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余裕
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よゆう
ふりがな文庫
“
余裕
(
よゆう
)” の例文
旧字:
餘裕
我我は皆せち
辛
(
がら
)
い現代の日本に育つてゐる。さう云ふことに苦労するのは
勿論
(
もちろん
)
、
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
意味を正確に伝へる文章を作る
余裕
(
よゆう
)
さへない。
澄江堂雑記
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
一夜
(
あるよ
)
、清三は石川に手紙を書いた。初めはまじめに書いてみたが、あまり
余裕
(
よゆう
)
がないのを自分で感じて、わざと
律語
(
りつご
)
に書き直してみた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
ひとたび勝敗の地を
更
(
か
)
えて逆転した陣容というものは、それほど危険な
凶相
(
きょうそう
)
を呈していた。しかし謙信の面にはなお
余裕
(
よゆう
)
が見えた。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いろいろな
人
(
ひと
)
たちが、その
道
(
みち
)
の
上
(
うえ
)
をば
歩
(
ある
)
いていましたけれど、
少年
(
しょうねん
)
の
目
(
め
)
には、その
人
(
ひと
)
たちに
心
(
こころ
)
をとめてみる
余裕
(
よゆう
)
もなかったのであります。
石をのせた車
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
この牡牛のうき彫りが、単なる
装飾
(
そうしょく
)
であるのか、それとも何か外に意味があるのか、そのとき八木君には答を出している
余裕
(
よゆう
)
がなかった。
時計屋敷の秘密
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
しかしまだ一カ月も
余裕
(
よゆう
)
があるから、その間にどうかなるだろうと思って、よろしゅうございますとまたご返事を致しました。
私の個人主義
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
余裕
(
よゆう
)
綽々
(
しゃくしゃく
)
とした寺田の買い方にふと
小憎
(
こにく
)
らしくなった顔を見上げるのだったが、そんな時寺田の眼は
苛々
(
いらいら
)
と燃えて急に
挑
(
いど
)
み
掛
(
かか
)
るようだった。
競馬
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
十貫を利用して資本力が十五貫にましたなら、その時に十二貫出すと、つねに
余裕
(
よゆう
)
を
貯
(
たくわ
)
えておいてこれを
種
(
たね
)
として進みたいと思うのである。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
真の貧乏の必要から、借金をしようと心掛けても、人は大してお金を貸さない。駈け引きするほどの
余裕
(
よゆう
)
がなく、情熱的嘘がないからだろう。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
だが、息づまるような今までの気持からいくらか
余裕
(
よゆう
)
をつけようとして、小初はもう一度放水路の方を見やった。
渾沌未分
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
ぼくの家はきみに
学資
(
がくし
)
をだすくらいの
余裕
(
よゆう
)
があるんだ、決して遠慮することはないよ、ぼくの父は商人だけれども金を
貯
(
た
)
めることばかり考えてやしない
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
貧
(
ひん
)
すれば、その間に
罪悪
(
ざいあく
)
が生じて世が乱れるが、
富
(
と
)
めば、
余裕
(
よゆう
)
を生じて人間同士の
礼節
(
れいせつ
)
も
敦
(
あつ
)
くなり、風俗も良くなり、国民の幸福を
招致
(
しょうち
)
することになる。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
戦場で
負傷
(
ふしょう
)
したきずに手当てをする
余裕
(
よゆう
)
がなくて
打
(
う
)
っちゃらかしておくと、
化膿
(
かのう
)
してそれに
蛆
(
うじ
)
が
繁殖
(
はんしょく
)
する。その蛆がきれいに
膿
(
うみ
)
をなめつくしてきずが
癒
(
い
)
える。
蛆の効用
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
それがために胸がいっぱいで、
己
(
おの
)
れの身分を考える
余裕
(
よゆう
)
もありませんでした。また何のために自分がここに来たかという使命の程も忘れてしまっていました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
途中
(
とちゅう
)
帽子
(
ぼうし
)
を失いたれど
購
(
あがな
)
うべき
余裕
(
よゆう
)
なければ、洋服には「うつり」あしけれど
手拭
(
てぬぐい
)
にて
頬冠
(
ほおかぶ
)
りしけるに、犬の
