ひど)” の例文
其年そのとし京都きやうとふゆは、おとてずにはだとほ陰忍いんにんたちのものであつた。安井やすゐこの惡性あくしやう寒氣かんきてられて、ひどいインフルエンザにかゝつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
此方から参ったのは剣術つかいのお弟子と見えてやっこじゃの傘をさして来ましたが、其の頃町人と見るとひどい目に合わせます者で
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
いくら叔母さんがひどいったって雪の降ってる中を無暗に逃げ出して来て、わたしのとこへも知らさないで、甲府へ出てしまって奉公しようと思うとって
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
マニラの暴状を見て来たばかりのその将校は、余りにもひどい無意味なる破壊の姿によほど心を痛められたようであった。私は返答に困って、下手な弁解をした。
硝子を破る者 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
もしかその人のひどいことを、あなたが受けた腹立たしい氣持ちと一緒に忘れようと考へてみたら、あなたはもつと幸福になれはしない? 私には人生は、うらみを心に懷いたり
じくじくいたものを、大きな湯槽ゆぶねに溜めて見ると、色だけは非常に奇麗きれいだが、それにだまされてうっかり飛び込もうものならひどい目にう。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かめ「はい、誠に有難うございます、女一人でございますから、どうもひどい目に逢うところで、お蔭様で助かりました」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
まさかそれほどでもないんで、少しひどいとも思ったが、よく考えてみると、実際適評だね。正にその通りな点もなきにしも非ずなんだから。どうも岡田さんはなかなか油断が出来ないな。
続先生を囲る話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
高い桜のかれ枝を余念なく眺めて居た女は、急に三四郎の方を振り向く。あら喫驚びつくりした、ひどいわ、といふ顔付であつた。然し答は尋常である。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
文「御老母様、手前は浪島文治でございます、あなたは鬼のような女にひどい目にって、さぞ御残念でございましょう、只今私がかたきを討って上げます」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
明治の初めには、竹箒で壁面の蜘蛛の巣をはらったという話であるが、その前にはもっとひどい取扱いを受けたこともあるのであろう。それでなくても、何といっても千年の月日は恐しいものである。
壁画摸写 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
その年の京都の冬は、音を立てずに肌をとお陰忍いんにんたちのものであった。安井はこの悪性の寒気かんきにあてられて、ひどいインフルエンザにかかった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
何ういう訳でございますかひどくおおこりで、今いう通り何か是にゃア訳があるのでしょうが、是は何うも藤ちゃん仕方がありません、御縁のないのです
「あら、そりゃ、あんまりだわ。だってひどいじゃありませんか、せっかく買って下すっておきながら、還せなんて」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
國「えゝ溝の中へ投り込んで来たとえ、ひどい事をおりなすったねえ、今に上ってきやアしませんか」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
元来先生がいへさがすなんて間違まちがつてゐる。決してさがした事のない男なんだが、昨日きのふはどうかしてゐたに違ない。御蔭で佐竹のやしきひどい目にしかられてつらかはだ。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
婆「あれさ力持じゃアございません、本当に小増さんをお名指なざしひどいじゃアございませんか」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「しかし顔の讒訴ざんそなどをなさるのは、あまり下等ですわ、誰だって好んであんな鼻を持ってる訳でもありませんから——それに相手が婦人ですからね、あんまりひどいわ」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大事な荷物を持って行ってしまいましたが、の中には金子かねも入って居り、殊に大事な櫛かんざしや衣類も入って居ります故、あれを取られましては母親おふくろにどんなひどいめに逢わされ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「えゝ。とう/\。ひとを美禰子さんの所へけて置いて。ひどいでせう」と同意を求める様に云つた。三四郎は何か返事をしやうとした。其前に美禰子がくちひらいた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
お秋の方も時としてはひどく何か云われる事があり、御家来衆もひどく云われるところから
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
なんだい、ひどいぢやないか。用も云はないで、無暗むやみひとを呼びつけるなんて」と云つた。誠太郎は矢っ張りにや/\してゐた。代助はそれぎりはなしほかへそらして仕舞つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
めえったのは泊ってる奴が二人居るから、いやと云う程ひどたなくっちゃ本当にしないからだ、其の客人は原丹治とおかめという奴で、おめえも知っている下新田の後家で
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「あっ。わかった。三千代さんの死骸しがいだけを僕に見せる積りなんだ。それはひどい。それは残酷だ」
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
てめえの姉のお蔭でひどい目に逢って、あれまで丹誠した桑名川村にられないように成ったのだ、その時は家財や田地を売払って逃げる間も無いから、ようやく有合せの金を持って逃げて
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
これですって三毛を膝の上へ直したら、にやにや笑いながら、猫の病気はわしにも分らん、ほうっておいたら今になおるだろうってんですもの、あんまりひどいじゃございませんか。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
年月としつきってもけえさなければ泥坊よりひどいじゃねえか、難渋なんじゅうを云って頼んでも理に違っちゃアこれ程も恵まねえ世の中じゃアありませんか、何故なぜ貴方あなた預かった覚えはないとおっしゃいました
「あつ。わかつた。三千代さんの死骸丈を僕に見せるつもりなんだ。それはひどい。それは残酷だ」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それもいが三人前の料理代を払うなんどは本当に愛敬のない仕方で、れはどうもひどい、何でも理由わけがあるに違いない、理由わけがなくって彼様あんなになさる気遣きづかいはねえ、何うも理由わけがありそうだ
むかしタンタラスと云う人があった。わるい事をしたばちで、ひどい目にうたと書いてある。身体からだは肩深く水にひたっている。頭の上にはうまそうな菓物くだもの累々るいるいと枝をたわわに結実っている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
世にはとんだ者にだまされて、いくらもひどいめにうものが多いのに、自分の思う所に請出うけだされて行って御新造ごしんぞに成ると云う、そんな結構な事は何うも誠にねえ、おやこりゃア御免なさいましよ
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
かつて二葉亭ふたばていといっしょに北の方を旅行して、露西亜人ロシアじんひどい目にったと話した。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
両側は一面に枝柿えだがきを売るいえが並んで、其の並びには飴菓子屋汁粉屋飯屋などが居て、常には左のみ賑かではございませんが、一年の活計くらしを二日で取るという位なひどい商いだが、実に盛んな事で
賄になぐられたなと調戯からかってひどい目にったので今にその颯爽さっそうたる姿を覚えている。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
とらしたしてたにみづんでゐる鼻柱はなばしらすこけがされたのを、ちゝひどにして、宗助そうすけたびに、御前おまへ此所こゝすみつたことおぼえてゐるか、これ御前おまへちひさい時分じぶん惡戲いたづらだぞとつて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
実はあまりがみがみ云うから、黙っていようかしらんとも思ったけれども、万一掟を破って、あとでひどい目にうのがこわいから、まあ聞いて見た。するとほかの坑夫が、すぐ、返事をした。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「何だい、ひどいじゃないか。用も云わないで、無暗むやみに人を呼びつけるなんて」
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
虎が舌を出して谷の水をんでいる鼻柱が少しけがされたのを、父はひどく気にして、宗助を見るたびに、御前ここへ墨を塗った事を覚えているか、これは御前の小さい時分の悪戯いたずらだぞと云って
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ひどい事を……だって坊さんになるのは、酔興すいきょうになるんじゃないでしょう」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「今帰ったよ。どうもひどほこりでね」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ひどい、ひどい」と云つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)