白地しろぢ)” の例文
晶子は三越で買つて来た白地しろぢかうの図と菊とを染めた友禅と、京都の茅野蕭蕭ちのせうせう君に託して買つて貰つた舞扇まひあふぎの一対とを夫人に捧げた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
とんさんは、手拭てぬぐひ喧嘩被けんくわかぶり、白地しろぢ浴衣ゆかた尻端折しりぱしよりで、いま逃出にげだしたとかたちだが、いて……はなかつた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
宗助そうすけしかるべく叔母をばたのんで、其日そのひそれげてかへつた。晩食ばんめしのち御米およね一所いつしよまた縁側えんがはて、くらところ白地しろぢ浴衣ゆかたならべて、すゞみながら、ひるはなしをした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
鄭寧ていねいに云つて再びこたへを促した。阿母さんは未だだまつてる。見ると、あきらにいさんの白地しろぢの薩摩がすり単衣ひとへすそを両手でつかんだ儘阿母さんは泣いて居る。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
むすめも、白地しろぢ手拭てぬぐひを、一寸ちよいとたゝんで、かみうへせてる、びんいろまさつて、ために一入ひとしほゆかしかつた。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
びんつたまゝつてへや四隅よすみつて、そこに一二滴づゝりかけた。斯様かやうきようじたあと白地しろぢ浴衣ゆかた着換きかえて、あたらしい小掻巻かいまきしたやすらかな手足てあしよこたへた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かぜました、もうあがりませう。」「これはありがたい、おれいふよ。」「ほほほ。」ふつくり色白いろじろで、おびをきちんとした島田髷しまだまげ女中ぢよちうは、白地しろぢ浴衣ゆかた世話せわをしながらわらつたが
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
不断着ふだんぎまゝうちたと見えて、質素しつそ白地しろぢ浴衣ゆかたたもとから手帛はんけちを出しけた所であつた。代助は其姿そのすがた一目ひとめ見た時、運命が三千代の未来を切りいて、意地悪く自分の眼の前に持つてた様に感じた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
浴衣ゆかた白地しろぢ中形ちうがたで、模樣もやうは、薄月うすづきそら行交ゆきかふ、——またすこあかるくつたが——くもまぎるゝやうであつたが、ついわき戸袋とぶくろ風流ふうりうからまりかゝつたつたかづらがのまゝにまつたらしい。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
門野かどののぼんやりした白地しろぢが又廊下のはづれにあらはれた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其處そこ病上やみあがりと風采とりなり中形ちうがた浴衣ゆかたきよらかな白地しろぢも、よる草葉くさばくもる……なよ/\とした博多はかた伊達卷だてまき姿すがたで、つひぞないことにはた。とき美人びじん雪洞ぼんぼりつてたのである。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
なにか、自分じぶんなか一切すべてのものに、現在いまく、悄然しよんぼり夜露よつゆおもツくるしい、白地しろぢ浴衣ゆかたの、しほたれた、ほそ姿すがたで、かうべれて、唯一人たゞひとり由井ゆゐはまつうずる砂道すなみち辿たどることを、られてはならぬ
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)