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逆上
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のぼせ
ふりがな文庫
“
逆上
(
のぼせ
)” の例文
一瞬前の
逆上
(
のぼせ
)
が続いたら、何んなかたちになつて現れたか知れないが兎も角樽野は平穏な己れの姿を再び此処に見出さなかつたらう。
円卓子での話
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
「あれが、八の惡い癖だよ。尤も一日に二つも三つも岡惚を拵へる野郎だから、取り
逆上
(
のぼせ
)
ても、心中や夜逃げをする氣遣けえはねえ」
銭形平次捕物控:278 苫三七の娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
怨
(
うら
)
めしげに児太郎を見あげると、その真赤な顔は、百万石の主君の
寵愛
(
ちょうあい
)
をほしいままにしているだけ、わけても
逆上
(
のぼせ
)
気味で美しかった。
お小姓児太郎
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
○「うんにゃア、
逆上
(
のぼせ
)
ていやがるなア
此奴
(
こいつ
)
は余っぽど、そんなに荷厄介するならよ、
捨
(
うっち
)
ゃって仕舞やア一番世話なしだぜ、ハヽヽヽヽ」
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
身分が身分、場所が場所ですから、初めはじっと我慢していたのですが、なにを云うにも年が若いから、斯うなると幾らか
逆上
(
のぼせ
)
ても来ます。
三浦老人昔話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
我れながら
酷
(
ひど
)
く
逆上
(
のぼせ
)
て人心のないのにと
覚束
(
おぼつか
)
なく、気が狂ひはせぬかと立どまる途端、お力何処へ行くとて肩を打つ人あり。
にごりえ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
あるいはお豆腐と松茸とをお汁にしたり、初茸とお豆腐とのお汁が出来たりするのもその
訳
(
わけ
)
で、人によると松茸に
酔
(
よっ
)
て大層
逆上
(
のぼせ
)
る人があります。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
「じつは、和泉屋が熱さに
逆上
(
のぼせ
)
たと見えて、急にひっくりかえってしまったので、あわてて盃洗の水をぶっかけたんですが、それがこの始末……」
顎十郎捕物帳:14 蕃拉布
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
其所に坐つたみのるを見た義男は、その
逆上
(
のぼせ
)
の殘つた眼の端にこの女が亂れた感情をほのめかしてゐる事に氣が付いた。
木乃伊の口紅
(旧字旧仮名)
/
田村俊子
(著)
仏頂寺は兵馬に向って、この勝負を見ても、歓之助の術に、まだ若いところがあるという暗示を与え、丸山が激賞した
逆上
(
のぼせ
)
を引下げるつもりらしい。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
千葉から少し山手へ入ったところに
逆上
(
のぼせ
)
に利く不動滝があり、そこへ詰めて通ったら、きっと頭が軽くなるだろうと親爺はそんなことも言っていた。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
主君も主君将軍家の城を、焼打ちにしようというのであるから、これが普通の幕臣なら、カッと
逆上
(
のぼせ
)
るに違いない。
大捕物仙人壺
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
アルノー夫人は一人で家にいて、ペネローペがあの名高い編み物をしてるときの落ち着きを思わせるような、
逆上
(
のぼせ
)
気味の落ち着きで編み物をしていた。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
こういう時に見せなければ見せる時は無いと思うかして、芸自慢の人達は我勝にと飛出した。中には、
喝采
(
かっさい
)
に夢中に成って、
逆上
(
のぼせ
)
たような人も有った。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
僕にしてかくのごとき弱点はさらにないという自信がさらに
鞏
(
かた
)
ければ、もっと大胆に論じたいが、自分で
顧
(
かえり
)
みて折々は
逆上
(
のぼせ
)
そうになったこともあった。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
昔
(
むか
)
し恋をした女を十年たって考えると、なぜまあ、あれほど
逆上
(
のぼせ
)
られたものかなあと感心するが、当時はその逆上がもっともで、理の当然で、実に自然で
創作家の態度
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ただくわつと
逆上
(
のぼせ
)
て云ふべき
臺辭
(
せりふ
)
も忘れ、
極
(
きま
)
り
惡
(
わ
)
るさに
俯向
(
うつむ
)
いて了つた——その前を六騎の
汚
(
きた
)
ない子供らが
鼻汁
(
はな
)
を垂らし、
黒坊
(
くろんぼ
)
のやうな
赭
(
あか
)
つちやけた裸で
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
などに射られて少々
逆上
(
のぼせ
)
気味の、長座せばいよ/\のぼせて、木曾殿も
都化
(
みやこくわ
)
して
布衣
(
ほい
)
を誇る身の万一
人爵
(
じんしやく
)
崇拝と
宗旨変
(
しゆうしかへ
)
でもしては大変、最早こゝらが切り上げ時と
燕尾服着初めの記
