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ぐまい
ふりがな文庫
“
愚昧
(
ぐまい
)” の例文
鶴輔からなった今の鶴枝も、しかし、けっして
愚昧
(
ぐまい
)
でもない。第一、楽に時代と一緒に歩いているところに、先代同様の
怜悧
(
れいり
)
を感じる。
随筆 寄席風俗
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
「なあに、俺は大丈夫だ! 怒りを心に持っている。そのうちに
愚昧
(
ぐまい
)
の連中を、一人残らず吹き飛ばしてみせる。まずそれまで辛抱さ」
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
准后の
廉子
(
やすこ
)
にしろ、
賢
(
かしこ
)
すぎるくらいな女性だ。文観の
宗旨
(
しゅうし
)
がたんなる邪教や
愚昧
(
ぐまい
)
な説法にすぎぬなら、それにたばかられるはずはない。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ただ一日でも口笛を吹かれずに寛容されるとは、だらけ切った時代というのほかはなく、
愚昧
(
ぐまい
)
きわまる批評界というのほかはないのだ。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
愚昧
(
ぐまい
)
化することだけはできぬわい。俺は貴様の弟子の外光派に
唾
(
つば
)
をひっかける。俺は今度会ったら医者に抗議を申し込んでやる
冬の蠅
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
▼ もっと見る
一人は禿頭にして肥満すること豚児の如く
愚昧
(
ぐまい
)
の相を漂わし、その友人は黒髪
明眸
(
めいぼう
)
の美少年なりき、と。黒髪明眸なる友人こそ即ち余である。
風博士
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
現代の教育はいかほど日本人を新しく
狡猾
(
こうかつ
)
にしようと
力
(
つと
)
めても今だに一部の
愚昧
(
ぐまい
)
なる民の心を奪う事が出来ないのであった。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
この男の
愚昧
(
ぐまい
)
さの必然性が——「何故に彼が常にかくも、他人の目からは愚かと見えるような行動に出ねばならないのか、」
狼疾記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
吾輩の水彩画のごときはかかない方がましであると同じように、
愚昧
(
ぐまい
)
なる通人よりも山出しの
大野暮
(
おおやぼ
)
の方が
遥
(
はる
)
かに上等だ。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
大衆は永久に
愚昧
(
ぐまい
)
であり、政治家は永久に悪魔的であり、政治は本質的に非合理性を持つということはできないのである。
政治学入門
(新字新仮名)
/
矢部貞治
(著)
ジャン・ヴァルジャンはマリユスに対してひそかに戦いを始めたが、マリユスはその情熱と若年との崇高な
愚昧
(
ぐまい
)
さでそれを少しも察しなかった。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
ジャン・ヴァルジャンは
片田舎
(
かたいなか
)
の
愚昧
(
ぐまい
)
なる一青年であった。彼は一片のパンを盗んだために、ついに十九年間の牢獄生活を送らねばならなかった。
レ・ミゼラブル:01 序
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
抜きたがるような人間は野蛮で
愚昧
(
ぐまい
)
ときまっているので、そこがまた始末に困るのだが、力で負けると次には卑劣な報復をしたがるものですからな
いさましい話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
十四郎はまったく過去の記憶を
喪
(
うしな
)
っていて、あの明敏な青年技師は、一介の農夫にも劣る
愚昧
(
ぐまい
)
な存在になってしまった。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
かく
清
(
いさぎよ
)
きものの、いかなれば
愚昧
(
ぐまい
)
六四
貪酷
(
どんこう
)
の人にのみ
集
(
つど
)
ふべきやうなし。
今夜
(
こよひ
)
此の
憤
(
いきどほ
)
りを吐きて
年来
(
としごろ
)
のこころやりをなし侍る事の
喜
(
うれ
)
しさよといふ。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
老生もとより
愚昧
(
ぐまい
)
と
雖
(
いえど
)
も教えて責を負わざる無反省の教師にては
無之
(
これなく
)
、昨夕、老骨奮起一番して弓の道場を訪れ申候。
花吹雪
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
ただ文三のみは、
愚昧
(
ぐまい
)
ながらも、まだお勢よりは少しは智識も有り、経験も有れば、若しお勢の眼を覚ます者が必要なら、文三を措いて
誰
(
たれ
)
がなろう?
