詰問きつもん)” の例文
雨のような詰問きつもんを外して、けんめいに逃げを張る。とうとう石の壁にき当って、そこで全裸にされた形だ。第二号はにやりと笑う。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
「しかしあなたはチベットに行って来たじゃあございませんか。私とても行かれぬ訳はないじゃあございませんか」と詰問きつもんしますと
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
俺も一年生に詰問きつもんされたのは、はじめてだ。五年生も、こうなっては駄目だね。……まあ、しかし、折角の詰問だから、答えてやろう。
次郎物語:02 第二部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
いったい、それはたれの指図によっていたしたか。筑前の命とあれば、筑前に詰問きつもんせん。——かりそめにも備前、美作みまさか二州の処分を
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして我らキリストのすくいに浴して永遠の生命を信ずる者は、ヨブのこの詰問きつもんに対しては永生の真理を以てこれに答うるを最上のみちとする。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
王樣わうさま氣遣きづかはしげに白兎しろうさぎ御覽ごらんになりました、白兎しろうさぎ低聲こゞゑで、『陛下へいか證人しようにん相手方あひてかた證人しようにん詰問きつもんせらるゝ必要ひつえうがあります』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
主人の詰問きつもんにあって、番頭がへどもどしながら答えました。しかし、彼自身もどうやら、確な記憶はないらしい様子なのです。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
政党的に何等の関係のない人達は、時折、直接彦太郎から愚痴を聞かされて同情していた小学校長を初めとして、市当局の片手落を詰問きつもんした。
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
其以上それいじやうわたし詰問きつもんとほらぬ。とほらぬところくら不安ふあんかげたゞようてゐるのであるが、かげかげで、一わたし足迹そくせきるゝをゆるさぬのである。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
しかし、その甲斐性を散々利用して来た手前、柳吉には面と向っては言いかえす言葉はなかった。興ざめた顔で、蝶子の詰問きつもんを大人しく聴いた。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
ただひとり黒くない手を持っている者があったので、それを詰問きつもんすると果たして白状した。彼は鐘に声あるを恐れて、手を触れなかったのである。
「自分の家じゃないか、落ついて考えるんだッ!」と、赤羽主任は、焦れったそうに、低いながらも力強く詰問きつもんした。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その眼には物を詰問きつもんするような輝きがあったが、壮助の視線に逢うとすぐに深い悲しみのうちにけ込んでいった。
生あらば (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
小説「黒潮こくちょう」の巻頭辞かんとうじを見て、いやしくも兄たる者に対して、甚無礼ぶれい詰問きつもんの手紙をよこした。君自身兄であった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そういうわけで、ある日、大食堂での朝食のとき、かれは支配人に——あのフランスふうのフロックコオトを着た、小柄な、静かなものごしの男に詰問きつもんした。
その間に栄三郎泰軒の救いの手が、ついそこまで伸びて来て届かなかったのが、この、源十郎の詰問きつもんの結果。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
博徳と相談してのあの上書はいったいなんたることぞ、というはげしい詰問きつもんのあったことは言うまでもない。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
これ、けしからぬ詰問きつもんである。唯物論者は一元論か二元論か、もし二元論ならば、物には物の規則あり、心には心の規則あるはずなれば、物の規則をもって心を
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
おれが宿直部屋へ連れてきた奴を詰問きつもんし始めると、豚は、っても擲いても豚だから、ただ知らんがなで、どこまでも通す了見と見えて、けっして白状しない。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これはひどいとって夏目先生なつめせんせい詰問きつもんしたので、先生せんせい滝田たきたさんにびの手紙てがみされたはなしがあります。
夏目先生と滝田さん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「どうしてりや、くしなんぞらつたんだ」勘次かんじはからびたのどからしぼやうこゑ詰問きつもんした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
同志は如何様いかようの余裕ありて、かくは豪奢ごうしゃを尽すにかあらん、ここぞ詰問きつもんの試みどころと、葉石氏に向かい今日こんにちの宴会は妾ほとほとその心を得ず、磯山氏よりの急使を受けて
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
伊賀亮は、十分にそれを承知していたが、そう詰問きつもんされて、答えない訳には行かなかった。
