ぼっ)” の例文
むすめが、毎日まいにち学校がっこうで、きつね、きつねといわれますそうで、学校がっこうへゆくのをいやがってこまりますが、どうかおぼっちゃんにおねがいして
青いボタン (新字新仮名) / 小川未明(著)
さあぼっちゃん。きっとこいつははなします。早くなみだをおふきなさい。まるで顔中ぐじゃぐじゃだ。そらええああすっかりさっぱりした。
黄いろのトマト (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
老僕が何やらぼそぼそ言うと、——「ええ?……だれか来たって?」と、き返して、「となりのぼっちゃんかい? じゃ、お通しおし」
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
たとえば三毛が昔かたぎの若い母親で、玉が田舎出いなかでの書生だとすれば、ちびには都会の山の手のぼっちゃんのようなところがあった。
子猫 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
万事を葉子の肩になげかけてそれが当然な事でもあるような鈍感なおぼっちゃんじみた生活のしかたが葉子の鋭い神経をいらいらさせ出した。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
クリストフは疑懼ぎくしなかった。彼女にたいしてごく懇切であり、あまりに懇切すぎた。大きなぼっちゃんとして甘ったれていた。
千菊せんぎくさま、ぼっっちゃまにも おかあさまが あります。けれども、いまは とおいとおい ところに いらっしゃるので、とても あえません。」
一休さん (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
いちばん下のぼっちゃんが、わしのしゃぶってた骨をけとばしたもんだから、それで、その足にかみついてやったんだ。
私が松山へ行ったのは数年前『ぼっちゃん』を読んだ事がありましたため、その跡を尋ねに松山へ行きたいという心が自然にその年の春浮んで来たのです。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
しかしその割に彼女や辰子たつこの家庭の事情などには沈黙していた。それは必ずしも最初から相手をぼっちゃんと見縊みくびった上の打算ださんではないのに違いなかった。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ぼっちやん、ゆっくり遊んでやつて下さい。直ぐ寝つちまつちやあ不可いけませんよ、うも御苦労様なことツたら、」
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
十九歳をかしら令嬢れいじょうが四人、女中が十八人、事務員が二人の全く女ばかりの大世帯で、男と云えば風呂きのじいさんと末のぼっちゃんだけだと云う事であった。
魚の序文 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
ぼっちゃま、雨がこんなに降っておりますから帰りましょう、お召物がこんなに濡れてしまいました」
ルピックさんのぼっちゃんたちとお嬢さんが、休暇で帰って来る。乗合馬車からり、遠くのほうに両親の姿が見えると、にんじんは、「さてどうしたものか」と思う。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
なぜなら、文六ちゃんは樽屋の清六さんの一人きりの大事なぼっちゃんで、甘えん坊だからです。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
ぼっちゃんという事じゃないですか、と正直に答えようと思いましたが、また反感を買ってもと思い、「知りません」といささかくすぐつたい返事をすると、横から、東海さんが、大声で
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
「しかし私ゃこれでも貴方のぼっちゃん坊ちゃんていわれた昔をまだ覚えていますよ」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ぼっちゃん、何かご用でございますか。私は、その指輪の家来けらいでございます。ですから、その指輪をはめていらっしゃる方のおっしゃる通りに、しなければならないのでございます。」
「でも、直さんのほうが、たちが悪いよ。あんなおぼっちゃんくずれは、……」
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「さ、ぼっちゃん、つかまえてますから、あがってらっしゃい」
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
ぼっちゃん、坊ちゃん、お見えになりますか。」
生と死との記録 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
そのうちに、ぼっちゃんがまれました。ぼっちゃんが三つのとき、なにかのはずみにあやまって、わたしかどあたまをおちになったのです。
春さきの古物店 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「何をぼんやり立ってるの? 皆さんメシュー御紹介ごしょうかいいたしますわ。この方はムッシュー・ヴォルデマール、おとなりぼっちゃんです。それからこちらは」
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
笑い、快活に話をし、気兼ねも遠慮もなく、善良なおぼっちゃんとなりお友だちとなることを、いっそう好んでいた。
ジョバンニはぼっちゃんといわれたので、すこししゃくにさわってだまっていましたが、カムパネルラは
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
オノリイヌ——にんじんぼっちゃん、わしの鍋は、どこへ行ったか知りなさらんか?
