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風鈴
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ふうりん
ふりがな文庫
“
風鈴
(
ふうりん
)” の例文
古ぼけた
葭戸
(
よしど
)
を立てた縁側の
外
(
そと
)
には
小庭
(
こにわ
)
があるのやらないのやら分らぬほどな
闇
(
やみ
)
の中に軒の
風鈴
(
ふうりん
)
が
淋
(
さび
)
しく鳴り虫が
静
(
しずか
)
に鳴いている。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
簾
(
すだれ
)
の上の
風鈴
(
ふうりん
)
が、今しがたまで、ウンスン遊びの連中に濁されていた部屋の空気を払って、涼しいそよ風に入れかえております。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
僕はかう云ふ間にも、夏の西日のさしこんだ、狭苦しい店を忘れることは出来ぬ。軒先には
硝子
(
がらす
)
の
風鈴
(
ふうりん
)
が一つ、だらりと短尺をぶら下げてゐる。
僻見
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
上方
(
かみがた
)
では昔から夜なきうどんの名があったが、江戸は夜そば売りで、俗に
風鈴
(
ふうりん
)
そばとか
夜鷹
(
よたか
)
そばとか呼んでいたのである。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
その声はあまり高くはありませんでしたが、
風鈴
(
ふうりん
)
が風にそよぐようにすずしい声で、波のうえをながれてゆきます。
人魚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
▼ もっと見る
夢
(
ゆめ
)
から
夢
(
ゆめ
)
を
辿
(
たど
)
りながら、
更
(
さら
)
に
夢
(
ゆめ
)
の
世界
(
せかい
)
をさ
迷
(
まよ
)
い
続
(
つづ
)
けていた
菊之丞
(
はまむらや
)
は、ふと、
夏
(
なつ
)
の
軒端
(
のきば
)
につり
残
(
のこ
)
されていた
風鈴
(
ふうりん
)
の
音
(
おと
)
に、
重
(
おも
)
い
眼
(
め
)
を
開
(
あ
)
けてあたりを
見廻
(
みまわ
)
した。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
僕は新らしい
匂
(
におい
)
のする
蚊帳
(
かや
)
を座敷いっぱいに釣って、軒に鳴る
風鈴
(
ふうりん
)
の音を楽しんで寝た。
宵
(
よい
)
には町へ出て草花の
鉢
(
はち
)
を
抱
(
かか
)
えながら
格子
(
こうし
)
を開ける事もあった。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そんなとき、私は
憂鬱
(
ゆううつ
)
な心を抱いて、街上の
撒水
(
うちみず
)
が淡い灯を映した
宵
(
よい
)
の街々を、
微
(
かす
)
かな
風鈴
(
ふうりん
)
の音をききながら、よくふらふらと
逍遙
(
さまよい
)
あるいたものであった。
郷愁
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
風鈴
(
ふうりん
)
の
短冊
(
たんざく
)
が先日の風に飛ばされたので、先帝の「星のとぶ影のみ見えて夏の夜も更け行く空はさびしかりけり」の歌を書いて下げた。
西行
(
さいぎょう
)
でも
詠
(
よ
)
みそうな歌だ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
夏の日などそこを通ると、垣に目の覚めるようなあかい
薔薇
(
ばら
)
が咲いていることもあれば、新しい
青簾
(
あおすだれ
)
が縁側にかけてあって、
風鈴
(
ふうりん
)
が涼しげに鳴っていることもある。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
更
(
ふ
)
けて
軒
(
のき
)
ばに
風鈴
(
ふうりん
)
のおと
淋
(
さび
)
しや、
明日
(
あす
)
は
此音
(
このおと
)
いかに
戀
(
こひ
)
しく、
此軒
(
こののき
)
ばのこと
部屋
(
へや
)
のこと、
取分
(
とりわ
)
けては