吠
(
ほ
)
ゆること
甚
(
はなはだ
)
しければ自ら
無冠
(
むかん
)
の
太夫
(
たゆう
)
と洒落ぬ。
突貫紀行
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
政治問題を検討したり実践したりする
余裕
(
よゆう
)
も関心も少ないし、支配や行政に必要な特別の能力も訓練も持たない。そこに必然に要求されるのが指導者である。
政治学入門
(新字新仮名)
/
矢部貞治
(著)
もう美奈子を隔てゝ、話をするほどの
余裕
(
よゆう
)
もなくなったのであろう、彼は、激しく瑠璃子の前に詰めよった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
百姓はほんの自分の片手間仕事だが、それでもそこにあのがりがり
妄者
(
もうじゃ
)
どもの知らぬ
余裕
(
よゆう
)
がある。そして大根や菜ッ葉をも時々は彼らにただ分配してやってる。
猫八
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
我々の入った部屋は、家具も幾分はましで、その並べ方も、前の部屋より
趣味
(
しゅみ
)
があった。もっともその
瞬間
(
しゅんかん
)
、わたしはほとんど何ひとつ目に留める
余裕
(
よゆう
)
がなかった。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
下宿屋の
状態
(
じょうたい
)
から、諸商人のようす表通りの商店の
風
(
ふう
)
などにも、目がとまり、自分の周囲がすべて明るくなって、ようやく身外の事物に目をそそぐ
余裕
(
よゆう
)
ができてきた。
廃める
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
あなたとの友情も、こんなに巫山戯半分で、皆と共々に笑える
余裕
(
よゆう
)
があったなら、あんなに皆から
憎
(
にく
)
まれず、また、ぼくも苦しい
想
(
おも
)
いをしなくても、済んだ、と思います。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
差別して考える
余裕
(
よゆう
)
など、少くともわれわれ軍人には全く想像もつかないことである。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
「やつぱり金だ。
少
(
すこ
)
しでも
生活
(
せいくわつ
)
に
余裕
(
よゆう
)
のつけられるやうな金が
欲
(
ほ
)
しいな。」
夢
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
「なあにかけをしているのだよ。」と、ささやくだけの
余裕
(
よゆう
)
がありました。さて、へやにかえってさっそくにしたことは、首にひとつ、背中にひとつ、大きなスペイン
発泡膏
(
はっぽうこう
)
をはることでした。
幸福のうわおいぐつ
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
芝居で見るよりも
余裕
(
よゆう
)
があって、あれほど
迫
(
せま
)
った渓流ではない。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
注意
(
ちゅうい
)
するだけの
心
(
こころ
)
の
余裕
(
よゆう
)
とてもなかったのでございます。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
おずおずするだけの
余裕
(
よゆう
)
さえかれのこころにはなかった。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
彼の心にはまだ悠々と湯を楽しむほどな
余裕
(
よゆう
)
ができていないのである。——胸中の問題をどう切り出そうか、いつ持ち出そうか。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼は最初の二三台を親の
敵
(
かたき
)
でも
覘
(
ねら
)
うように
怖
(
こわ
)
い眼つきで
吟味
(
ぎんみ
)
した
後
(
あと
)
、少し心に
余裕
(
よゆう
)
ができるに連れて、腹の中がだんだん
気丈
(
きじょう
)
になって来た。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
すっかり疲れてしまって、今は何を考える
余裕
(
よゆう
)
もない。カビ博士が最後に僕にいった「深い事情」の謎も、気にはなるが、まだ解いてはいない。
海底都市
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
人と交際するにあの人は茶を飲むにも
余裕
(
よゆう
)
がありそうだという人がある。たとい茶を飲まなくともその人のそばにゆくと
心地
(
ここち
)
のよいことがある。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
が、幾晩も電燈の光りに
推敲
(
すいこう
)
を重ねた小説はひそかに予期した感銘の十分の一も与えていない。勿論彼はN氏の言葉を一笑に付する
余裕
(
よゆう
)
を持っている。
文章
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
もう
気
(
き
)
が
詰
(
つ
)
まるように
感
(
かん
)
じて、そんなことをも
考
(
かんが
)
える
余裕
(
よゆう
)
もなく、ふたたび
野原
