“貢(みつ)” の例文
「若くて綺麗な娘といふと、無暗に肩を持つが、そんなのが飛んだ細工をしやしないか、——貢(みつ)がなきやならない相手でもあつて——」
僕に貢(みつ)ぐのだと語ったのが、土地の人々の邪推を引き起し、僕はかの女を使って土地の人々の金をしぼり取ったというように思われた。
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
「中央の府に対し、毎年、貢(みつ)ぎを献じるというならば」と案外、受けやすい条件を出して答えたので、和睦はたちまちまとまった。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから満枝は益す禿の寵(ちよう)を得て、内政を自由にするやうになつたから、定めて生家(さと)の方へ貢(みつ)ぐと思の外、極(きめ)の給(もの)の外は塵葉(ちりつぱ)一本饋(や)らん。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「ひと山当てよう当てようとあがいて……見てて気の毒で、あたしも身を売って貢(みつ)いだりしたけど——結局、殺されちゃった」
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
「そうにきまっている、そんならちょうど面白いや、あの女から貢(みつ)いだ金をわたしの手で使ってやるのがかえって気持がいい、みんなおよこし」
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
葉子一家は倉地と木村とから貢(みつ)がれる金で中流階級にはあり得ないほど余裕のある生活ができたのみならず、葉子は充分の仕送りを定子にして
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
それからとやかく姑にわびましてね、しかしそんなわけですからなかなか父を引き取るの貢(みつ)ぐのということはできません。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
次郎はそれによって、弥作爺さんが死んだこと、お兼がもう奉公に出て、いくらかの金を貢(みつ)ぐこと、お鶴が学校で優等賞を貰ったことなどを知った。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「不良さ。学校時代から不良傾向があった。別段悪いことを仕出来(しでか)さないのはお前が小遣を充分貢(みつ)いでいるからだ」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「のみならず、栄三郎め、その女に貢(みつ)ぐ金に窮して、いたし方もあろうに蔵宿から騙(かた)り盗(と)った! 用人白木重兵衛がそのあとへ行って調べて参りました」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そして学費の足しにと自分のお給金の中から幾らかの金を貢(みつ)ぎながら、ひろ子を赤十字へ入れて勉強さした。
蔦の門 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
縁附(えんづ)きてより巳(すで)に半年(はんとし)となるに、何(なに)一つわが方(かた)に貢(みつ)がぬは不都合(ふつがふ)なりと初手(しよて)云々(うん/\)の約束にもあらぬものを仲人(なかうど)の宥(なだ)むれどきかず達(たつ)て娘を引戻(ひきもど)したる母親有之候(これありそろ)。
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
丈夫(じょうぶ)に織りあげる必要もあったくらいで、ただ朝廷(ちょうてい)への貢(みつ)ぎもの、または領主への年々の献上品(けんじょうひん)だけが、上布(じょうふ)といって、精巧な布でなければならなかったのだが
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そういうと不思議に思うだろうが、一人は情婦(じょうふ)という評判の女・桃枝だ。この女には秘密に大分貢(みつ)いだものらしい。金庫の金に手をかけたのも、この女のためだ。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
こう考えた私は、叔父に頼んで、その足りないだけの学費を貢(みつ)いでもらうことにきめていたのだった。そしてそれだから私は、一生懸命に受験の準備をしていた。
商売に出てゐる間、病身な妹も多かつたので、月々百円から百五十円くらゐは貢(みつ)ぎつゞけて来た晴代ではあつたが、たとひ十円でも金の無心は言ひ出しにくかつた。
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
事に依れば小野さんの方から幾分か貢(みつ)いで貰いたいようにも見える。小野さんは畏(かしこ)まって控えている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
人知れず硫酸モルヒネ猫不入(ねこいらず)なんぞ飲むものなきにしもあらねど、こは啻(ただ)に痴情のなす所のみにあらず、男に入揚(いれあ)げ貢(みつ)ぎし後ぽんと捨てられなぞしたる揚句(あげく)の果にして
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
何でもズット以前から叔父の源次郎氏に学費を貢(みつ)いでもらって、東京で勉強していたけれども
復讐 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
で両方から金を絞り、誰にも貢(みつ)がずに自分だけで使う! こう行かなければ人気が立たない。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
現に今でも栄之丞を貢(みつ)いでいた。しかしそれは相手にも因ることで、いかに不実な男に対する面当てでも、彼女は無宿同様の次郎左衛門に付きまとって居ようとは思わなかった。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「全(まつた)く貧乏なんですよ。市外の会社に勤めて居る弟——折折(をりをり)昼中(なか)に尋ねて来て、正午(ひる)の食卓に就くことがあるでせう——あの弟が姉思ひで、月給の中(うち)から貢(みつ)いで居るんですよ。」
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛、与謝野晶子(著)
始終この京都の土地に居付いているわけじゃないから委(くわ)しいことは知らぬが、あんたが私から貰(もら)う金をほかの人間に貢(みつ)いでいるという噂を、ちらちら耳にしたこともあったけれども
狂乱 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
