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賤
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しず
ふりがな文庫
“
賤
(
しず
)” の例文
この
婦
(
おんな
)
の日頃ねんじ
奉
(
たてま
)
つる観音出でて僧と
現
(
げん
)
じ、
亡婦
(
ぼうふ
)
の腹より赤子を
出
(
いだ
)
し、あたりの
賤
(
しず
)
の
女
(
め
)
にあづけ、飴をもつて養育させたまひけり。
小夜の中山夜啼石
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
争う二人、——大名の若君と、町の
賤
(
しず
)
か
女
(
の
)
と、その不思議な図は、丁度通りかかった高力家の家来達によって掻き乱されてしまいました。
奇談クラブ〔戦後版〕:12 乞食志願
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
亡き勝家の
怨念
(
おんねん
)
をなぐさめ、
賤
(
しず
)
ヶ
嶽
(
たけ
)
中入
(
なかい
)
りの不覚の罪を、ひたすら詫びせん心底なり——と、平然として云い払うのでありました
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
此時からもう二人の間は、お互に警戒し合っている。こんな状態で済む筈はなく、ついに
賤
(
しず
)
ヶ
岳
(
だけ
)
の実力的正面衝突となった。
賤ヶ岳合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
さりながら、かの
端唄
(
はうた
)
の文句にも、色気ないとて苦にせまい
賤
(
しず
)
が
伏家
(
ふせや
)
に月もさす。
徒
(
いたずら
)
に悲み
憤
(
いきどお
)
って身を破るが如きはけだし賢人のなさざる処。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
「じゃ、お内のお嬢さんは柳屋さんというんですね、屋号ですね、お
門札
(
かどふだ
)
の山下お
賤
(
しず
)
さんというのが、では御本名で。」
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
おのれきものぬぎかへて
賤
(
しず
)
が
著
(
き
)
るつづりおりに似たる衣をきかへたり、
此
(
この
)
時扇
一握
(
いちあく
)
を
半井保
(
なからいたもつ
)
にたまひて曙覧にたびてよと仰せたり、おのれいへらく
曙覧の歌
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
と
古
(
いにし
)
えの
賤
(
しず
)
の
苧環
(
おだまき
)
繰
(
く
)
り返して、さすがに今更
今昔
(
こんじゃく
)
の感に
堪
(
た
)
えざるもののごとく
我
(
わ
)
れと我が額に手を加えたが、すぐにその手を伸して更に一盃を傾けた。
太郎坊
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
演ずるに当って、演者は、たとえ
賤
(
しず
)
が
女
(
め
)
を演ずる場合にも、先ず『花』(美しいという観念)を観客に与えることを第一としなければならぬ。先ず『花』を
FARCE に就て
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
その愉快なる声に和して
賤
(
しず
)
の女らが美しき声で謡う歌は楽器か、雲雀の声は歌か、いずれがいずれとも分ち難きに、なお天然の真妙を現実に顕わしたるカックー
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
賤
(
しず
)
の
手業
(
てわざ
)
に暇のない、画にあるような山家の娘に見え出した、いや何となくそのように思われたので。
初恋
(新字新仮名)
/
矢崎嵯峨の舎
(著)
世が世ならば猿面かんじゃめをあべこべに追いつめて腹をきらせてくれようものを、さくまげんばがおれの云いつけを守らなんだために
賤
(
しず
)
ヶ岳においておくれをとり
盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
これなどは明らかに
賤
(
しず
)
が
伏屋
(
ふせや
)
の最も凡庸なる者の生活であって、和歌にはすでに見離され、俳諧はなおその客観の情趣を、取り上げてあわれと
詠
(
なが
)
めているのであった。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
世に貴族と生れしものは、
賤
(
しず
)
やまがつなどの如くわがままなる振舞、おもひもよらぬことなり。
文づかひ
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
いやしき
賤
(
しず
)
が小歌も心をとめて聞く時は。おしえにならざるはなし。げにその地にあらざれば。これをううれども生ぜず。その人にあらざれば。これを語れども聞えず……。
藪の鶯
(新字新仮名)
/
三宅花圃
(著)
月は
台
(
うてな
)
に輝くであろうが、
賤
(
しず
)
が
家
(
や
)
をも照らすであろう。貧しき者も無学な者も、共に神の光を浴びる。イエスは学者を友とするより、好んで漁夫たちに交わったではないか。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
身をやつす、
賤
(
しず
)
が思いを、夢ほど
様
(
さま
)
に知らせたや、えい、そりゃ、夢ほど様に知らせたや……
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
賤
(
しず
)
が伏せ屋の見すぼらしい
母子
(
おやこ
