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四方
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あたり
ふりがな文庫
“
四方
(
あたり
)” の例文
など話しながら、足は
疲労
(
くたび
)
れても、
四方
(
あたり
)
の風景の
佳
(
い
)
いのに気も代って、
漸々
(
ようよう
)
発光路に着いたのがその日の午後三時過ぎでありました。
幕末維新懐古談:73 栃の木で老猿を彫ったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
そのうえ
強
(
し
)
いることはあるまいと思っていると、そのけったいな男が、突然きょろきょろと
四方
(
あたり
)
を見廻して、落着かないこと
夥
(
おびただ
)
しい。
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そこにはもう他に一組の
鵜飼
(
うかい
)
がいて、がやがやと云いながら一
艘
(
そう
)
の舟をだしているところであった。
四方
(
あたり
)
はもうすっかりと暮れていた。
赤い土の壺
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
四方
(
あたり
)
は急に眞暗になつて、あの人はウーンと言つて倒れると、私を抱きしめてゐた腕がゆるんで、私の身體は大地へ滑り落ちました
銭形平次捕物控:266 処女神聖
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
いつも両側の汚れた
瓦屋根
(
かわらやね
)
に
四方
(
あたり
)
の眺望を
遮
(
さえざ
)
られた地面の低い場末の
横町
(
よこちょう
)
から、今突然、橋の上に出て見た四月の
隅田川
(
すみだがわ
)
は、一年に二
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
それから
四方
(
あたり
)
を見廻わした。と見ると足もとの大地の上に宝蔵お守りの若侍が、手足を左右に延ばしたなりで、
鼾
(
いびき
)
をかいて眠っている。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
四方
(
あたり
)
に聞ゆる水の音は、今の自分にはもはや壮快に聞えて来た。自分は四方を眺めながら、何とはなしに天神川の鉄橋を渡ったのである。
水害雑録
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
中央の太き柱は
薬玉
(
くすだま
)
および小旗を
以
(
も
)
って飾られ、無数の電灯は
四方
(
あたり
)
に輝きて
目映
(
まばゆ
)
きばかり。当夜の料理は前壁に対せし一列の食卓に配置さる。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
廻
(
まは
)
り夫より所々を
見物
(
けんぶつ
)
しける内一
疋
(
ぴき
)
の
鹿
(
しか
)
を
追駈
(
おつかけ
)
しが鹿の
迯
(
にぐ
)
るに寶澤は
何地迄
(
いづくまで
)
もと思あとを
慕
(
したひ
)
しも
終
(
つひ
)
に鹿は見失ひ
四方
(
あたり
)
を
見廻
(
みめぐ
)
らせば
遠近
(
をちこち
)
の山の
櫻
(
さくら
)
今を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
一体天井裏というものはどんな風になっているのだろうと、恐る恐る、その穴に首を入れて、
四方
(
あたり
)
を見廻しました。
屋根裏の散歩者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
角を家の
板目
(
はめ
)
につきかけた事も、一度や二度ではない。その上、
蹄
(
ひづめ
)
の音と、鳴く声とは、うすい夜の霧をうごかして、ものものしく、
四方
(
あたり
)
に響き渡つた。
煙草と悪魔
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
男はこの様子を見て
四方
(
あたり
)
をきっと
見廻
(
みま
)
わしながら、火鉢越に女の顔近く我顔を出して、極めて低き声ひそひそと
貧乏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
五日ばかりの月も落ちて了ツて、
四方
(
あたり
)
が急に
眞
(
ま
)
ツ
暗
(
くら
)
になると、いや螢の光ること飛んで來ること! 其の晩は取分け螢の出やうが多かツたやうに思はれた。
水郷
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
兄はこう云って
四方
(
あたり
)
を見渡した。その眼は本当に二人だけで話のできる静かな場所を見つけているらしかった。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
皆の者は驚いて、
四方
(
あたり
)
にとび散りながら、眼を
瞠
(
みは
)
って
闖入者
(
ちんにゅうしゃ
)
を見る。仮面の男は扉の前でばったりたおれる。
探偵戯曲 仮面の男
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
「まあざつとこんな調子です。」彼は吾れと吾が
詭術
(
きじゆつ
)
に酔つたやうな顔をして
四方
(
あたり
)
を見廻した。そしてその眼は不自然な凝視で以て重役の上に暫らく止まつた。
手品師
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
四方
(
あたり
)
の暗黒を
十重二十重
(
とえはたえ
)