(新字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
考えつめてると、かっと
逆上
(
のぼせ
)
てしまいそうです。いくら夫婦の間だって、こんな恥しい話は出来やしません。それを、あなたは無理に話さしておしまいなさるのです。
人間繁栄
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
逆上
(
のぼせ
)
て
夥多
(
おびただ
)
しく鼻血を出すから、手当をして、今
冷
(
ひや
)
している処だといった。学士がここに来た時には、既にその道を
行
(
ゆ
)
く女に尾行した男というのが明かに分っていた。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それには恥しさの籠ることゝも知らないゆえ、じゃアお
逆上
(
のぼせ
)
なさるのと椽の障子を一枚明ければどんよりと空睡たげな朧月、河浪の
靄
(
もや
)
に
咽
(
むせ
)
ぶ間から、両国橋を行く
提灯
(
ちょうちん
)
が
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
源氏の上着などをそっと持って来た女房も
怖
(
おそろ
)
しがっていた。宮は未来と現在を御悲観あそばしたあまりに
逆上
(
のぼせ
)
をお覚えになって、翌朝になってもおからだは平常のようでなかった。
源氏物語:10 榊
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
「炬燵なんか、
逆上
(
のぼせ
)
るから大っ嫌い。……私はまだ年寄りじゃありませんからね」
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
気違いのように
逆上
(
のぼせ
)
あがって、ほとんど夢中でその女と結婚して、それから一年ほどのあいだは無茶苦茶に嬉しく楽しく暮らしていたのですが、女は心臓病で突然に死んでしまいました。
世界怪談名作集:15 幽霊
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
そしていくら長く仕事を続けましても決して肩が凝るナンテ事はありませんから、
按摩
(
あんま
)
は全く私には無用の長物です。
逆上
(
のぼせ
)
も知らず、頭痛も滅多にしません。また、夏でも昼寝をしません。
牧野富太郎自叙伝:02 第二部 混混録
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
その年の四月には
咽喉
(
のど
)
が
腫
(
は
)
れ、七月初旬には日々卅九度の熱となった。
山竜堂
(
さんりゅうどう
)
樫村
(
かしむら
)
博士も、青山博士も医療は無効だと断言した。十一月の三日ごろから
逆上
(
のぼせ
)
のために耳が遠くなってしまった。
樋口一葉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
昨日
(
きのふ
)
も
君
(
きみ
)
が
逆上
(
のぼせ
)
られた
後
(
のち
)
、
私
(
わたし
)
はハヾトフと
長
(
なが
)
いこと、
君
(
きみ
)
のことを
相談
(
さうだん
)
しましたがね、いや
君
(
きみ
)
も
此度
(
こんど
)
は
本氣
(
ほんき
)
になつて、
病氣
(
びやうき
)
の
療治
(
れうぢ
)
を
遣
(
や
)
り
給
(
たま
)
はんと
可
(
い
)
かんです。
私
(
わたし
)
は
友人
(
いうじん
)
として
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
も
打明
(
うちあ
)
けます。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
カッと取り
逆上
(
のぼせ
)
たお里は大利根へ身を投げて死んでしまう。
我が円朝研究:「怪談牡丹灯籠」「江島屋騒動」「怪談乳房榎」「文七元結」「真景累ヶ淵」について
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
ト
逆上
(
のぼせ
)
あがッて
極
(
き
)
め付けても、
此方
(
こなた
)
は一向平気なもので
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
「妹のお駒なのだが、どうも
逆上
(
のぼせ
)
気味で困ります」
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
『
逆上
(
のぼせ
)
の薬が足りないッてことよ。』
郊外
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
世間
共通
(
ならし
)
の
逆上
(
のぼせ
)
から
ランボオ詩集
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
殺さぬと
云張
(
いひはる
)
かハテ知たことよ身に覺えのなきことは
何處迄
(
どこまで
)
も此の段右衞門は覺えなしサと
云
(
いふ
)
にお文は夫なら是程
慥
(
たしか
)
な
證據
(
しようこ
)
が有ても
知
(
しら
)
ぬと云か段右衞門アヽ
騷々
(
さう/″\
)
しい女
如
(
ごと
)
きが口で云ふ事は
證據
(
しようこ
)
に成者か
爾
(
おの
)
れは取
逆上
(
のぼせ
)
亂心
(
らんしん
)
して居るな
但
(
たゞし
)
は
熱
(
ねつ
)
の
上言
(
うはごと
)
か
未練
(
みれん
)
な
僞
(
いつは
)
りを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
五千両の紛失と、隠居の葬式の行悩みで、家中の者が
逆上
(
のぼせ
)
ている間に、誰かの手が、この少年を後ろから一と突きにやったのでしょう。
銭形平次捕物控:073 黒い巾着
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
いけないと云っても中々
肯
(
