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艱難
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かんなん
ふりがな文庫
“
艱難
(
かんなん
)” の例文
やっぱり橋や建物の上に移り変りがあったと同じ様に、かの女の上にも
艱難
(
かんなん
)
があり、全盛があり、恋があり、生活があったのだった。
日本橋附近
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
どんなに苦しい
艱難
(
かんなん
)
な生き方をしなければならぬか、それを考えれば、われわれには、自分ひとりのために生きる時間はないはずだ
花咲かぬリラ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
私も
艱難
(
かんなん
)
に艱難の続いたような自分の若かった日のことを思い出して、これくらいのしたくは子供らのためにして置きたいと考えた。
分配
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
◯人は
何故
(
なにゆえ
)
に
艱難
(
かんなん
)
に会するか、
殊
(
こと
)
に義者が何故艱難に会するか、これヨブ記の提出する問題である。これ実に人生最大問題の一である。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
こうして幾日か過ごすうちに、範之丞の体は回復し、多少の元気も出て来たが、重なる
艱難
(
かんなん
)
に心がとみに弱まったのは争われなかった。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
かような
艱難
(
かんなん
)
のうちにも、自分の小さな娘がもしそばにいたらどんなにかしあわせであろうものを。彼女は娘を呼び寄せようと思った。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
それは、流離の土民の子も、同じように通ってきた錬成の道場だったが、出す素質がなければ
艱難
(
かんなん
)
はただ意味なき艱難でしかない。
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
僕がさきに述べた、
艱難
(
かんなん
)
誘惑
(
ゆうわく
)
を仮想的に描いて、これに対する方法を定めよとは、まことに子供らしいことはわが輩も承知である。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
(五)自信 彼は
艱難
(
かんなん
)
の中に人と為り自己の力を以て世に出で、自己の創意を以て文壇に立ちたれば経験は彼に
自信
(
セルフ・コンフィデンス
)
を教へたり。
明治文学史
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
だが、どんな
艱難
(
かんなん
)
でも来たれ、障害の上に障害は重なれよ、決して決して倭文子を放すものかと彼は心のうちで、幾度も誓った。
第二の接吻
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
その樫尾大尉の
艱難
(
かんなん
)
に鍛い上げた皮膚の色と、鉄石の如き意志を輝かす黒い瞳を正視した瞬間に、私はすべてを察してしまった。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
或
(
あるい
)
はその間に
艱難
(
かんなん
)
辛苦など述立てれば
大造
(
たいそう
)
のようだが、
咽元
(
のどもと
)
通れば熱さ忘れると云うその通りで、艱難辛苦も過ぎて
仕舞
(
しまえ
)
えば何ともない。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
そして、それと同時に、川上の成功に比して劣らぬ地歩を貞奴もしめたのである。
艱難
(
かんなん
)
に堪え得た彼女の体が生みだした成功と名誉である。
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
然
(
しか
)
りといえどもさらに社会的に観察せんか、彼は時勢の児に外ならず。彼が精神上の父は、
敵愾
(
てきがい
)
尊王
(
そんのう
)
の気象にして、その母は
国歩
(
こくほ
)
艱難
(
かんなん
)
なり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
多くの
艱難
(
かんなん
)
を経た後になって、何よりもまず力が必要であると、痛ましい告白をなすにいたったのは、
恕
(
じょ
)
すべきことではある。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
途方にくれた世路
艱難
(
かんなん
)
の十字路、右せんか左せんかに迷って、とんがり長屋の王様泰軒先生のところへかつぎこんでくる。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
たとえば
艱難
(
かんなん
)
なんじを玉にすとか、富める人の天国に行くは
駱駝
(
らくだ
)
の針の穴を通るより
難
(
かた
)
しとかいうことなどあるがために
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
それで五平を叩っきりそこなうと、すぐその場から、おさらばをきめて、それからはお定まりの、
憂
(
う
)
き
艱難
(
かんなん
)
というやつさ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
煩
(
わづら
)
はぬ先に
不義
(
ふぎ
)
不孝
(
