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ふりがな文庫
“
戸外
(
そと
)” の例文
猫の額ほどの菜園の土を掘りながら、今頃はまたおじいさんが読んでいなさるころだと思うと、おらくは出来るだけ長く
戸外
(
そと
)
にいた。
日は輝けり
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
戸外
(
そと
)
には車を待たして置いていかにも
急
(
いそが
)
しい大切な用件を身に帯びているといった
風
(
ふう
)
で一時間もたつかたたない
中
(
うち
)
に帰ってしまった。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「
皆様
(
みなさん
)
お早う御座います」と挨拶するや、
昨日
(
きのう
)
まで
戸外
(
そと
)
に並べてあった炭俵が
一個
(
ひとつ
)
見えないので「オヤ炭は
何処
(
どっか
)
へ片附けたのですか」
竹の木戸
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
一箇月ばかりして、彼はまた演説の
腹案
(
ふくあん
)
をこしらえる必要が起ったので、
平生
(
いつも
)
のように散歩しながら思想を
纏
(
まと
)
めるつもりで
戸外
(
そと
)
へ出た。
赤い花
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
そして再び窓ぎわにかけ寄ってガラス戸を押し開いてみた時には、もはや、
戸外
(
そと
)
の闇の中には何ものの気はいもありませんでした。
象牙の牌
(新字新仮名)
/
渡辺温
(著)
▼ もっと見る
犬ともつかず、何の獣の啼声とも知れない啼声が、
戸外
(
そと
)
から鋭く聞こえてきた。昼でもこの辺りでは啼くという、
鼯
(
むささび
)
の声であった。
鸚鵡蔵代首伝説
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「ちょいと拝借」と、いって、千
法
(
フラン
)
札で二十五万法を入れたタヌの
手提げ
(
サッカ・マン
)
を持ったまま、ひょろりと
戸外
(
そと
)
へ飛び出していってしまった。
ノンシャラン道中記:04 南風吹かば ――モンテ・カルロの巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
戸外
(
そと
)
へ出ると、一寸病院の前で足を緩めたが、眞砂町へ來るや否や、早速新らしい足袋を買つて、狹い小路の奧の蕎麥屋へ上つた。
病院の窓
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
そのののしり合う声々を
戸外
(
そと
)
に聞いて、田丸主水正は、ここ作爺さんの
住居
(
すまい
)
……たった
一間
(
ひとま
)
っきりの家に、四角くなってすわっている。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
誰かの吹く普仏戦争当時の軍歌の口笛に客の足踏みが一せいに揃い、
戸外
(
そと
)
には、ちかちかする星とタキシの
呶号
(
どごう
)
と、通行の女と女の脚と
踊る地平線:06 ノウトルダムの妖怪
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
昨夜
(
ゆんべ
)
おそく、郡書記が通りすがりに、ひよいと見るてえと、
空気窓
(
かざまど
)
から豚の鼻づらが
戸外
(
そと
)
をのぞいて、ゲエゲエ呻つたちふだよ。
ディカーニカ近郷夜話 前篇:03 ソロチンツイの定期市
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
最初から、こういう話と知っていたなら、充分に注意をするのだったし、雨などは
厭
(
いと
)
わず
戸外
(
そと
)
へも出たのにと、今になって、後悔された。
魚紋
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
戸外
(
そと
)
は寒い。空は高く晴れて、どこから露が降るかと思うくらいである。手が着物にさわると、さわった所だけがひやりとする。
三四郎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
私はその扉をさも玄関番の給仕でも閉めているかのごとく音立てて閉めて電気を消すと、その一角からそうっと
戸外
(
そと
)
へ滑り出た。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
川の空をちりちりと銀の
鋏
(
はさみ
)
をつかうように、二声ほど千鳥が鳴いたあとは、三味線の声さえ聞えず
戸外
(
そと
)
も
内外
(
うち
)
もしんとなった。
老年
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
戸外
(
そと
)
へ寝るのも非常に寒くて困難ですからどうか一夜の
宿
(
やど
)
りを願いたいと言ったところが、案外快くそんならばまずこちらにお入りなさい
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
幼心には何がなんだかわからず、大きな鰻をさかせたり、お酒をのんだりしている父と、
戸外
(
そと
)
にいることがたよりなかった。
旧聞日本橋:21 議事堂炎上
