萬一まんいち)” の例文
新字:万一
何分なにぶん此頃このごろ飛出とびだしがはじまつてわしなどは勿論もちろん太吉たきちくら二人ふたりぐらゐのちからでは到底たうていひきとめられぬはたらきをやるからの、萬一まんいち井戸ゐどへでもかゝられてはとおもつて
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
またかの天女てんによごと春枝夫人はるえふじんが、萬一まんいちにも無事ぶじであつて、このいさましい姿すがたたならば、どんなにおどろよろこことであらう。
つきのないさかのぼつて、瓦斯燈ガスとうらされた砂利じやりらしながら潛戸くゞりどけたときかれ今夜こんや此所こゝ安井やすゐやう萬一まんいちはまづおこらないだらうと度胸どきようゑた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
只今大膳よりきゝ及び承知したりしか箇樣かやう大望たいまうは中々うきたる事にては成就じやうじゆ覺束おぼつかなしまづ根本こんぽんより申合せてたくまねば萬一まんいち中折なかをれして半途はんと露顯ろけんに及ぶ時は千辛萬苦せんしんばんくも水のあわなるばかりか其身の一大事に及ぶべし先名乘なのり出る時は必ず其生れ所とそだちし所を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
鐵車てつしやは、險山けんざん深林しんりん何處いづくでも活動くわつどう自在じざいだが、このすなすべりのたにだけでは如何どうすること出來できぬのである、萬一まんいちして、非常ひじやうちからで、幾度いくたび車輪しやりん廻轉くわいてんしてたがまつた無效むだだ。
あれくらゐわたしいてもうらんでも取合とりあつてくださらなかつたは旦那樣だんなさまのおえらいので、あの時代じだいのやうな蓮葉はすはわたし萬一まんいち役所やくしよことでもかしてくださらうなら、どのやうのつまらぬこと仕出來しでかすか
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ないがしろにいたしうへ再吟味は天下の御大法に背くとて重き上意のおもぶきにて越前閉門へいもん仰付おほせつけられ既に切腹とも存じ候へ共もし明日にも御對顏ある上萬一まんいち贋者にせものにてもある時は取返とりかへし相成らず御威光ごゐくわうにもかゝはり容易よういならざる天下の御恥辱ちじよくと存じ越前をしからぬ命を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
三十有餘名いうよめいの、日頃ひごろおにともまん水兵等すいへいらも、いままつた無言むごんに、此處こゝ一團いちだん彼處かしこ一團いちだんたがひかほ見合みあはすばかりで、其中そのうちに二三めいは、萬一まんいちにも十二のたるうち一つでも、二つでも
うでもよろしい、なんとなりあそばしませ、わたしわたしかんがとほりなことして、わるければわるくなれ、萬一まんいちよければそれこそまうものといふやうな無茶苦茶むちやくちや道理だうりけて、今頃いまごろわたしなにつてましたか
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
願ひもし將軍しやうぐんの御胤に相違なき時は其方そのはう如何致す所存にやとおほせられければ越前守つゝしんで答らるゝ樣御意ぎよいに候再吟味願の義は越前が身にかへての願ひに御座候へは萬一まんいち天一坊殿將軍の御子に相違なき時は越前が三千石の知行ちぎやうは元より家名斷絶かめいだんぜつ切腹せつぷくも覺悟なりと御答に及ばれける此時酒井讃岐守殿の仰には越前其方はあくまで拙者ども
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おもへばたるゝやうなたれぬやうな萬一まんいち車代しやだい
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)