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蔓延
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まんえん
ふりがな文庫
“
蔓延
(
まんえん
)” の例文
野にも、畠にも、今ではあの猛烈な雑草の
蔓延
(
まんえん
)
しないところは無い。そして土質を荒したり、固有の草地を制服したりしつつある。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
火災が起こり
飢饉
(
ききん
)
が始まった。何もかも、ありとあらゆるものが滅びていった。疫病はしだいに
猖獗
(
しょうけつ
)
を加え、ますます
蔓延
(
まんえん
)
していった。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
この棋というものが社交的遊戯になっている間は、危険なる思想が
蔓延
(
まんえん
)
するなどという
虞
(
おそれ
)
はあるまいと、若い癖に
生利
(
なまぎき
)
な皮肉を考えている。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
と、朝廷もようやくその
蔓延
(
まんえん
)
の状に憂色を濃くしだしていた。天皇がたのむところは尊氏でしかない。尊氏はひんぱんに天皇のお召をうけた。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
北は東京近郊の板橋かけて、南は相模厚木辺まで
蔓延
(
まんえん
)
していて、その土地土地では旧家であり豪家である実家の親族の代表者は
悉
(
ことごと
)
く集っている。
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
▼ もっと見る
幸ひに風が無いので、火勢は
左程
(
さほど
)
四方には
蔓延
(
まんえん
)
せぬけれど、下の家の危さは、見て居ても、殆ど冷汗が出るばかりである。
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
君江は同じ売笑婦でも従来の
芸娼妓
(
げいしょうぎ
)
とは全く性質を異にしたもので、西洋の都会に
蔓延
(
まんえん
)
している
私娼
(
ししょう
)
と同型のものである。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
退化もまたすでにもともとその性質において堕落すべき
種子
(
たね
)
が含まれているある一種の病原が存し、この
種子
(
たね
)
が年とともに
蔓延
(
まんえん
)
するものである。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
しかしその帽子を除いたにしても、何の某の服装なるものは、
寸分
(
すんぶん
)
も
立派
(
りつぱ
)
になる次第ではない。唯貧しげな外観が、全体に
蔓延
(
まんえん
)
するばかりである。
澄江堂雑記
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
よつて意へらく、幕にて知らぬところを強ひて申し立て、多人数に
株蓮
(
しゆれん
)
蔓延
(
まんえん
)
せば、善類を
傷
(
そこな
)
ふこと、すくなからず、毛を吹いて瘡を求むるにひとしと。
留魂録
(新字旧仮名)
/
吉田松陰
(著)
技術者たちが
卑怯
(
ひきょう
)
と言えば、確かにその通りであるが、実際にはこの種の熱病の
蔓延
(
まんえん
)
は、二人や三人の人間の力で喰い止め得るものではないのである。
千里眼その他
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
現在の系図が真実なりとするならば、佐藤家は
下野
(
しもつけ
)
より北部に向って非常な勢いをもって
蔓延
(
まんえん
)
して行ったのである。
名字の話
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
不思議な熱病の
蔓延
(
まんえん
)
は恐ろしいほどに速かった。中津川の町の町人のほとんど全部がこれにかかり泣き声喚き声
呪咀
(
のろい
)
の声が城中へまでも聞こえて来た。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
二年ぐらいの周期で
蔓延
(
まんえん
)
するっていうが、今年に特に物凄いからね、
凉風
(
すずかぜ
)
が吹いて下火になるどころか、こんな真冬になっても物凄い発病者があるんだからな
睡魔
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
一九二九年はこのレコード熱がもっとも
猖獗
(
しょうけつ
)
をきわめた年であって、その熱病が欧州にまでも
蔓延
(
まんえん
)
した。
記録狂時代
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
しかのみならず五本の毛へこびりつくが早いか、十本に
蔓延
(
まんえん
)
する。十本やられたなと気が付くと、もう三十本引っ懸っている。吾輩は
淡泊
(
たんぱく
)
を愛する
茶人的猫
(
ちゃじんてきねこ
)
である。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
凄まじい勢いを以って
蔓延
(
まんえん
)
する伝染病に対して、防疫の
術
(
すべ
)
を知らない其の時代の人々は、ひたすら神仏の救いを祈るのほかは無いので、いずこの神社も仏寺も参詣人が群集して
半七捕物帳:55 かむろ蛇
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
その旧道には
樅
(
もみ
)
や
山毛欅
(
ぶな
)
などが暗いほど
鬱蒼
(
うっそう
)
と茂っていた。そうしてそれらの古い幹には
藤
(
ふじ
)
だの、
山葡萄
