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奪
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と
ふりがな文庫
“
奪
(
と
)” の例文
老婆は、
片手
(
かたて
)
に、まだ屍骸の頭から
奪
(
と
)
つた長い拔け毛を
持
(
も
)
つたなり、
蟇
(
ひき
)
のつぶやくやうな聲で、口ごもりながら、こんな事を云つた。
羅生門
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
古田は証拠を消す為に、先生から
奪
(
と
)
った原稿を焼こうとしている所でしたから、もう一足遅いと先生の研究は永久に葬られた訳です。
ニッケルの文鎮
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
……目的ですか、殺した?……その校長が、学校の金をあずかって持ってるのを知って、その金を
奪
(
と
)
るためにやったというんですが。
浅草風土記
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
留守の間に、家士の岩間三太夫に裏切られ、自城も峰ノ城も
奪
(
と
)
られた盛信の感情は、それを移して、一同の義憤となすに充分だった。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一カペーカでも
奪
(
と
)
るために平気で人を殺しますからね! あいつと副知事の野郎とは、
*6
ゴグとマゴグみたいな好い相棒ですわい。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
▼ もっと見る
「その養子の兵太郎が、七日の間に命を
奪
(
と
)
られるという騒ぎだ、本人は思いのほか落着いているが、親の彦太郎の方が大変ですぜ」
銭形平次捕物控:146 秤座政談
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「何、これが一番だ。入れ物などに入れて置いては、
際
(
すき
)
をねらって
掠
(
さら
)
って行かれてしまう、こうして置けば
奪
(
と
)
ろうたって奪れやしない」
幕末維新懐古談:42 熊手を拵えて売ったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
では、七時半から十一時半までの間に——宴会が始まってから舞踏会が終るまでの間に、お
奪
(
と
)
られになったということに、なりますね。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
「トム、トム……。」と、二三度呼んだが、犬は
食物
(
くいもの
)
に気を
奪
(
と
)
られて、主人の声を
聞付
(
ききつ
)
けぬらしい。市郎は
舌打
(
したうち
)
しながら
引返
(
ひっかえ
)
して来た。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「あんな女と一緒に暮している者に金をやっても
死金
(
しにがね
)
同然や、結局女に欺されて
奪
(
と
)
られてしまうが落ちや、ほしければ女と別れろ」
夫婦善哉
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
趣
(
おもむ
)
きを
如何
(
どう
)
いふ
風
(
ふう
)
に
畫
(
か
)
いたら、
自分
(
じぶん
)
の
心
(
こゝろ
)
を
夢
(
ゆめ
)
のやうに
鎖
(
と
)
ざして
居
(
ゐ
)
る
謎
(
なぞ
)
を
解
(
と
)
くことが
出來
(
でき
)
るかと、それのみに
心
(
こゝろ
)
を
奪
(
と
)
られて
歩
(
ある
)
いた。
画の悲み
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
資産から云ったって、木下家の郷里の持ものは、人に
奪
(
と
)
られさえしなければ、こんな家とは格段の相違があるのだといっていた。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
ここに天皇悔い恨みたまひて、玉作りし人どもを
惡
(
にく
)
まして、その
地
(
ところ
)
をみな
奪
(
と
)
りたまひき。かれ
諺
(
ことわざ
)
に、
地
(
ところ
)
得ぬ玉作り
六
といふなり。
古事記:02 校註 古事記
(その他)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
それで老人に金を
奪
(
と
)
られたことも全く夫婦間の話題に
上
(
のぼ
)
っていなかった。健三は細君が事状を知らないでこういうのかと思った。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
あの、十字の船印の附いた大帆前船を操ったすぱにゃあどが、自分らの鮮血と交換に黄金を
奪
(
と
)
りに海を越えた時代に相違ない。
踊る地平線:07 血と砂の接吻
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
父娘
(
おやこ
)
は
唯
(
ただ
)
、紫玉の
挙動
(
ふるまい
)
にのみ気を
奪
(
と
)
られて居たらう。……此の辺を
歩行
(
ある
)
く
門附
(
かどづけ
)