)
が只の人でないと眼をつけられ、
綾羅錦繍
(
りょうらきんしゅう
)
の
裡
(
うち
)
に
侍
(
かし
)
ずかるる貴婦人がお里を怪しまるるそもそもの理由も、
亦
(
また
)
ここにあるのではありますまいか。
鼻の表現
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
炭焼は
賤
(
しず
)
の中にも
賤
(
しず
)
の業とは云いながら、都の華奢な浮世の手ぶりに慣れ慣れて、栄耀栄華に飽きの来た人々には、そこにまた一種のなつかしみを感ぜしむるものがあったのである。
炭焼長者譚:系図の仮托と民族の改良
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
殺風景だと思っていたコンクリートの倉庫も見慣れると
賤
(
しず
)
が
伏屋
(
ふせや
)
とはまたちがった詩趣や俳味も見いだされる。昭和模様のコーヒー茶わんでも慣れればおもしろくなるかもしれない。
銀座アルプス
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
「はるの野をふご手にうけて行
賤
(
しず
)
のたゞなとやらんものあはれ也とは慈鎮の言なり」
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
この時二の手で目付役の軍監を兼ねていた佐久間大学(
賤
(
しず
)
ヶ
嶽
(
たけ
)
の佐久間
玄蕃
(
げんば
)
の後裔)
鳴雪自叙伝
(新字新仮名)
/
内藤鳴雪
(著)
口の減らない
爺
(
じじい
)
めが、何を
痴事
(
たわごと
)
吐
(
ぬ
)
かしおる! 我が
日本
(
ひのもと
)
は神国じゃ。神の
御末
(
みすえ
)
は連綿と竹の
園生
(
そのう
)
に生い立ち
在
(
おわ
)
す。
海人
(
あま
)
が潮汲む浦の
苫屋
(
とまや
)
、
賤
(
しず
)
が
薪
(
まき
)
切る山の
伏屋
(
ふせや
)
、みなこれ
大君
(
おおぎみ
)
の物ならぬはない。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
夕貌
(
ゆうがお
)
の宿の仮寝の夜の、あの、源氏の君の頭もとに来て鳴いている
蟋蟀
(
こおろぎ
)
のことから、源氏ほどの人を、あの市井の中に連れて来て、
賤
(
しず
)
の生活の物音を
近間
(
ちかま
)
にきかせた手腕に驚いて、そういう意味で
紫式部:――忙しき目覚めに
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
大納言様でいらっしゃいましたか?………このような人里離れた
下人
(
しもびと
)
の
賤
(
しず
)
が
家
(
や
)
にしげしげとお通いなさる御方が、よもや大納言様でいらっしゃろうとは、この
爺
(
じい
)
め、夢にも考えてはおりませなんだ。
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
作「お
賤
(
しず
)
さん是が
累
(
かさね
)
の墓だ」
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
神前の落葉掃く
賤
(
しず
)
相ついで
五百五十句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
まだ十七歳というこの姉の子に、秀吉は、
河内
(
かわち
)
北山で、二万石を与えていた。そして、
賤
(
しず
)
ヶ
嶽
(
たけ
)
、その他に、転戦させ、すこし功があると
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
柔道が始ってから生徒の間にそれまで曽て聞かれた事のない男色の噂が言伝えられ、「
賤
(
しず
)
の
小田巻
(
おだまき
)
」と云う男色の伝奇などが読まれるようになった。
木犀の花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
仰
(
あお
)
いで空を見ようともしない、この時に限らず、
賤
(
しず
)
ヶ
岳
(
たけ
)
が、といって、古戦場を指した時も、
琵琶湖
(
びわこ
)
の風景を語った時も、旅僧はただ頷いたばかりである。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
演ずるに当つて、演者は、たとへ
賤
(
しず
)
が
女
(
め
)
を演ずる場合にも、先づ「花」(美くしいといふ観念)を観客に与へることを第一としなければならぬ。先づ「花」を
FARCE に就て
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
「山科郷にわびしゅう暮らす
藻
(
みくず
)
という
賤
(
しず
)
の
女
(
め
)
でござります。殿にお
目見得
(
めみえ
)
を願いとうて参じました」
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
月は
台
(
うてな
)
に輝くであろうが、
賤
(
しず
)
が
家
(
や
)
をも照らすであろう。貧しき者も無学な者も、共に神の光を浴びる。イエスは学者を友とするより、好んで漁夫たちに交わったではないか。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
国語に「あやし」といふ語幾様の意味に用うるや能く
究
(
きわ
)
めずといへども、昔は見苦しき
賤
(
しず
)
が
家
(
や
)
をあやしげなる家など言ひたるは少からず。されどそは
此処
(
ここ
)
に用うべきにあらず。
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
賤
(
しず
)
ヶ
岳
(
たけ
)
七本槍の時、あの連中が使った槍に竹の柄があった、竹を削って菊の花形に組合せて
