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突兀
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とっこつ
ふりがな文庫
“
突兀
(
とっこつ
)” の例文
左端のやや低い凹頭を
突兀
(
とっこつ
)
と
擡
(
もた
)
げているので、雪の多い季節には場所によっては、時として奥白根と間違えられることさえあった。
皇海山紀行
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
突兀
(
とっこつ
)
たる岩などは誠に少なかったから割合に安楽でありましたけれども、何分雪の中ばかり一人で進んで行くのですから
堪
(
たま
)
らない。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
幾重にも
突兀
(
とっこつ
)
した山々のため、指ざす
彼方
(
かなた
)
は
模糊
(
もこ
)
とした想像であり、語って聞かされた状景はなかなか実感となって浮ばなかった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
さすがに、刀に
対
(
むか
)
うと、痩せた肩を、
突兀
(
とっこつ
)
と
聳
(
そび
)
え立て、片手を膝に、片手を伸ばして、武蔵の腰の
刀
(
もの
)
を取って、
慇懃
(
いんぎん
)
に頭を下げた。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
海の向うに
連
(
つら
)
なる
突兀
(
とっこつ
)
極まる山脈さえ、坐っていると、窓の中に向うから
這入
(
はい
)
って来てくれるという
重宝
(
ちょうほう
)
な
家
(
うち
)
なんだそうである。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
第三には食べるなという瓜を食べたら、大水が出たという点、これもこの一例だけでは余り
突兀
(
とっこつ
)
としていて、おかしい感じすらも起らない。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
僕も実際初対面の時には、
突兀
(
とっこつ
)
たる氏の風采の中に、未醒山人と名乗るよりも、寧ろ未醒蛮民と号しそうな辺方
瘴煙
(
しょうえん
)
の気を感じたものである。
小杉未醒氏
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
しかも両岸は
突兀
(
とっこつ
)
たる大懸崖。城の入口には鉄の桟橋がかかって、一夫関を守れば万夫を越えがたき要害険阻の古城である。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
同じ本に大月原と題する画がある、これは前に
突兀
(
とっこつ
)
たる山脈が長く横はつてその上に大きな富士が白く出て居る所である。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
平地に
突兀
(
とっこつ
)
として盛り上る土積。山。翁は手を
翳
(
かざ
)
して眺める。翁は
須臾
(
しゅゆ
)
にして精神のみか肉体までも盛り上る土堆と関聯した生理的感覚を覚える。
富士
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
せめて、最後もそれらしく、と
突兀
(
とっこつ
)
と肩をそびやかして控えているところへ、甲斐守がかるがるとした足どりで入って来て、座にもつかぬうちに
顎十郎捕物帳:11 御代参の乗物
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
そうして右をふり仰ぐと
突兀
(
とっこつ
)
たる
小浅間
(
こあさま
)
の
熔岩塊
(
ようがんかい
)
が今にも頭上にくずれ落ちそうな絶壁をなしてそびえ立っている。
小浅間
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
凍った雪が二人を
担
(
にな
)
って、
掠
(
かす
)
り傷さえ受けもせず
易々
(
やすやす
)
と谷底へ下り立ったが
突兀
(
とっこつ
)
たる雪の巌、氷張り詰めた河の
畔
(
くろ
)
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
私は
鬼
(
おに
)
ヶ
島
(
しま
)
へいくような気持をもって、ここまでやって来たのであるが、あの緑の樹で
蔽
(
おお
)
われた
突兀
(
とっこつ
)
と天を
摩
(
ま
)
する恰好のいい島影を海上から望んだ
刹那
(
せつな
)
暗号音盤事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
蠢々
(
しゅんしゅん
)
として、哀々として、
莞爾
(
かんじ
)
として、
突兀
(
とっこつ
)
として、二人三人五人の青年たちがむくりむくりと起き上って来た。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
蛭
(
ひる
)
ヶ
岳
(
たけ
)
があり、塔ヶ岳があって、それからまたいったん絶えたるが如くして、
大山阿夫利山
(
おおやまあふりさん
)
が
突兀
(
とっこつ
)
として、東海と平野の
前哨
(
ぜんしょう
)
の地位に、孤風をさらして立つ。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その恐ろしく長く切れた眼、立派な建築物のように
秀
(
ひい
)
でた鼻、鼻から口へつながっている
突兀
(
とっこつ
)
とした二本の線、その線の下に、たっぷり深く刻まれた
紅
(
あか
)
い唇。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
上部にはどうしてこんな大きなものが流れて来ただろうと思われる巨大な熔岩が
突兀
(
とっこつ
)
として乱立している。
