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悲哀
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かなしみ
ふりがな文庫
“
悲哀
(
かなしみ
)” の例文
新しい言葉を学ぶことによって、岸本は心の
悲哀
(
かなしみ
)
を忘れようと志した。同宿の留学生が天文台の近くに住む語学の教師を彼に紹介した。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
そういう人々は、墓詣りということが
普通
(
ただ
)
の習慣となってしまっているらしい。『時』が彼等の
悲哀
(
かなしみ
)
を磨り減らしたのであろう。
碧眼
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
けれども僕は里子のことを思うと、
恨
(
うらみ
)
も
怒
(
いかり
)
も消えて、たゞ限りなき
悲哀
(
かなしみ
)
に沈み、この悲哀の底には愛と絶望が戦うて居るのです。
運命論者
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
余は一個の
浮浪
(
ふろう
)
書生
(
しょせい
)
、筆一本あれば、住居は
天幕
(
てんまく
)
でも
済
(
す
)
む自由の身である。それでさえ
塒
(
ねぐら
)
はなれた小鳥の
悲哀
(
かなしみ
)
は、其時ヒシと身に
浸
(
し
)
みた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
底深い
群青色
(
ぐんじやういろ
)
の、表ほのかに
燻
(
いぶ
)
りて弓形に張り渡したる眞晝の空、其處には力の滿ち極まつた
靜寂
(
しじま
)
の
光輝
(
かがやき
)
があり、
悲哀
(
かなしみ
)
がある。
樹木とその葉:12 夏のよろこび
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
▼ もっと見る
新らしい
悲哀
(
かなしみ
)
と
驚異
(
おどろき
)
、まだ固い真青な柿の実はキラキラと厚い葉の簇から銀と緑を射返し、あの華奢な白猫のゐたあたりには
桐の花
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
遂
(
つい
)
今迄その感情の満足を
図
(
はか
)
らなかつた男だけに、言ふ許りなき不安が、『男は死ぬまで
孤独
(
ひとりぼつち
)
だ!』といふ
渠
(
かれ
)
の
悲哀
(
かなしみ
)
と共に、胸の中に乱れた。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
大人になって、偉い人になって、遊びに行くと誓った私はお屋敷の子の
悲哀
(
かなしみ
)
を抱いて
掟
(
おきて
)
られ
縛
(
いまし
)
められわずかに過ぎし日を顧みて慰むのみである。
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
「すべて歓楽の裏一重には
悲哀
(
かなしみ
)
があるとか申しますが、その悲哀が
偶然
(
ゆくりなく
)
あなたを襲うたのでござりましょうよ! おや、
夜鶯
(
ようぐいす
)
が啼いております」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
貢さんは
何時
(
いつ
)
も聞く阿母さんの話だけれど、今日は
冷
(
つめ
)
たい沼の水の
底
(
そこ
)
の底で聞かされた様な気がして、小供心に頼り無い沈んだ
悲哀
(
かなしみ
)
が
充満
(
いつぱい
)
に成つた。
蓬生
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
と、私は気が狂ってしまうかと思ったほど
劇
(
はげ
)
しい
悲哀
(
かなしみ
)
にとらわれてしまった。私は自分というものから脱れるためにはどうしたら好いかと考えてみた。
ある自殺者の手記
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
一枚の図をひく時には一心の誠をそれに注ぎ、五尺の身体こそ犬鳴き
鶏
(
とり
)
歌い権兵衛が家に
吉慶
(
よろこび
)
あれば
木工右衛門
(
もくえもん
)
がところに
悲哀
(
かなしみ
)
ある俗世に
在
(
あ
)
りもすれ
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
ロレ
諸天善神
(
しょてんぜんじん
)
、
願
(
ねが
)
はくは
此
(
この
)
神聖
(
しんせい
)
なる
式
(
しき
)
に
笑
(
ゑ
)
ませられませい、ゆめ
後日
(
ごじつ
)
悲哀
(
かなしみ
)
を
降
(
くだ
)
さしまして
御譴責
(
ごけんせき
)
遊
(
あそ
)
ばされますな。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
