トップ
>
訊
>
たず
ふりがな文庫
“
訊
(
たず
)” の例文
走行中に不意に背後から、今何
粁
(
キロ
)
か、と
訊
(
たず
)
ねても容易に答えられない。
暫
(
しばら
)
くは線路の砂利の色や、遠景の動くさまに見入ってしまう。
指導物語:或る国鉄機関士の述懐
(新字新仮名)
/
上田広
(著)
しかし私も気にかかるので先代からの古い番頭に
訊
(
たず
)
ねて見たり父に問うたりして見たが、皆はっきりしたことは知らないらしかった。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
これも後で
訊
(
たず
)
ね合せて見ると、母親の術であるらしく、ほんのちょっとした
口叱言
(
くちこごと
)
を種に、子供の同情を
牽
(
ひ
)
かんための手段であった。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
何
(
なに
)
なりと
訊
(
たず
)
ねて
貰
(
もら
)
います。
研究
(
けんきゅう
)
の
為
(
た
)
めとあれば、
俺
(
わし
)
の
方
(
ほう
)
でもそのつもりで、
差支
(
さしつかえ
)
なき
限
(
かぎ
)
り
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
も
打
(
う
)
ち
明
(
あ
)
けて
話
(
はな
)
すことにしましょう。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
わたしがかつて恋をしたことがあるかとお
訊
(
たず
)
ねになるのですか。あります。わたしの話はよほど変わっていて、しかも怖ろしい話です。
世界怪談名作集:05 クラリモンド
(新字新仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
▼ もっと見る
妻はもっといろんなことを
訊
(
たず
)
ねたいような顔つきで、留守にした家のこまごました事柄が絶えず眼さきにちらついているようであった。
秋日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
「あのう、こんなことをお
訊
(
たず
)
ねしては、失礼かもしれませんが、もしや貴方は、……あの繁二郎さんと
仰
(
おっ
)
しゃるのではございませんか」
夕靄の中
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「はあ、そうですか。今私がお
訊
(
たず
)
ねしたのは生活のことについてでしたが、リーマン博士に一刻も早く逢う件も交渉して置きましょう」
宇宙尖兵
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「よろしい、承知なされたそうな。……念のため貴殿にお
訊
(
たず
)
ねいたすが、貴殿、源女の歌う不思議な歌を、耳にしたことござるかな?」
剣侠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
H21がマドリッドへ着いてまもなく、クルウプ博士という土地在住のドイツ密偵支部代表者が
訊
(
たず
)
ねて来て、こんな話をしてゆく。
戦雲を駆る女怪
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
その時、わたしが、何をしているんですかと
訊
(
たず
)
ねると、
半風子
(
しらみ
)
に
角力
(
すもう
)
をとらせているんだと答えた汚い坊さんがあったじゃありませんか
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
仔細
(
しさい
)
を
訊
(
たず
)
ねている余裕はない。ともかく助け出さなければならぬ。四人の書生が手分けをして、一郎救い出しの作業がはじまった。
暗黒星
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
と梶はそのときまた医者に
訊
(
たず
)
ね返したのも、彼のそう云う表情には、歓喜の情ともいうべき思わず
閃
(
ひら
)
めく美しいものが発したからだった。
罌粟の中
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
しかし石鹸の残っている気持悪さを思うと
堪
(
たま
)
らない気になった。
訊
(
たず
)
ねて見ると釜を壊したのだという。そして濡れたタオルを繰り返した。
泥濘
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
食事中に、お婆さんが一人でいろんなことを
訊
(
たず
)
ね、いろんなことを話した。その話で、三人はおおよそ家の様子も想像がついた。
次郎物語:03 第三部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
それがまたなぜだと
訊
(
たず
)
ねて見ると、わたしはあの女を好いていない、遊芸を習わせるのもそのためだなぞと、妙な理窟をいい出すのです。
一夕話
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
あわてて、酔払って、二三の友人から追いたてられるようにして送られてきた彼には、それを
