昼飯ひるめし)” の例文
旧字:晝飯
それは今日の昼飯ひるめしに怪しい僧にもけ、じぶん達もったような三個みっつ黍団子きびだんごであった。顎髯の男はうんと云って背後うしろに倒れて気を失った。
岩魚の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
これを小中飯こじゅうはんという漢字をあてる人もあるが、じっさいは昼飯ひるめしまたはヒルイイを、しゃれてチュウハンと言い出してから後の名である。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
小田刑事は俊夫君の探偵ぶりを見るのが好きですから、私たちといっしょに途中で昼飯ひるめししたためて巣鴨の博士邸さして行きました。
髭の謎 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
かわいそうな動物どもは、やがて昼飯ひるめし報酬ほうしゅうの出ることを知って、いっしょうけんめいにやった。わたしもそのとおりであった。
昼飯ひるめしを済まして、自分は外出でかけようとするところへ母が来た。母が来たら自分の帰るまで待ってもらう筈にして置いたところへ。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
昼飯ひるめしは小川屋から運んで来てくれた。正午の休みに生徒らはみんな運動場に出て遊んだ。ぶらんこに乗るものもあれば、鬼事おにごとをするものもある。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
シスレエが珍らしく屋内の人物をいた「鍛冶屋」や、マネが最初に物議を惹き起した「草の上の昼飯ひるめし」などもあつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
昼飯ひるめしを持ってきたときに、牛丸はまた話しかけた。牢番は同じように首を左右にふり、指で自分の耳と口とをさして
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
なアにだれがあんな所へくもんか、まアきみ一緒いつしよたまへ、何処どこぞで昼飯ひるめし附合給つきあひたまへ。乙「そんなら此所こゝから遠くもないから御成道おなりみち黒焼屋くろやきや横町よこちやうさ。 ...
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
この昼飯ひるめし分は剛力に担がせて持って来たのだが、この前途さき山中に迷わぬものでもないから、なるべく食物しょくもつを残しておけと、折りから通り掛かった路傍みちばた
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
上田敏博士が文科大学教授として初めて京都の土を踏んだ時、腹が空いてゐたので、停車場ていしやぢやう近くの或る旅館はたごやへ飛込んで、昼飯ひるめしき立てたことがあつた。
朝飯あさめし昼飯ひるめしをすませた後、僕は書斎の炬燵ごたつへはいり、二三種の新聞を読みはじめた。新聞の記事は諸会社のボオナスや羽子板の売れ行きで持ち切っていた。
年末の一日 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「うふん。時に昼は何を食うかな。やっぱり饂飩うどんにして置くか」と圭さんが、あすの昼飯ひるめしの相談をする。
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかし、昼飯ひるめしもまだなのを思うと、少し心配になった。心配しいしい土間どまでぞうりを作っていると、川本大工だいくのおかみさんが、気ぜわしそうな足どりでやってきた。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
昼飯ひるめしの残りを蒸返むしかえし、てっか味噌みそ焼海苔やきのりとをさいにして、独り夕飯を食べてしまってから、重吉は昨日きのうの午後お千代を呼んだ芳沢よしざわ旅館へ電話をかけて問い合わすと
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
その後昨日になっても今日になってもまだ来ないからどうかしはせんかと思って心配している。昼飯ひるめしを食べたら大原君の下宿屋へ尋ねて行こうかと今も家内に話していた処だ。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「美し森」は来るべき紅葉の季節を待つことにして、佐久街道に出で、名高い念場ヶ原を、三軒家あたりまで横断し、また安都玉村の輿水氏宅まで引返し、昼飯ひるめしを済ませたりした。
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
女は、今日 CAFÉ UNIVERSITÉ で昼飯ひるめしを喰はうといつた。
珈琲店より (新字旧仮名) / 高村光太郎(著)