ふかう
)
の
天罰
(
てんばつ
)
ならんか此所まで來る道すがら種々の
艱難
(
かんなん
)
に
逢
(
あひ
)
路
(
ろ
)
用の金をさへ失ひし
其概略
(
そのあらまし
)
を語らんに兩人が
岡山
(
をかやま
)
を
立退
(
たちのき
)
しより
陸路
(
くがぢ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
堅く守り同列の方々とは親しく交わり
艱難
(
かんなん
)
を互いにたすけ合い心を一にして大君の御為
御
(
おん
)
励みのほどひとえに祈り上げ候
遺言
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
古いシナ人の言葉で「
艱難
(
かんなん
)
汝
(
なんじ
)
を玉にす」といったような言い草があったようであるが、これは進化論以前のものである。
災難雑考
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
艱難
(
かんなん
)
は後から後からと続いた。一番深刻にヘンデルを悩ましたのは、経済的な
破綻
(
はたん
)
で、続いてはその巨大な肉体を病床に投げ込んだ重病であった。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
艱難
(
かんなん
)
の数時間が過ぎ、やっと汽車弁当にありついたのは、午後の四時頃で、何と言う駅だったかもう忘れた。どんなおかずだったかも覚えていない。
腹のへった話
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
義を見ては死を辞せざる、困苦に堪へ
艱難
(
かんなん
)
に
克
(
か
)
ち、初志を貫きて屈せず
撓
(
たわ
)
まざる、一時の私情を制して百歳の事業を
成就
(
じょうじゅ
)
する、これら皆気育に属す。
病牀譫語
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
四十歳のかれは、本来の労作の
艱難
(
かんなん
)
と浮沈に疲れ果てながら、世界のあらゆる国々の切手のはってある郵便物を、毎日毎日片づけなければならなかった。
ヴェニスに死す
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
人間
(
にんげん
)
だって
同
(
おな
)
じようにいわれる。なに
不足
(
ふそく
)
なく
育
(
そだ
)
つばかりが、その
人
(
ひと
)
をりっぱな
人間
(
にんげん
)
とするものでない。
苦
(
くる
)
しみと
艱難
(
かんなん
)
に
戦
(
たたか
)
って、
人格
(
じんかく
)
が
磨
(
みが
)
かれるのです。
さまざまな生い立ち
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
橇
(
かんじき
)
にて
足
(
あし
)
自在
(
じざい
)
ならず、雪
膝
(
ひざ
)
を
越
(
こ
)
すゆゑ也。これ冬の雪中一ツの
艱難
(
かんなん
)
なり。春は雪
凍
(
こほり
)
て
銕石
(
てつせき
)
のごとくなれば、
雪車
(
そり
)
(又
雪舟
(
そり
)
の字をも用ふ)を以て
重
(
おもき
)
を
乗
(
の
)
す。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
艱難
(
かんなん
)
に堪えて強く生きている道産子のように。そしてまた、子馬を吹雪から庇っていたあの道産子のように——。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
その女はかれと一緒に京大阪を流浪して、
艱難
(
かんなん
)
のあいだを同棲していたのであるが、今度帰参の問題が起こると共にまず困るのはその女の処置であった。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
その一方に民の
艱難
(
かんなん
)
は申すまでもございません。例の流れ星騒動の年には、
大甞会
(
だいじょうえ
)
のありました十一月に九ヶ度、十二月には八ヶ度の
土倉役
(
どそうやく
)
がかかります。
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
したがって
艱難
(
かんなん
)
は発明の母ともいうが、男装女子や女装男子を見別つ法も随分あったといわせるほど備え居る。
十二支考:10 猪に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
と
判然
(
はっきり
)
、それも
一言
(
ひとこと
)
ごとに切なく
呼吸
(
いき
)
が切れる様子。ありしがごとき
艱難
(
かんなん
)
の
中
(
うち
)
から
蘇生
(
よみがえ
)
って来た者だということが、ほぼ確かめらるると同時に、
吃驚
(
びっくり
)
して
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
神の言を聴いて早わかりがして、「感謝です!」とか「アーメンです!」とか軽々しい感傷にふけっている者は、少しく
艱難
(
かんなん
)
にあえばただちに信仰を棄てる。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
人格を発現するのは一時の情欲に従うのではなく、最も厳粛なる内面の要求に従うのである。放縦
懦弱
(
だじゃく
)
とは正反対であって、かえって
艱難
(
かんなん
)
辛苦の事業である。
善の研究
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
爾来
(
じらい
)
諸君はこの農場を貫通する川の沿岸に
堀立小屋
(
ほったてごや
)
を営み、あらゆる