訊
(
たず
)
ねている余裕もなかったのだ。
贋物
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
「お梅さんどうかしたのですか」と
驚惶
(
あわただ
)
しく
訊
(
たず
)
ねた。梅子は
猶
(
なお
)
も
頭
(
かしら
)
を垂れたまま運ばす針を
凝視
(
みつめ
)
て黙っている。この時次の
室
(
ま
)
で
富岡先生
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
子路は別にそんな問題に興味は無かったが、死そのものよりも師の死生観を知りたい気がちょっとしたので、ある時死について
訊
(
たず
)
ねてみた。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
隅
(
すみ
)
の方へ入って、ボール紙を切刻んだり、穴を明けたり、絵具をさしたりして、夢中になっている彼の傍へ来て、お島は
可笑
(
おかし
)
そうに
訊
(
たず
)
ねた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
私は、その方の事は、何もお
訊
(
たず
)
ねいたしませんでした。
勿論
(
もちろん
)
、そうした事は失礼と、存じていたからでございます。しかし
両面競牡丹
(新字新仮名)
/
酒井嘉七
(著)
いい気になっていた彦太郎は
愕然
(
がくぜん
)
として、どうしてな、あんた、どうして、組合には反対か、あんた、と意気ごんで
訊
(
たず
)
ねた。
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
それがいつ
訊
(
たず
)
ねても同じことなので、三度に一度は私ということを知ってわざと
嫌
(
きら
)
ってそういわしているのかも知れないと疑ってみたりした。
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
私たちが
訊
(
たず
)
ねたい
意
(
こころ
)
は、お三輪もよく知っている。
闇
(
くら
)
がり坂以来、気になるそれが、
爺
(
じじ
)
とも
婆
(
ばば
)
とも
判別
(
みわけ
)
が着かんじゃないか。
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
美奈子が、黙ったまゝ、
露台
(
バルコニー
)
の欄干に、長く長く
倚
(
よ
)
っているときなど、母は心配そうに、やさしく
訊
(
たず
)
ねた。が、そんなとき
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「みよーさん、(娘の名)
貴嬢
(
あなた
)
は、まあ
如何
(
どう
)
して、こんな所へ来なすっただ」と
訊
(
たず
)
ぬると、娘はその
蒼白
(
あおじろ
)
い顔を
擡
(
もた
)
げて、苦しそうな息の下から
テレパシー
(新字新仮名)
/
水野葉舟
(著)
私はしかし、この行李について何も
訊
(
たず
)
ねなかった。それには少しも気づかぬような風を装っていつものように働いていた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
壱岐の島では一人の旅人が、夜通しがやがやと宿の前を海に下って行く足音を聴いた。夜明けて
訊
(
たず
)
ねるとそれは山童の山から出てくる晩であった。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
これこれの客を見なかったかと
訊
(
たず
)
ねる眼目には、この小娘の手答えが甚だ浅く、いつか知ら役者へ話を引戻してしまう。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
女は私が三文文士であることを知っているので、男に
可愛
(
かわい
)
く見えるにはどうすればよいかということを
細々
(
こまごま
)
と
訊
(
たず
)
ねた。
いずこへ
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
氏はそのことを
訊
(
たず
)
ねてみようとためらいながら、ついそのままに老人にしたがって、町の名も知らぬ一軒の湯屋へ、遅いそののれんをくぐって入った。
地図にない街
(新字新仮名)
/
橋本五郎
(著)
ヴィール氏は姉が臨終の間ぎわに何か遺言することはないかと
訊
(
たず
)
ねると、ヴィール夫人は無いと言ったそうである。
世界怪談名作集:07 ヴィール夫人の亡霊
(新字新仮名)
/
ダニエル・デフォー
(著)
平次は佐吉に逢って、二言三言、爺やに
訊
(
たず
)
ねたような事を繰り返して、ガラッ八と二人遠州屋の裏口から出ました。
銭形平次捕物控:032 路地の足跡
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
梅雨
(
つゆ
)
のまだ明け切らない曇った宵である。こんな晩に先生はどこへ行かれたかと
訊
(
たず
)
ねると、奥さんは小声で答えた。
深見夫人の死
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
健三は鳥の子紙に刷った
吉田虎吉
(
よしだとらきち
)
という
見覚
(
みおぼえ