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
彼
(
か
)
の提灯を持つて土間へ下り、蓑笠するや否や忽ち
戸外
(
そと
)
へ出て、物静かに戸を引寄せ、そして飛ぶが如くに行つて仕舞つた。
観画談
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
戸外
(
そと
)
は
朧夜
(
おぼろよ
)
であった。月は薄絹に
掩
(
おお
)
われたように、
懶
(
ものう
)
く空を渡りつつあった。村々は
薄靄
(
うすもや
)
に
暈
(
ぼ
)
かされ夢のように浮いていた。
土竜
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
けれども
戸外
(
そと
)
に出た田部井氏は、どうしたことか、裏の窓口へは廻ろうとしないで、生垣の表門へ立って、前の通りをグルグル見廻しはじめた。
寒の夜晴れ
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
食事が済むと、彼は
幾許
(
なにがし
)
かの勘定を払って
戸外
(
そと
)
へ出た。そして安い
旅館
(
ホテル
)
をさがす為に、場末の町へボツ/\と歩をむけた。
緑衣の女
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
「斯ういう処にいて
働
(
かせ
)
ぎに出るのかなあ!」と、私は、
穢
(
きたな
)
いような、浅間しいような気がして、
暫時
(
しばらく
)
戸外
(
そと
)
に立ったまゝ
静
(
そっ
)
と内の様子を見ていた。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
此方の曲者も人が来たなと思いましたから怖いゆえ窓から
戸外
(
そと
)
へ出ようと思い、這うようにして玄関の方へ出に掛ります。
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
御骨も折れようが
御辛抱
(
ごしんぼう
)
なさい、急いで立派な寺なぞ建てないで、と云って
別
(
わかれ
)
を告げる。
戸外
(
そと
)
に紫の
蝦夷菊
(
えぞぎく
)
が咲いて居た。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
そのくせ、内部で鳴っている音が、
戸外
(
そと
)
にいる彼等にも判然と聴き取れるので……、今か今かと待つうちにも、よほどの時間が経過してしまった。
聖アレキセイ寺院の惨劇
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
その時私は遠く
戸外
(
そと
)
に出て遊んでゐた。家の下女が松平神社の前で私を見つける迄には、少しく時間が経つた。下女は
父の死
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
それに
連
(
つ
)
れて
私自身
(
わたくしじしん
)
の
気持
(
きもち
)
もずっと
晴
(
は
)
れやかになり、
戸外
(
そと
)
へ
出掛
(
でか
)
けて
漫歩
(
そぞろあるき
)
でもして
見
(
み
)
たいというような
風
(
ふう
)
になりました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
戸外
(
そと
)
も真暗で寒かった。ふだんなら気味が悪くって、とても
夜中
(
よなか
)
にひとりで歩くことなんかできないのだけれども、その晩だけはなんともなかった。
火事とポチ
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
今はちょうど、患者さんが眠って見えますので、こうして
戸外
(
そと
)
へ出た訳で御座いますが、昨夜、十二時頃、お隣りで、甲高い女の声がきこえました。
好色破邪顕正
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
一日々々と
戸外
(
そと
)
は春景色になつた。お梅は
故郷
(
くに
)
の親達や弟妹が花見に來る時節の近づくのを樂みにして待つてゐた。
孫だち
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
私は何かに打たれたように、フイと席を立って
戸外
(
そと
)
へ出ました。まだ明い。内の二階で、波ばかり、青く欄干にかかったようには、暮れてはいません。
浮舟
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
中川も同じ心にて「ホントに小山君はどうしたろう」と立って窓より
戸外
(
そと
)
を
覗
(
のぞ
)
くにあだかもこの時大原家を
立出
(
たちい
)
でたる小山が
此方
(
こなた
)
を望んで来かかれり。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
戸外
(
そと
)
では風が鎧戸に吹きつけて騒々しい音をたて、また古めかしい風見を、独楽のように、からから𢌞していた。
寡婦
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
「今、あちらの方の山を越えて、この宿へ参った方がございます、その方が、
戸外
(
そと
)
で御案内を乞うておりますよ」
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ラエーフスキイは立ち上がると窓に寄って、額をガラスに押しあてた。