き
)
かないで
逆上
(
のぼせ
)
切ってるのサ、芸者を引きたければ
華
(
はなや
)
かにして箱屋には
総羽織
(
そうばおり
)
を出し、赤飯を
蒸
(
ふか
)
してやる
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
お寺の山で二人立ばなしをしてゐたといふ確かな証人もござります、女も
逆上
(
のぼせ
)
てゐた男の事なれば義理にせまつて遣つたので御座ろといふもあり
にごりえ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
新緑の反射は人の
頭脳
(
あたま
)
の
内部
(
なか
)
までも入って来た。明るい光と、
悲哀
(
かなしみ
)
とで、お雪はすこし
逆上
(
のぼせ
)
るような眼付をした。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
しかし、それはこういう
輩
(
やから
)
の腐れ合いで、いくら
逆上
(
のぼせ
)
てもおたがいに目先の見えないところまでは行かない。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ちょうど正月興行が蓋をあけたというのに
逆上
(
のぼせ
)
るほど見たい芝居もがまんして、
家
(
うち
)
にちぢこまっている。
平賀源内捕物帳:萩寺の女
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
あれは牛乳から取った
極
(
ご
)
くの精分で大層消化を助けるそうですが、しかし沢山食べ過ぎると
逆上
(
のぼせ
)
ます。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
そこで
窄
(
つぼ
)
めて、
逆上
(
のぼせ
)
るばかりの
日射
(
ひざし
)
を
除
(
よ
)
けつつ、
袖屏風
(
そでびょうぶ
)
するごとく、
怪
(
あやし
)
いと見た羽目の方へ、
袱紗
(
ふくさ
)
づつみを頬にかざして、
徐
(
しずか
)
に通る褄はずれ、
末濃
(
すそご
)
に藤の咲くかと見えつつ。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「もう大丈夫、背中はあらわない。あまり這入ってると
逆上
(
のぼせ
)
るから、時々こう立つのさ」
二百十日
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
終りに述べる僕の実験談は普通に言う
逆上
(
のぼせ
)
るのとは違うけれども、その性質においては同じであるし、かつ僕に取っては逆上の
訓戒
(
くんかい
)
としてしばしば記憶にのぼる経験であるから
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
逆上
(
のぼせ
)
てゐやアがる、兎に角、斯う急ぢや、どうすることも出来ないんだ、あゝ、何といふ落つきのないことだらう、僕の村のローカル・カラー? いや、失敬、ぢや、さよならア!
鏡地獄
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
みのるは
逆上
(
のぼせ
)
きつた顏をして、夜おそくまで引き留められてゐた。さうして又大學生に連れられてこの家を出た。歸る時一所に出て來た有野文學士と、みのるは暗い路次の外れで挨拶して別れた。
木乃伊の口紅
(旧字旧仮名)
/
田村俊子
(著)
昨日
(
きのう
)
も
君
(
きみ
)
が
逆上
(
のぼせ
)
られた
後
(
のち
)
、
私
(
わたし
)
はハバトフと
長
(
なが
)
いこと、
君
(
きみ
)
のことを
相談
(
そうだん
)
しましたがね、いや
君
(
きみ
)
もこんどは
本気
(
ほんき
)
になって、
病気
(
びょうき
)
の
療治
(
りょうじ
)
を
遣
(
や
)
り
給
(
たま
)
わんといかんです。
私
(
わたし
)
は
友人
(
ゆうじん
)
として
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
も
打明
(
うちあ
)
けます。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
おしゅんは伝兵衛おさんは茂兵衛小春は俊雄と相場が
極
(
き
)
まれば望みのごとく浮名は広まり
逢
(
あ
)
うだけが命の四畳半に差向いの
置炬燵
(
おきごたつ
)
トント
逆上
(
のぼせ
)
まするとからかわれてそのころは
嬉
(
うれ
)
しくたまたまかけちがえば互いの名を
かくれんぼ
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
五千兩の紛失と、隱居の葬式の行惱みで、
家中
(
うちぢう
)
の者が
逆上
(
のぼせ
)
て居る間に、誰かの手が、この少年を後ろから一突にやつたのでせう。
銭形平次捕物控:073 黒い巾着
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
外「これ/\何だ、何を馬鹿を申す、少々
逆上
(
のぼせ
)
て
居
(
お
)
る様子、只今御酒を戴きましたので、惣衞
彼
(
かれ
)
に
成代
(
なりかわ
)
ってお詫をいたします、富彌儀
太
(
ひど
)
く
逆上
(
ぎゃくじょう
)
をして
居
(
お
)
る様子で」
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
道益はふるえのでるほど仰天し、箱根の木賀の湯は
金創
(
きんそう
)
にも
逆上
(
のぼせ
)
にも利くというので、供をつけて湯治にやったところ、五日ばかりして、夜遅く一人で帰ってきた。
うすゆき抄
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
逆
常用漢字
小5
部首:⾡
9画
上
常用漢字
小1
部首:⼀
3画
“逆上”で始まる語句
逆上性
逆上気味
逆上返
逆上方
逆上目
逆上薬
逆上引下
逆上氣味