)” の例文
老婆は、片手かたてに、まだ屍骸の頭からつた長い拔け毛をつたなり、ひきのつぶやくやうな聲で、口ごもりながら、こんな事を云つた。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
古田は証拠を消す為に、先生からった原稿を焼こうとしている所でしたから、もう一足遅いと先生の研究は永久に葬られた訳です。
ニッケルの文鎮 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
……目的ですか、殺した?……その校長が、学校の金をあずかって持ってるのを知って、その金をるためにやったというんですが。
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
留守の間に、家士の岩間三太夫に裏切られ、自城も峰ノ城もられた盛信の感情は、それを移して、一同の義憤となすに充分だった。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一カペーカでもるために平気で人を殺しますからね! あいつと副知事の野郎とは、*6ゴグとマゴグみたいな好い相棒ですわい。
「その養子の兵太郎が、七日の間に命をられるという騒ぎだ、本人は思いのほか落着いているが、親の彦太郎の方が大変ですぜ」
「何、これが一番だ。入れ物などに入れて置いては、すきをねらってさらって行かれてしまう、こうして置けばろうたって奪れやしない」
では、七時半から十一時半までの間に——宴会が始まってから舞踏会が終るまでの間に、おられになったということに、なりますね。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
「トム、トム……。」と、二三度呼んだが、犬は食物くいものに気をられて、主人の声を聞付ききつけぬらしい。市郎は舌打したうちしながら引返ひっかえして来た。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「あんな女と一緒に暮している者に金をやっても死金しにがね同然や、結局女に欺されてられてしまうが落ちや、ほしければ女と別れろ」
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
おもむきを如何どういふふういたら、自分じぶんこゝろゆめのやうにざしてなぞくことが出來できるかと、それのみにこゝろられてあるいた。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
資産から云ったって、木下家の郷里の持ものは、人にられさえしなければ、こんな家とは格段の相違があるのだといっていた。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ここに天皇悔い恨みたまひて、玉作りし人どもをにくまして、そのところをみなりたまひき。かれことわざに、ところ得ぬ玉作りといふなり。
それで老人に金をられたことも全く夫婦間の話題にのぼっていなかった。健三は細君が事状を知らないでこういうのかと思った。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あの、十字の船印の附いた大帆前船を操ったすぱにゃあどが、自分らの鮮血と交換に黄金をりに海を越えた時代に相違ない。
父娘おやこただ、紫玉の挙動ふるまいにのみ気をられて居たらう。……此の辺を歩行ある門附かどづけ見たいなもの、と又訊けば、父親がつひぞ見掛けた事はない。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「お前さんは、そんなことを云うが、お前さんに生命いのちられて体をられる人間の身になってみたらどうだ、俺が邪魔をするわけも判るよ」
ある神主の話 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「ばかばかしいね。あいつらにられる銭で、君に小使でも上げた方がいい。もう何てって勧めやがっても手を出すめえ。」
世間師 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
彼は口をすぼめ目をぱちくりしていた。ふところ手で両たもとをおさえていた。やがて彼は、ふいに突ッかえ棒をられたように動きだした。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
一枚のガネモの葉のやりりから、すごい斬りあいをやる……猿を殺すにしても、その残忍さときたら、お話にならない。
蝶の絵 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
十年も一所に居てから、今更人にられるやうな事があつたら、ひとり間貫一いつ個人の恥辱ばかりではない、我々朋友ほうゆう全体の面目にも関する事だ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「どうです。ちょっとした随筆のネタになるじゃないですか。っちゃいやですよ。——いや、書いたってかまわんです」
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
薄々聴いた噂では十兵衛も耳朶みみたぶの一ツや半分られても恨まれぬはず、随分清吉の軽躁行為おっちょこちょいもちょいとおかしないい洒落か知れぬ、ハハハ
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
竜は雲を呼び、雲は竜を待つとはいえ、腕でり、つるぎにかけて争ってこそ互いに武士の面目もあろうというもの——。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
自分の過失そさうを棚へ上げて狂犬呼ばゝりは怪しからぬはなしだ。加之しかも大切な生命いのちを軽卒にるとは飛んでもない万物の霊だ。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
