すく)” の例文
引捻ひんねじれた四角な口を、額までかつと開けて、猪首いくび附元つけもとまですくめる、と見ると、仰状のけざま大欠伸おおあくび。余り度外どはずれなのに、自分から吃驚びっくりして
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しぼるやうな冷汗ひやあせになる気味きみわるさ、あしすくんだといふてつてられるすうではないから、びく/\しながらみちいそぐとまたしてもたよ。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「何だねえ、お前、大袈裟おおげさな。」と立身たちみに頭から叱られて、山姥やまうばに逢ったように、くしゃくしゃとすくんで、松小僧は土間へしゃがむ。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と笑うて、技師はこれを機会きっかけに、殷鑑いんかん遠からず、と少しくすくんで、浮足の靴ポカポカ、ばらばらと乱れた露店の暗い方を。……
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
年紀としのほどを心づもりに知っため組は、そのちらちらを一目見ると、や、火の粉が飛んだように、へッとうなじすくめた処へ
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まへとほけるばかりで、身體からだすくみます。歩行あるけなくつたところを、つかまつたらうしませう……わたしんでしまひますよ……をんなよわいものですねえ。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「色男!」といって呵々からからと笑ったのは、男の声。呆れて棒立になった多磨太は、余りのことにその手を持ったまま動かず、ほとんど無意識にすくんだ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ぐにこたへて、坂上さかがみのまゝ立留たちどまつて、振向ふりむいた……ひやりとかたからすくみながら、矢庭やにはえるいぬに、(畜生ちくしやう、)とて擬勢ぎせいしめ意氣組いきぐみである。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いきおい辟易へきえきせざるを得ずで、客人ぎょっとしたていで、足がすくんで、そのまま欄干に凭懸よりかかると、一小間抜けたのが、おもしに打たれて、ぐらぐらと震動に及ぶ。
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
軍鶏もすくむようであった。婆は恐しい目をしながら、胸に波を打たせて肩で呼吸いきだ、歯を喰緊くいしめて口が利けず。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すくんだていだつた、長頭ながあたま先達盲人せんだつめくらは、とき、のろりと身動みうごきして、よこがけはうかほけた。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
……と背の低いのが、滅入込めりこみそうに、おおき仮髪かつらうなじすくめ、ひッつりそうなこぶしを二つ、耳の処へおどすがごとく、張肱はりひじに、しっかと握って、腰をくなくなと、抜足差足。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と胸を突くほど、足がすくむ、手が縮まる、五体を手毬てまりにかがられる……六万四千の毛穴から血がさっと霧になって、くだんのその紅い唇を染めるらしい。草にうなじを擦着け擦着け
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
壁際に附着くッつけば、上から蜘蛛くもがすっと下りそうで、天窓あたますくめて、ぐるりと居直る……真中まんなかに据えた座蒲団ざぶとん友染模様ゆうぜんもようが、桔梗ききょうがあってすすきがすらすら、地が萌黄もえぎの薄い処
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
愛吉は何にもいわず、腕をこまぬいて目をそらして、苦言一針するごとに、内々恐縮のうなじすくめる。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
貝が殻へかくれるように、うちへ入ってすくんでいても、向うが強ければつかまえられるよ。お浜は嬰児あかんぼだし、私はこうやって力がないし、それを思うとほんとに心細くってならないんだよ。
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
な、貴辺あなた、こりゃかようなざまをするのが、既にものに魅せられたのではあるまいか。はて、宙へ浮いてあがるか、谷へ逆様さかさまではなかろうか、なぞと怯気おじけがつくと、足がすくんで、膝がっくり。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
亭主ていしゆ法然天窓はふねんあたま木綿もめん筒袖つゝそでなか両手りやうてさきすくまして、火鉢ひばちまへでもさぬ、ぬうとした親仁おやぢ女房にようばうはう愛嬌あいけうのある、一寸ちよいと世辞せじばあさん、くだん人参にんじん干瓢かんぺうはなし旅僧たびそう打出うちだすと
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「いや、恐れはせん、が、面目ないのだよ。」とすくまるばかり襟に俯向うつむく。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と首をすくめて、こそこそと立退たちのいたのは、日当りのい出窓の前で。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
南無三宝なむさんぽう、あやまりてた。」と烏帽子えばうしいて猪頸ゐくびすくむ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
割膝でかしこまって、耳を掻いてうなじすくめ、貧乏ゆすり一つして
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
主税は思わず身をすくめた。帽子を払って、は、と手を下げて
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私は石になるだらうと思つて、一思ひとおもいすくんだのである。
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
声を聞くとお雪は身をすくめて小さくなった。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とのめずるようにうなじすくめ、腰を引いて
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
山路やまみちときおもすとわれながらあしすくむ。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とすこし身をすくめて、一層低く
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小芳が思わず肩をすくめる。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
葛木は五体がすくんだ。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
うなじすくめたが
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)