甚樣
(
じんさま
)
のこと、
父君
(
ちヽぎみ
)
のこと
母君
(
はヽぎみ
)
のこと、
平常
(
つね
)
は
左
(
さ
)
までならぬ
姉妹
(
しまい
)
のこと
暁月夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
暫しありて清二郎は湯にとて降りて
復
(
ま
)
た
来
(
きた
)
らず、雨は
夜
(
よ
)
の
間
(
ま
)
に
上
(
あが
)
りしその
翌日
(
あくるひ
)
の夕暮、
荻江
(
おぎえ
)
が家の窓の下に
風鈴
(
ふうりん
)
と共に
黙
(
だんまり
)
の小花、文子の口より今朝聞きし座敷の様子
訝
(
いぶか
)
しく
そめちがへ
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
風鈴
(
ふうりん
)
や何かと一緒に、上から隣の
老爺
(
おやじ
)
の
禿頭
(
はげあたま
)
のよく見える
黒板塀
(
くろいたべい
)
で仕切られた、じめじめした狭い庭、水口を開けると、すぐ向うの家の茶の間の話し声が、手に取るように聞える台所などが
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
家の内は物音一つ聞えずにひっそりしている。窓の
吊葱
(
つりしのぶ
)
に下げた
風鈴
(
ふうりん
)
が折々
微
(
かす
)
かに鳴るだけである。かような奥深い静寂が前に挙げたような状態で一疋のやんまに具体化されているのである。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
表の河沿いの道路に面した格子窓には
風鈴
(
ふうりん
)
が吊されて夜風に涼しい音を立てていたように思う。この平凡な
団欒
(
だんらん
)
の光景が焼付いたように自分の頭に沁み込んでいるのはどういう訳かと考えてみる。
重兵衛さんの一家
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
ガラスの
簾
(
すだれ
)
を売る店では、ガラス玉のすれる音や
風鈴
(
ふうりん
)
の音が涼しい音を呼び、
櫛屋
(
くしや
)
の中では
丁稚
(
でっち
)
が居眠っていました。道頓堀川の岸へ下って行く階段の下の青いペンキ塗の建物は共同便所でした。
アド・バルーン
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
風鈴
(
ふうりん
)
がねぼけたやうにちりりん と、そのとき
搖
(
ゆ
)
れました。
ちるちる・みちる
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
「
風車
(
かざぐるま
)
に、
旗
(
はた
)
に、
風鈴
(
ふうりん
)
なんかですね。」
新しい町
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
風鈴
(
ふうりん
)
に大きな月のかかりけり
五百句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
古ぼけた
葭戸
(
よしど
)
を立てた
縁側
(
えんがは
)
の
外
(
そと
)
には
小庭
(
こには
)
があるのやら無いのやら
分
(
わか
)
らぬほどな
闇
(
やみ
)
の中に
軒
(
のき
)
の
風鈴
(
ふうりん
)
が
淋
(
さび
)
しく鳴り虫が
静
(
しづか
)
に鳴いてゐる。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
この門は色としては、古い心持を起す以外に、特別な
采
(
あや
)
をいっこう具えていなかった。木も瓦も土もほぼ
一色
(
ひといろ
)
に映る中に、
風鈴
(
ふうりん
)
だけが器用に緑を吹いていただけである。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
三味線
(
しゃみせん
)
掛けの赤い
布
(
きれ
)
だの、鏡台に向いてもろ
肌
(
はだ
)
をおし
脱
(
ぬ
)
いでいる女たちだの、ちんとした長火鉢だの、
女竹
(
めだけ
)
のうえの
風鈴
(
ふうりん
)
だのを、いつのまにか、好ましい気持になって、のぞいて歩いた。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
廣
(
ひろ
)
き
園生
(
そのふ
)
は
我
(