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
いや、何とでもおっしゃるがよい。が、理窟りくつじゃありません。世の中のことは、おぼっちゃんの理想どおりに行くものではありません。貴君あなたにも金の力がどんなに恐ろしいかが、お判りになるときが来ますよ。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
(おぼっちゃま、お坊ちゃま、)
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ぼっちゃま」
わたしは、ぼっちゃんに、わたしっているようなと、わたしむね宿やどっているようなたましいけてあげますように、かみさまにおねがいしましょう。
はてしなき世界 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「あんた馬なんか連れてこんな所で、何してるんですね、ええ、ぼっちゃん? およこしなさい、持っていてあげるから」
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
ぼっちゃん、お前たちゃ、まさかおとっつぁんを撃ったんじゃあるめえな」
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
「フランス人は善良なおぼっちゃんばかりだ。あまり鋭利ではない。」
「さあ、こうのぼっちゃんがた。いかがですか。おとりください」
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ぼっちゃん、わたしは、こうして、諸国しょこく流浪るろうします。それは、どんなむらでも、またちいさなまちでも、はるからなつにかけて、あるいてまわります。
青いボタン (新字新仮名) / 小川未明(著)
「さあ、向うのぼっちゃんがた。いかがですか。おとり下さい。」
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ぼっちゃんのおかあさんは、とおいところへいってしまわれたのですよ。」と、あわれな子供こどもに、いてかせなければならなかったのです。
遠方の母 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おお、いいおつきさまだこと。ぼっちゃんのおかあさんは、あのなかに、おいでなさるのですよ。」と、彼女かのじょつきゆびさしながらいいました。
遠方の母 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ぼっちゃん、達者たっしゃでしたら、また、まいりますよ。」と、おじいさんは、こたえました。けれどかならずくるとはいいませんでした。
金魚売り (新字新仮名) / 小川未明(著)
「まあ、ぼっちゃん、お一人ひとりで、えらいですこと。」と、お菓子屋かしやのおばさんは、ほめて、お菓子かしをふろしきにつつんでくれました。
小さな年ちゃん (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるのこと、おさくが、廊下ろうかのそうじをしていると、ぼっちゃんのほうのしつで、電球でんきゅう破裂はれつしたときのような、すさまじいおとがしました。
おさくの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おしずは、さっきまで、うちまえに、子供こどもたちとあそんでいたぼっちゃんがえなくなったので、どこへいったのだろうとさがしました。
愛は不思議なもの (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おまえが、ほんとうに、ぼっちゃんたちに、ばかだなんて、失礼しつれいなことをいったなら、わるかったといって、おあやまりなさい。」
おさくの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それに、ぼっちゃんの大事だいじ帽子ぼうしをよごしたり、いためたりしては、わるいとおもったので、遠慮えんりょするようにえたのであります。
頭をはなれた帽子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ぼっちゃん、昼間ひるまは、なんでしてしまったのです。あなたは、あんなにれるナイフをっておいでなさるくせに……。
脊の低いとがった男 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おそくなるからかけますよ。ぼっちゃんのごしんせつをありがたくおもいます。旅人たびびとより。」といて、いしうえにのこして、おとこりました。
その日から正直になった話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「なにしろめずらしいもんでさあ。ぼっちゃんたちは、かにや、かめのには、きましてね。」と、おじいさんはいったのです。
真昼のお化け (新字新仮名) / 小川未明(著)
ぼっちゃん、ありがとうございます。おとうとは、どんなによろこぶかしれません。」と、ねえやは、をうるませて、いいました。
おかめどんぐり (新字新仮名) / 小川未明(著)
はなが、上野駅うえのえきいたときに、彼女かのじょ心配しんぱいしたほどのこともなく、すぐに、出迎でむかえにきていたおくさまや、ぼっちゃんたちのにとまったのです。
赤いえり巻き (新字新仮名) / 小川未明(著)
「さあ、ぼっちゃん、わたしに、おんぶしましょう。ねえやは、ぼっちゃんをおんぶして、どっかへいって、しまいましょうか。」
愛は不思議なもの (新字新仮名) / 小川未明(著)