見たいなもの、と又訊けば、父親がつひぞ見掛けた事はない。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「お前さんは、そんなことを云うが、お前さんに
生命
(
いのち
)
を
奪
(
と
)
られて体を
借
(
か
)
られる人間の身になってみたらどうだ、俺が邪魔をするわけも判るよ」
ある神主の話
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「ばかばかしいね。あいつらに
奪
(
と
)
られる銭で、君に小使でも上げた方がいい。もう何てって勧めやがっても手を出すめえ。」
世間師
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
彼は口をすぼめ目をぱちくりしていた。ふところ手で両たもとをおさえていた。やがて彼は、ふいに突ッかえ棒を
奪
(
と
)
られたように動きだした。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
一枚のガネモの葉のやり
奪
(
と
)
りから、すごい斬りあいをやる……猿を殺すにしても、その残忍さときたら、お話にならない。
蝶の絵
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
十年も一所に居てから、今更人に
奪
(
と
)
られるやうな事があつたら、
独
(
ひと
)
り間貫一
一
(
いつ
)
個人の恥辱ばかりではない、我々
朋友
(
ほうゆう
)
全体の面目にも関する事だ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「どうです。ちょっとした随筆のネタになるじゃないですか。
奪
(
と
)
っちゃいやですよ。——いや、書いたってかまわんです」
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
薄々聴いた噂では十兵衛も
耳朶
(
みみたぶ
)
の一ツや半分
斫
(
き
)
り
奪
(
と
)
られても恨まれぬはず、随分清吉の
軽躁行為
(
おっちょこちょい
)
もちょいとおかしないい洒落か知れぬ、ハハハ
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
竜は雲を呼び、雲は竜を待つとはいえ、腕で
奪
(
と
)
り、つるぎにかけて争ってこそ互いに武士の面目もあろうというもの——。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
自分の
過失
(
そさう
)
を棚へ上げて狂犬呼ばゝりは怪しからぬ
咄
(
はなし
)
だ。
加之
(
しか
)
も大切な
生命
(
いのち
)
を軽卒に
奪
(
と
)
るとは飛んでもない万物の霊だ。
犬物語
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
(著)
その落着かない心持では、本を読むことも出来ないし、外の仕事は猶更手につかない。たゞいら/\した心持で、外の足音にばかり気を
奪
(
と
)
られる。
脱殻
(新字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
「だいたい、僕がここにこうして寝ているとき、僕を叩き起して、代りに自分がベッドを
奪
(
と
)
ろうというのは、ボルシェビーキだってしませんよ。」
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
そしてその後ろには、呉羽之介、その人が、茫然として自分の絵すがたに魂を
奪
(
と
)
られたかのように見入っております。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
「お止しと言うのに」と、小万が
銚子
(
ちょうし
)
を
奪
(
と
)
ろうとすると、「酒でも飲まないじゃア……」と、吉里がまた注ぎにかかるのを、小万は無理に取り上げた。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
と、両人の争って居るのを聞いていた源次郎は、人の妾でも
奪
(
と
)
ろうという位な奴だからなか/\
抜目
(
ぬけめ
)
はありません。
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
それから幾日も幾日も、真昼のその時刻になるごとに、彼の眼は自然と其方へ
惹
(
ひ
)
かれ、かなり長いことその小さな生物の動作に気を
奪
(
と
)
られるのであった。
松風の門
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
七十
兩
(
りやう
)
も
奪
(
と
)
られて
來
(
き
)
たつちんでがすから
噺
(
はなし
)
にや
成
(
な
)
んねえですよ、そつからわしや
※等夫婦
(
あねらふうふ
)
のこたあ
大嫌
(
だえきれえ
)
なんでさあ
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
それが
箴
(
しん
)
をなしてというのではないが、もとより無理算段でやった仕事だけに、たった一万円のために川上座は高利貸の手に
奪
(
と
)
られなければならなかった。
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
わたしは他のことに気を
奪
(
と
)
