さん)” の例文
旧字:
(御宅の御新造さんは、わしとこに居ますで案じさっしゃるな、したがな、またもとなりにお前の処へは来ないからそう思わっしゃいよ。)
清心庵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『え。渡辺さんといふお友達の家に参りましたが、その方の兄さんとお親い方だとかで……アノ、ちよつとお目に懸つたんで御座います。』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
彼家あそこじゃ奥様おくさんも好いかただし御隠居様も小まめにちょこまかなさるが人柄ひとは極く好い方だし、お清さんは出戻りだけに何処どこ執拗ひねくれてるが
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
御隠居と鶴子さんとまささんは正月から盆まで宅の裏座敷にお出でなさりましたわ、あしこの化粧の間が台所で此処の二間をお室になして。
伯父さんも義理で孝助を出すに違いないが、いちゃア明日あした伯父さんと一緒に帰って来ては困るが、孝助がひとりで先へ帰る訳には出来まいか
仕付糸をとってやりながら、向うさんへ行ったら行儀ようするんやぜと母親は常に変らぬ調子でいうのだが、何か叱られているように思った。
(新字新仮名) / 織田作之助(著)
「お父さん、こんな家よしちまって、郊外に大きい分離派ぶんりはかなんかの文化住宅を、お建てなさいよウ」紅子べにこが、ボッブの頭を振り振り云った。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
いたく細君に気遣われしなれ、「さんづけにも呼ばれしなれ、顔に傷をも受けしなれ、今は少しの不審も無し彼れが事は露ほども余が心に関せず
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
亡母おつかさん其儘そのまゝらつしやるんですもの——此の洋琴オルガンはゼームスさんが亡母さんの為めに寄附なされたのですから、貴嬢が之をお弾きなされば
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
実は切迫せっぱつまった事で、金はる、借りるところはなし。君がいると、一も二もなく相談するのだが、叔母さんには言いにくいだろうじゃないか。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
「山県——はア学校の先生さんだア、私等が餓児がきも先生様の御蔭にはえらくなつてるだア。い優しい人で、はア」
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
とてもみそうにもないし、あなたもそうまでせられては、いっしょになってもいられないだろう、わたしもあなたとは、あなたのお父さんお母さんからの親しい間だし
四谷怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
一人住居ずまいの相手なしに毎日毎夜まいやさびしくつて暮しているなれば手すきの時には遊びにも来て下され、私はこんながらがらした気なればきつちやんの様な暴れさんが大好き
わかれ道 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
鰐淵さんのかれこれ有仰おつしやるのは今に始つた事ではないので、もう私実にこまつてをるのでございます。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
『これ、丑松や、猪子といふ御客さんがおめへを尋ねて来たぞい。』う言つて叔母は駈寄つた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
と、また紛れもないジョンの声が、手近の椰子やしの林の中から、「お父さん! お父さん!」
女らしいぞと口の中で独語つぶやきながら、誰だ女嫌ひの親分の所へ今頃来るのは、さあ這入りな、とがらりと戸を引き退くれば、さんお世話、と軽い挨拶、提灯吹きして頭巾を脱ぎにかゝるは
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「もしもしどなたさんですか」いいますと、「姉ちゃん、あて——あてや」いうのんが、光子さんより外にそんないいようする人はないのんですけど、それが電話が遠いのんか、小声でいうてるのんか
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
この様子を見るとお爺さんはもう狂気きちがいのように周章あわて出して——
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
「何か用なの? え、仙太さん。」
片男波 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
こちとらの大家さんが高い家賃を取上げてたまさかに一杯飲ます、こりゃ何もなさけじゃねえ、いわば口塞くちふさぎ賄賂まいないさ、うらみを聞くまいための猿轡さるぐつわだ。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今まで御嬢さんにはあんなに優しかった老先生がこの二三日にさんちはちょっとしたことにも大きな声をして怒鳴るようにならしゃっただ
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
富「お腹立様ではなんですが、お隅さんに只今の様な事をしたは富五郎本心でしたと思召しての御立腹なれば御尤もでございます」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
『まだ。今日か明日帰るさうだ。吉野さんがゐないと俺は薩張さつぱり詰らないから、今日は莫迦に暑いけれども飛出して来たんだ。』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
