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ふりがな文庫
“
守宮
(
やもり
)” の例文
その狭い庭には、
馬陸
(
やすで
)
という虫が密生していたし、
守宮
(
やもり
)
も葉蔭に這っていた。それから、夜は灯を慕ってやって来る虫で大変だった。
吾亦紅
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
その街角へ現われて街灯の下へ
辿
(
たど
)
りつくと、まるで自分が
潤
(
うる
)
んだ灯に
縋
(
すが
)
りついた
守宮
(
やもり
)
ででもあるような
頓狂
(
とんきょう
)
な淋しさが湧いてきた。
小さな部屋
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
遠くの街燈のほのかな光線が、
守宮
(
やもり
)
のように二階の窓の雨戸にへばりついた黒い背広に黒いソフト帽の人物を、朦朧と映し出している。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
なお、蛇や蜥蜴や
守宮
(
やもり
)
の類もよいけれど、金網の中では惨めだし、或る程度の放し飼いをするには、逃亡を防ぐこと困難だろう。
夢の図
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
身を寄せて中を
窺
(
うかが
)
うと、中は暗かった。立て切った門の上に、軒燈が
空
(
むな
)
しく標札を照らしていた。軒燈の
硝子
(
ガラス
)
に
守宮
(
やもり
)
の影が斜めに映った。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
はじめて心付くと、厠の戸で冷く握って、今まで
握緊
(
にぎりし
)
めていた、左の
拳
(
こぶし
)
に、細い尻尾のひらひらと動くのは、一
尾
(
ぴき
)
の
守宮
(
やもり
)
である。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
岩壁の
一寸
(
ちょっと
)
した窪みに手足を托して、危く淵の上を横にへずったり、又は
守宮
(
やもり
)
のように壁にへばり付いて、飛沫を顔に浴びながら、瀑を超えたりする。
北岳と朝日岳
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
二人は
守宮
(
やもり
)
のように塀に
吸付
(
すいつ
)
きました。向島——と言っても諏訪神社の裏手、寺島の百姓家に
交
(
まじ
)
って、寮造りの
一
(
ひ
)
と構えへお秋は案内して来たのです。
十字架観音
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
頭上の屋根裏に
這
(
は
)
つて居る名物の
守宮
(
やもり
)
がクク、ククと日本の雨蛙の様に鳴くのはクラリネツトを聞く
趣
(
おもむき
)
があつた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
今一つマダガスカル島の話には野猪と
守宮
(
やもり
)
と競争したという、ある日野猪が食を求めに出懸ける途上小川側で守宮に行き逢い、何と変な歩きぶりな奴だ
十二支考:02 兎に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
それも捕手の
隙
(
すき
)
を待っていた者でしょうか、黒髪堂の
床柱
(
ゆかばしら
)
に、
守宮
(
やもり
)
のように貼りついていた男が、かれを見るや
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一体鶴見には偏好性があって、虫類では蜥蜴が第一、それから
守宮
(
やもり
)
、
蟷螂
(
かまきり
)
という順序である。静岡に住んでいた間は、それらの三者に殊に親しさを感じていた。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
夕がたになると無数の
蜘蛛
(
くも
)
がひばの枝から枝へ、また軒から瓦へといそがしく巣をかける。
守宮
(
やもり
)
がでる。
妹の死
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
下人は、
守宮
(
やもり
)
のように足音をぬすんで、やっと急な梯子を、一番上の段まで這うようにして上りつめた。
羅生門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
あくる日、かの怪しい奴らの来たらしい跡をさがしてみると、東の古い階段の下に、
粟粒
(
あわつぶ
)
ほどの小さい穴があって、その穴から
守宮
(
やもり
)
が出這入りしているのを発見した。
中国怪奇小説集:05 酉陽雑爼(唐)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
人びとに不気味な
火照
(
ほてり
)
を覚えさせ、隙間に塗りたくった粘土は、薄いところから段々乾燥して色が変り、小さな無数の不規則な亀裂が
守宮
(
やもり
)
のように裂けあがって行った。
坑鬼
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
何事にも神経質な勝田さんは、天井から
守宮
(
やもり
)
が落ちてくるのを怖れて、いつもヴェランダにあるモスキトー・ハウスの中へ入って、そこで私を相手に雑談をするのでした。
消えた霊媒女
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
、これより益〻
籠