(
やまぶどう
)
だの、
通草
(
あけび
)
だのの
蔓草
(
つるくさ
)
が実にややこしい方法で
絡
(
から
)
まりながら
蔓延
(
まんえん
)
していた。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
相
(
そう
)
、
豆
(
ず
)
、
駿
(
すん
)
、
遠
(
えん
)
、
尾
(
び
)
、
濃
(
のう
)
の間に流行し、昨年中は西は京阪より山陽、南海、西国まで
蔓延
(
まんえん
)
し、東は
房
(
ぼう
)
、
総
(
そう
)
、
常
(
じょう
)
、
野
(
や
)
、
武
(
ぶ
)
、
信
(
しん
)
の諸州にも
伝播
(
でんぱ
)
し、当年に至りては
奥
(
おう
)
州に漸入するを見る。
妖怪玄談
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
この勢いで貧窮組は江戸の市中へ
蔓延
(
まんえん
)
して、ついには貧窮組へ入らなければ人間でないようになってしまいました。男ばかりではない、女も入らなければならないようになりました。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
瀬戸内の波いと穏やかに
馬関
(
ばかん
)
に着きしに、当時大阪に流行病あり、
漸
(
ようや
)
く
蔓延
(
まんえん
)
の
兆
(
ちょう
)
ありしかば、ここにも
検疫
(
けんえき
)
の事行われ、一行の着物は
愚
(
おろ
)
か荷物も所持の品々も
悉
(
ことごと
)
く消毒所に送られぬ。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
あなたを中心として周囲に漂う気分が、校内に
蔓延
(
まんえん
)
することを、「真新なる生活」のために憂えたからである。私はいま少し生活に対する批評的精神が校内に起こらねばならぬと思う。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
殴
(
なぐ
)
ろうがどうしようが起きられない病人である。彼等の二割は
何時
(
いつ
)
でも病気だ。しかも坑内でも小屋でも密集しているので伝染病の
蔓延
(
まんえん
)
は早く、鉱山の一般死亡率は三割と云われていた。
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
この草は春に
苗
(
なえ
)
を生ずるが、それは地中に
蔓延
(
まんえん
)
せる細長い
地下茎
(
ちかけい
)
から出て来る。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
清国政府自体がいま、ぐらつきはじめているのだからね。君たちには、わかるまいが、革命思想がいま支那の国内に非常な勢いで
蔓延
(
まんえん
)
しているらしいからね。たたきが煮えたよ、たべないか。
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
已
(
すで
)
にして逐一口を開きしに、幕にて一円知らざるに似たり。
因
(
よ
)
って
意
(
おもえ
)
らく、幕にて知らぬ所を
強
(
し
)
いて申立て、多人数に株連
蔓延
(
まんえん
)
せば善類を
傷
(
そこな
)
う事少なからず、毛を吹いて
創
(
きず
)
を求むるに
斉
(
ひと
)
しと。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
実際、科学は発達したけれども科学で説明のつかぬような事実は人生に多くあり、いわば科学万能思想の盲点を突いて、非合理的・神秘的な宗教もしくは擬似宗教はいまなお世に
蔓延
(
まんえん
)
している。
キリスト教入門
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
その秋地方に流行性感冒の
蔓延
(
まんえん
)
しました時、はつは年は取っても元気を出して、あちこちの看病に雇れていたのですが、とうとう自分も感染して、年寄の流感で、それなり
逝
(
い
)
ってしまいました。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
性病の
蔓延
(
まんえん
)
や避妊の事実は無いか、と誰もが訊ねる。なるほど、性病も肺病も無いことはないが、それは何も、この島に限ったことではない。というよりむしろ、他の島々に比べて少い位なのだ。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
日本中に、東京中に、工場ができた。四の橋のあたりにも、芝浦辺の大工場の下請け工場がいっぱいできた。川沿いに、きたない小工場が
疥癬
(
かいせん
)
みたいに
蔓延
(
まんえん
)
した。これが俺の眼に映じた現実である。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
女房
(
にようばう
)
が
死
(
し
)
んだ
時
(
とき
)
は
卯平
(
うへい
)
は
枕元
(
まくらもと
)
に
居
(
ゐ
)
なかつた。
村落
(
むら
)
には
赤痢
(
せきり
)
が
發生
(
はつせい
)
した。
豫防
(
よばう
)
の
注意
(
ちうい
)
も
何
(
なに
)
もない
彼等
(
かれら
)
は
互
(
たがひ
)
に
葬儀
(
さうぎ
)
に
喚
(
よ
)
び
合
(
あ
)
うて
少
(
すこ
)
しの
懸念
(
けねん
)
もなしに
飮食
(
いんしよく
)
をしたので
病氣
(
びやうき
)
は
非常
(
ひじやう
)
な
勢
(
いきほ
)
ひで
蔓延
(
まんえん
)
したのであつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
ひじょうにひろく
蔓延
(
まんえん
)
するし、同じちからで人を毒する
山彦乙女
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
