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赫
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かっ
ふりがな文庫
“
赫
(
かっ
)” の例文
何気なく隣境の空を見上げると高い樹木の
梢
(
こずえ
)
に強烈な陽の光が帯のように
纏
(
まつ
)
わりついていて、そこだけが
赫
(
かっ
)
と燃えているようだった。
苦しく美しき夏
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
ただ
赫
(
かっ
)
として、初手のは分らなかった。瞳を凝らして、そのすっと通った鼻筋と、
睫毛
(
まつげ
)
が黒く下向にそこに
彳
(
たたず
)
んだのを
見出
(
みいだ
)
した時
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
かれは
赫
(
かっ
)
となって思わず杖をとり直したが、清治の怖い眼に睨まれてすくんでしまった。藻は知らぬ顔をして悠々とゆき過ぎた。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
武芸者気質
(
ぶげいしゃかたぎ
)
で、一心斎は竜之助の剛情が
赫
(
かっ
)
と
癪
(
しゃく
)
に触ったものですから、自身立合おうという。飛んだ
物言
(
ものいい
)
になったが、事は面白くなった。
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
わっしも一時は
赫
(
かっ
)
として、見つけ次第にと恨んでいたが、そう
優
(
やさ
)
しくいう者を、なぶり殺しにするようなことはしますめえ。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
私は秀岡の顔を見ると
赫
(
かっ
)
となりました。胸の中が
沸
(
たぎ
)
るような昂奮に襲われて了ったのです。秀岡も
駭
(
おど
)
ろいていたようです。
旅客機事件
(新字新仮名)
/
大庭武年
(著)
何だかもう
赫
(
かっ
)
となって、夢中で、何だか霧にでも包まれたような心持で、是から先は
如何
(
どう
)
なる事やら、方角が分らなくなったから、
彷徨
(
うろうろ
)
していると
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
ロハ台は依然として、どこの
何某
(
なにがし
)
か知らぬ男と知らぬ女で占領されている。秋の日は
赫
(
かっ
)
として夏服の背中を通す。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
光一はお堂の前にでた。そこの
桜
(
さくら
)
の下に千三が立っている。光一は
赫
(
かっ
)
とした。かれは
野猪
(
のじし
)
のごとく突進した。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
あゝ
怪
(
け
)
しからん不孝非道な女と
赫
(
かっ
)
と致して飛込み、殺す気はなかったが、怒りに乗じ思わず殺す気になったのは
私
(
わし
)
が殺したのではなく全く天が
彼
(
か
)
の悪婦の行いを
赦
(
ゆる
)
さず
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
お島は
頭脳
(
あたま
)
が一時に
赫
(
かっ
)
として来た。女達の姿の動いている
明
(
あかる
)
いそこいらに、
旋風
(
つむじ
)
がおこったような気がした。そしてじっと
俛
(
うつむ
)
いていると、体がぞくぞくして来て
為方
(
しかた
)
がなかった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
それは黒い
鱗
(
うろこ
)
のぎらぎらとしている大きな蛇で、頭を切り放したらしいその
端
(
はし
)
の切口から赤い血が
滴
(
したた
)
って、それが流槽の上に置いたコップの中へ
溜
(
たま
)
っていた。登は頭が
赫
(
かっ
)
となった。
雑木林の中
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
この教師は彼の武芸や競技に興味のないことを喜ばなかった。その為に何度も信輔を「お前は女か?」と
嘲笑
(
ちょうしょう
)
した。信輔は或時
赫
(
かっ
)
とした拍子に、「先生は男ですか?」と反問した。
大導寺信輔の半生:――或精神的風景画――
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
彼は
赫
(
かっ
)
となった。が、心の底から別の感情が、彼女の言葉に暗示された忌わしい感情が、熱を持って浮び上ってきた。啜り泣きとも憤りともつかないのが、喉元にこみ上げてきた。
幻の彼方
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
そこで根が律義勇猛のみで、心は狭く分別は足らなかった与一は
赫
(
かっ
)
としたのである。
魔法修行者
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
赫
(
かっ
)
と顔が
熱
(
ほて
)
って、心臓がどきどきした。何となく、女は済まぬような気がした。
僧
