)” の例文
「はいではありません。子供の癖に真夜中に起きてうちの中をノソノソ歩きまわるなんて……何て大胆な……恐ろしいでしょう……」
継子 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
江漢老人と五百之進とは、心と心をゆるし合った莫逆ばくぎゃくの友。その子ととは、おさない頃から親の目にもわかっていた初恋の仲——。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「御方便なものだな——その鑄掛屋も、あのに氣があつて御浪人のところへ繁々しげ/\通ふのだらう。聾に道話なんざ洒落しやれにもならねえ」
えゝお茶を上げな……あなたにも此の度々たび/\御贔屓で呼んでおくれなすった事も有りますが、明後日あさってから美代吉はうちにいませんよ
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ちやうどその時、チェレヸークが戸口へ近よつたが、わがが鏡を覗きながら、しきりに踊つてゐるのを見て、その場に足を停めた。
どうも節ちゃんの様子がおかしいぞなし、あのいても泣いてばかりいるが、どうもこれはただではない、貴方あなたがまた下手へたなことを
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
夜もすがら枕近くにありて悄然しよんぼりとせし老人としより二人のおもやう、何処どこやら寝顔に似た処のあるやうなるは、こののもしも父母にては無きか
うつせみ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そやさかいにな、兎に角こゝのとこはあのの気持済むやうに、一遍すうツと品子の方へ遣つてしまひイな。そないしといて、えゝ折を
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
しまいには金の無心ばかりでなく、彼は新兵衛の貰いのお照の美しいのを見て、飛んでもない無心までも云い出すようになった。
半七捕物帳:19 お照の父 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
四人のうちの一人は一番年下なので若いと呼ばれてい、そのうちの一人は年増としまと呼ばれていた。その年増は二十三になっていた。
あのがおとなしいもんだから、それを見込んでこしらえたんだな? お前はそれを当てにしたんだろう? ところがね、おまえさん
「あ、あのは……? あたし、あの娘を覚えてるわ……あの、黒いベルベットのスカートをした……あら、こつちを向いて笑つてるわ」
虹色の幻想(シナリオ) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
これも百姓の娘できだてのいいだ。国への音信に、「隣りが武藤大将様のおやしきで、お葬式はお祭よりもにぎやかでありました」
落合町山川記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
よそいきにはもとより、常の時でも、着物なら子振りなら、自分のに追ひ付くものがないのみか、足元へ寄りつくものもない。
兵隊の宿 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
加之それに顔立かほだちなり姿なり品の好いであツたから、よしや紫の色が洗ひざれてはげちよろけて來ても、さして貧乏びんぼんくさくならなかつた。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
(もう、あのおも、円髷まるまげに結われたそうな。実は、)とこれから帳場へも、つい出入でいりのものへも知れ渡りましたでござります。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それに気質もごく優しいですから、どの様な事情がありましても、三千子をどうかするなんてことがあろうはずはございません
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「あの子はこっちへ来ていたのか知ら。来ていたんなら、わたしのところへかおを出しそうなもの。薄情な。何をしていました」
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
が、このとしてはそうした方便ほうべん必要ひつよう毛頭もうとうなく、もともと純潔じゅんけつ小供こども修行しゅぎょうには、最初さいしょから幽界ゆうかい現実げんじつ目覚めざめさせるにかぎるのじゃ。
いつも、おどけたことを言っては人を笑わせてばかりいるので、近所では「お寿女ちゃんは面白いだ」と評判になっていた。
痀女抄録 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
「ごらんじゃい、まあ! あんまり乱暴におはなし遊ばすので、このおが、はは様のお顔を、びっくりしてごろうじる——」
「貴様ひとりで、勝手にさっさっとうせえ。内のはそんなところへ出て往く用はない」といって、またいつもの悪態をく。
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「何の御用か存じませんが、なぜうちへいらっしゃらずに、あんなを使いによこして呼び出したりなさるのでございますか」
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そして、その退がると、彼女は微笑ほゝえみながら云つた。「いゝあんばいに、今度だけは、足りない分を私の手で都合がつけられるのよ。」
ああ、乳母は何と思うだろう‥‥またエゴールにしても‥‥それから可愛いリーゾチカも! あのはもうものが分るのだ。
男の子は相手を「おれの」とよび女の子は「あたいの好い人」とよび、友達に冷やかされてぽうっと赫くなってうつむくのが嬉しいのだった。