の慈愛館へれておいでになりましたがネ、——貴嬢、私のせがれが生きてると丁度ちやうど篠田さんと同年のですよ、私、の方を見ると何時いつでも涙が出ましてネ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
宿やどの者此人を目科めしなさん」とて特に「さん」附にして呼び、帳番も廊下にて摺違すれちがうたびに此人には帽子を脱ぎて挨拶あいさつするなどおおい持做もてなしぶりの違う所あるにぞ
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
叔母さん、この肺病というやつばかりは恐ろしいもんですね、叔母さんもいくらもご存じでしょう、さいの病気が夫に伝染して一家総だおれになるはよくあるためしです
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
正太は大人らしうかしこまりて加減が悪るいのですかと真面目に問ふを、いいゑ、と母親怪しき笑顔をして少し経てばなほりませう、いつでも極りの我ままさん、さぞお友達とも喧嘩しませうな
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「お前はよそさんの子供ちごて、ふたおやがないのやさかい、余計……。」
わが町 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「お父さん、そりゃ、お酒のせいですよ」黄一郎がおかしそうに口を出した。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「泊めてお上げなさいよお父さん……ねえ、お母さんもいいでしょう……」
喇嘛の行衛 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「お照さん。」
片男波 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
さればこそ、嬢さんと聞くとひとしく、朝から台所で冷酒ひやざけのぐいあおり、魚屋と茶碗を合わせた、その挙動ふるまい魔のごときが、立処たちどころに影を潜めた。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
賤「惣吉さん誠に済まない事をしました、堪忍して下さいまし、新吉さん早く惣吉さんの手に掛って死度しにたい、あゝ、おっかさん堪忍して下さい」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「そうですとも、大いに妙です。神崎工学士、君は昨夕ゆうべ酔払って春子さんをつかまえてお得意の講義をしていたが忘れたか。」
恋を恋する人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
『私が喰べるのですよ、誰が昌作さんなんかに上げるもんですか。』と不減口へらずぐちを叩いて、『よ、昌作さん、ハイカラの智恵子さんもまだ帰らないの。』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「ハア、折角せつかくの日曜も姉さんのいらつしやらぬ教会で、長谷川の寝言など聞くのは馬鹿らしいから、今朝篠田さんを訪問したのです、——非常に憤慨ふんがいしてでしたよ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「でも叔母さん、それは無理ですよ、夫婦に仲のよすぎるということはないものです。病気であって見ると、武男君もいよいよこらそうあるべきじゃありませんか」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
「お前はよそさんの子供ちごて、両親ふたおやが無いのやさかい、余計……」
わが町 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「お母アさん工場こうばへ電話をかけたらどうです」黄一郎が云った。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「あッ、お父さんだ! お父さんだ!」
さん跫音あしおとが聞えたので、はッと気が着いて駈出したが、それまでどうしていたんだか、まるで夢のようで、分らなかったよ。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今お前さんとこのお嬢さんのお噂をして居たのだが、実に私は鼻が高い、私の長屋にあゝ云う親孝行の娘が居れば私はの位鼻が高いか知れない
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そら近頃このごろ出来たパン屋の隣に河井さんて軍人さんがあるだろう。彼家あそこじゃア二三日前に買立のあかの大きな金盥かなだらいをちょろりとられたそうだからねえ
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
『藤野さんア水車の心棒に捲かれて、杵に搗かれただ。』と大声に喚いた。私はうそともまこととも解らず、唯強い電気にでも打たれた様に、思はず声を立てて『やあ』と叫んだ。
二筋の血 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「向うさんへ行ったら行儀ようするんやぜ」
(新字新仮名) / 織田作之助(著)
「お父さん! お父さん!」
その死骸はな、よく死んだことを見極めて、家内うちの雑具部屋へ入れておけ。高田さん貴下あなたも御迷惑であろうが手伝って下枝を捜して下さい。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
番「おのれ一昨日おとといこの店で帯を締め直す時に落した手紙は、お嬢さんに頼まれて粂之助の処へ届けようとしたのじゃないか」
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
私、眠くなってしまったわ、だからアーメンと言ったら、貴下あなた怒っちゃったじゃアありませんか。ねエ朝田さん
恋を恋する人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)