に囲んで、御用! 御用! の声も急に、邦之助の率いる捕手の一団が、雲のごとく、霧のごとく、群がり、どよめいて、迫り囲んだ。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
暫くすると難儀に
遭
(
あ
)
ってから時が立ったのと、
四方
(
あたり
)
が静になったのとのために、頭痛が余程軽くなった。
護持院原の敵討
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
父親はお庄の真赤になって炙っている玉蜀黍を一つ取り上げると、はじ切れそうな実を三粒四粒指で
挘
(
むし
)
って、前歯でぼつりぼつり
噛
(
か
)
み始めた。
四方
(
あたり
)
はもう暗かった。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
弟さらばとて明玉をとりいだし
鍛冶
(
かぢ
)
する
鑕
(
かなとこ
)
の上にのせ
䤶
(
かなつち
)
をもて力にまかせて打ければ、をしむべし明玉
砕破
(
くだけて
)
内に白玉を
孕
(
はらみ
)
しがそれも
砕
(
くだ
)
け、水ありて
四方
(
あたり
)
へ
飛散
(
とびちり
)
けり。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
その
中
(
うち
)
に七人は直ぐに自分の傍まで近付いて来たが、その持っている
手燭
(
てしょく
)
の光りで
四方
(
あたり
)
を見ると、ここは又大きい広い、そうして今の廊下よりもずっと見事な
室
(
へや
)
である。
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
泰三はすばやく
四方
(
あたり
)
を見た。そこは城代家老の詰所であって、常なら取次や書記や走りという侍などが六人いる定りだが、満信城代の計らいでそのときはみんな席にいなかった。
思い違い物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
四方
(
あたり
)
は
幽翠
(
ゆうすい
)
な峰で、散り残った山ざくらが白く、七堂
伽藍
(
がらん
)
は、天野川の渓流が
繞
(
めぐ
)
るふところ谷にあり、山門へ渡る土橋から下をのぞくと、峰の桜が
片々
(
へんぺん
)
と流れにせかれて落ちてゆく。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
兵士は病兵の顔と
四方
(
あたり
)
のさまとを見まわしたが、今度は
肩章
(
けんしょう
)
を
仔細
(
しさい
)
に検した。
一兵卒
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
こはいかに、
四方
(
あたり
)
のさまもけすさまじ
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
いや、平次の投げ銭は恐れないにしても、物々しく
四方
(
あたり
)
に
犇
(
ひし
)
めく気合、いずれは役人の包囲の網が、ここを目当てに絞られるでしょう。
銭形平次捕物控:068 辻斬綺談
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
どのみち、本所の鐘撞堂へ帰るべき身であるけれども、遠廻りをして帰らねばならぬと思って、
四方
(
あたり
)
を見廻して突立っていました。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
バタバタと走り出た二人の武士、天丸左陣と人丸左陣とは
四方
(
あたり
)
をキョロキョロ見廻わしたがすなわち咒縛を解かれたからであろう。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
四方
(
あたり
)
は真暗になったままで、日は暮れてしまって、夜になると、雨と風とが一緒になって、実に恐ろしい
暴風雨
(
あらし
)
となりました。
幕末維新懐古談:64 大仏の末路のあわれなはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
と、
四方
(
あたり
)
が急に
微暗
(
うすぐら
)
くなって頭の上の
木
(
こ
)
の
葉
(
は
)
がざざざと鳴りはじめた。大粒の雨の
雫
(
しずく
)
が水の上へぽつりぽつりと落ちて来た。
岩魚の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
いつも両側の
汚
(
よご
)
れた
瓦屋根
(
かはらやね
)
に
四方
(
あたり
)
の
眺望
(
てうばう
)
を
遮
(
さへぎ
)
られた地面の低い
場末
(
ばすゑ
)
の
横町
(
よこちやう
)
から、
今
(
いま
)
突然
(
とつぜん
)
、橋の上に出て見た四月の
隅田川
(
すみだがは
)
は
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
こたびは我これに跨がり、急ぎて鉤に餌を施し、先づこれを下して後はじめて
四方
(
あたり
)
を見るに、舟子は
既
(
はや
)
舟を数十間の外に遠ざけて、こなたのさまを伺ひ居れり。
鼠頭魚釣り
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
四方
(
あたり
)
に浮いてる
家棟
(
やのむね
)
は多くは軒以上を水に没している。なるほど洪水じゃなと
嗟嘆
(
さたん
)
せざるを得なかった。
水害雑録
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
弟さらばとて明玉をとりいだし
鍛冶
(
かぢ
)
する
鑕
(
かなとこ
)
の上にのせ
䤶
(
かなつち
)
をもて力にまかせて打ければ、をしむべし明玉
砕破
(
くだけて
)
