひを燭し入りますの時、うじたかれとゝろぎて
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
更にさかのぼった嘉靖十三年(天文三年)即一五三四年の使節(5)陳侃の記には巻末に夷語夷字を附録したとあるからは、琉球語彙が集められたに違いないが徐氏の時代所伝の鈔本にはけてしまい
近ごろその草藁そうこうを持し来つて余に示す。余巻を開き、細玩するに、複する者はこれり、く者はこれを補ひ、なまる者はこれを正し、綜核究窮、直ちに原書の蘊奥うんおうつくす。その紹述の功勤めたりとふ可し。
杉田玄白 (新字新仮名) / 石原純(著)
去年米貴闕軍食 去年米たかくして軍食を
詩人への註文 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
かしはなさいませんね。
放焉はうえんとしてけたり。
予が見神の実験 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
眞志屋文書に文化以後の書留と覺しき一册子があるが、惜むらくはその載する所の沙汰書さたしよ伺書うかがひしよ願書ねがひしよ等には多く年月日がけてゐる。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
少女は又うつむきて坐せり。さきにアヌンチヤタの我に語りし希臘の神女も、石彫の像なれば瞻視せんしをばきたるべし。今我が見るところは殆ど全くこれにへりとやいふべき。
これは碧梧桐の碧梧桐たる所以ゆえんで感心する外はないが、しかしその変化が善い事も悪い事もあるのはいうまでもない。ただその弊はいつも常理にげる事が多い処にあるように見える。
病牀苦語 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
学者にしてくの如き性行を有するものは往々誤って辺幅へんぷくおさむるものと見なされやすい。毅堂はまた甚しく癇癖かんぺきの強い人であったので、ややもすると家人に対しても温辞をくことがあった。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
あまり待ち遠だつたので左の耳のあたりにつかねた髮にしていた清らかな櫛の太い齒を一本いて一ぽんとぼして入つて御覽になるとうじいてごろごろと鳴つており、頭には大きな雷が居
池田王は孝養にけるところがあり、塩飽王は上皇がその無礼を憎まれてをり、たゞ、大炊王だけは若年ながら過失をきいたことがないから、と、押勝の筋書通り、すでに押勝の意志するところが
道鏡 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
西尾は、その首を取ったが、誰とも知らずに居たが、後にその胄が、かつて原隼人に話したところのものであり、口を開いてみると、前歯が二本けていたので、正しく幸村が首級と分ったわけである。
真田幸村 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
それは憎むことの出来ないのは男らしくないのだと解釈せられるからである。それとも博士には矢張男らしい性がけてゐるのかも知れない。
魔睡 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
さかひつはものも汝が翼を遮ることあるまじきぞ。その一裹は尊き神符にて、また打出の小槌なり。おのが寶を掘り出さんまで、事くことはあらじ。黄金も出づべし、白銀しろかねも出づべしといふ。
それを取つてたべている間に逃げておいでになるのをまた追いかけましたから、今度は右の耳の邊につかねた髮に插しておいでになつた清らかな櫛のいてお投げになるとたけのこえました。
ここニオイテカ彼ニナキ所ノモノ往々我ニアリテ我ニキシ所ノモノ彼ことごとクコレヲ補ヘリ。有隣舎ノ沿革ヲ知ラント欲スルモノ拙著トあわセテ石黒氏ノ近業ヲ読ミたまハヾ始メテ遺憾ナキニ庶幾ちかカラン
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そして弘化二年に至るまでは此職にゐた。弘化三年の武鑑がたま/\手元にけてゐるが、四年より嘉永五年に至るまで、政義は寄合の中に入つてゐる。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
かれ左の御髻みみづらに刺させる湯津爪櫛ゆつつまぐし一二の男柱一箇ひとつ取りきて、ひとともして入り見たまふ時に、うじたかれころろぎて一三、頭には大雷おほいかづち居り、胸にはの雷居り、腹には黒雷居り、ほとにはさく雷居り
宜シク賜餼ノ額ヲイテ以テ破程ノ費ヲ補フベシト。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
後年武鑑に用達ようたし商人の名を載せはじめてより以来、山形の徽章の下に大久保主水の名はかつけてゐたことが無い。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
お前さんは下戸げこで、戒行かいぎょうが堅固で、気が強い、それでこれほどの怪我をしたのに、目をまわさずに済んだ。この三つが一つけていたら、目を廻しただろう。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
日本に長くゐて日本を底から知り抜いたと云はれてゐる独逸ドイツ人某は、此要約は今けてゐるばかりでなくて、永遠に東洋の天地には生じて来ないと宜告した。
妄想 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
国の土蔵の一つに、がらくた道具ばかり這入はいっているのがある。何に使ったものか、見慣れない器、け損じて何の片割れとも知れない金屑かなくずや木の切れがある。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
然るに保さんはおさない時からこれをることを喜んで、この年の春場所をも、初日から五日目まで一日もかさずに見舞った。さてその六日目が伊沢の祝宴であった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
朝といえども省かない。さかなには選嫌えりぎらいをしなかったが、のだへい蒲鉾かまぼこたしんで、かさずに出させた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
壽阿彌は刀自のをさなかつた時、伊澤の家へ度々來た。僧侶としては毎月十七日にかさずに來た。これは此手紙の書かれた翌年、文政十二年三月十七日に歿した蘭軒の忌日きにちである。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
中風になつた五郎兵衞が二十歳で歿した清常でないことは疑をれない。むことなくば一説がある。同じ册子の定五郎相續願の直前に、同じく年月日をいた沙汰書が載せてある。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
それには衣食に事をいても書物を買うと云う君の学問好を認めた為めもあるが、決してそればかりではない。ドイツ語に於ける君の造詣ぞうけいの深いことは、初対面の日にもう知れていた。
二人の友 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
この文壇の人々と予とは、あるいは全く接触点をいでいる、あるいはいささかの触接点があるとしても、ただ行路の人が彼往き我来る間に、たちまち相顧みてまた忽ち相忘るるが如きに過ぎない。
鴎外漁史とは誰ぞ (新字新仮名) / 森鴎外(著)
むしって芽の所を出して見て、芽のけた奴は食う方へ入れる。芽の満足でいる奴は植える方へ入れるのだ。己が立って見ていると、江戸の坊様も手伝っておやりなさいと抜かしやぁがる。
里芋の芽と不動の目 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
一体己には espritエスプリイ nonノン préocupéプレオキュペエけている。安という女が瀬戸の frivoleフリヴオル な目で発見せられるまで、己の目には唯家主のよめというものが写っていた。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
はしたのないようにする物、まとめて置く物に事をいて、借金を纏めて置かないでも好さそうなものである。己はそういう経験を繰り返したくなかった。そこで断然初めからことわることにした。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
それが僕にはけているので、好いとは思っても貰いたくならないのではないかと思った。僕が何か案じているのを安中は見て取って、「いずれ改めて伺います」と云って、九段の上で別れた。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)