悄然しよんぼり)” の例文
夜もすがら枕近くにありて悄然しよんぼりとせし老人二人のおもやう、何處やら寢顏に似た處のあるやうなるは、此娘このこの若しも父母にては無きか
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
斯うして酒の罎を提げて悄然しよんぼりとして居る少年の様子を眺めると、あの無職業な敬之進が奈何して日を送つて居るかも大凡おほよそ想像がつく。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
返事がない。わたしは胸さわぎした。立つて行つて障子しやうじを開けて見ると、黄ろい電燈の下に、秋子が包みを持つて悄然しよんぼり立つてゐる。
愚かな父 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
くもか、もやか、綿わたつゝんだやうにおよ三抱みかゝえばかりあらうとおも丸柱まるばしらが、しろ真中まんなかにぬつく、とつ、……と一目ひとめれば、はしら一人ひとり悄然しよんぼりつたをんな姿すがた……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
すぐ近い坂の上だといふ事で、風呂敷包を提げた儘、黄昏時たそがれどきの雨の霽間を源助の後にいて行つたが、何と挨拶したら可いものかと胸を痛めながら悄然しよんぼりと歩いてゐた。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
と唯一言我知らず云ひ出したるり挨拶さへどぎまぎして急には二の句の出ざる中、煤けし紙に針の孔、油染みなんど多き行燈の小蔭に悄然しよんぼりと坐り込める十兵衞を見かけて源太にずつと通られ
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
悄然しよんぼりと佇む木々は
小曲二十篇 (新字旧仮名) / 漢那浪笛(著)
夜もすがら枕近くにありて悄然しよんぼりとせし老人としより二人のおもやう、何処どこやら寝顔に似た処のあるやうなるは、こののもしも父母にては無きか
うつせみ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あるものは並んで話し/\歩いて居た。弁護士は悄然しよんぼり首を垂れて、腕組みして、物も言はずに突立つて居た。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ガタビシする入口の戸を開けると、其処から見透すとほしの台所の炉辺ろばたに、薄暗く火屋ほやの曇つた、紙笠の破れた三分心の吊洋燈つりらんぷもとで、物思はし気に悄然しよんぼりと坐つて裁縫しごとをしてゐたお利代は
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
りう暗夜やみなか悄然しよんぼりつて、いけのぞむで、かたならべたのである。
三尺角拾遺:(木精) (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
わびるやうになぐさめられて、それでもと椀白わんぱくへず、しくしくきに平常つね元氣げんきなくなりて、悄然しよんぼりとせし姿すがた可憐いぢらし。
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
半町ばかり行つて復た振返つて見ると、未だ友達は同じところに佇立んで居るらしい。夕餐ゆふげの煙は町の空を籠めて、悄然しよんぼりとした友達の姿も黄昏たそがれて見えたのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
なにか、自分じぶんなか一切すべてのものに、現在いまく、悄然しよんぼり夜露よつゆおもツくるしい、白地しろぢ浴衣ゆかたの、しほたれた、ほそ姿すがたで、かうべれて、唯一人たゞひとり由井ゆゐはまつうずる砂道すなみち辿たどることを、られてはならぬ
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
其姿は、何処か、夢を見てゐる人の様に悄然しよんぼりとした髪も乱れた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
いつもは威勢よき黒ぬり車の、それ門に音が止まつた娘ではないかと兩親ふたおやに出迎はれつる物を、今宵は辻より飛のりの車さへ歸して悄然しよんぼりと格子戸の外に立てば、家内うちには父親が相かはらずの高聲
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いつも威勢いせいよきくろぬりくるまの、それかどおとまつたむすめではないかと兩親ふたおや出迎でむかはれつるものを、今宵こよひつぢよりとびのりのくるまさへかへして悄然しよんぼり格子戸かうしどそとてば、家内うちには父親ちゝはゝあひかはらずの高聲たかごゑ
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いつもは威勢よき黒ぬり車の、それかどに音が止まつた娘ではないかと両親ふたおやに出迎はれつる物を、今宵こよひつぢよりとびのりの車さへ帰して悄然しよんぼり格子戸かうしどの外に立てば、家内うちには父親が相かはらずの高声
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
うすらさびしきやうものおもはしげにて、いづ華族くわぞくであらうお化粧つくり濃厚こつてりだとよしらうふりかへりてふをみゝにもれぬらしきさまにて、れとうちながめたゞ悄然しよんぼりとしてあるにらうこゝろならず
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しまつたりと退きて畜生ちくしやうめとはまことみつけのことばなり、ものなればおもからぬかさしらゆき往來ゆきかひおほくはあらぬ片側町かたかはまちうすぐらきに悄然しよんぼりとせし提燈ちやうちんかげかぜにまたゝくも心細こゝろぼそげなる一輛いちりやうくるまあり
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
もすがら枕近まくらちかくにありて悄然しよんぼりとせし老人としより二人ふたりおもやう、何處どこやら寢顏ねがほところのあるやうなるは、此娘このむすめもし父母ちゝはゝにてはなきか、のそゝくさをとこはじめとして女中ぢよちゆうども一どう旦那樣だんなさま御新造樣ごしんぞさまへば
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)