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
わがちゃァちゃんは、フロックコートに身を固めたわが小柴市兵衛君は、すぐ眼のまえに
突兀
(
とっこつ
)
とそそり立った、不恰好な、半西洋の三階建を指さして
喟然
(
きぜん
)
としていった。
浅草風土記
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
これに反しかの平民的の現象なるものは、あたかも一夜のうちに富士の高山が地面より
湧出
(
ようしゅつ
)
したるがごとく、第十九世紀の世界に
突兀
(
とっこつ
)
として
聳
(
そび
)
え来たりたるにあらずや。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
突兀
(
とっこつ
)
とみえる
驕魔台
(
ヤツデ・クベーダ
)
のうえに、まるで目の狂いかのような、人影がみえるのだ。早速、双眼鏡でみているうちに暁はひろがってゆく。しかし、死の原のここに、鳥の声はない。
人外魔境:10 地軸二万哩
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
道の左側には、巨大な
羊歯
(
しだ
)
族の峡谷を
距
(
へだ
)
てて、ぎらぎらした豊かな緑の
氾濫
(
はんらん
)
の上に、タファ山の頂であろうか、
突兀
(
とっこつ
)
たる
菫色
(
すみれいろ
)
の
稜線
(
りょうせん
)
が眩しい
靄
(
もや
)
の中から覗いている。静かだった。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
対岸にも
突兀
(
とっこつ
)
たる山々が次々に現れて来るが、ベアテンベルクとかいう山は大きな円錐の頭を斜めに截ち切ったような形で、その截断面の傾斜の上に家が飛び飛びにばら撒かれて
吹雪のユンクフラウ
(新字新仮名)
/
野上豊一郎
(著)
利尻山の絶頂は
突兀
(
とっこつ
)
として月下に聳えている、この間の風物は何んとも言いようのない有様である、三時頃からして東の方が漸く明るくなって、四時半には太陽が地平線上に出た
利尻山とその植物
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
河中
(
かわなか
)
に岩石
突兀
(
とっこつ
)
として橋を架ける
便宜
(
よすが
)
が無いのと、水勢が極めて急激で
橋台
(
きょうだい
)
を突き崩して
了
(
しま
)
うのとで、少しく広い
山河
(
やまがわ
)
には一種の
籠
(
かご
)
を懸けて、旅人は
其
(
そ
)
の両岸に通ずる
大綱
(
おおづな
)
を
手繰
(
たぐ
)
りながら
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
紳士の
随伴
(
つれ
)
と見える
両人
(
ふたり
)
の婦人は、一人は今様おはつとか
称
(
とな
)
える
突兀
(
とっこつ
)
たる大丸髷、今一人は
落雪
(
ぼっとり
)
とした妙齢の束髪頭、
孰
(
いず
)
れも
水際
(
みずぎわ
)
の立つ玉
揃
(
ぞろ
)
い、
面相
(
かおつき
)
といい
風姿
(
ふうつき
)
といい、どうも
姉妹
(
きょうだい
)
らしく見える。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
『正保図』にも大水上山は
突兀
(
とっこつ
)
として南に岩崖でも有るかの如くに描かれているし、「利根水源探検紀行」の著者すらも
利根川水源地の山々
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
あるいは一種の関係に
突兀
(
とっこつ
)
と云う名を与え、あるいは他種の関係に
飄逸
(
ひょういつ
)
と云う名を与えて、突兀的情操、飄逸的情操と云うのを作っても
差支
(
さしつかえ
)
ない。
文芸の哲学的基礎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
町と田野と
長良川
(
ながらがわ
)
の水の際から、
突兀
(
とっこつ
)
と急に
聳
(
そび
)
え立っている絶頂に、一羽の白鳥でもうずくまっているかと見まごう白壁が、ポチと小さく見える。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
太古の大地変の
痕跡
(
こんせき
)
を示して、山骨を露出し、
急峻
(
きゅうしゅん
)
な姿をしているのであるが、
大垣
(
おおがき
)
から見れば、それほど
突兀
(
とっこつ
)
たる姿をしていないだろうという事は
伊吹山の句について
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
その翌日午前七時に出立して巌石
突兀
(
とっこつ
)
たる狭い道を登って行くこと二里ばかりにして細い桃林のある谷へ出ました。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
考えることも深かった上に
突兀
(
とっこつ
)
した
谿谷
(
けいこく
)
は相当な登りにかかっていた。おいおいと肩の荷が骨にこたえて来た。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
それを元へ返して丹沢の山つづきを見ると、その尽くるところに
突兀
(
とっこつ
)
として高きが
大山
(
おおやま
)
の
阿夫利山
(
あふりさん
)
です。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
雪明りに見ゆる谷の中には、雪を冠った灌木や、氷張り詰めた河の堤や、
突兀
(
とっこつ
)
たる岩等はあるけれどその他には一匹の獣さえいない。まして人間は影さえもない。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
三層五層の楼閣は
突兀
(
とっこつ
)
として空を
凌
(
しの
)
ぎ、その下層はかへつて崖低く水に臨む処にあり。上層と下層と相通ずるには石階を取つて