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
「なんだ。貴様、すりの癖に、生意気な事を云うなっ」と泰雲が
赫
(
かっ
)
となった。
怪異暗闇祭
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
晃々
(
こうこう
)
としてさし昇る日輪の強い光に、ぼい消されて、空が
赫
(
かっ
)
とする、もう仰いでいると、眼のまわりが、ぼやけてしまって、空だか山だか、白金のように混沌として分らない、霞沢岳や八右衛門岳は
谷より峰へ峰より谷へ
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
政吉 (
赫
(
かっ
)
となり、振り払う)何をするんだ。
中山七里 二幕五場
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
嫉妬で
赫
(
かっ
)
となったお篠は呶鳴った。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
経之は
赫
(
かっ
)
として眉をあげた。
野に臥す者
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
父は
赫
(
かっ
)
と怒った。
恭三の父
(新字新仮名)
/
加能作次郎
(著)
酒を多く飲めば酒乱の
萌
(
きざ
)
しがあり、今も飲んだ酒が醒めたというわけではないのですから、主膳は
赫
(
かっ
)
と怒り、一時に
逆上
(
のぼ
)
せあがりました。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
赫
(
かっ
)
となった赤熊が、
握拳
(
にぎりこぶし
)
を
被
(
かぶ
)
ると
斉
(
ひと
)
しく、かんてらが飛んで、
真暗
(
まっくら
)
に桜草が転げて
覆
(
かえ
)
ると、続いて、両手で頬を抱えて、爺さんは横倒れ。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
さなきだに可愛い子の命を不意に奪われて、これも半狂乱のようになっている女房は、亭主に激しく責められて、いよいよ
赫
(
かっ
)
と逆上したらしい。
半七捕物帳:39 少年少女の死
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
と賢ちゃんが言掛けると、
仲善
(
なかよし
)
の友の言う事だが、私は何だか急に
口惜
(
くや
)
しくなって、
赫
(
かっ
)
と
急込
(
せきこ
)
んで
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
古き五年は夢である。ただ
滴
(
した
)
たる絵筆の勢に、うやむやを貫いて
赫
(
かっ
)
と染めつけられた昔の夢は、深く記憶の底に
透
(
とお
)
って、
当時
(
そのかみ
)
を裏返す折々にさえ
鮮
(
あざや
)
かに
煮染
(
にじ
)
んで見える。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「火のようなご性格だ。ふだんはあたたかでいらっしゃるが
赫
(
かっ
)
と
焔
(
ほのお
)
をおたてになると人をも我をもお焼きになる。……燃えさかっているときには何事もお耳に入るまい」
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と云いさま拳固で長二の
横面
(
よこつら
)
を殴りつけました。そうでなくッても憎い奴だと思ってる所でございますから、長二は
赫
(
かっ
)
と
怒
(
いか
)
りまして、打った幸兵衛の手を
引
(
ひ
)
とらえまして
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
老人は、
頭脳
(
あたま
)
が
赫
(
かっ
)
となって来ると、この内儀さんの顔へ、物を取って投げ着けなどした。得がたい瀬戸物が、柱に当って砕けたり、大事な持物が、庭の隅へ
投
(
ほう
)
り出されたりした。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
寒い冷たい風が酒に火照った頬に当った。門の建物に近づいたところで、怖ろしい物の気配がして一抱位ある火の光が
赫
(
かっ
)
と光った。かと思うとそれが末拡がりに監物の顔にかかった。
不動像の行方
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
と言って土間へ出たが、振返ると、若い
女
(
ひと
)
は泣いていました。露が
閃
(
きら
)
めく葉を分けて、明石に透いた
素膚
(
すはだ
)
を焼くか、と鬼百合が
赫
(
かっ
)
と
紅
(
あか
)
い。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
迷惑がった連中も、実はそれが面白いので、大いにおだてて踊らせたいくらいであるが、神尾主膳はその物騒がしさを聞くと
赫
(
かっ
)
と逆上しました。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
すると、お常は
赫
(
かっ
)
となって、そんなら私の
面晴
(
めんばれ
)
に、これから由兵衛の家へ行って、十両の金を取戻して来ると、時雨の降るなかを表へかけ出した。
虎