また、お姫(ひめ)さまは、二ひきの黒(くろ)い、みごとな黒馬(くろうま)を皇子(おうじ)に貢(みつ)ぎ物(もの)とせられたのです。
赤い姫と黒い皇子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
だが、奥女中姿の裲褂(かいどり)で嫁に来た時はうつくしかったと、不便がって貢(みつ)いでいた。
昔アズサを弓に製して信州などの山国からこれを朝廷に貢(みつ)ぎした。すなわちこれがいわゆるアズサユミである。今日植物界では一般にこの樹をミズメともヨグソミネバリとも呼んでいる。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
どうも彼(あれ)は質(たち)がワルいテ。すこしばかり儲けた銭で、女に貢(みつ)ぐ位が彼の身上(しんじょう)サ。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
此家(こゝ)の關善さんが日光からお帰りに宇都宮へお泊りで、段々様子をお聞きなすって、気の毒な事と御親切に五十円を貢(みつ)いで下すって、關善さんに連れられて参って、お手伝を致して居りますが
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
私だって泥坊に伯父(おじ)さんがあるのじゃなし、知りもしない人を捉(つかま)えて、やたらにお金を貢(みつ)いでたまるものかね。私はおまえさんだから貢いでみたいのさ。いくらいやだとお言いでも、私は貢ぐよ。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それから、私を貢(みつ)いでくれるその男は銭占屋(ぜにうらや)というのだ。銭占判断といって、六文銭で吉凶禍福を占うその次第書(しだいがき)を、駿河半紙二切り六枚綴の小本に刷って、それを町の盛場で一冊三銭に売るのだ。
世間師 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
金を貢(みつ)いで挙句のはてに欺された旗本の野呂馬息子が歯噛みをする。
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
それぞれ何と夥(おびただ)しい金銀・香料・海陸の物産を貢(みつ)ぎものに捧げて
続紀(しょくき)には、天平二十一年二月、陸奥(みちのく)始めて黄金を貢(みつ)いだことがあり、これは東大寺大仏造営のために役立ち、詔にも、開闢(かいびゃく)以来我国には黄金は無く、皆外国からの貢(みつぎ)として得たもののみであったのに
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「女に貢(みつ)がせている。」
日日の麺麭 (新字新仮名) / 小山清(著)
どうかすると、その貢(みつ)ぎの運上すらも、土地土地の地頭や悪党どもに掠(かす)められて、満足に朝家へ収まらないような実状である。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お篠お秋姉妹は、父親の代から受けた恩に酬(むく)ひるため、水茶屋奉公をし乍(なが)ら長い間宗兵衞親子に貢(みつ)ぎました。
おさせ申さないようにして上げますし、そのほか、困っているお方には相当に貢(みつ)いでお上げ申すのですけれど
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そのくせ月々若干(なにがし)か貢(みつ)いで遣(や)ってくれる訳には行くまいかという相談をすぐその後から持ち出した。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「鮎ちゃんって、いいとこあるなア。鮎ちゃんに貢(みつ)いでもらっているんですよ」
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
そしてその子供が私たちを送り出した弟に向って「おとっちゃん」と呼びかけましたところを見ると、この弟は既に妻子を持ちながら姉に鍼灸師受験準備を貢(みつ)いで貰っていたのでしょうか。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
世間体をごまかす為ばかりでなく、まったく服装(なり)にも振りにも構わずに働いて、一生懸命に金をためる。色男の伝介には何一つ貢(みつ)いでやったことは無かったそうです。つまり吝嗇(けち)なんでしょうね
半七捕物帳:13 弁天娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
煙草も吸わず、酒も飲まず、道楽といっては読書のほかには、書生に学資を貢(みつ)ぐぐらいのものだった。その関係から白官舎やそのほかの学生たちも今だに心おきなく遊びに来たりするのだった。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
葉子は笑談(じょうだん)のように羨望(せんぼう)の口吻(こうふん)を洩(も)らすこともあったが、大枚の生活費を秋本に貢(みつ)がせながら、愛だけを独占しようとしている庸三の無理解な利己的態度が、時には腹立たしく思えてならなかった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
お前は何処(どこ)の者だか知らんがな、拙者の眼には都の者としか見えぬ、拙者も元は江戸の者だ、難儀なことがあるならば何処までもお貢(みつ)ぎ申そう、これ/\女中、そんなに力を出しても……これ門弟
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「神功(じんぐう)皇后さまが、三韓(さんかん)へご渡海なされた折に、八十艘(そう)の貢(みつ)ぎ物(もの)のうちの第一のみつぎ物がこれじゃといういい伝えじゃが」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
妾のお吉は、買ひ食ひの小遣くらゐ持つてをり、お袖は母親に貢(みつ)ぐせゐか、何んにも持つては居りません。
「そうだ、これによって見ると、たしかに病気だね、何病とも別に書いてねえが、女が勤め奉公に出て、その血の出るような金を貢(みつ)いで男の病気を癒(なお)そうというんだね」
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
月々金を貢(みつ)いでやる? 貢いでくれと誰が頼んだ。小野の世話をしたのは、泣きついて来て可愛想(かわいそう)だから、好意ずくでした事だ。何だ物質的の補助をするなんて、失礼千万な。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
は木村に貢(みつ)がれているな。白状しっちまえ
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)