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劃
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くぎ
ふりがな文庫
“
劃
(
くぎ
)” の例文
村の背後には、川を隔てて高峻な四国山脈が空を
劃
(
くぎ
)
っている。前面は、波のような丘陵の起伏と、そのさきの太平洋に面した荒海がある。
武装せる市街
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
早川の対岸に、空を
劃
(
くぎ
)
つて聳えてゐる、連山の輪廓を、ほの/″\とした
月魄
(
つきしろ
)
が、くつきりと浮き立たせてゐるのであつた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
裙
(
すそ
)
が落ちて、畳に
颯
(
さっ
)
と
捌
(
さば
)
けると、薄色の壁に美しく
濡蔦
(
ぬれづた
)
が
搦
(
から
)
んで絵模様、水の垂りそうな
濡毛
(
ぬれげ
)
を、くっきりと
肱
(
ひじ
)
で
劃
(
くぎ
)
って、透通るように
櫛
(
くし
)
を入れる。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
左手には溪の向こうを夜空を
劃
(
くぎ
)
って
爬虫
(
はちゅう
)
の背のような尾根が
蜿蜒
(
えんえん
)
と
匍
(
は
)
っている。黒ぐろとした杉林がパノラマのように
廻
(
めぐ
)
って私の行手を深い闇で包んでしまっている。
闇の絵巻
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
隣室を
劃
(
くぎ
)
った
垂帳
(
たれまく
)
のふっくりとした襞の
凹所
(
くぼみ
)
は紫水晶のそれのような微妙な
色彩
(
いろあい
)
をつけ出した。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
真只中
(
まっただなか
)
を細い一筋の川——だが近よつて見ると細くはない。大河だ。大雪原の大面積が大河を細く
劃
(
くぎ
)
つて見せてゐたのである。いつか私はその岸をとぼ/\と歩いてゐた。
川
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
甲武信
(
こぶし
)
の国境の薄白い山々が
劃
(
くぎ
)
っているのを眺めたりしていると、なかなか好いことは好い。
大和路・信濃路
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
片側はしもた屋になり、片側から軒燈が漏れていて、蒼白い彼女の皮膚をいよいよ冴えた蒼白さに射かえして、くっきりと夜のくらみを
劃
(
くぎ
)
った上に、むしろ重く空中に浮いてみえたのである。
幻影の都市
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
突兀
(
とっこつ
)
と秋空を
劃
(
くぎ
)
る遠山の上を高く
雁
(
かり
)
の列が南へ急ぐのを見ても、しかし、将卒一同
誰
(
だれ
)
一人として甘い懐郷の情などに
唆
(
そそ
)
られるものはない。それほどに、彼らの位置は危険
極
(
きわ
)
まるものだったのである。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
早川の対岸に、空を
劃
(
くぎ
)
って
聳
(
そび
)
えている、連山の
輪廓
(
りんかく
)
を、ほの/″\とした
月魄
(
つきしろ
)
が、くっきりと浮き立たせているのであった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
藍地
(
あゐぢ
)
に
紺
(
こん
)
の
立絞
(
たてしぼり
)
の
浴衣
(
ゆかた
)
を
唯
(
たゞ
)
一重
(
ひとへ
)
、
絲
(
いと
)
ばかりの
紅
(
くれなゐ
)
も
見
(
み
)
せず
素膚
(
すはだ
)
に
着
(
き
)
た。
襟
(
えり
)
をなぞへに
膨
(
ふつく
)
りと
乳
(
ちゝ
)
を
劃
(
くぎ
)
つて、
衣
(
きぬ
)
が
青
(
あを
)
い。
人魚の祠
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
黄ばんだ葉も
半
(
なかば
)
落ち切らない上に、何百年間か張りはびこった枝が、小さな森くらいに空を
劃
(
くぎ
)
ってこんもりと影を作り、その
処々
(
ところどころ
)
に、
尨大
(
ぼうだい
)
な
毬
(
まり
)
の様な形に、
葛
(
くず
)
の
蔓
(
つる
)
のかたまりが宿って居るので
トシオの見たもの
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
表に夫人の
打微笑
(
うちほほえ
)
む、目も眉も
鮮麗
(
あざやか
)
に、
人丈
(
ひとたけ
)
に
暗
(
やみ
)
の中に描かれて、黒髪の輪郭が、細く
円髷
(
まげ
)
を
劃
(
くぎ
)
って
明
(
あかる
)
い。
伊勢之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