(
こ
)
め入れましょう! さそりも入れる
守宮
(
やもり
)
も入れる、やがては
蝮
(
まむし
)
も入れましょう
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
万惣
(
まんそう
)
の果物をかぞえる声が、荷揚げの唄のように何ともいえず、哀しくひびいてくるのを背にしながら、
守宮
(
やもり
)
のように板戸に
倚
(
よ
)
りかかって聞いている時、いつも世の中は、時雨ふる日の、さびしく
随筆 寄席風俗
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
アカシヤの葉に包まれた瓦斯燈には
守宮
(
やもり
)
が両手を拡げて止っていた。火の消えたアーチの門。油に濡れた油屋の鉄格子。トンネルのような露路の中には、家ごとの取手の環が静かに一列に並んでいた。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
易という文字は、
蜥易
(
せきえき
)
、つまり
守宮
(
やもり
)
の意味だと承りました。
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
軒端を見あげながら
守宮
(
やもり
)
の鳴聲に微笑する阿呆ども
山之口貘詩集
(旧字旧仮名)
/
山之口貘
(著)
「……ことの起りは
守宮
(
やもり
)
なんでございます」
顎十郎捕物帳:24 蠑螈
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
守宮
(
やもり
)
吸ひつき、日は赤し
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
一方では一人の書生が、庭園の樹の枝にかけてある提灯の上を、不気味な
守宮
(
やもり
)
の様に
這
(
は
)
っている、本物の蠍の死骸を発見して震え上った。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
身を寄せて
中
(
なか
)
を窺ふと、
中
(
なか
)
は
暗
(
くら
)
かつた。立て切つた門の上に、軒燈が
空
(
むな
)
しく標札を
照
(
て
)
らしてゐた。軒燈の
硝子
(
がらす
)
に
守宮
(
やもり
)
の
影
(
かげ
)
が
斜
(
なゝ
)
めに
映
(
うつ
)
つた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
私の二階の書斎は、二方硝子戸になっているが、その硝子戸の或る場所に、夜になると、一匹の
守宮
(
やもり
)
が出て来る。それが丁度、私の真正面に当る。
守宮
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
思ひ込んだら雷が鳴つても放さない
守宮
(
やもり
)
の生れ変りだから、狙ひをつけて食ひつかれたら、もはや万事休すである。
探偵の巻
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
……別に
鉄槌
(
かなづち
)
、うむ、
赤錆
(
あかさび
)
、黒錆、青錆の
釘
(
くぎ
)
、ぞろぞろと……青い
蜘蛛
(
くも
)
、
紅
(
あか
)
い
守宮
(
やもり
)
、黒
蜥蜴
(
とかげ
)
の血を塗ったも知れぬ。
多神教
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ポンとその手をはらうや
否
(
いな
)
、
跳
(
と
)
びあがって広間の壁へ、
守宮
(
やもり
)
のようにペタリと背なかを
貼
(
は
)
りつけてしまった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
下人は、
守宮
(
やもり
)
のやうに足音をぬすんで、やつと
急
(
きふ
)
な梯子を、一番上の段まで這ふやうにして上りつめた。
羅生門
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
と、頬に
守宮
(
やもり
)
の
刺青
(
いれずみ
)
をしている一人の乾児が、梁から釣り下げられている
典膳お浦
(
ふたり
)
を指さした。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
日本の
守宮
(
やもり
)
と違つて人を
咬
(
か
)
む恐れは無いが、飲料が好きなので飲みさした牛乳や
珈琲
(
カフエエ
)
を天井から落ちて来て吸ふ事が常にある
相
(
さう
)
だ。
守宮
(
やもり
)
は
市
(
し
)
の場末の家にも
沢山
(
たくさん
)
に
這
(
は
)
つて居る。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
『漢書』に漢武
守宮
(
やもり
)
を盆で匿し、
東方朔
(
とうぼうさく
)
に
射
(
あ
)
てしめると、竜にしては角なく蛇にしては足あり、守宮か蜥蜴だろうと
中
(
あ
)
てたので、
帛
(
きぬ
)
十疋を賜うたとある。蜥蜴を竜に似て角なきものと見立てたのだ。
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
根曲り竹に足を托して其処まで攀じ登ろうとしたが、滑り落ちる許りで登れそうにもない。金作が見兼ねて「俺しが先へ登ろう」といきなり
守宮
(
やもり
)
の如く壁面に吸い付いて、体をうねらせながら登った。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
蛇体はおろか、
守宮
(
やもり
)
いっぴき這い出さぬ。
顎十郎捕物帳:15 日高川