(
のはら
)
の
方
(
ほう
)
を
指
(
さ
)
して
飛
(
と
)
んできました。
春がくる前
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
美奈子の声は、恥かしさに打ち
顫
(
ふる
)
えていたけれども、青年は可なり落着いていた。
余裕
(
よゆう
)
のある声だった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
そしてまたこの
家
(
や
)
の主人に対して
先輩
(
せんぱい
)
たる情愛と
貫禄
(
かんろく
)
とをもって臨んでいる
綽々
(
しゃくしゃく
)
として
余裕
(
よゆう
)
ある態度は、いかにもここの細君をしてその来訪を
需
(
もと
)
めさせただけのことは有る。
鵞鳥
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
果し合いを明朝に控えて、ともかくも眠っていられるだけの
余裕
(
よゆう
)
が竜之助にはあるのです。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
次郎は、しかし、それを全くのじょうだんだとして受け取る
余裕
(
よゆう
)
がなかった。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
余裕
(
よゆう
)
を示して、ボオトをランデングに附け、
掛声
(
かけごえ
)
勇ましく、頭上高く差し上げたに引き替え、日本選手は決勝線に入ると同時に、精力全く尽き、クルウ全員ぐッたりとオォルの上に突っ
俯
(
ぷ
)
し
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
そうしてこう小ぢんまり片づいて暮している須永を
軽蔑
(
けいべつ
)
すると同時に、閑静ながら
余裕
(
よゆう
)
のあるこの友の生活を
羨
(
うら
)
やみもした。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼は、痛々しい自分の頭の
包帯
(
ほうたい
)
にびっくりしてしまって、とうとう自分の顔から自分の若さを読みとる
余裕
(
よゆう
)
がなかった。
英本土上陸戦の前夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
彼に転宿する
余裕
(
よゆう
)
ありしゆえ、心の独立を失わなかったが、この余力なき人はますます
根性
(
こんじょう
)
が
卑屈
(
ひくつ
)
となる。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
行燈の油が尽きたのでも火取虫が来たのでもないようであったが、碁に夢中な二人は
燈火
(
あかり
)
の消えた原因などを調べている
余裕
(
よゆう
)
はなく、再び燈火がつくとそのまま碁を打ちつづける。
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
覚え書を覚え書のまま発表するのは時間の
余裕
(
よゆう
)
に乏しい為である。或は又その外にも気持の余裕に乏しい為である。しかし覚え書のまま発表することに多少は意味のない
訣
(
わけ
)
でもない。
鸚鵡:――大震覚え書の一つ――
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「そうだねえ。乗ってもいゝね。安ければ。」と彼は可なり
余裕
(
よゆう
)
を
以
(
もっ
)
て、答えた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
なかでも
忍剣
(
にんけん
)
は、疲れたさまもなく、なお、
綽々
(
しゃくしゃく
)
たる
余裕
(
よゆう
)
を
禅杖
(
ぜんじょう
)
に見せながら
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
次郎は、考える
余裕
(
よゆう
)
もなく、すぐ第五室に行って戸をノックした。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
この変動から出る自分の
余裕
(
よゆう
)
に、幾分か安之助の補助を足して、そうして本人の希望通り、高等の教育を受けさしてやろうという分別をした。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
思いがけなく防毒マスクを被されたので「助かるらしい」と感じた外は他を
顧
(
かえりみ
)
る
余裕
(
よゆう
)
もなかったのだった。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
何と思う
余裕
(
よゆう
)
もござりませぬ。わたくしは傘を斬られると同時に、思わず右へ飛びすさりました。
足駄
(
あしだ
)
ももうその時には
脱
(
ぬ
)
いで居ったようでございまする。と、
二
(
に
)
の
太刀
(
たち
)
が参りました。
三右衛門の罪
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その位の日数は、
余裕
(
よゆう
)
はあったので、氏長はこの家に逗留することにした。
大力物語
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
“余裕”の解説
余裕
(出典:Wikipedia)
余
常用漢字
小5
部首:⼈
7画
裕
常用漢字
中学
部首:⾐
12画
“余裕”で始まる語句
余裕綽々