艱難
(
かんなん
)
と戦って、この土地を開拓し、ついに今日のような美しい農作地を見るに至りました。
小作人への告別
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
艱難
(
かんなん
)
汝を玉にす。——艱難汝を玉にするとすれば、日常生活に、思慮深い男は到底玉になれない筈である。
侏儒の言葉
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
いかなる
艱難
(
かんなん
)
も、よくこれを
凌
(
しの
)
ぐのである。ことに川上機関大尉には、まだはたしおわらない大任務があった。それは飛行島の偵察だ。いやそればかりではない。
浮かぶ飛行島
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
この後もなおいかなる
艱難
(
かんなん
)
が起ってもあくまで進んでその
艱難
(
かんなん
)
を切り抜けて、いささか仏法のためにする志望を
完
(
まっ
)
とうしたいものであるという考えを起しました。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
漂流でないことは言うまでもなく、いずれ危険も
艱難
(
かんなん
)
も伴なわずにはすまなかったろうが、ともかくも距離はそう遠くもなく、且つ現在までの生活境遇と比較して
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
同志の方々はそれぞれ仲間小者、ないし小商人に身を落して、
艱難
(
かんなん
)
辛苦
(
しんく
)
をされるのも皆お
主
(
しゅう
)
のためだ。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
御存知の通り文三は
生得
(
しょうとく
)
の親おもい、母親の写真を視て、我が辛苦を
甞
(
な
)
め
艱難
(
かんなん
)
を忍びながら定めない浮世に
存生
(
なが
)
らえていたる、自分
一個
(
ひとり
)
の
為
(
ため
)
而已
(
のみ
)
でない事を
想出
(
おもいいだ
)
し
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
国
(
くに
)
には妻もあり子もあったが、信心のためにこうして他国の山中をも歩き、今日は那智を参拝して、追々帰国しようというのであるから前途はそう
艱難
(
かんなん
)
ではなかった。
遍路
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
すなわち子路は(一)において千乗の国に
賦
(
ふ
)
を治めしめる力があると言われているが、(三)においては、その千乗の国が戦争と饑饉の
艱難
(
かんなん
)
に逢っている時でさえも
孔子
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
いわゆる
艱難
(
かんなん
)
汝
(
なんじ
)
を珠にすで、試練によりて浄化されたる魂が、死後に
於
(
おい
)
て特別の境涯を与えられ、神の恩寵に浴する。苦労なしに真の向上、真の浄化は到底望まれない。
霊訓
(新字新仮名)
/
ウィリアム・ステイントン・モーゼス
(著)
されば
印度
(
インド
)
の如き、このたびの大戦に当って幾十万の大兵を送って英国の
艱難
(
かんなん
)
に赴かしむるという誠実の表示を為したのであるから、英国の態度もこれよりまさに一変し
永久平和の先決問題
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
それからさまざまの
憂
(
う
)
き
艱難
(
かんなん
)
を経て、ある時は
相模
(
さがみ
)
の
大山石尊
(
おおやませきそん
)
に
参籠
(
さんろう
)
し、そこで二十四の時に
真言
(
しんごん
)
に就いて出家をとげ、それより諸国を修行し、或いは諸所の寺々の住職をし
大菩薩峠:35 胆吹の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その有様を見ているうちに、さすがに私も、この弟子たちと一緒に
艱難
(
かんなん
)
を冒して布教に歩いて来た、その忍苦困窮の日々を思い出し、不覚にも、目がしらが熱くなって来ました。
駈込み訴え
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
なるほどあなたはあれのちえを
養
(
やしな
)
ってはくださるだろう、だがあれの
人格
(
じんかく
)
は作れません。それを作ることのできるのは人生の
艱難
(
かんなん
)
ばかりです。あれはあなたの子にはなれません。
家なき子:01 (上)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
いかに困苦
艱難
(
かんなん
)
を極めたものであったか、そしていくたび猛獣毒蛇の危害のために全班員二十三名が危険に
曝
(
さら
)
されたかということなぞは事新しく言うだけ余計なことであろうから
令嬢エミーラの日記
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
なかなかに
艱難
(
かんなん
)
なものが前にも後にも待ち伏せにしているものでございますから、短い間であったためにも、いろいろな、しやわせがおとずれて来たように思われるのであります。
玉章
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
“艱難”の意味
《名詞》
艱 難(かんなん)
困難に出遭い苦しみ悩むこと。
(出典:Wiktionary)
艱
漢検1級
部首:⾉
17画
難
常用漢字
小6
部首:⾫
18画
“艱難”で始まる語句
艱難辛苦
艱難困苦
艱難苦労