斷念あきら)” の例文
新字:断念
「エ、今年で五十七か八か九かでしたよ。イエもうわたしは去年家を出る時にお別れのつもりで居ましたから、どうせ斷念あきらめてはゐました。」
一家 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
殺す時機じき因果いんぐわづくだが斷念あきらめて成佛じやうぶつしやれお安殿と又切付れば手を合せどうでも私を殺すのか二人の娘にあふまではしにともないぞや/\と刄にすがるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
是非ぜひもないことゝ自分じぶん斷念あきらめて咽喉疾いんこうしつには大敵たいてきりながら煙草たばこはじめた。老人夫婦らうじんふうふしきりとはなしてる。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
まさか自動車じどうしやで、ドライブして、さがしてまはるほどのかねはなし……えんれめか、よしはらすゞめ、當分たうぶんせかれたと斷念あきらめてると、當年たうねん五月ごぐわつ——房州ばうしうつた以前いぜんである。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はるにでもなつたらやれつかもんねえから」と勘次かんじたびにいつてた。おつぎは到底たうていあてにはならぬとこゝろ斷念あきらめてたのであつた。それだけおつぎの滿足まんぞくふかかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ほかのなきなるを、いもとともむすめとも斷念あきらめて、おしたてられなばうれしきぞと、松野まつのひざゆりうごかしてなみだぐめば、雪三せつざう退しさりてかしらげつゝ、ぶんにあまりしおほせおこたへの言葉ことばもなし
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
下女の中にて三郎兵衞を少しうたがふ者ありしが夫は證據なき事とて是非なく今年ことし厄落やくおとしと斷念あきらめ帳面を〆切しめきりしが是を不幸けちの始として只一人の娘にむこえらあと
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「さあ、斷念あきらめろ、こゑてるな、ひとりやまことうでも、むしのついたはなえだだ。」
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
すこあてちがつたがづ/\繁盛はんじやうしたことなしと斷念あきらめて自分じぶん豫想外よさうぐわいへやはひつた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
それでもう今夜はあの娘も斷念あきらめたと見えて、それを話し出した時には流石さすがに泣いてゐたけれども、平常のやうに父親の惡口も言はずねもせずあの通りに元氣よくして見せて呉れるので
姉妹 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
さぐれとおほせらるゝともそれ違背ゐはいはすまじけれど戀人こひびと周旋とりもたんことどう斷念あきらめてもなることならず御恩ごおん御恩ごおんこれはこれなりいつそおふみ取次とりついだるていにしてこのまゝになすべきかや/\それにてはみちがたゝずじつ斯々かく/\なかなりとて打明うちあけなばじようさま御得心おとくしんくべきかわれこそは
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
誤つて殺害せつがいせしも畢竟ひつきやうは其と云懸いひかけしが口ごもり何事も皆前世の約束と斷念あきらめ居候得ば一日も早く御仕置しおき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
わしも、はあ、うかしてるでなからうかとおもふだよ。いてくんろさ。女房にようばうがとふと、あの容色きりやうだ。まあ、へい、なんたら因縁いんねん一所いつしよつたづら、と斷念あきらめて、押瞑おツつぶつた祝言しうげんおもへ。
鑑定 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
然しあまりに私が素知らぬ振をしてゐるので、さすがに斷念あきらめたものか、昨年あたりからはその事も失くなつてゐた。そしてそれ以後は私の前では打つて變つて愼しやかに從順おとなしくなつてゐた。
姉妹 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
これでは何方どつち病人びやうにんわからなくなつた。自分じぶん斷念あきらめてをふさいだ。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)