書院しよゐん)” の例文
と、お濱さんが書院しよゐんの庭あたりでんで居る。貢さんは耳鳴みヽなりがして、其のなつかしい女の御友達おともだちの声が聞え無かつた。兄はにつと笑つて
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
とうさんもその書院しよゐんましたが、曾祖母ひいおばあさんがひとりでさびしいといふときにははなれの隱居部屋ゐんきよべやへもとまりにくことがりました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
語らひ品川宿近江屋儀右衞門の地面ぢめん芝高輪しばたかなわ八山やつやまあるを買取て普請にぞ取掛りける表門玄關使者の間大書院おほしよゐん書院しよゐん居間ゐま其外諸役所長屋等迄とうまでのこる所なく入用をいとはず晝夜ちうや
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
よしや此縁このえんいとひたりとも野末のずゑ草花さうくわ書院しよゐん花瓶くわびんにさゝれんものか、恩愛おんないふかきおやさせてれはおなじき地上ちじやう彷徨さまよはんとりあやまちても天上てんじやうかなひがたし
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
玄竹げんちく今日けふ奉行役宅ぶぎやうやくたくが、いつもよりはさらしづかで、さびしいのにいた。るとともに、靜寂せいじやくくははつて川中かはなか古寺ふるでら書院しよゐんにでもるやうな心持こゝろもちになつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
……これから案内あんないしたがつて十二でふばかり書院しよゐんらしいところとほる、次は八でふのやうで正面しやうめんとこには探幽たんにゆう横物よこものかゝり、古銅こどう花瓶くわびんに花がしてあり、煎茶せんちや器械きかいから、莨盆たばこぼんから火鉢ひばちまで
士族の商法 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
午後ひるすぎから亀井戸かめゐど龍眼寺りゆうがんじ書院しよゐん俳諧はいかい運座うんざがあるといふので、蘿月らげつはその日の午前にたづねて来た長吉ちやうきち茶漬ちやづけをすましたのち小梅こうめ住居すまひから押上おしあげ堀割ほりわり柳島やなぎしまはうへと連れだつて話しながら歩いた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
一體いつたい三間みまばかりの棟割長屋むねわりながやに、八疊はちでふも、京間きやうま廣々ひろ/″\として、はしら唐草彫からくさぼりくぎかくしなどがあらうとふ、書院しよゐんづくりの一座敷ひとざしきを、無理むり附着つきつけて、屋賃やちんをおやしきなみにしたのであるから、天井てんじやうたかいが
くさびら (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
祖父おぢいさんの書院しよゐんまへには、しろおほきなはな牡丹ぼたんがあり、ふるまつもありました。つきのいゝばんなぞにはまつかげ部屋へや障子しやうじうつりました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
書院しよゐんへ通すべし對面たいめんせんとのおほせなり是に依て侍ひ中御廣書院へ案内あんないせらる最早中納言樣には御書院に入せられ御寢衣ねまきまゝ御着座遊おんちやくざあそばさる越前守には敷居際しきゐぎは平伏へいふくせらる時に中納言樣には越前近ふ/\との御言葉ことばに越前守は少し座を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
部屋々々へや/\には、いろ/\な名前なまへむかしからつけてありまして、上段じやうだんおくなかつぎ、それからくつろぎのなぞといふのがりました。祖父おぢいさんはいつでも書院しよゐんました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
聞しめししからば予は太守光貞卿の子とやとおほせありしがそれよりは將監が申事も御用おんもちゐなくことほか我儘わがまゝ氣隨きずゐに成せ給へりある日書院しよゐんの上段に着座ちやくざまし/\て將監々々/\/\よばせ給ふこゑきこえければ將監大いにおどろき何者なるや萬一もし太守たいしゆの御出にもと不審ふしんながらふすま
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)