妖婦 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
すると、このの絵に何か見処みどころがあったか、物数寄ものずきの人がその絵を買って下すったり、またその絵が入賞したりしました。
「おい、今井の姉娘が上京したそうだよ。鏡花さんの宅からとしてあるが、もいろいろと苦労をしているのだ、ね」
友人一家の死 (新字新仮名) / 松崎天民(著)
「困つたことになりました、ねえ」と、母は娘の方へふり向いて、「このもあんまりわさ/\して、落ち付かないからいけないのですが——」
到底どうせもらう事なら親類なにがしの次女おなにどのは内端うちば温順おとなしく器量も十人なみで私には至極に入ッたが、このを迎えてさいとしては
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「ああ、あの、あの娘は駄目なの。あなたはまだあの娘の出ている所も御存知ないの。四川路しせんろの十三番八号の皆川よ。」
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
「メイちやんが、よろしくですつてさ。こゝで一番たんまりと儲け込んで、鬼のゐない留守に、あのとゆるゆる……」
バラルダ物語 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
犬神のが猛然と、大切な餌のご上人様を奪い、つれ出そうとする望東尼様に向かって、躍りかかろうといたしました。
犬神娘 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しゆの色の薔薇ばらの花、ひつじが、戀に惱んではたけてゐる姿、羊牧ひつじかひはゆきずりに匂を吸ふ、山羊やぎはおまへにさはつてゆく、僞善ぎぜんの花よ、無言むごんの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
実の親子と同様な気持でいたらしく、いまにあのと家を持つのだと、それが理想でもあり目的でもあるらしかった。
死の前後 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
度胸のよいで、さっさと読んでみせたら、その先生が感心して「お前はえらい。シェクスピアを完全に理解していることが、その読み方から分る」
娘の結婚 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
「あのには、どんなに教えたって物を手取早くするということが解らないんだから——エーゴルの姪に違いないわ」
(新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「そんなことはないけど、写真で見るよりかもう少し品があって、口数の少ないオットリした、それはいいですよ」
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
いじったり、隠れて紅や白粉おしろいを付けたりするんですけれど、このはもう叱るように云っても化粧などはしませんの、ですから肌だってもう荒れ放題で
はたし状 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「こんなことは、俺が言わなくたって……松三はなんと思うか知らねえが。俺は、百姓のがこんなごっては……」
緑の芽 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
わがを嫁にやる時、門出に流す母親の涙はうれしい涙ではありましょうが、それはまた悲しみの涙でもあるのです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
「そのは、今、東京の方へ行ってます。この村からは、紡績へ出る娘がずいぶん多いですが、わしのは、五年の年期で、売り飛ばしてしまったです」
「葭町へ出るのか。そいつア豪儀ごうぎだ。子供の時からちょいと口のききようのませた、だったよ。今夜にでも遊びに来りゃアいいに。ねえ、お豊。」
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
唖娘はたいへんほかのよりも、たくさん涙をもつてゐました、そしてほかの娘よりもたくさん泣いたのでした。
小熊秀雄全集-14:童話集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
翌朝、「飛鳥あすか」の仕込みのが、森新之助の手紙を持って来た。仲直りの日取り通知状である。金五郎をはじめ、小方連中は、仕事に出て、留守だった。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
その頃大殿樣の御邸には、十五になる良秀の一人娘が、小女房こねうぼうに上つて居りましたが、これは又生みの親には似もつかない、愛嬌のあるでございました。
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
小学校の同僚もなんぞと言えばどこの別嬪べっぴんだとか、あの娘にはもう色があるとか、そんなうわさをするのは平気で、全くそれが一ツの楽しみなのですから
女難 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
僕はやがて自分の寝床へかえったが、枕につくと同時に、或る恐ろしい考えが浮んで来ました。あのも僕と同じ結核だ。てっきりそれに違いないと思いました
誤診 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
「そう言っちゃ、またあんまりだがね」——バルドウ夫人は言う——「これの言うことはあてになりませんけれどね、まあ、これで、しんはなんですよ」
このは、この頃、ずつと一人で苦しんでゐたのだわ。何か云ひたさうに、いつも大きい眼でじつと私を
ふるさとびと (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)