られてはならないと思って、二度と眼をあくまいと決心してまぶたを伏せました。
世界怪談名作集:05 クラリモンド
(新字新仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
「そんなことは、きまっていません。
政
(
まさ
)
ちゃんの
持
(
も
)
っているものを、なんで
無理
(
むり
)
に
奪
(
と
)
ったりするんですか。」
政ちゃんと赤いりんご
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
客は心を移して行つた、おきよはとり残され、孤独のためにひがみが募つてひとの客を
奪
(
と
)
るなんて、そんなことまだ浅草ぢや聞かないよと
喚
(
わめ
)
くやうになつたのだ。
一の酉
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
私はだんだん自分の親しいものが、この世界から
奪
(
と
)
られてゆくのを感じた。しまいに魂までが裸にされるような寒さを今は自分の総ての感覚にさえかんじていた。
幼年時代
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
板垣退助などは「馬上でとつた徳川の天下だから、馬上でなければ
奪
(
と
)
れぬ」と痛言してゐた程である。
二千六百年史抄
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
暗夜に一つの弾丸を受けて彼の命を
奪
(
と
)
られたことや、幾人の青年は暗殺に失敗して監獄に入れられ、月余の苦刑を受けたことや、幾人の青年は遠大の志を抱きながら
頭髪の故事
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
私達の頭上の梢が何んとはなしにざわめいているのに気を
奪
(
と
)
られているような様子をしていた。
風立ちぬ
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
あなたが腹を立てゝゐる最中に、神さまが
命
(
いのち
)
を
奪
(
と
)
つておしまひになるかも知れないぢやないの。そしたら、地獄のほかの、何處へ行くと思つて? ベシー、いらつしやい。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
これが又よくなかったようで……若旦那様は巻物を
奪
(
と
)
られると気抜けしたようになって、パックリと口を開いたまま、お八代さんの顔をギョロギョロと見ておられましたが
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
あと答へて、
鳶
(
とび
)
のごとくの
一三〇
化鳥
(
けてう
)
翔
(
かけ
)
来り、
前
(
まへ
)
に
伏
(
ふ
)
して
詔
(
みことのり
)
をまつ。院、かの化鳥にむかひ給ひ、何ぞはやく重盛が
命
(
いのち
)
を
奪
(
と
)
りて、
雅仁
(
まさひと
)
清盛
(
きよもり
)
をくるしめざる。化鳥こたへていふ。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
「手術してもらわねば、しまいにはメデューサの首にこの身体を
奪
(
と
)
られてしまうのですから、一日も早く、わたしのいわば恋敵ともいうべき怪物を取り除いてしまいたいのです」
メデューサの首
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
「お前はこんな手荒な事をしてどうしようというの? 私の生命を
奪
(
と
)
ろうというの?」
P丘の殺人事件
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
コノールは
終
(
つい
)
にデヤドラを
奪
(
と
)
り得たであろうか? 否! 否! デヤドラは愛した人の側に伏して死んでしまうた、ウスナの子ナイシイの屍の側に伏して! 美しいデヤドラこそは
ウスナの家
(新字新仮名)
/
フィオナ・マクラウド
(著)
ところが、ドイツの旗色が悪くて、留学生はいずれも英仏へ
奪
(
と
)
られそうである。こうなるとドイツの誇るいわゆる
文化
(
クルツウル
)
の
威信
(
いしん
)
にもかかわる問題だ。政府はいつしか
躍起
(
やっき
)
になっている。
戦雲を駆る女怪
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
丁度私の帰つた日に二羽の
矮鶏
(
ちやぼ
)
の一羽が犬に
奪
(
と
)
られて一羽ぼつちになりましたのを
遺書
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
「だつて、まだ
奪
(
と
)
られやしないんでせう。上陸を開始せりつて云ふんだから……」
荒天吉日
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
(正勝の
奴
(
やつ
)
はこのおれから、紀久ちゃんを
奪
(
と
)
ろうとしているのじゃないのかな?)
恐怖城
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
奪
常用漢字
中学
部首:⼤
14画
“奪”を含む語句
奪取
掠奪
強奪
引奪
横奪
褫奪
奪回
奪還
剥奪
奪衣婆
奪掠
奪去
与奪
劫奪
簒奪
争奪
生殺与奪
簒奪者
物奪
纂奪
...