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
どうか
菽麦
(
しゅくばく
)
すら弁ぜぬ程、
愚昧
(
ぐまい
)
にして下さいますな。どうか又雲気さえ察する程、
聡明
(
そうめい
)
にもして下さいますな。
侏儒の言葉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
連歌の単調
此
(
かく
)
の如し。如何に
愚昧
(
ぐまい
)
なる足利時代の文学者といへども、半人一人のこれに不満なる者なからんや。
古池の句の弁
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
社会民衆の
恣意
(
しい
)
に任せて
安堵
(
あんど
)
しているのも間違っている。民衆は賢明なところもあるが
愚昧
(
ぐまい
)
なところもある。
外来語所感
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
彼女はそういうと、彼らの
傍
(
そば
)
をはなれた。こういう人事を尽すということも花桐には
愚昧
(
ぐまい
)
の極みに思われた。
花桐
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
決して貴方のお言葉を疑うわけではないのですが……どうか哀れな
愚昧
(
ぐまい
)
な夫を救ってやるとお思いになって
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
「どうぞ、それを日本国へ持ち帰ることはやめて下さい。かかる
愚昧
(
ぐまい
)
なことを書いたものが、わが英国にあったということが知れては、わが国の恥辱であるから」
妖怪学一斑
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
よし自家相伝の
意
(
こころ
)
はないまでも、日本刀剣づくりの大道から観て、どうして己が苦心になる方策をおのれのみのものとして死の暗界に抱き去るような
愚昧
(
ぐまい
)
を犯そう!
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
私
(
わたくし
)
が
愚昧
(
ぐまい
)
でございまして、それゆえ申上げますことも
前後
(
あとさき
)
に相成ります事でございまして、何かとお疑ぐりを受けますことに相成りましたが、なか/\何う致しまして
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
忍びたる
不忠
(
ふちう
)
不義
(
ふぎ
)
の
曲者
(
くせもの
)
なり又汝等が兄喜内は
善惡
(
ぜんあく
)
邪正
(
じやしやう
)
の
別
(
わか
)
ちなく
親
(
した
)
しきを愛し
疎
(
うと
)
きを
惡
(
にく
)
む
誠
(
まこと
)
に國を
亂
(
みだ
)
すの
奸臣
(
かんしん
)
なる故我
討
(
うち
)
取て
立退
(
たちのき
)
しを汝等は
愚昧
(
ぐまい
)
なれば是を
覺
(
さと
)
らず我を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
ねがわくは先輩諸氏
愚昧
(
ぐまい
)
小生の
如
(
ごと
)
きをも清き諸氏の集会の中に諸氏の
同朋
(
どうぼう
)
として許したまえ。
ビジテリアン大祭
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
彼等
(
かれら
)
は
自分
(
じぶん
)
で
田畑
(
たはた
)
が
忙
(
いそが
)
しい
時
(
とき
)
にも
其
(
そ
)
の
日
(
ひ
)
に
追
(
おは
)
れる
食料
(
しよくれう
)
を
求
(
もとめ
)
る
爲
(
ため
)
に
比較的
(
ひかくてき
)
收入
(
みいり
)
のいゝ
日傭
(
ひよう
)
に
行
(
ゆ
)
く。
百姓
(
ひやくしやう
)
といへば
什麽
(
どんな
)
に
愚昧
(
ぐまい
)
でも
凡
(
すべ
)
ての
作物
(
さくもつ
)
を
耕作
(
かうさく
)
する
季節
(
きせつ
)
を
知
(
し
)
らないことはない。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
単なる形の似よりから凡ての現われと同じものと見るのは、
甚
(
はなはだ
)
しき
愚昧
(
ぐまい
)
な見断である。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
私はそれを、人間の知力にとつて自明の公理と見てゐたのだ。私は唯、それを他人の前にわざわざ表明する大仕掛な仕草に
愚昧
(
ぐまい
)
と虚偽とを見、それへの羞恥感に堪へられなかつたまでだ。
母たち
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
緑の
樹蔭
(
こかげ
)
に掩はれた村、肥えて
嬉々
(
きゝ
)
として戯れてゐる牧獣や
家禽
(
かきん
)
の群、薫ばしい草花に包まれた家屋、清潔に
斉然
(
きちん
)
と整理された納屋や倉、……
甦
(
よみがへ
)
つた農業!