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
一匹の
守宮
(
やもり
)
が杭の頂点にゐる
山之口貘詩集
(旧字旧仮名)
/
山之口貘
(著)
代助が
軒燈
(
けんとう
)
の
下
(
した
)
へ
来
(
き
)
て立ち
留
(
と
)
まるたびに、
守宮
(
やもり
)
が軒燈の
硝子
(
がらす
)
にぴたりと
身体
(
からだ
)
を
貼
(
は
)
り付けてゐた。黒い影は
斜
(
はす
)
に
映
(
うつ
)
つた儘
何時
(
いつ
)
でも
動
(
うご
)
かなかつた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
どんな軽業師も嘗つて企て得なかった離れ業だ。遥か地上の群集には、それが、不気味な金色の一匹の
守宮
(
やもり
)
の様に見えた。
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
太い針金のような筋が甲に五本分れ出て、細長い先の円い指を吊していた。その指が少し上向き加減にうち開いて、
守宮
(
やもり
)
の足の指のように見えた。
足
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
その反映が箱崎川の
枝河
(
えだがわ
)
にまで射し込んで、脚の高い女橋の
杭
(
くい
)
の裏まで
仄明
(
ほのあか
)
るく見えたかと思いますと、
守宮
(
やもり
)
のように、橋の裏に取ッ付いていた二人の男が
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
自分のやうな無為の存在は結局一匹の
守宮
(
やもり
)
ほどもこの世界とは関係を持たないらしい、広々とした建物の中にぢつと坐つてゐると、其処に人間が居るのだか居ないのだか
黒谷村
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
恐気
(
おそれげ
)
も無く、一分時の前は炎のごとく
真紅
(
まっか
)
に狂ったのが、早や紫色に変って、床に氷ついて、
飜
(
ひるがえ
)
った腹の青い
守宮
(
やもり
)
を
摘
(
つま
)
んで、ぶらりと提げて、鼻紙を取って、薬瓶と一所に
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
今夜三井物産の社宅に
泊
(
とま
)
つて前年日本の貴賓の寝られたと云ふ二つの
寝台
(
ねだい
)
へ得意になつて横たわつた小林と三浦は、終夜この
守宮
(
やもり
)
に鳴かれて
好
(
い
)
い気持がしなかつたと
後
(
あと
)
で話して居た。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
粗壁
(
あらかべ
)
へ
守宮
(
やもり
)
のように背中を張り付け、正面に、梁から、ダラリと人形芝居の人形のように下がり、尚グルグルと廻っている、典膳とお浦との体の横手から、
恐
(
こわ
)
そうに頼母を見詰めた。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
劉は、何とも知れない
塊
(
かたまり
)
が、少しづゝ胸から喉へ這ひ上つて来るのを感じ出した。それが或は
蚯蚓
(
みゝず
)
のやうに、
蠕動
(
ぜんどう
)
してゐるかと思ふと、或は
守宮
(
やもり
)
のやうに、少しづゝ居ざつてゐるやうでもある。
酒虫
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
彼は
立
(
た
)
ち
上
(
あ
)
がつた。
惘然
(
もうぜん
)
として又
歩
(
ある
)
き出した。少し
来
(
き
)
て、再び平岡の小路へ這入つた。夢の様に軒燈の前で
立留
(
たちどま
)
つた。
守宮
(
やもり
)
はまだ一つ所に
映
(
うつ
)
つてゐた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
墨渋
(
すみしぶ
)
を塗った黒塀へ、一人の男、
守宮
(
やもり
)
のように貼りついて、じっと、横目でこっちを睨んでいる。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
守宮
(
やもり
)
を発見した時のやうな賑やかな騒しさでは誰も自分の存在を問題にすることがない。
黒谷村
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
第一
(
だいいち
)
、
其
(
その
)
魔
(
ま
)
ものとはどんなものか、と
突懸
(
つゝかゝ
)
つて
訊
(
き
)
きますと、
其
(
そ
)
の
盲人
(
めくら
)
ニヤリともせず、
眞實
(
まじめ
)
な
顏
(
かほ
)
をしまして、
然
(
さ
)
れば、
然
(
さ
)
れば
先
(
ま
)
づ、
守宮
(
やもり
)
が
冠
(
かんむり
)
を
被
(
かぶ
)
つたやうな、
白犬
(
しろいぬ
)
が
胴伸
(
どうの
)
びして
三人の盲の話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
“守宮”の意味
《名詞》
守 宮(しゅきゅう、やもり)
やもり
(出典:Wiktionary)
“守宮(ヤモリ科)”の解説
ヤモリ科(ヤモリか、守宮科、壁虎科、学名:Gekkonidae)は有鱗目の科の一つ。模式属はヤモリ属。
(出典:Wikipedia)
守
常用漢字
小3
部首:⼧
6画
宮
常用漢字
小3
部首:⼧
10画
“守”で始まる語句
守
守護
守袋
守刀
守銭奴
守護神
守衛
守人
守役
守山