私は小さき胸にはりさけるような
悲哀
(
かなしみ
)
を押しかくして、ひそかに薄命な母を
惨
(
いた
)
んだ、私は
今茲
(
ことし
)
十八歳だけれども、私の顔を見た者は誰でも二十五六歳だろうという。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
それに依って得た
歓楽
(
よろこび
)
は、必ずしも大きくはありませんでしたが、その後に来た
悲哀
(
かなしみ
)
は、
凄惨
(
せいさん
)
と言っても足りないくらい、実に想像を絶して、大きくやって来ました。
人間失格
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
清三は時々その幼い弟のことを思い起こすことがある。死んだ時の
悲哀
(
かなしみ
)
——それよりも、今生きていてくれたなら、話相手になって、どんなにうれしかったろうと思う。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
すべての
欲望
(
のぞみ
)
の中の一つの
欲望
(
のぞみ
)
——あの静かなところにいては、ロアンのように赤いあの赤い唇から何の声も出すことは出来ないのか? この世に、王の
悲哀
(
かなしみ
)
のごとき
悲哀
(
かなしみ
)
はない。
ウスナの家
(新字新仮名)
/
フィオナ・マクラウド
(著)
唯乳母が居て、地獄、極楽、
剣
(
つるぎ
)
の山、三途の川、賽の河原や地蔵様の話を始終聞かしてくれた。
四五歳
(
よついつつ
)
の彼は身にしみてその話を聞いた。そうして子供心にやるせない
悲哀
(
かなしみ
)
を感じた。
地蔵尊
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
女は美人に生れると、
悲哀
(
かなしみ
)
が多い、「芸術」が必要な
所以
(
ゆゑん
)
だ。醜女に生れると
絶念
(
あきら
)
めなければならぬ、「哲学」が無くてはならぬ訳である。哲学は蛇と共に女の一番嫌ひな物である。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
自然また大きな
悲哀
(
かなしみ
)
もやつて
來
(
こ
)
ないのだ。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
と娘らしい
悲哀
(
かなしみ
)
が憤怒に代っていったが
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
悲哀
(
かなしみ
)
!遂に吾れをころす………。
かの日
(新字旧仮名)
/
漢那浪笛
(著)
蒼白
(
あをざ
)
めた鏡は
悲哀
(
かなしみ
)
の
室
(
へや
)
を見つめて
太陽の子
(旧字旧仮名)
/
福士幸次郎
(著)
幾何
(
いか
)
ばかりの
悲哀
(
かなしみ
)
でありませうか
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
悲哀
(
かなしみ
)
は
悲哀
(
かなしみ
)
のままの姿で
愛の詩集:03 愛の詩集
(新字旧仮名)
/
室生犀星
(著)
新しい住居で今一度
逢
(
あ
)
おうということを約して置いて、やがて民助はそこそこに谷中の方へ戻って行った。強い
悲哀
(
かなしみ
)
が岸本の心に残った。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
長男の浩一は、過る日露の役に第五聨隊に従つて、
黒溝台
(
こくこうだい
)
の悪戦に壮烈な戦死を遂げた。——これが静子の
悲哀
(
かなしみ
)
である。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
もしはかないものでないならば、たとい人はどんな境遇に
堕
(
おち
)
るとも自分が今感ずるような深い深い
悲哀
(
かなしみ
)
は感じない
筈
(
はず
)
だ。
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
まだ残っている頬擦りや
接吻
(
くちづけ
)
の
温
(
あたた
)
かさ柔かさもすべて涙の中に溶けて行って私に残るものは
悲哀
(
かなしみ
)
ばかりかと思われる。
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
如何に頑固な先生の
加担者
(
かとうど
)
でも、如何程
苦
(
にが
)
り切ったあなたの
敵対者
(
てきたいしゃ
)
でも、堪え難いあなたの苦痛と
断腸
(
だんちょう
)
の
悲哀
(
かなしみ
)
とは、其幾分を感ぜずに居られません。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
多くの人達は獣人族のために奴隷にされてコキ使われよう! かりにも一国の主たる者が、どうして平然としていられよう。ここだ、王者の
悲哀
(
かなしみ
)
は!