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
中にも恒太郎は長二が余りの無作法に
赫
(
かっ
)
と
怒
(
いか
)
って、
突然
(
いきなり
)
長二の
髻
(
たぶさ
)
を掴んで仰向に引倒し、拳骨で長二の頭を五つ
六
(
む
)
つ続けさまに
打擲
(
ぶんなぐ
)
りましたが、少しもこたえない様子で
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
年長の友人が誘っても私が応ぜぬので、
調戯
(
からかい
)
に、私は一人で堕落して居るのだろうというような事を言った。恥かしい次第だが、推測通りであったので、私は
赫
(
かっ
)
となった。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
拍子
(
ひょうし
)
に胸の血はことごとく頬に
潮
(
さ
)
す。
紅
(
くれない
)
は云う、
赫
(
かっ
)
としてここに
躍
(
おど
)
り上がると。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
牛の
草鞋
(
わらじ
)
が飛んで来て、三平の胸に
穢
(
きたな
)
いものをつけた。
赫
(
かっ
)
として
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
山家
(
やまが
)
の茶屋の店さきへ倒れたが、火の
赫
(
かっ
)
と起つた、
囲炉裡
(
いろり
)
に
鉄網
(
てつあみ
)
をかけて、亭主、女房、
小児
(
こども
)
まじりに、
餅
(
もち
)
を焼いて居る、此の
匂
(
におい
)
をかぐと
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
栄之丞も
赫
(
かっ
)
となった。妹に暇をくれるという以上は、やはり我々を疑っていると見える。奇怪至極のことである。いよいよ打っちゃっては置かれないと思った。
籠釣瓶
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
林の茂みに
覘
(
ねら
)
いをつけていた金蔵は、このとき
赫
(
かっ
)
としてあわや
火蓋
(
ひぶた
)
を切ろうとしたのを、あわてて、傍に見ていた
鍛冶倉
(
かじくら
)
が押えたのは、時機まだ早しと見たのであろう。
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
昔のように
赫
(
かっ
)
と激して、すぐ叔母の所へ談判に押し掛ける
気色
(
けしき
)
もなければ、今まで自分に対して、世話にならないでも済む人のように、よそよそしく仕向けて来た弟の態度が、急に方向を転じたのを
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
相手が、冷ややかになると、彼女はむしろ
赫
(
かっ
)
として
夏虫行燈
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
来客
(
らいかく
)
の目覚しさ、それにもこれにも、
気臆
(
きおく
)
れがして、思わず花壇の前に立留まると、
頸
(
うなじ
)
から
爪
(
つま
)
さきまで、
木
(
こ
)
の葉も遮らず
赫
(
かっ
)
として
日光
(
ひ
)
が
射
(
さ
)
した。
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
わたくしは
赫
(
かっ
)
となってすぐに飛び込もうかと存じましたが、なにぶんにも相手は二人でございますから、何だか
気怯
(
きおく
)
れがして、しばらく様子を窺って居りますと
半七捕物帳:17 三河万歳
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
これを一読したその時の先生は、よほど短気の先生であって、これを見ると
赫
(
かっ
)
とばかりに怒り
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
お秀は
赫
(
かっ
)
とした。同時に一筋の
稲妻
(
いなずま
)
が彼女の頭の中を走った。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と
赫
(
かっ
)
となった。
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と二人で見ているうち、夕日のなごりが、出崎の
端
(
はな
)
から
𤏋
(
ぱっ
)
と雲を射たが、親仁の額も
赫
(
かっ
)
となれば、線路も
颯
(
さっ
)
と赤く染まる。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
おかんは
赫
(
かっ
)
となって男の喉をしめた。
在所
(
ざいしょ
)
生まれで、ふだんから
小力
(
こぢから
)
のある彼女が、半狂乱の力任せに絞めつけたので、
孱弱
(
かよわ
)
い男はそのままに息がとまってしまった。
半七捕物帳:34 雷獣と蛇
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
赫
漢検準1級
部首:⾚
14画
“赫”を含む語句
赫々
赫耀
目赫
赫灼
赫奕
赫燿
威赫
赫夜姫
赫耶
赫怒
真赫
赫奕姫
赫土
赫光
赫然
赫映姫
赫耶姫
恐赫
赫爾洪得
赫熱
...