戸外
(
そと
)
は荒れ狂うめざましい雷雨だった。
決闘
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
これは火事でも起ったのかと思い、戸口を開けて
闇
(
やみ
)
の
戸外
(
そと
)
へ一歩踏み出した
途端
(
とたん
)
に、
脾腹
(
ひばら
)
をドスンと一つきやられて、その
儘
(
まま
)
何もかも判らなくなりました。
赤外線男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
何を考えたか、自分も母家へ取って返して、薄暗い中に
蠢
(
うごめ
)
く人々を一応見廻すと町の人達に後の事を頼んで、追い立てられるようにサッと
戸外
(
そと
)
へ飛出します。
銭形平次捕物控:011 南蛮秘法箋
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
その病のさま一時は性命をさへ危くすべくおもはれぬれど、今は早や恢復に近し。猶
戸外
(
そと
)
には出でずとなり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
戸外
(
そと
)
はとつぷり日が暮れて、龍王山の上に秋の夜の星が親しみ易く光つて居る。(明治四四、十、十八)
山遊び
(旧字旧仮名)
/
木下利玄
(著)
靴屋
(
くつや
)
はこれを
聞
(
き
)
くと、
襯衣
(
シャツ
)
のまんまで、
戸外
(
そと
)
へ
駈出
(
かけだ
)
して、
眼
(
め
)
の
上
(
うえ
)
へ
手
(
て
)
を
翳
(
かざ
)
して、
家根
(
やね
)
の
上
(
うえ
)
を
眺
(
なが
)
めました。
杜松の樹
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール・グリム
、
ヴィルヘルム・カール・グリム
(著)
私
(
わたし
)
は
戸外
(
そと
)
に
耳
(
みゝ
)
を
聳
(
そばだ
)
て、それから
少
(
すこ
)
し
首
(
くび
)
をもたげて
靜
(
しづ
)
かな
部屋
(
へや
)
の
中
(
なか
)
を
見廻
(
みまは
)
しながら、
自問自答
(
じもんじたふ
)
をした。
日の光を浴びて
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
弁天山の鐘の音の落ちかゝるように響いて、
戸外
(
そと
)
のみぞれをまじえた雨はいつか雪になっていた……
春泥
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
なほも起つて來る強風は、私の耳には何か嘆き悲しんでゐる
微
(
かす
)
かな音を包み消してゐるやうに聽えるのです。家の内からか
戸外
(
そと
)
からか最初のうちは分りませんでした。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
戸外
(
そと
)
は霜が降って寒いと
見
(
みえ
)
て往来を通る人の下駄の音が冴えて聞える。まだ宵の口には相違ない。私はランプを
点
(
とも
)
そうと思って、手探りに
四辺
(
あたり
)
を探したが分らなかった。
老婆
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
ルパンはやや暫くの間沈思していたが、突然、
戸外
(
そと
)
へ飛びだして、急いで
貸自動車
(
タクシー
)
に飛び乗った。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
戸外
(
そと
)
は雪がちらちら降っていて、時々吹雪のような風が窓の戸をガタガタ音をさして、その隙間から、ヒューと寒く
流込
(
ながれこ
)
むと、
申合
(
もうしあわ
)
した様に子供
達
(
だち
)
は、
小
(
ちいさ
)
な肩を
皆
(
みんな
)
縮める
千ヶ寺詣
(新字新仮名)
/
北村四海
(著)
戸外
(
そと
)
へ
出
(
づ
)
ることを
禁
(
とゞ
)
められた、それゆゑマンチュアの
急用
(
きふよう
)
も
其場
(
そのば
)
で
止
(
と
)
められてしまうたわいの。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
社宅を辞して
戸外
(
そと
)
に出ると夜は
更
(
ふ
)
けて月の光は真昼のようである。私は長峰の下宿に帰らず、そのまま夢のような大地を踏んで石壇道の雨に洗われて険しい行人坂を下りた。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
車大工というものは、いつも
戸外
(
そと
)
で、中庭で、仕事をしなくちゃならない。親切な親方の家じゃ仕事場でするんだが、決してしめ切った所じゃない。広い場所がいるからだ。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
そして小さな燗徳利を持つて
戸外
(
そと
)
へ出てゆく。オヤ/\二合だけ買ひに行くのと見える。
岬の端
(新字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
“戸外”の意味
《名詞》
家の外。屋外。
(出典:Wiktionary)
戸
常用漢字
小2
部首:⼾
4画
外
常用漢字
小2
部首:⼣
5画
“戸外”で始まる語句
戸外運動
戸外歩心