漆
(
うるし
)
を塗る、見たところでは
樫
(
かし
)
の柄と少しも変らぬのだが、間違っても折れることはない
大菩薩峠:08 白根山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
世に貴族と生れしものは、
賤
(
しず
)
やまがつなどのごとくわがままなる振舞い、おもいもよらぬことなり。血の権の
贄
(
にえ
)
は人の権なり。われ老いたれど、人の情け忘れたりなど、ゆめな思いそ。
文づかい
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
賤
(
しず
)
の
女
(
め
)
が
上総念仏
(
かずさねぶつ
)
に茶を
汲
(
く
)
みて 芭蕉
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
賤
(
しず
)
は
猶
(
なお
)
祭めかしや髪かしら 盛弘
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
「聞えたって、なあに、かまうもんか。なにかいったら
賤
(
しず
)
ヶ
岳
(
たけ
)
で、すこし
食
(
く
)
い
足
(
た
)
らなかった
腰
(
こし
)
の
刀
(
もの
)
に、
生血
(
いきち
)
を
馳走
(
ちそう
)
させてやるさ」
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「越後長岡出身の
賤
(
しず
)
の
女
(
め
)
が、旧藩主の御同族なる旧田辺藩主より私と同行する様に求められるに至っては、晩香の名誉この上もなく、死して瞑すべきである」
安吾人生案内:06 その六 暗い哉 東洋よ
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
こりゃ何んです、小石川青柳町、お夏さんで名がついた、式部小路の内に居る、お
賤
(
しず
)
ッて
女房
(
かみさん
)
がちょうどその時、
行燈
(
あんどう
)
を持って二階へ上って、見たんでがすと。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
呉羽 今更いうも愚痴なれど、ありし雲井のむかしには、夢にも知らなんだ
賤
(
しず
)
の
手業
(
てわざ
)
に、命をつなぐ今の身の上。浅ましいとも悲しいとも、云おうようはござらぬのう。
平家蟹
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
かつてあの「
大名物
(
おおめいぶつ
)
」は貧しい日常の用器に過ぎなかったではないか。あの茶人たちが
賤
(
しず
)
が
家
(
や
)
に
炉
(
ろ
)
を切って、簡素な器で茶を
点
(
た
)
てた時、聖貧の徳に宇宙の美を味わっていたのである。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
いかなる
賤
(
しず
)
の
女
(
め
)
も、養蚕の方法と、製糸の一通りを心得ていないものはない。
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
九重
(
ここのえ
)
の
大宮人
(
おおみやびと
)
もかしはもち今日はをすかも
賤
(
しず
)
の
男
(
お
)
さびて
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
本能寺変から
賤
(
しず
)
ヶ
嶽
(
たけ
)
、北ノ庄の陥落と、かれには、あり得ない世の中の急変も、次から次へ、事実となって、身に迫って来た。
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
たとい賤しゅう育っても、色好紙の色よくば、関白大臣将軍家のおそばへも、召し
出
(
いだ
)
されぬとは限るまいに、
賤
(
しず
)
の
女
(
め
)
がなりわいの紙砧、いつまで擣ちおぼえたとて何となろうぞ。
修禅寺物語
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「はあ、お次に控えておりました、
賤
(
しず
)
の
女
(
め
)
でござんすわいな。」とふらふらする。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
あの茶人たちが
賤
(
しず
)
が
家
(
や
)
に
炉
(
ろ
)
を切って、簡素な器で茶を立てた時、
聖貧
(
せいひん
)
の徳に宇宙の美を味わっていたのである。茶器への
讃美
(
さんび
)
は、働く器への讃美である。それはもともと雑器であったではないか。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
それから
三上山
(
みかみやま
)
、近江富士ともいう、田原藤太が
百足
(
むかで
)
を退治したところ——浅井長政の
小谷
(
おだに
)
の城、七本槍で有名な
賤
(
しず
)
ヶ
岳
(
たけ
)
。うしろへ廻って見給え、これが胆吹の大岳であることは申すまでもあるまい。
大菩薩峠:35 胆吹の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
“賤”の意味
《名詞》
(しず) 身分や地位が低いこと。又、身分や地位が低い者。
(出典:Wiktionary)
“賤(五色の賤)”の解説
五色の賤(ごしきのせん)とは、律令制の元で設置された古代日本の5種の賤民である。
近世の被差別民や近現代日本の被差別部落の直接的な起源であるとする説が存在するが、議論がある。
(出典:Wikipedia)
賤
漢検準1級
部首:⾙
15画
“賤”を含む語句
卑賤
下賤
賤民
賤女
山賤
賤夫
賤機山
賤業
賤婦
賤奴
賤家
賤人
老若貴賤
貴賤
微賤
貧賤
賤劣
賤陋
賤機
賤業婦
...