きず)” の例文
内実はくまでも鎖攘主義さじょうしゅぎにして、ひたすら外人をとおざけんとしたるその一例をいえば、品川しながわ無益むえき砲台ほうだいなどきずきたるその上に
この家の古い建築の仕方から見れば、いま食卓の据えてある土間の奥にかまどきずかれていて、朝夕に赤い火が燃えていたものと推測される。
衆の中に衆和をよんで、土かつぎも幾百年の積もりをなせば、やがては浄土をきずきえようか。あわれ、仏から見れば罪深いごうの子だろうが
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
而して我儕われらが折角骨折って小石を積み上げて居ると、無慈悲の鬼めが来ては唯一棒に打崩す。ナポレオンが雄図ゆうときずくと、ヲートルルーが打崩す。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そして、そのひろ屋敷やしき周囲まわりには、土手どてきずいてあって、その土手どてへは、だれものぼれないように、とげのある、いろいろのなどがえてありました。
女の魚売り (新字新仮名) / 小川未明(著)
このダムは、山峡さんきょうにつくった人工の池をせきとめている。それは巨大な鉄筋てっきんコンクリートできずいたかきであった。水をせきとめるための巨大な壁であった。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そのもとよりルウドヰヒ町を左に折れたる処に、トリエント産の大理石にてきずきおこしたるおほいへあり。これバワリアの首府に名高き見ものなる美術学校なり。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
山谷から三輪みのわに通ずる八丁の土手は、諸大名に命じてきずかせた荒川の水けで、これを日本堤と言ったのには、いろいろの江戸人らしい伝説や付会があります。
手に一条ひとすじ大身おおみやりひっさげて、背負しょった女房が死骸でなくば、死人の山をきずくはず、無理に手活ていけの花にした、申訳もうしわけとむらいに、医王山の美女ヶ原、花の中にうずめて帰る。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
土で竈をきずく風習と一しょであったために、ここばかりでは是を別の語として受け入れたので、日本全体からいうと是もまた由緒ゆいしょ久しい一つの古語であろうと思う。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
落城後らくじょうごもなく、城跡しろあとの一三浦みうらぞくはかきずかれましたので、わたくし自分じぶん住居じゅうきょからちょいちょい墓参ぼさんをいたしましたが、はかまえつむっておがんでりますと
その並木道の一つで第一回の興行こうぎょうがすることにした。すると初日しょにちからもう見物の山をきずいた。
「それではまるで、他人がこのしろきずいてくれるようなものだ。なぜだ? なぜそんなにして秀吉の住居すまいをみんなしてつくってくれるのか」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
空になったかめは、いずれも毛嫌いされて、家の中には再び入れてもらえず、一旦は公園の中に持ちこまれて、甕の山をきずいたが、万一この甕の山が爆発したら
このとき、ふとげておきほうをながめますと、くろかべきずいたようにうみがったのです。そして、ひどいとどろきをあげておかかってせてまいりました。
黒い塔 (新字新仮名) / 小川未明(著)
町を流るゝ大川おおかわの、しも小橋こばしを、もつと此処ここは下流に成る。やがてかたへ落ちる川口かわぐちで、の田つゞきの小流こながれとのあいだには、一寸ちょっと高くきずいた塘堤どてがあるが、初夜しょや過ぎて町は遠し、村もしずまつた。
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
でもわたしは母にたのんで、この人のために大理石のはかきずかせた。その墓の上にはカルロ・バルザニの半身像はんしんぞうをすえさせた。その半身像の複製ふくせいはこうして書いているわたしの卓上たくじょうにあった。
母が日傘ひがさを横にして会釈えしゃくし、最早もう熊本に帰っても宜しゅうございましょうかと云うた。いとも/\、みんなひどい目にったなあ。と士官が馬上から挨拶あいさつした。其処そこ土俵どひょうきずいた台場だいば——堡塁ほるいがあった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「——が、官兵衛父子を救うために、わが大軍を出すことはできない。中国のことは、安土をきずくようなわけには参らん」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてその部屋には、土や石できずいた寝台のようなものがあり、壁にはさまざまのりで、絵画や模様らしきものや不可解ふかかいな古代文字のようなものがきざまれてあった。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
にちに、二人ふたりや、三にんは、金持かねもちにとって、なんでもなかったけれど、いつしか、このうわさがひろまるにつれて、十にん、二十にんと、毎日まいにち金持かねもちのもんまえには、もらいのものがくろやまきずきました。
船でついた町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「城兵が死を決して出てくる公算こうさんは多分にある。まず、さくをたてよ。桝形ますがた望楼ぼうろうきずけ。そして、城内へ、遠矢とおや、鉄砲を撃ちこみ、昼も夜も眠らすな」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「短時日の仕上げこそ、このばあいの第一だぞ。おそくも二十日うちにきずき上げよ」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
厚くきずいたかまの土が、人間の血を日にかして見るように赤く見えてきた。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)