容貌ようばう)” の例文
かれえずあるものさがすやうなしか隱蔽いんぺいした心裏しんりあるものられまいといふやうな、不見目みじめ容貌ようばう村落むらうちさら必要ひつえうやうやげんじてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
『見給へ、容貌ようばうを。皮膚といひ、骨格といひ、別に其様な賤民らしいところが有るとも思はれないぢやないか。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
始めは戯れならむと思ひしが、その容貌ようばうの青ざめたるさへあるに、夜の事とて共に帰らぬ弟の身の不思議さに、何処にてと問ひければ、東禅寺うらにて、と答ふ。
鬼心非鬼心:(実聞) (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
宗助そうすけはつく/″\この織屋おりや容貌ようばうやら態度たいどやら服裝ふくさうやら言葉使ことばづかひやらを觀察くわんさつして、一種いつしゆどくおもひをなした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
阿諛あゆ諂佞てんねいに取卷かれ、人を見下みくだしてばかり來た貫兵衞は、自分の世帶になつて、世の中に正面から打つかつた時、初めて、自分の才能、容貌ようばう魅力みりよく——等に對する
案じゐるよしたしかに知たる忠相ぬしひとりつく/″\思ふ樣お光は奇才きさい容貌ようばうとも人にすぐれしのみならず武士の眞意しんいを能くわきま白刄しらはふるつて仇をたふすに其父もまた清廉せいれんにて是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その母は私の母よりか多分美しい容貌ようばうの持主であつたに違ひない。父による遺伝に、この姉と長兄次兄と、私と私の同母姉妹とに、少しは共通なものがあるかも知れなかつた。
町の踊り場 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
われこれく、良賈りやうこ(四)ふかざうして・きよなるがごとく、君子くんし盛徳せいとくありて容貌ようばうなるがごとしと。(五)驕氣けうき多欲たよく(六)態色たいしよく(七)淫志いんしとをれ。みなえきし。
容貌ようばう、栄養不良のライオンに似たるが故なり。中学時代には一しよに英語を勉強し、「猟人れふじん日記」、「サツフオ」、「ロスメルスホルム」、「タイイス」の英訳などを読みしを記憶す。
学校友だち (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
いまから大凡おほよそ十三四ねん以前いぜんまちの一ばん大通おほどほりに、自分じぶんいへ所有つてゐたグロモフとふ、容貌ようばう立派りつぱな、金滿かねもち官吏くわんりつて、いへにはセルゲイおよびイワンと二人ふたり息子むすこもある。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「たのむよ。公園は乃公おいら達の縄張中なはばりうちだぜ。」きちさんは一種の屈辱くつじよくを感じたのであろう、うそまことか、幕の上にかいてある芸者の一人々々の経歴、容貌ようばう、性質を限りもなく説明しはじめた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
あいちやんはそんなに近寄ちかよられるのを非常ひじよういやがりました、だい一、公爵夫人こうしやくふじんはなはみにく容貌ようばうでしたから、それからだい二には、夫人ふじんあいちやんのかたうへに、可厭いやとがつたあごやすめるほど
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
さんざ品性や容貌ようばうの劣悪なことを面と向つてのゝしつた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
狐疑こぎしてるやうなその容貌ようばうとは其處そこあへ憎惡ぞうをすべき何物なにもの存在そんざいしてないにしても到底たうてい彼等かれら伴侶なかますべてと融和ゆうわさるべき所以ゆゑんのものではない。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ある人は蓮太郎の人物を、ある人はその容貌ようばうを、ある人はその学識を、いづれも穢多の生れとは思はれないと言つて、どうしても虚言うそだと言張るのであつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
然程さるほどに新吉原松葉屋にては彼のお高をかゝへ樣子をみるに書は廣澤くわうたくまなこと生田流いくたりう揷花いけばなは遠州流茶事より歌俳諧はいかいに至るまで是を知らずと云ふ事なくこと容貌ようばう美麗うるはしく眼に千金の色を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
一人はお杉と言つて二十五、これは總兵衞の妹の娘で、容貌ようばうも十人並、少し三白眼で、身體は頑丈ですが、何んの特色もない女、下女同樣にこき使はれて自分もそれに滿足し切つて居る樣子です。
かれ容貌ようばうはぎす/\して、何處どこ百姓染ひやくしやうじみて、※鬚あごひげから、ベツそりしたかみ、ぎごちない不態ぶざま恰好かつかうは、宛然まるで大食たいしよくの、呑※のみぬけの、頑固ぐわんこ街道端かいだうばた料理屋れうりやなんどの主人しゆじんのやうで、素氣無そつけなかほには青筋あをすぢあらは
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)