“突兀:とっこつ” の例文
“突兀:とっこつ”を含む作品の著者(上位)作品数
吉川英治8
木暮理太郎6
寺田寅彦4
正岡子規3
夏目漱石3
“突兀:とっこつ”を含む作品のジャンル比率
歴史 > 地理・地誌・紀行 > アジア50.0%
社会科学 > 社会科学 > 論文集・評論集・講演集11.1%
芸術・美術 > スポーツ・体育 > 戸外レクリエーション10.3%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
同じ本に大月原と題する画がある、これは前に突兀とっこつたる山脈が長く横はつてその上に大きな富士が白く出て居る所である。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
そしてまだなにか、恐怖の夢でも見ているように、この沢のくぼから突兀とっこつと空に黒く見えている山の肩を振り仰いだ。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ことに岩でありますから、突兀とっこつとしてその姿の鋭いところはその美と相映じて余程面白く見える〔光輝燦然たる奇巌〕です。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
それを元へ返して丹沢の山つづきを見ると、その尽くるところに突兀とっこつとして高きが大山おおやま阿夫利山あふりさんです。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その翌日午前七時に出立して巌石突兀とっこつたる狭い道を登って行くこと二里ばかりにして細い桃林のある谷へ出ました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
畢竟ひっきょうするにこの二つの植物の名の提唱が、今ではあまりにも突兀とっこつなものになっているからである。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
岩石の露出した木の少ない山である。石山の多いのは伊豆の特徴でもある。そうした低い山が、幾つも田野から突兀とっこつそびえている。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
第三には食べるなという瓜を食べたら、大水が出たという点、これもこの一例だけでは余り突兀とっこつとしていて、おかしい感じすらも起らない。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そうして右をふり仰ぐと突兀とっこつたる小浅間こあさま熔岩塊ようがんかいが今にも頭上にくずれ落ちそうな絶壁をなしてそびえ立っている。
小浅間 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
突兀とっこつとみえる驕魔台ヤツデ・クベーダのうえに、まるで目の狂いかのような、人影がみえるのだ。
人外魔境:10 地軸二万哩 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
幾重にも突兀とっこつした山々のため、指ざす彼方かなた模糊もことした想像であり、語って聞かされた状景はなかなか実感となって浮ばなかった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
三層五層の楼閣は突兀とっこつとして空をしのぎ、その下層はかへつて崖低く水に臨む処にあり。
四百年後の東京 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
松陰曰く、「象山高く突兀とっこつたり、雲翳うんえい仰ぐべきこと難し。いずれの日にか天風起り、快望せん狻猊さんげいわだかまるを」と。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
突兀とっこつとした熔岩は角立った頂きを空へ向け、峨々累々ががるいるいと重なり合っている。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
僕も実際初対面の時には、突兀とっこつたる氏の風采の中に、未醒山人と名乗るよりも、寧ろ未醒蛮民と号しそうな辺方瘴煙しょうえんの気を感じたものである。
小杉未醒氏 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
突兀とっこつそびえている山の絶頂に、ひとりの敵が立って大擂だいらいを吹いている。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
剣ヶ倉の右の肩には、平ヶ岳の西の肩ともいう可き二千八十米の隆起が突兀とっこつそばだち、其上に尨大な平ヶ岳が特有な頂上を左方に長く展開している。
利根川水源地の山々 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
竹村君はこのかぜの中を突兀とっこつとして、忙しそうな往来の人を眺めて歩く。
まじょりか皿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
その白色の雪の彼方あなた突兀とっこつそびえる大山は、御嶽冠者の右腕として、石川五右衛門に上越す梟雄きょうゆう、武者所鬼王丸おにおうまる
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
まわりの円味がかった平凡な地形に対して天柱山と吐月峰は突兀とっこつとして秀でている。
東海道五十三次 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
雪明りに見ゆる谷の中には、雪を冠った灌木や、氷張り詰めた河の堤や、突兀とっこつたる岩等はあるけれどその他には一匹の獣さえいない。まして人間は影さえもない。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
さすがに、刀にむかうと、痩せた肩を、突兀とっこつそびえ立て、片手を膝に、片手を伸ばして、武蔵の腰のものを取って、慇懃いんぎんに頭を下げた。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
喬木帯を抜けて大きな岩の上に立つと、行手の空に突兀とっこつと五丈石が見上げられた。
金峰山 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
突兀とっこつと秋空をくぎる遠山の上を高くかりの列が南へ急ぐのを見ても、しかし、将卒一同だれ一人として甘い懐郷の情などにそそられるものはない。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