わ
)
が
爲
(
た
)
めに
四季
(
しき
)
の
色
(
いろ
)
をたゝかはし、
雅
(
みやび
)
やかなる
居間
(
ゐま
)
は
我
(
わ
)
が
爲
(
た
)
めに
起居
(
きゝよ
)
の
自由
(
じゆう
)
あり、
風
(
かぜ
)
に
鳴
(
な
)
る
軒
(
のき
)
ばの
風鈴
(
ふうりん
)
、
露
(
つゆ
)
のしたゝる
釣忍艸
(
つりしのぶ
)
、いづれをかしからぬも
無
(
な
)
きを、
何
(
なに
)
をくるしんでか
たま襻
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
草も木も軒の
風鈴
(
ふうりん
)
も目に見えぬ魂が入って動くように思われる。
嵐
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
大家の軒の
風鈴
(
ふうりん
)
の鳴る音がかすかに聞こえる。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
軒の
風鈴
(
ふうりん
)
をさえ定かには鳴らし得ぬ
微風
(
そよかぜ
)
——河に近い下町の人家の屋根を越して唯
緩
(
ゆる
)
く大きく流動している夜気のそよぎは
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
葵
(
あおい
)
御紋の印籠なぞは、夜鷹蕎麦屋には、
風鈴
(
ふうりん
)
の代りにもならないやね。願い下げだよ、これは。……だが、見れやあいい若い者のくせに、幼な子を抱いて、この霜夜に、どうしたってえことだ。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
竹格子
(
たけごうし
)
の窓には朝顔の鉢が置いてあったり、
風鈴
(
ふうりん
)
の吊されたところもあったほどで、
向三軒両鄰
(
むこうさんげんりょうどな
)
り、長屋の人たちはいずれも東京の場末に生れ育って
深川の散歩
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
虫籠、
絵団扇
(
えうちわ
)
、
蚊帳
(
かや
)
、
青簾
(
あおすだれ
)
、
風鈴
(
ふうりん
)
、
葭簀
(
よしず
)
、燈籠、
盆景
(
ぼんけい
)
のような
洒々
(
しゃしゃ
)
たる器物や装飾品が何処の国に見られよう。
夏の町
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
宿の妻が虫籠や
風鈴
(
ふうりん
)
を
吊
(
つる
)
すのもやはり便所の戸口近くである。草双紙の表紙や見返しの意匠なぞには、便所の戸と
掛手拭
(
かけてぬぐい
)
と手水鉢とが、如何に多く使用されているか分らない。
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
とぎれとぎれの
風鈴
(
ふうりん
)
の音——自分はまだ何処へも行こうという心持にはならずにいる。
夏の町
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
彼が
殊更
(
ことさら
)
に、この薄暗い妾宅をなつかしく思うのは、
風鈴
(
ふうりん
)
の
音
(
ね
)
凉しき夏の
夕
(
ゆうべ
)
よりも、虫の
音
(
ね
)
冴
(
さ
)
ゆる夜長よりも、かえって
底冷
(
そこびえ
)
のする曇った冬の日の、どうやら雪にでもなりそうな
暮方
(
くれがた
)
近く
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
風鈴
(
ふうりん
)
の
音
(
ね
)
は
頻
(
しき
)
りに動いて座敷の
岐阜提灯
(
ぎふぢょうちん
)
に
灯
(
ひ
)
がつくと、門外の
往来
(
おうらい
)
には花やかな軽い
下駄
(
げた
)
の音、女の子の笑う声、書生の詩吟やハーモニカが聞こえ、
何処
(
どこ
)
か遠い処で花火のような
響
(
ひびき
)
もします。
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
“風鈴”の解説
風鈴(ふうりん)とは、日本の夏に家の軒下などに吊り下げて用いられる小型の鐘鈴。風によって音が鳴るような仕組みになっている。
(出典:Wikipedia)
風
常用漢字
小2
部首:⾵
9画
鈴
常用漢字
中学
部首:⾦
13画
“風鈴”で始まる語句
風鈴草
風鈴声
風鈴屋