拘引こういん)” の例文
それがために、旅僧の処置に困っていた勘右衛門に嫌疑がかかり拘引こういんせられることになった。哀れな千代は、そんなこんなで気が狂った。
風呂供養の話 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
わたしはかくしにたった十一スーしか持たなかった。それだけでは口輪を買うにも足りなかった。巡査がわたしを拘引こういんするかもしれない。
ここににせおしが一人あるとします。何か不審の件があって警察へ拘引こういんされる。尋問に答えるのが不利益だと悟って、いよいよ唖の真似まねをする。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
でも、まア三原さんの体からは発見されないで済んだようですが外に二人ほど男優とライト係とが拘引こういんされちまって、まだ帰ってこないのです。
獏鸚 (新字新仮名) / 海野十三(著)
さて——その唯一の通行人は「挙動不審」とあって拘引こういんされ、審問の結果「交通妨害」のかどで見事に処罰されました。
字で書いた漫画 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
刑事につかまって拘引こういんされて行く時の心持、妻子に引渡された時の当惑と面目なさ。其身になったらどんなものだろう。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
学校へ行く準備したくをする為に、朝早く丑松は蓮華寺へ帰つた。庄馬鹿を始め、子坊主迄、談話はなしは蓮太郎の最後、高柳の拘引こういんうはさなぞで持切つて居た。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「アオイ・ホテル」のお六の亭主が東京郊外で令嬢殺しの疑いで拘引こういんされ、娼家街しょうかがいのマリアとしてお六のコケットな写真が新聞の三面を賑した事件。
スポールティフな娼婦 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
拘引こういんして厳重に検べたんだね。どこへそれまで隠して置いたか。先刻は無かった紙入を、という事になる……とです。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかしこんな心遣こころづかい事実じじつにおいても、普通ふつう論理ろんりにおいてもかんがえてればじつ愚々ばかばかしい次第しだいで、拘引こういんされるだの
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
些少さしょうでも疑わしい者は容赦なく拘引こういんされた。その網に引っかかっただけでも、おびただしい人数といわれている。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
「ふふむ、そうか。左様な証拠があるとあっては、無礙むげに老父や弟を拘引こういんもなるまい。宋江の追捕ついぶは、懸賞金をかけて、ひろく他をさがさせることにしよう」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これ程証拠が揃って、しかも弁解が成立たないとしたら、最早もはや犯罪は確定したといってもいい。私は君を、山北鶴子殺害の容疑者として拘引こういんする外はないのだ
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
新八はふるえながら、しかしそのくらいのことで、侍一人を拘引こういんできるのか、とけんめいに訊き返した。
警部の温顔おんがんにわかいかめしうなりて、この者をも拘引こういんせよとひしめくに、巡査は承りてともかくも警察に来るべし、寒くなきよう支度したくせよなどなお情けらしう注意するなりき。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
御厚誼ごかうぎは謝する所を知りません、けれど私の一身には一人探偵が附けてあるのです、取分け既に拘引こういんと確定しましたからは、今くお話致し居りまする私の一言一句をさへ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
やがて田島さんが忙がわしく帰って来て、折井君はとうとう六兵衛老人を拘引こういんしたという。
慈悲心鳥 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
有力な嫌疑者として、娘よし子の情夫が拘引こういんされて取り調べを受けたが、彼は疑うべき余地のないアリバイを示したので、警察はにわかに方針を変えねばならなくなりました。
新案探偵法 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
彼等の村の駐在所の巡査は早速さつそく彼を拘引こういんした上、威丈高ゐたけだかに彼を叱りつけた。
貝殻 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
拘引こういんではない。無論そんな扱いを受ける筋はない。任意出頭にんいしゅっとうだった。しかしいきなり署長の前へ突き出されたにはすくなからず当惑した。署長は同級生の親父さんだ。暑中遠方御苦労といたわった後
ある温泉の由来 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
このうえは、こんどの事件に直接関係のある証拠をさがしだして、なにがなんでも博士を拘引こういんしたいと思った。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
で、貴方あなた其爲そのため拘引こういんされて、裁判さいばんわたされ、監獄かんごくれられ、あるひ懲役ちようえきれるとしてて、れが奈何どうです、の六號室がうしつにゐるのよりもわるいでせうか。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
どろぼうをして拘引こういんされた男や、けんかをしてつかまった男がはじめに裁判さいばんを受けた。弁護人べんごにん無罪むざいっていたけれど、それはみんな有罪ゆうざい宣告せんこくされた。