やがて正午しょうごになると、ちかくの工場こうじょうから、汽笛きてきがきこえます。すると一どうやすめて、昼飯ひるめしべる用意よういをしました。それからの一時間じかんは、はたらく人々ひとびとにとって、なによりたのしかったのでした。
はたらく二少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あのそら紫立むらさきだつてほんのり桃色もゝいろうすえべい。——麻袋あさふくろには昼飯ひるめしにぎつたやつあまるほどめてく、ちやうど僥幸さいはひやまいも穿つて横噛よこかじりでも一日いちにち二日ふつかしのげるだ。りからかせ、さあ、ござい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
朝飯あさめし昼飯ひるめしもてんでんに自分で用意しなければならなかった。読書なり音楽なりの仕事は、つまりそういうもののすんだあとのことであった。
昼飯ひるめしだけはよほど形がちがっているので、それが三度ともほぼ同じことになったのは、朝から晩まで家にいられる職業、たとえば小売商の自分で店番みせばんする者
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
京都西陣にしじんの某と云う商店の主人は、遅い昼飯ひるめしって店の帳場ちょうばに坐っていると電話のベルが鳴った。主人はじぶんって電話口へ出てみると聞き覚えのある声で
長崎の電話 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
丁度ちやうど御当日ごたうじつ往来止わうらいどめになるだらうと聞きましたから、昼飯ひるめしを食べて支度したくをいたし、午後二時ごろから宿やどを出ましたが、其処そこまでは人力車くるまかれるところ
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
木星から高い生活費を受取る訳にもかないので昼飯ひるめしは精々手軽なところで済ませる事に決めてゐる。
昼飯ひるめしひに下宿へ帰らうと思つたら、昨日きのふポンチ画をかいた男が来て、おい/\と云ひながら、本郷の通りの淀見よどみ軒と云ふ所に引つ張つて行つて、ライスカレーを食はした。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しかるに大概は腐っている玉子だ。患者もそれを知っていて滅多めったに食べない。割ってもそのまま皿へ入れて下げてやる。すると昼飯ひるめし晩飯ばんめしに必ずそれが玉子焼かオムレツに変化するそうだ。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
俊夫君は小田さんと二人きりで、しばらくのあいだ何やらぼそぼそ話をしておりましたが、それがすむと、ちょうど昼飯ひるめし時だったので、私たちは小田さんといっしょにうどんのご馳走になりました。
暗夜の格闘 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
そして、翌々日の午後来ると云った女のことばを信用して、その日は学校に往ったが平常いつもの習慣で学校の食堂でうことになっている昼飯ひるめしをよして急いで帰って来た。
水郷異聞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「きみはぼくたちに会わなかったら、きょうの昼飯ひるめしはどうするつもりだったの」とアーサがたずねた。
おや、旦那だんなくおでなさいましたね、金吹町かねふきちやうさんまアらつしやいましたね、今年ことし元日ぐわんじつから縁起えんぎい事ね。乙「とき昼飯ひるめし支度したくをしてちよいと一ぱいおくれ。 ...
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「うまい。なか/\よく焼けてゐる。これから昼飯ひるめしにはいつもこれとめて置かう。」
昼飯ひるめしをカレイというのは枯れたいい、すなわち干飯ほしいを持って歩いたからである。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
翌日よくじつ朝の汽車で立った自分達は狭い列車のなかの食堂で昼飯ひるめしを食った。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いては、孝助殿は旅へかれる事を承わったが、だ急には立ちはせまいのう、私が少し思う事があるから、明日あす昼飯ひるめしを喰って、それからツ前後に神田の旅籠町はたごちょうきなさい
ドンが鳴ると必ず昼飯ひるめしだと思う連中とは少々違っています。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
此方こちらはお筆が昼飯ひるめしべましたから、かねて近金から貰った小紋の紋付に紫繻子の帯を締めて出ると一際目立つ別嬪べっぴんでございます、時々金兵衞の家内とお湯にきますから誘いました。
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)