精々せい/″\)” の例文
森久保氏の芸当といふと、精々せい/″\逆立さかだちか、馬の鼻面をめる位が、手一杯だらうと思ふ人があるかも知れないが、なかなか其麽物そんなものでない——。
かばんよごれたのが伊達だてなんですとさ。——だからあたらしいのを。うぞ精々せい/″\いためてくださいな。」う一つ落着おちついたのは
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
與吉よきちが三つにつたのでおつぎはよそ奉公ほうこうすことに夫婦ふうふあひだには決定けつていされた。ころ十五のをんなでは一ねん給金きふきん精々せい/″\ゑんぐらゐのものであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
たゞしその時代じだいには、精々せい/″\打製石斧だせいせきふか、石鏃屑せきぞくくづくらゐで、格別かくべつおどろくべき珍品ちんぴんらぬのであつた。
A イヤおほきに結構けつこう双方さうはう一月ひとつき九十せんづつの散財さんざいだ。精々せい/″\葉書はがき贅澤ぜいたくをやりたまへ。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
○さりとも志を棄てんは惜しき時、一策あり、精々せい/″\多く志を仕入れて、ところ嫌はず之を振廻さん事なり。成功を見ずといへども、附け届けを見ん。脊負しよひ切れざる程なるをもて、志の妙となす。
青眼白頭 (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
れよりは「精々せい/″\うまいもの適度てきどへ」とふのがもつと簡單かんたん要領えうれう標語へうごである。建築けんちくこと住家ぢうかでも、まさにこのとほりで、「精々せい/″\善美ぜんびなる建築けんちくつくれ」とふのが最後さいご結論けつろんである。
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
祈願所きぐわんじよと御定め一ヶ年米三百ぺうづつ永代えいだい寄附きふある樣に我々取計とりはからひ申べし然すれば永く社頭のほまれにも相成候事なり精々せい/″\はたらき下されと事十分なるたのみの言葉ことばに肥前の申樣は御入用の金子は何程いかほどぞんせねど拙者せつしやに於ては三百兩を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
で、精々せい/″\念を入れて式を行ふ事にした。結構な事さ、世の中に女の離縁状以外には、念を入れ過ぎて悪いといふ事は、何一つ無いのだから……。
……ともだちは、反感はんかん輕侮けいぶつ。精々せい/″\同情どうじやうのあるのが苦笑くせうする。とつた次第しだいだが……たゞくるまけてはかたがうまい、と——もつと御容子ごようすではない——いてる車夫わかいしゆめられた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これにつけても追随者エピゴーネンを成るべくどつさりちたいものは、食物くひもの精々せい/″\手軽なところを選ばねばならない事になる。
切符きつぷつて、改札口かいさつぐちて、精々せい/″\きりすそ泥撥どろはねげないやうに、れた石壇いしだんあがると、一面いちめんあめなかに、不知火しらぬひいてたゞよ都大路みやこおほぢ電燈でんとうながら、横繁吹よこしぶききつけられて
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
老人は拍子木を貰つた礼に何を返したものだらうかと色々思案の末が、矢張仏手藷つくねいものやうな山水をいていつもの禿山の代りに精々せい/″\木立のこんもりした所を見せて送ることに決めた。
へい、それ引込ひきこめ、と仰有おつしやりますから、精々せい/″\目着めつかりませんやうに、突然いきなり蝋燭らふそくしてたでござります。やまかげりますで、くるまだい月夜つきよでも、一寸ちよいとにはきますまいとおもひまして、へい。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)