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
やっとのことで一同をしずめると、十倍もいかめしい顔つきをして、またこの素性の知れぬ未決囚にむかい、なんのためにここへきたのか、だれを探しているのか、と詰問きつもんした。
それまではみんな、ぼくを精々、嫉妬しっとするくらいで、別に詰問きつもんするだけの根拠こんきょはなかったのですが、はからずも、ハワイで買ったあかいセエム革の手帳が、それに役立つことになりました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
と言葉にかどを立てて詰問きつもんするは同じ学校の出身にてつむじの曲りし人なんめり。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
悧怜りこうな人には、もっと高尚な教えを説いて聞かせてるんだ……こういうことを二人の耳へ入れたものがあったからたまらない、二人がムキになっておこって、法然様のところまで詰問きつもんに出かけ
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「窓掛の背後うしろで、何をしてゐたんだい?」と、ジョンが詰問きつもんした。
僕はあんたに頼まれたから家内を詰問きつもんするのんやない。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
おんつぁんが杯にかじりついたまゝで詰問きつもんした。
(新字旧仮名) / 有島武郎(著)
やや詰問きつもん的な口調で、丹尾は受付の女に言った。
幻化 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
白旗氏はしぶい顔して詰問きつもんするように私にきいた。
と、店先から詰問きつもんするように入って行った。
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
山下氏が、詰問きつもんするような口調でたずねた。
キャラコさん:04 女の手 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
何故なぜ?」瑠璃子は詰問きつもんするように云った。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
で妻はかれに詰問きつもんした。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
家人が詰問きつもんしますと
「そうです。僕は憲兵として、あなたがどういう意味で、あんなものを恭しく飾っておくのか、詰問きつもんしなければなりません」
偉大なる夢 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
孫策は怒って、直ちに、許貢きょこうの居館へ詰問きつもんの兵をさし向けた。そして許貢をはじめ妻子眷族けんぞくをことごとく誅殺ちゅうさつしてしまった。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その時分の話に、「あなたはシナ人でシナ語をくし、シナ文字をよく知ってるということを私の弟子は言って居るが、それはどうか」という詰問きつもん
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「この部屋へ出入りができるとも思われんが、とにかく捕えて詰問きつもんしよう。家宅侵入をおかしたことは確かだろう」
四次元漂流 (新字新仮名) / 海野十三(著)
はなし段々だん/\すゝんだ。わたし詰問きつもんたいして、つまは一ととほり弁解べんかいをしてから、それこひふほどではなかつたと説明せつめいする。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
つぎなる證人しようにんべ』それから王樣わうさまひくこゑ女王樣ぢよわうさまに、『實際じつさい、あの、御身おんみつぎなる證人しようにん相手方あひてかた證人しようにん詰問きつもんしなければならない。ひど頭痛づつうがしてた!』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
今や彼はこれが神のし給う所なる事に初めて気がついたのである。この事汝に可能なるかと詰問きつもんされて、彼は神の霊能の前に首を垂れざるを得なかったのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
といって、こしらえ事を話してもらおうとすれば、奥さんからその理由を詰問きつもんされるにきまっています。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それならば、なぜお筆との縁談を承知したかと詰問きつもんすると、友之助の返事は甚だあいまいであった。かれは母にきびしく追求されて、とうとうこんなことまで白状に及んだ。
有喜世新聞の話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
小関氏はそれには答えないで、ちょっと荒田老の顔を見たあと、詰問きつもんするように言った。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
新蔵はお敏の名前を聞くと、急にまた動悸が高まるような気がしましたから、「失敗したんじゃないかって? 君は一体お敏に何をやらせようとしたんだ。」と、詰問きつもんするごとく尋ねました。
妖婆 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
納戸では、源十郎がおさよを詰問きつもんしている。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
青年は、相手を詰問きつもんするように云った。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)