愚昧
(
ぐまい
)
な怠慢な奴隷達から開放された
新らしき祖先
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
愚昧
(
ぐまい
)
に
饒舌
(
しゃべ
)
ると間違います。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その
顔貌
(
がんぼう
)
は接近してる主人たちのとおりに仕上げられる。
愚昧
(
ぐまい
)
な者の飼ってる猫は、怜悧な者の飼ってる猫と同じ眼つきではない。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
愚昧
(
ぐまい
)
なる周囲から道徳的破産を宣せらるるの恥辱、すべてを巻き込まんとする虚偽粉飾の生温い空気、その他あらゆるものに彼の霊肉はさいなまれた。
ジャン・クリストフ:01 序
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
じたい、禅家では、怨霊などというものは、
嬰児
(
あかご
)
の熱病ほどにも見ておらん。
愚昧
(
ぐまい
)
迷妄な沙汰とわらっておる。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
傲慢
(
ごうまん
)
と丁重と、憤激と
愚昧
(
ぐまい
)
とその混合、真実の苦情と虚偽の感情とのその
混淆
(
こんこう
)
、
暴戻
(
ぼうれい
)
の快感をむさぼる悪人らしいその破廉恥、醜い魂のその厚顔なる赤裸
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
そうして、
愚昧
(
ぐまい
)
な原住民の驚嘆を前に、到る処に小ピラミッドやドルメンや環状
石籬
(
せきり
)
を築き、
瘴厲
(
しょうれい
)
な自然の中に己が強い意志と慾望との印を打建てたのであろう。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
もちろん
愚昧
(
ぐまい
)
というものではない、——いっそ愚昧であるほうがよい、という種類の、したがって一藩の主君としては、もっとも好ましからぬ性格のようであった。
竹柏記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
独裁政や専制政は大衆の無知と
愚昧
(
ぐまい
)
を土台にして成り立つが、民主主義は正にこのような人間の向上性を前提とし、大衆の向上と政治の合理化を信ずるところに成り立つ。
政治学入門
(新字新仮名)
/
矢部貞治
(著)
五「
今日
(
こんにち
)
は
上
(
かみ
)
の御名代として
罷出
(
まかりで
)
ましたが、
性来
(
せいらい
)
愚昧
(
ぐまい
)
でございまして、申上げる事も
遂
(
つい
)
にお気に障り、お腹立に相成ったるかは存じませんが、
偏
(
ひとえ
)
に御容赦の程を願います」
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
愚昧
(
ぐまい
)
な二人の青道心を、いくらかでも悟りの方へ近づけてやろうという、しかも芸者買という最も誤解され易い手段を用いて敢て後輩を導くという、容易ならぬことである。
勉強記
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
可愛さあまって憎さが百倍とは、このことであろうか、などと一文の金もなき謂わば賤民、人相よく、ひとりで呟いてひとりで微笑んでいた。私は、この世の
愚昧
(
ぐまい
)
の民を愛する。
二十世紀旗手
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
アウエルバツハの穴蔵に
愚昧
(
ぐまい
)
の学生を
奔
(
はし
)
らせたる、メフイストフエレエスの哄笑なり。
LOS CAPRICHOS
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
豪慢
(
ごうまん
)
なる、俗悪なる態度は、ちょうど、娘を芸者にして、
愚昧
(
ぐまい
)
なる習慣に安んじ、罪悪に
沈倫
(
ちんりん
)
しながら、しかも
穏
(
おだや
)
かにその日を送っている
貧民窟
(
ひんみんくつ
)
へ、正義道徳、自由なぞを商売にとて
曇天
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「そんな静かな暮しに何ごとが起るものぞ。わしの考えるところによると、その阿闍利こそ大徳の聖といってもよいくらいだ。名に走らず、
愚昧
(
ぐまい
)
に突き入らず、わしは会うて話したいくらいじゃ。」
あじゃり
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
後の八代将軍吉宗たる源六郎もちろん
愚昧
(
ぐまい
)
ではない。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
音楽を愛していたが、たまらないほどの
愚昧
(
ぐまい
)
さで音楽のことを語っていた。その感激の露骨な卑しさは、子供の感情の純潔さをひどく傷つけた。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「バルーさんに尋ねなかったからこんなことになるんだ!」——その
愚昧
(
ぐまい
)
な態度を検事は陪審員らに注意した。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
「——はやく、奪ってこい」
愚昧
(
ぐまい
)
な若君だが、こんな懸け引きは上手である。七郎は、いくら主人の子でもと、ちょっと小憎く思ったが、泣く子と地頭だった。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
曾ては国を
念
(
おも
)
って
夙夜
(
しゅくや
)
寝ることのなかった者が、やがては
徒
(
いたず
)
らに肥え太って身じろぎも重く、壮年にして早くも後世の安楽をたのむという
愚昧
(
ぐまい
)
なことになってしまう
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
愚
常用漢字
中学
部首:⼼
13画
昧
常用漢字
中学
部首:⽇
9画
“愚”で始まる語句
愚
愚痴
愚弄
愚鈍
愚図愚図
愚図
愚物
愚図々々
愚者
愚僧