その落着かない心持では、本を読むことも出来ないし、外の仕事は猶更手につかない。たゞいら/\した心持で、外の足音にばかり気をられる。
脱殻 (新字旧仮名) / 水野仙子(著)
「だいたい、僕がここにこうして寝ているとき、僕を叩き起して、代りに自分がベッドをろうというのは、ボルシェビーキだってしませんよ。」
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
そしてその後ろには、呉羽之介、その人が、茫然として自分の絵すがたに魂をられたかのように見入っております。
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「お止しと言うのに」と、小万が銚子ちょうしろうとすると、「酒でも飲まないじゃア……」と、吉里がまた注ぎにかかるのを、小万は無理に取り上げた。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
と、両人の争って居るのを聞いていた源次郎は、人の妾でもろうという位な奴だからなか/\抜目ぬけめはありません。
それから幾日も幾日も、真昼のその時刻になるごとに、彼の眼は自然と其方へかれ、かなり長いことその小さな生物の動作に気をられるのであった。
松風の門 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
七十りやうられてたつちんでがすからはなしにやんねえですよ、そつからわしや※等夫婦あねらふうふのこたあ大嫌だえきれえなんでさあ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それがしんをなしてというのではないが、もとより無理算段でやった仕事だけに、たった一万円のために川上座は高利貸の手にられなければならなかった。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
わたしは他のことに気をられてはならないと思って、二度と眼をあくまいと決心してまぶたを伏せました。
「そんなことは、きまっていません。まさちゃんのっているものを、なんで無理むりったりするんですか。」
政ちゃんと赤いりんご (新字新仮名) / 小川未明(著)
客は心を移して行つた、おきよはとり残され、孤独のためにひがみが募つてひとの客をるなんて、そんなことまだ浅草ぢや聞かないよとわめくやうになつたのだ。
一の酉 (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
私はだんだん自分の親しいものが、この世界からられてゆくのを感じた。しまいに魂までが裸にされるような寒さを今は自分の総ての感覚にさえかんじていた。
幼年時代 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
板垣退助などは「馬上でとつた徳川の天下だから、馬上でなければれぬ」と痛言してゐた程である。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
暗夜に一つの弾丸を受けて彼の命をられたことや、幾人の青年は暗殺に失敗して監獄に入れられ、月余の苦刑を受けたことや、幾人の青年は遠大の志を抱きながら
頭髪の故事 (新字新仮名) / 魯迅(著)
私達の頭上の梢が何んとはなしにざわめいているのに気をられているような様子をしていた。
風立ちぬ (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
あなたが腹を立てゝゐる最中に、神さまがいのちつておしまひになるかも知れないぢやないの。そしたら、地獄のほかの、何處へ行くと思つて? ベシー、いらつしやい。
これが又よくなかったようで……若旦那様は巻物をられると気抜けしたようになって、パックリと口を開いたまま、お八代さんの顔をギョロギョロと見ておられましたが
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あと答へて、とびのごとくの一三〇化鳥けてうかけ来り、まへしてみことのりをまつ。院、かの化鳥にむかひ給ひ、何ぞはやく重盛がいのちりて、雅仁まさひと清盛きよもりをくるしめざる。化鳥こたへていふ。
「手術してもらわねば、しまいにはメデューサの首にこの身体をられてしまうのですから、一日も早く、わたしのいわば恋敵ともいうべき怪物を取り除いてしまいたいのです」
メデューサの首 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
「お前はこんな手荒な事をしてどうしようというの? 私の生命をろうというの?」
P丘の殺人事件 (新字新仮名) / 松本泰(著)
コノールはついにデヤドラをり得たであろうか? 否! 否! デヤドラは愛した人の側に伏して死んでしまうた、ウスナの子ナイシイの屍の側に伏して! 美しいデヤドラこそは
ウスナの家 (新字新仮名) / フィオナ・マクラウド(著)
ところが、ドイツの旗色が悪くて、留学生はいずれも英仏へられそうである。こうなるとドイツの誇るいわゆる文化クルツウル威信いしんにもかかわる問題だ。政府はいつしか躍起やっきになっている。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
丁度私の帰つた日に二羽の矮鶏ちやぼの一羽が犬にられて一羽ぼつちになりましたのを
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「だつて、まだられやしないんでせう。上陸を開始せりつて云ふんだから……」
荒天吉日 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
(正勝のやつはこのおれから、紀久ちゃんをろうとしているのじゃないのかな?)
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)