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ピータ はて、
樂人
(
がくじん
)
さん、
何故
(
なぜ
)
と
言
(
い
)
うて、
今
(
いま
)
、
乃公
(
おれ
)
の
心
(
こゝろ
)
の
中
(
なか
)
では「
予
(
わし
)
の
心
(
こゝろ
)
は
悲哀
(
かなしみ
)
に……」が
始
(
はじ
)
まってゐる
最中
(
さいちゅう
)
ぢゃ。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
混雑また混雑、群衆また群衆、行く人送る人の心は皆
空
(
そら
)
になって、天井に響く物音が更に旅客の胸に反響した。
悲哀
(
かなしみ
)
と
喜悦
(
よろこび
)
と好奇心とが停車場の到る処に
巴渦
(
うず
)
を巻いていた。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
ああ、あまりにすぐれた、痛みを覚えるほどの美しさ! わが愛の愛デヤドラ、わが
悲哀
(
かなしみ
)
の中のかなしみ、わが歎きのなかのなげき! この悲しみのために、わしは老いてしまうた。
ウスナの家
(新字新仮名)
/
フィオナ・マクラウド
(著)
ああ、しかし、自分は、大きな
歓楽
(
よろこび
)
も、また、大きな
悲哀
(
かなしみ
)
もない無名の漫画家。
人間失格
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
上川原野
(
かみかはげんや
)
を南方へ下つて行く。水田が黄ばむで居る。田や畑の其處此處に燒け殘りの黒い木の株が立つて居るのを見ると、開け行く北海道にまだ死に切れぬアイヌの
悲哀
(
かなしみ
)
が身にしみる樣だ。
熊の足跡
(旧字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
一枚の図をひく時には一心の誠を其に注ぎ、五尺の身体こそ犬鳴き鶏歌ひ權兵衞が家に
吉慶
(
よろこび
)
あれば
木工右衞門
(
もくゑもん
)
が所に
悲哀
(
かなしみ
)
ある俗世に在りもすれ、
精神
(
こゝろ
)
は紛たる因縁に
奪
(
と
)
られで必死とばかり勤め励めば
五重塔
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
何時
(
いつ
)
も
何時
(
いつ
)
もわが
悲哀
(
かなしみ
)
の
背景
(
バツク
)
には
銀色
(
ぎんいろ
)
の
密境
(
みつきやう
)
ぞ住む。
東京景物詩及其他
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
其の
悲哀
(
かなしみ
)
は時を打つ
振子
(
ふりこ
)
のやうに
太陽の子
(旧字旧仮名)
/
福士幸次郎
(著)
年わかき
悲哀
(
かなしみ
)
とそのきほひは
かの日の歌【四】
(新字旧仮名)
/
漢那浪笛
(著)
こんなおまんの心づかいも、吉左衛門の
悲哀
(
かなしみ
)
を柔らげた。吉左衛門は床の上にすわったまま、
枕
(
まくら
)
を引きよせて、それを
膝
(
ひざ
)
の上に載せながら
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
櫓
(
ろ
)
の音をゆるやかにきしらせながら大船の
伝馬
(
てんま
)
をこいで行く男は、澄んだ声で船歌を流す。僕はこの時、
少年
(
こども
)
ごころにも言い知られぬ
悲哀
(
かなしみ
)
を感じた。
少年の悲哀
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
崖に
射
(
さ
)
す日光は日に日に弱って油を焦がすようだった蝉の音も次第に消えて行くと夏もやがて暮れ初めて草土手を吹く風はいとど堪えがたく
悲哀
(
かなしみ
)
を誘う。
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
そこはかとなき若い
悲哀
(
かなしみ
)
——
手頼
(
たより
)
なさが、消えみ明るみする螢の光と共に胸に往来して、
他
(
ひと
)
にとも自分にとも解らぬ、一種の同情が、
自
(
おのづ
)
と
呼吸
(
いき
)
を深くした。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
ロミオ アーメン、アーメン!
如何
(
どん
)
な
悲哀
(
かなしみ
)
が
來
(
こ
)
ようとも、
姫
(
ひめ
)
の
顏
(
かほ
)
を
見
(
み
)
る
嬉
(
うれ
)
しさの
其
(
その
)
刹那
(
せつな
)
には
易
(
かへ
)
られない。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
田や畑の
其処
(
そこ
)
此処
(
ここ
)
に
焼
(
や
)
け残りの黒い木の
株
(
かぶ
)
が立って居るのを見ると、
開
(
ひら
)
け行く北海道にまだ死に切れぬアイヌの
悲哀
(
かなしみ
)
が身にしみる様だ。
下富良野
(
しもふらの
)
で青い
十勝岳
(
とかちだけ
)
を仰ぐ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
「心の
悲哀
(
かなしみ
)
が顔へ出て、今でもお前は悲しそうだ。一層悲しくなるがいい。だがお前は美しい。美しい顔へ悲哀が
纏
(
まと
)
い、二重の美しさとなっている。それが私には
煩悩
(
ぼんのう
)
の種だ」
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
いかに大きな
悲哀
(
かなしみ
)
があとでやって来てもいい、荒っぽい大きな
歓楽
(
よろこび
)
が欲しいと内心あせってはいても、自分の現在のよろこびたるや、お客とむだ事を言い合い、お客の酒を飲む事だけでした。
人間失格
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
それはただあなたのお心の
悲哀
(
かなしみ
)
でございましたろう。
ウスナの家
(新字新仮名)
/
フィオナ・マクラウド
(著)
落
(
お
)
ちついた
悲哀
(
かなしみ
)
の
断片
(
だんぺん
)
がしみじみと降りしきる。
東京景物詩及其他
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
“悲哀”の意味
《名詞》
悲 哀(ひあい)
悲しく哀れなこと。
(出典:Wiktionary)
悲
常用漢字
小3
部首:⼼
12画
哀
常用漢字
中学
部首:⼝
9画
“悲哀”で始まる語句
悲哀感
悲哀の路
悲哀戯曲