だが、迂闊うかつに手出しをするのは考え物だ。親方というのを拘引こういんして、じつを吐かせるのもいいが、それでは却って、元兇を逸する様な結果になるまいものでもない。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「山手署の方では、全然関知しないことだが恐喝罪きょうかつざいということで、拘引こういんするんじゃ、署ではすぐ、水上署の方へ引き渡すから、あっちへ行って、聞いたらよかろう」
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
挙動不審のかど拘引こういんされた嫌疑者、浮浪人、外国人らは全国でおびただしい数にのぼった。手がかりらしく思われる事物は、いかに些細ささいなことでもいちいち究極きゅうきょくまでたぐった。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
十五日、栃木県足利郡久野村の村長稲村與一、室田忠七、設楽常八、群馬県邑楽おふら郡渡良瀬村の村長谷富三郎、多々良村の亀井明次、西谷田村の荒井嘉衛等は各〻自宅より拘引こういんされたり。
鉱毒飛沫 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「おやじは町で郵便局の役人でした。私が七つの年に拘引こういんされてしまいました」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
翌朝食事終りてのち、訊問所に引きいだされて、住所、職業、身分、年齢、出生しゅっしょうの地の事ども訊問せられ、ついにこのたび当地に来りし理由をただされて、ただ漫遊なりと答えけるに、かくなんじらを拘引こういんするは
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
北浜の父の事務所から、私は突然N署に拘引こういんされた。
大阪万華鏡 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
「何もたって拘引こういんするとは言わん。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
で、貴方あなたがそのため拘引こういんされて、裁判さいばんわたされ、監獄かんごくれられ、あるい懲役ちょうえきにされるとしてて、それがどうです、この六号室ごうしつにいるのよりもわるいでしょうか。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「きさまのいぬがあすも口輪くちわをしていなかったらすぐきさまを拘引こういんする。それだけを言いわたしておく」
朝から拘引こういんされていた給仕長の圭さんと、コックの吉公とが、夕方になって一帰店きたくを許され、これと入れかわりに電気商岩田京四郎が、検挙あげられてしまった。
電気看板の神経 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それからなおいろいろの訊問があったり、警察医の検死があったり、部屋の内と外の現場調べがあったりしたが、その揚句あげく、二郎は遂に其場そのばから拘引こういんされる事になった。
火縄銃 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
梅子は涙み込みつ「是れは貴郎あなたの少しも御関係ないことです、けれど今の世の中は、貴郎を——拘引こういんする奸策を廻らして居るのです、冷かな手は黒き繩もて貴郎の背後うしろに迫つて居りますよ——」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
十一 発覚拘引こういん
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
わたしはそのときまで、イギリスでは、拘引こういんされたあくる日、裁判所さいばんしょばれるということを知らなかった。親切な人間らしい看守は、きっとそれはあしただろうと言った。
併し、どうしたんです。アア分った。君は僕が下手人だとめて、拘引こういんする積りでいるんだね。だが、刑事さん、僕を牢屋ろうやへブチ込むには、確な証拠がなくてはなるまいぜ。君はそれを
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
巡査じゆんさや、憲兵けんぺいひでもするとわざ平氣へいきよそほふとして、微笑びせうしてたり、口笛くちぶえいてたりする。如何いかなるばんでもかれ拘引こういんされるのをかまへてゐぬときとてはい。れがため終夜よつぴてねむられぬ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そして関係者一同はすぐに拘引こういんされてしまった。
白蛇の死 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「きりが深くなかったら、ぼくたちはあぶなくどろぼうのつみ拘引こういんされるところだったよ」
巡査じゅんさや、憲兵けんぺいいでもするとわざ平気へいきよそおうとして、微笑びしょうしてたり、口笛くちぶえいてたりする。如何いかなるばんでもかれ拘引こういんされるのをかまえていぬときとてはい。それがため終夜よっぴてねむられぬ。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
今度拘引こういんされた留置場りゅうちじょうにはねぎがころがしてはなかった。これこそほんとうの牢屋ろうやで、まどには鉄のぼうがはめてあって、それを見ただけで、もうどうでもにげ出したいという気を起こさせた。
しか這麼心遣こんなこゝろづかひ事實じゝつおいても、普通ふつう論理ろんりおいてもかんがへてればじつ愚々ばか/\しい次第しだいで、拘引こういんされるだの、獄舍らうやつながれるなどこと良心りやうしんにさへやましいところいならばすこしも恐怖おそるるにらぬこと
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)