)
のある名刺を受取って、しばらくそれを眺めていた。細君は小さな声で「御会いになりますか」と
訊
(
たず
)
ねた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「電話位掛ける
筈
(
はず
)
だが……」浅田は給仕をよんで
訊
(
たず
)
ねたが、
自宅
(
うち
)
から何にもいって来ないというので、念の為に電話をかけて見ると、妻は不在であった。
秘められたる挿話
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
お安がもうすこし気持の広い女だったら、あの夜のことを
仔細
(
しさい
)
に語って、そういう女の心はいったいどうしたものなのかと、
訊
(
たず
)
ねることもできるだろう。
鈴木主水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
佐内坂を登り
了
(
おわ
)
ると、人通りが少くなった。時雄はふと振返って、「それでどうしたの?」と突如として
訊
(
たず
)
ねた。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
「おやッ」といぶかしく、運んでくれた助手に
訊
(
たず
)
ねてみようと、表に出てみると、もう自動車は、白い
烟
(
けむ
)
りが、かすかなほど
遥
(
はる
)
かの角を曲るところでした。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
「
巴里
(
パリー
)
はどこの都ですか」とお
訊
(
たず
)
ねになった。すると「
佛蘭西
(
フランス
)
の都であります」と光子が
嬉
(
うれ
)
しそうに答えた。
先生の顔
(新字新仮名)
/
竹久夢二
(著)
「……うん」龍介は髪結賃はいくらだ、と
訊
(
たず
)
ねようと思った。それぐらいなら出してやってもいい気がした。
雪の夜
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
絹袴が無い時には、絹袴の出物は無いかと彼に
訊
(
たず
)
ねてみたく思った。瓦斯織の
単衣
(
ひとえ
)
がほしい時には、瓦斯織の単衣の出物は無いかと彼に訊ねてみたく思った。
阿Q正伝
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
径から谷にむかって、低く
垂
(
た
)
れている、狭い、急な段々畑には、背に籠を負い、脚にまっ赤な脚絆をつけた蕃人の娘が
佇
(
たたず
)
んでいて、
訊
(
たず
)
ねかけてくることもある。
霧の蕃社
(新字新仮名)
/
中村地平
(著)
「ほどく?」と私は
訊
(
たず
)
ねた。が、女は目で微笑するとゆっくりと首を振った。そして頭を蒲団の同じ位置に戻し、またよく光る黒い石の目になって私を眺めた。
愛のごとく
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
僕は眼を視張って
訊
(
たず
)
ねた。なんとも名状しがたい爽快な
嵐
(
あらし
)
が僕の胸のうちには更に新しく火の手を挙げた。
吊籠と月光と
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
この暑いのにご出頭を願ったのは申すまでもなく、
奥田
(
おくだ
)
さんの事件について、あなたが生前故人を診察なさった関係上、二、三お
訊
(
たず
)
ねしたいことがあるからです。
愚人の毒
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
「何さ話してるだかね」と
訊
(
たず
)
ねた。「——今日はわっしあ偉えものに乗ったで。あの街のでっかい店な、一階で乗ったら、うふふ、すーと飛び上るでねえか……」
土城廊
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
あの坊さんの梟がいつもの高い処からやさしく
訊
(
たず
)
ねました。穂吉は何か
云
(
い
)
おうとしたようでしたが、ただ眼がパチパチしたばかり、お母さんが代って答えました。
二十六夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
口小言
(
くちこごと
)
をいいながら、
自
(
みずか
)
ら
格子戸
(
こうしど
)
のところまで
立
(
た
)
って
行
(
い
)
った
松江
(
しょうこう
)
は、わざと
声音
(
こわね
)
を
変
(
か
)
えて、
低
(
ひく
)
く
訊
(
たず
)
ねた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
「どうしたんですの」と妾は
訊
(
たず
)
ねてみました。「今日は
貴方
(
あなた
)
の顔はまるで墓穴から抜け出してきた人のようにまっさおよ、すっかり
錆
(
さ
)
びて、つやがなくなってるわ」
華やかな罪過
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
訊
漢検準1級
部首:⾔
10画
“訊”を含む語句
訊問
問訊
御訊
訊糺
訊問者
訊尋
聞訊
訊入
訊返
訊斷
訊問室
訊合
訊出
不審訊問
神訊
相訊
旅客訊問
御訊問
対質訊問
十字火訊問