峰から峰へ渡る幾百羽と云う小鳥の群が、
黄
(
きいろ
)
い翼をひらめかしながら、九郎助の頭の上を、ほがらかに鳴きながら通っている。行手には
榛名
(
はるな
)
が、空を
劃
(
くぎ
)
って蒼々と
聳
(
そび
)
えていた。
入れ札
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
右手の方の空にゃあ半月のように雪空を
劃
(
くぎ
)
って電燈が映ってるし、今度
行
(
ゆ
)
こうという、その遠方の都の冬の処を、夢にでも見ているのじゃあるまいかと思った。
註文帳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
……
空
(
そら
)
を
劃
(
くぎ
)
つた
峰
(
みね
)
の
姿
(
すがた
)
は、
此
(
こ
)
の
山懷
(
やまふところ
)
へ
暗
(
くら
)
く
成
(
な
)
つて、
崕
(
がけ
)
の
樹立
(
こだち
)
の
黒
(
くろ
)
い
中
(
なか
)
に、
折
(
をり
)
から
晃々
(
きら/\
)
と
星
(
ほし
)
が
輝
(
かゞや
)
く。
月夜車
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
溝石で路を
劃
(
くぎ
)
って、二間ばかりの間の軒下の土間に下りた、蔵人は踏留まるがごとくにして、勇ましく
衝
(
つ
)
と立ったが、秋風は静々と町の一方から
家毎
(
やごと
)
の
廂
(
ひさし
)
を渡って来て
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
恁
(
か
)
くてしばらくの
間
(
あいだ
)
といふものは、
轡
(
くつわ
)
を鳴らす音、
蹄
(
ひづめ
)
の音、ものを呼ぶ声、叫ぶ声、
雑々
(
ざつざつ
)
として
物騒
(
ものさわ
)
がしく、此の
破家
(
あばらや
)
の庭の如き、
唯
(
ただ
)
其処
(
そこ
)
ばかりを
劃
(
くぎ
)
つて四五本の
樹立
(
こだち
)
あり
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
前
(
ぜん
)
のは
背戸
(
せど
)
がずつと
展
(
ひら
)
けて、向うの谷で
劃
(
くぎ
)
られるが、其の
間
(
あいだ
)
、
僅少
(
わずか
)
ばかりでも
畠
(
はたけ
)
があつた。
貴婦人
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
驚いて法師が、笠に手を掛け、振返ると、
亀甲形
(
きっこうがた
)
に空を
劃
(
くぎ
)
った
都会
(
みやこ
)
を装う、
鎧
(
よろい
)
のごとき屋根を貫いて、檜物町の空に
𤏋
(
ぱっ
)
と立つ、偉大なる
彗星
(
ほうきぼし
)
のごとき火の柱が上って、
倒
(
さかしま
)
に
迸
(
ほとばし
)
る。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
葉山一帯の海岸を
屏風
(
びょうぶ
)
で
劃
(
くぎ
)
った、桜山の
裾
(
すそ
)
が、見も
馴
(
な
)
れぬ
獣
(
けもの
)
のごとく、
洋
(
わだつみ
)
へ躍込んだ、一方は長者園の浜で、
逗子
(
ずし
)
から森戸、葉山をかけて、夏向き海水浴の
時分
(
ころ
)
、
人死
(
ひとじに
)
のあるのは
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
日は水を
劃
(
くぎ
)
って、その板の上ばかり、たとえば温かさを積重ねた心持にふわふわ当る。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この町の
賑
(
にぎや
)
かな店々の
赫
(
かっ
)
と明るい
果
(
はて
)
を、
縦筋
(
たてすじ
)
に暗く
劃
(
くぎ
)
った
一条
(
ひとすじ
)
の
路
(
みち
)
を隔てて、
数百
(
すひゃく
)
の
燈火
(
ともしび
)
の
織目
(
おりめ
)
から
抜出
(
ぬけだ
)
したような
薄茫乎
(
うすぼんやり
)
として灰色の
隈
(
くま
)
が
暗夜
(
やみ
)
に
漾
(
ただよ
)
う、まばらな
人立
(
ひとだち
)
を前に控えて
国貞えがく
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
広書院の一方を青竹で
劃
(
くぎ
)
っただけが、その舞台で、見物席は三十畳ばかりに、さあ十四五人も居ましたか、野分のあとの庭の飛石といった形で、ひっそり、気の抜けたように、わるく寂しい。
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
帯の色も、その立姿の、肩と裾を横に、胸高に、
細
(
ほっそ
)
りと
劃
(
くぎ
)
って濃い。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
劃
漢検準1級
部首:⼑
14画
“劃”を含む語句
劃然
区劃
區劃
一劃
企劃
劃期
計劃
劃策
劃期的
劃時代的
字劃
参劃
仕劃
劃目
區劃整理
期劃
空劃線
財政計劃
輪劃
間劃
...