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しよゐん
よしや
此縁を
厭ひたりとも
野末の
草花は
書院の
花瓶にさゝれんものか、
恩愛ふかき
親に
苦を
増させて
我れは
同じき
地上に
彷徨はん
身の
取あやまちても
天上は
叶ひがたし
玄竹は
今日の
奉行役宅が、いつもよりは
更に
靜かで、
寂しいのに
氣が
付いた。
夜に
入るとともに、
靜寂の
度が
加はつて
川中の
古寺の
書院にでも
居るやうな
心持ちになつた。
……
是から
案内に
従つて十二
畳許の
書院らしい
処へ
通る、次は八
畳のやうで
正面の
床には
探幽の
横物が
掛り、
古銅の
花瓶に花が
挿してあり、
煎茶の
器械から、
莨盆から
火鉢まで