作者さくしや)” の例文
もしこの評眼ひようがんをもちて財主の妹を財主と共に虐殺したる一節をまば、作者さくしや用意よういの如何に非凡ひぼんなるかをるにまどはぬなるべし。
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
そのちゝと子の心と心とが歔欷きよきの中にぴつたり抱き合ふ瞬間しゆんかん作者さくしやの筆には、恐ろしい程眞實しんじつあい發露はつろするどゑがき出してゐるではありませんか。
三作家に就ての感想 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
工夫くふうでなくとも、自然しぜんにその作者さくしやこゝろつてゐると、かういふふうにつごうのよい氣分風きぶんふうあらはかたが、くちをついてるのであります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
流石さすが明治めいぢおん作者さくしや様方さまがたつうつうだけありて俗物ぞくぶつ済度さいどはやくも無二むに本願ほんぐわんとなし俗物ぞくぶつ調子てうし合点がてんして幇間たいこたゝきておひげちりはらふの工風くふう大悟たいご
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
そこにはけないおうきな油絵あぶらえなどが、まどぎわにてかけてあつたりして、大入道おうにうどうのR国人こくじんが、この作者さくしやについて、意味いみについて説明せつめいしてくれたりしたが
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
作者さくしやはさつき、「下人が雨やみを待つてゐた」と書いた。しかし、下人げにんは、雨がやんでも格別かくべつどうしようと云ふ當てはない。ふだんなら、勿論もちろん、主人の家へ歸る可き筈である。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
とろ/\とねむつてめれば、いぬてぺろ/\とめてる……胴中どうなかへびく、いまあなたらしい家守やもりはなうへたてにのたくる……やがては作者さくしや身躰からだおそふて、をゆすぶる
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つまり平凡へいぼんなお手本てほんうつしになぞつてくものですから、だん/\つまらなく、その作者さくしや特徴とくちようすことが出來できなくなつたわけであります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
内新好ないしんかうが『一目ひとめ土堤づゝみ』に穿ゑぐりしつう仕込じこみおん作者さくしや様方さまがた一連いちれんを云ふなれば、其職分しよくぶんさらおもくしてたふときは扇子せんす前額ひたひきたへる幇間だいこならんや。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
すなは作者さくしや精神せいしんめて脚色きやくしよくしたるもの、しかしてその殺人罪さつじんざいおかすにいたりたるも、じつれ、この錯亂さくらん、この調子てふしはづれ、この撞着どうちやくよりおこりしにあらずんばあらず。
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
無論作品さくひんといふものに、表現形式へうげんけいしき完全くわんぜんといふ事は必要ひつえうな事ですが、表現の如何いかんを問はず、作者さくしやがかういふ意味いみ眞實しんじつを捉へて、それを適確てきかくに現はし得てゐるとすれば
三作家に就ての感想 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
つう仕込じこみおん作者さくしや様方さまがた尊崇そんすうし其利益りやくのいやちこなるを欽仰きんぎやうし、其職分しよくぶんをもておもだいなりとなすは俗物ぞくぶつをし俗物ぞくぶつ渇仰かつがうせらるゝがゆゑなり
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
これは無論むろん作者さくしやに對する一しゆ僻見へきけんかも知れませんが、事實じじつに於ては、私も氏の作品さくひんに強く心をかれ乍らも、どこかにまだ心持こゝろもちにぴつたり來ない點がないではありません。
三作家に就ての感想 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
けれどもこの作者さくしや中心ちゆうしんとしてんでゐるのは、そんなところでなく、何事なにごともないごく退たいくつな生活せいかつをしてゐるひとが、けふもまたれて、ひぐらしいてゐるとかうおもつてゐて
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
しかしてみづかべんじてはるゝは、作者さくしや趣意しゆいは、殺人犯さつじんはんおかしたる人物じんぶつは、その犯後はんごいかなる思想しそういだくやらんとこゝろもちひて推測おしはか精微せいびじよううつして己が才力を著はさんとするのみと。
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)