水面すゐめん)” の例文
それむかぎしいたとおもふと、四邊あたりまた濛々もう/\そらいろすこ赤味あかみびて、ことくろずんだ水面すゐめんに、五六にん氣勢けはひがする、さゝやくのがきこえた。
三尺角拾遺:(木精) (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
さてくれなんとするにいたれば、みな水面すゐめんにおちいりてながれくだる、そのさま白布しらぬのをながすがごとし。其蝶のかたち燈蛾ひとりむしほどにて白蝶しろきてふ也。
暮れ殘る夕暮に、大川の水面すゐめんを薄紫に照して、向島のあたりは花の霞の裡に、さながら金砂子をいたやう。
畫題ぐわだいは『自然しぜんこゝろ』と謂ツて、ちらしがみ素裸すつぱだかわかをんなが、新緑しんりよく雑木林ざふきばやしかこはれたいづみかたはらに立ツて、自分のかげ水面すゐめんに映ツてゐるのをみまもツてゐるところだ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
小川をがはあぶらのやうな水面すゐめんおほきく波立なみだつて、眞黒まつくろ人影ひとかげこはれた蝙蝠傘かうもりがさのやうにうごいてゐた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
擾乱ぜうらん水面すゐめんに起つ。
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
やまくづれたので、當時たうじ大地震おほぢしん觸頭ふれがしらつた場所ばしよの、あまつさ四五日しごにち琅玕らうかんごとあし水面すゐめんかぜもなきになみてると、うはさしたをりであつたから。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さてまへにいへる渋海しぶみ川にてはる彼岸ひがんころ、幾百万の白蝶はくてふ水面すゐめんより二三尺をはなれてもすれあふばかりむらがりたるが、たかさは一ぢやうあまり、両岸りやうがんかぎりとして川下より川上の方へ飛行とびゆく
かの水面すゐめんつもりたる雪したよりとけこほりたる雪の力も水にちかきはよわくなり、ながれは雪にふさがれてせまくなりたるゆゑ水勢すゐせいます/\はげしく、陽気やうきて雪のやはらかなる下をくゞり、つゝみのきるゝがごとく
この見上みあぐるばかりな、これほどのたけのあるはこのあたりでつひぞことはない、はしたもと銀杏いてふもとより、きしやなぎみなひくい、土手どてまつはいふまでもない、はるかえるそのこずゑほとん水面すゐめんならんでる。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
水底みずそこから水面すゐめんへ、なゝめ立懸たてかけたやうにつて、ふわ/\とうごいてえる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
碧水金砂へきすゐきんさひるおもむきとはちがつて、靈山りやうぜんさき突端とつぱな小坪こつぼはまでおしまはした遠淺とほあさは、暗黒あんこくいろび、伊豆いづ七島しちたうゆるといふ蒼海原あをうなばらは、さゝにごりにごつて、はてなくおつかぶさつたやうにうづだか水面すゐめん
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かたむいてるがこと/″\一樣いちやうむきにではなく、あるものはみなみはうへ、あるものはきたはうへ、また西にしはうへ、ひがしはうへ、てん/″\ばら/\になつて、このかぜのない、そられた、くもりのない、水面すゐめんのそよ/\とした
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)