皆、天然自然のしからしめるところであって、その根本たりとも衰えることはないと言えない。
大根
(
おおね
)
の枯れさえなければ、また
蔓延
(
まんえん
)
の時もあろう。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
決而可伺儀
(
けつしてうかゞふべきぎ
)
に
而者無之候
(
てはこれなくさふら
)
へ共、右殺害に及候者より差出し候書附にも、天主教を天下に
蔓延
(
まんえん
)
せしめんとする
奸謀之由申立
(
かんぼうのよしまうしたて
)
有之、
尤
(
もつとも
)
、此書附
而已
(
のみ
)
に候へば
津下四郎左衛門
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
それは砂町一丁目と上大島町の
瓦斯
(
ガス
)
タンクを
堡塁
(
ほるい
)
のように清砂通りに沿う一線と
八幡
(
やわた
)
通りに沿う一線に主力を集め、おのおの三方へ不規則に
蔓延
(
まんえん
)
している。
渾沌未分
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
しかし一地方に植民をして来るものは多く同一家であって、その姓を同じくしているのが普通であるから、一族
蔓延
(
まんえん
)
の場合にはこれもまた区別になりにくい。
名字の話
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
それが俗にいわゆる知識階級のある一部まで
蔓延
(
まんえん
)
している事は事実であるが、それとは少し趣を異にした事柄で、科学的に験証され得る可能性を具えた命題までが
厄年と etc.
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
奇麗な顔をして、
下卑
(
げび
)
た事ばかりやってる。それも金がない奴だと、自分だけで済むのだが、身分がいいと困る。下卑た
根性
(
こんじょう
)
を社会全体に
蔓延
(
まんえん
)
させるからね。大変な害毒だ。
二百十日
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それに反して城下は、いや伊勢、伊賀一円は、みだれ飛ぶ浮説が、日と共に
蔓延
(
まんえん
)
していた。
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「そんなことがあるはずがない」と言い切る人があれば、流言蜚語は決して
蔓延
(
まんえん
)
しない。しかしこの「はずがない」と立派に言い切るには、自分の考えというものを持つ必要がある。
流言蜚語
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
三奉行大憤激して吟味することにも相成り候わば、小子深望の事に候えば、その節
株連
(
しゅれん
)
も
蔓延
(
まんえん
)
も構わず、腹一杯天下の正気を振うべし。事
未
(
いま
)
だここに至らざれば、安然として獄に坐し
夫
(
か
)
の天命を
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
けだし、そのはじめて起こりし地は
豆
(
ず
)
州にして、その地よりコックリの報道を得たるは一昨年にあり。その後数カ月を経て、尾濃、京阪の間に行わるるを聞き、同時に房総諸州に
蔓延
(
まんえん
)
せるを見る。
妖怪玄談
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
そのことがすでに彼には耐えられなかった。そういう彼とても、ただ漫然と異宗教の
蔓延
(
まんえん
)
を憂いているというではない。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
火事を起こし
蔓延
(
まんえん
)
させるに最適当な燃料でできていて、その中に火種を用意してあるのだから、これは初めから地震に因る火災の製造器械をすえ付けて待っているようなものである。
からすうりの花と蛾
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
ここだけでなく、時宗の仲間は諸所にみられ出し、だんだん
蔓延
(
まんえん
)
の
兆
(
きざ
)
しがある。
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
こういう話は景気をつけるだけならよいが、必ず悪い影響があるものである。その発明家が
儲
(
もう
)
ける金や、その実験に使う資材くらいは
多寡
(
たか
)
が知れているが、一番困るのはこの種の病気の
蔓延
(
まんえん
)
である。
千里眼その他
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
かねて
耶蘇教
(
ヤソきょう
)
の
蔓延
(
まんえん
)
を憂い、そのための献言も
仕
(
つかまつ
)
りたい所存であったところ、たまたま御通輦を拝して憂国の情が一時に胸に差し迫ったということであった。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
それから、もし、睡蓮が他の水草を次第に圧迫して
蔓延
(
まんえん
)
するか、しないか、これも問題である。物好きな人があったら、年々写真でもとっておいて、あとで研究したらおもしろそうである。
池
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
「異教の
蔓延
(
まんえん
)
です」
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“蔓延”の意味
《名詞》
蔓 延(まんえん)
植物の蔓が伸び広がること。
病気や悪習が広まること。
(出典:Wiktionary)
蔓
漢検準1級
部首:⾋
14画
延
常用漢字
小6
部首:⼵
8画
“蔓延”で始まる語句
蔓延中
蔓延繁茂