内に白玉を
孕
(
はらみ
)
しがそれも
砕
(
くだ
)
け、水ありて
四方
(
あたり
)
へ
飛散
(
とびちり
)
けり。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
お庄はけたたましい声を立てながら、芳太郎の手に掴まってそこを
渉
(
わた
)
った。
四方
(
あたり
)
はシンとしていた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「うん。暖かにしているがいい。この
室
(
へや
)
は少し寒いねえ」と中野君は
侘
(
わび
)
し
気
(
げ
)
に
四方
(
あたり
)
を見廻した。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そこで安心して、
徐々
(
そろ/\
)
仕事の支度に取懸ると、
其處
(
そこ
)
らには盛に螢を呼ぶ聲が聞える。其の聲を聞くと、急に氣が勇むで來て、愉快で
耐
(
たま
)
らない。それに
四方
(
あたり
)
の
景色
(
けしき
)
も
好
(
よ
)
かツた。
水郷
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
追手達は身構えをしながら、瓦を一枚一枚
這寄
(
はいよ
)
って来た。畸形児ののぼせ上った目には、それが三匹の大トカゲの様に見えた。彼はあてもなくキョロキョロと
四方
(
あたり
)
を見廻した。
一寸法師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
併
(
しか
)
し正木博士はそんな事には気が附かぬかのように、
四方
(
あたり
)
構わぬ大声をあげて笑い出した。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
見ると青い
縞
(
しま
)
の洋服を着てゐる。山高帽を脱いで手に持つてゐる。そして厭に落着いた足どりで入つて来る。彼は
四方
(
あたり
)
を見廻して、軽く皆に会釈をし乍ら重役に近づいた。重役は立上つた。
手品師
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
がたびし
明
(
あけ
)
て
出行
(
いでゆき
)
けり跡には長助お光兩人
差向
(
さしむか
)
ひなればお光は
四方
(
あたり
)
を見廻して
徐
(
しづ
)
かに云けるに内々にて御願ひと申すは外のことには候はず私し
夫
(
をつと
)
道十郎事八ヶ年
以前
(
いぜん
)
寃
(
むじつ
)
の
難
(
なん
)
にて
斯樣々々
(
かやう/\
)
と有し次第を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
四方
(
あたり
)
を
憚
(
はばか
)
って笑い声を立てなかったのである。
煙管
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
花房一郎はややトロリとなって
四方
(
あたり
)
を見廻しました。ブランデーを両掌の中に温め
乍
(
なが
)
ら、まさに相手が欲しくなった程度の酔です。
笑う悪魔
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
竜之助は西から来て、この札の辻の前へ立った——この札の辻の
傍
(
かたわら
)
には大きな井戸があって、
四方
(
あたり
)
には宿屋が軒を並べている。
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
この時、気絶から
甦
(
よみがえ
)
ったと見え、若者はにわかに動き出した。まず真っ先に眼をあけて
四方
(
あたり
)
を不思議そうに見廻したが
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
四方
(
あたり
)
には
麗
(
うららか
)
な
陽
(
ひ
)
があった。水の澄みきった小さな流れがあって、それがうねうねと草の間をうねっていたが、それにはかちわたりの石を置いてあった。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
そうして悠々然と
四方
(
あたり
)
に人もおらぬといった風に構えている処は
鷹揚
(
おうよう
)
といって好いか、寛大といって好いか
幕末維新懐古談:54 好き狆のモデルを得たはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
風に乱れて渦巻き立ち、崩るゝ雲と相応じて、忽ち大地に白布を引きはへたる如く立籠むれば、呼吸するさへに心ぐるしく、
四方
(
あたり
)
を視るに霧の隔てゝ
天地
(
あめつち
)
はたゞ白きのみ
二日物語
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
「なるほどここは
静
(
しずか
)
だ。ここならゆっくり話ができそうだ」と兄は
四方
(
あたり
)
を見廻した。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
私はその凹地のまん中でいく度もいく度も身を伏せて
四方
(
あたり
)
のどこからも見えないことを、たしかめますと、すぐに右のポケットからガソリンマッチを取り出して、手元を低くしながら
死後の恋
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
“四方”の意味
《名詞》
四 方(しほう)
東西南北の四つの方角。
周囲。
正方形の四辺。
よも 参照。
(出典:Wiktionary)
四
常用漢字
小1
部首:⼞
5画
方
常用漢字
小2
部首:⽅
4画
“四方”で始まる語句
四方山
四方八方
四方太
四方屋
四方山話
四方田政孝
四方田
四方庵
四方木屋
四方勇治