迂回
(
うかい
)
すべく、昇降機に依りて上下すべし。
四百年後の東京
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
まわりの円味がかった平凡な地形に対して天柱山と吐月峰は
突兀
(
とっこつ
)
として秀でている。けれども
矗
(
ちく
)
とか
峻
(
しゅん
)
とかいう
峙
(
そばだ
)
ちようではなく、どこまでも
撫
(
な
)
で
肩
(
がた
)
の柔かい線である。
東海道五十三次
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
畢竟
(
ひっきょう
)
するにこの二つの植物の名の提唱が、今ではあまりにも
突兀
(
とっこつ
)
なものになっているからである。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
しかし遠慮のない所を云うと、氏の顔は決して立派じゃない。皮膚の色は
殆
(
ほとんど
)
黄色である。口髭や
顋髯
(
あごひげ
)
は気の毒な程薄い。
突兀
(
とっこつ
)
と聳えた額なども、瘤ではないかと思う位である。
上海游記
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
左岸の
城山
(
しろやま
)
に洞門を
穿
(
うが
)
つのである。奇岩
突兀
(
とっこつ
)
として
聳
(
そび
)
え立つその頂上に近代のホテルを建て更に岩石層の
縦
(
たて
)
の
隧道
(
トンネル
)
をくりぬき、しんしんとエレヴェーターで旅客を迎える計画だそうである。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
その相反する実にかくの如し。
而
(
しこう
)
してその相反するは、則ち相得る
所以
(
ゆえん
)
なるか。松陰曰く、「象山高く
突兀
(
とっこつ
)
たり、
雲翳
(
うんえい
)
仰ぐべきこと難し。
何
(
いず
)
れの日にか天風起り、快望せん
狻猊
(
さんげい
)
の
蟠
(
わだか
)
まるを」
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
苺
(
いちご
)
のように点々と毛穴が見え、その鼻が顔の他の部分と何の連絡もなく
突兀
(
とっこつ
)
と顔の真中につき出しており、どんぐりまなこが深く
陥
(
お
)
ち込んだ上を、誠に太く黒い眉が余りにも眼とくっ附き過ぎて
狼疾記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
ボーイ長が引き退ると間もなく、縮れっ毛団栗眼の、「長崎絵」の
加比丹
(
カピタン
)
のような面をした
突兀
(
とっこつ
)
たる人物が一種
蹣跚
(
まんさん
)
たる足どりで入って来て、皇帝の前へ直立すると、危なっかしいようすで敬礼をし
魔都
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
剣ヶ倉の右の肩には、平ヶ岳の西の肩ともいう可き二千八十米の隆起が
突兀
(
とっこつ
)
と
峙
(
そばだ
)
ち、其上に尨大な平ヶ岳が特有な頂上を左方に長く展開している。
利根川水源地の山々
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
その上に
前山
(
まえやま
)
、すこし東に
方
(
あた
)
って
朝熊
(
あさま
)
山が見え、それを繋ぐ山と山との肩の間から、
群山
(
ぐんざん
)
を
睥睨
(
へいげい
)
するように、
突兀
(
とっこつ
)
として、剣のような一峰が望まれた。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
よく見る勇気もなかったが起伏
蜿蜓
(
えんえん
)
、
突兀
(
とっこつ
)
として
四端
(
あたり
)
に聳えて居る群雪峰は互いに相映じて宇宙の真美を現わし
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
飛び石のそばに
突兀
(
とっこつ
)
としてそびえた
楠
(
くす
)
の木のこずえに雨気を帯びた大きな星が一ついつもいつもかかっていたような気がするが、それも全くもう夢のような記憶である。
庭の追憶
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
対岸の
平沙
(
へいさ
)
の上にM山が
突兀
(
とっこつ
)
として富士型に
聳
(
そび
)
え、見詰めても、もう眼が痛くならない光の落ちついた夕陽が、銅の
襖
(
ふすま
)
の引手のようにくっきりと重々しくかかっている。
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
突兀
(
とっこつ
)
とした熔岩は角立った頂きを空へ向け、
峨々累々
(
ががるいるい
)
と重なり合っている。そうして立ち初めた灰色の霧が、それらの岩々木々を包んで、次第にこっちへ立ち上って来る。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ほどなく
洲崎鼻
(
すのさきばな
)
の
尽頭
(
じんとう
)
、東より西に走り来れる
山骨
(
さんこつ
)
が、海に没して
巌角
(
いわかど
)
の
突兀
(
とっこつ
)
たるところ、枝ぶり面白く、海へ向ってのした松の大木の枝の上に、例の般若の面をかぶって腰うちかけ
大菩薩峠:25 みちりやの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
次には俳諧が
突兀
(
とっこつ
)
意外を常法とした結果、あまり附き過ぎるのを軽蔑する気風を生じたこと、
談林派
(
だんりんは
)
は
勿論
(
もちろん
)
その功罪の七八割を負わねばならぬが、この趣味の誇張は末永く継承せられ
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
突
常用漢字
中学
部首:⽳
8画
兀
漢検1級
部首:⼉
3画
“突兀”で始まる語句
突兀万仞
突兀峨々