町と田野と長良川ながらがわの水の際から、突兀とっこつと急にそびえ立っている絶頂に、一羽の白鳥でもうずくまっているかと見まごう白壁が、ポチと小さく見える。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
驕慢で通してきた俺だ。せめて、最後もそれらしく、と突兀とっこつと肩をそびやかして控えているところへ、甲斐守がかるがるとした足どりで入って来て、座にもつかぬうちに、
その恐ろしく長く切れた眼、立派な建築物のようにひいでた鼻、鼻から口へつながっている突兀とっこつとした二本の線、その線の下に、たっぷり深く刻まれたあかい唇。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
あるいは一種の関係に突兀とっこつと云う名を与え、あるいは他種の関係に飄逸ひょういつと云う名を与えて、突兀的情操、飄逸的情操と云うのを作っても差支さしつかえない。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
飛び石のそばに突兀とっこつとしてそびえたくすの木のこずえに雨気を帯びた大きな星が一ついつもいつもかかっていたような気がするが、それも全くもう夢のような記憶である。
庭の追憶 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
奇岩突兀とっこつとしてそびえ立つその頂上に近代のホテルを建て更に岩石層のたて隧道トンネルをくりぬき、しんしんとエレヴェーターで旅客を迎える計画だそうである。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
彼もまた丁度そのときそのことを考えていたにちがいない。考えることも深かった上に突兀とっこつした谿谷けいこくは相当な登りにかかっていた。おいおいと肩の荷が骨にこたえて来た。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
これに反しかの平民的の現象なるものは、あたかも一夜のうちに富士の高山が地面より湧出ようしゅつしたるがごとく、第十九世紀の世界に突兀とっこつとしてそびえ来たりたるにあらずや。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
突兀とっこつと聳えた額なども、瘤ではないかと思う位である。
上海游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そこは惨たる焼け跡であったが、以前から大玄関の前にあった「いちょう城」の名のある大銀杏の焼け肌だけが、今はあたりがすべて瓦礫がれきなので、突兀とっこつとひとりそびえていた。
日本名婦伝:谷干城夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふと前面に突兀とっこつとした岩の姿に出会いました。来る者に対して、一問せんというが如く肩をいからしている岩容が、この際、日本左衛門が百倍ほどになってそこに立ったようにも見えます。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この外輪山の西南部に偏して噴出した中央火口丘が即ち妙高山で、外輪山の総称であるくるわ岳に対してしん岳とも呼ばれ、頂上は嶄岩ざんがん突兀とっこつとして頗る奇観を呈している。
対岸の平沙へいさの上にM山が突兀とっこつとして富士型にそびえ、見詰めても、もう眼が痛くならない光の落ちついた夕陽が、銅のふすまの引手のようにくっきりと重々しくかかっている。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「起し得て突兀とっこつですね」と寒月君がほめる。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その上に前山まえやま、すこし東にあたって朝熊あさま山が見え、それを繋ぐ山と山との肩の間から、群山ぐんざん睥睨へいげいするように、突兀とっこつとして、剣のような一峰が望まれた。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひるたけがあり、塔ヶ岳があって、それからまたいったん絶えたるが如くして、大山阿夫利山おおやまあふりさん突兀とっこつとして、東海と平野の前哨ぜんしょうの地位に、孤風をさらして立つ。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
平地に突兀とっこつとして盛り上る土積。
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
すなわち熔岩の断崖がそこに出来ているのであるが、下半部の下積みになった熔岩は石垣状を呈し、上部にはどうしてこんな大きなものが流れて来ただろうと思われる巨大な熔岩が突兀とっこつとして乱立している。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
しかも両岸は突兀とっこつたる大懸崖。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
道の左側には、巨大な羊歯しだ族の峡谷をへだてて、ぎらぎらした豊かな緑の氾濫はんらんの上に、タファ山の頂であろうか、突兀とっこつたる菫色すみれいろ稜線りょうせんが眩しいもやの中から覗いている。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
ボーイ長が引き退ると間もなく、縮れっ毛団栗眼の、「長崎絵」の加比丹カピタンのような面をした突兀とっこつたる人物が一種蹣跚まんさんたる足どりで入って来て、皇帝の前へ直立すると、危なっかしいようすで敬礼をし、
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
鼻が赤く、いちごのように点々と毛穴が見え、その鼻が顔の他の部分と何の連絡もなく突兀とっこつと顔の真中につき出しており、どんぐりまなこが深くち込んだ上を、誠に太く黒い眉が余りにも眼とくっ附き過ぎて、っている。
狼疾記 (新字新仮名) / 中島敦(著)
彼女が、この沢の渓流を越え、そしてここからも見える眼の前の——突兀とっこつとした岩山の中腹までかかって行くと、ちょうどその山肌の肋骨あばらの辺りになる岩頭に、世にも怖ろしい妖怪が腰かけていて、月を眺めていたというのである。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二等よりもより雑然たる諸相の中から、湧き出る、溢れ出る、転がり出る、飛び出る、それらの如く、蠢々しゅんしゅんとして、哀々として、莞爾かんじとして、突兀とっこつとして、二人三人五人の青年たちがむくりむくりと起き上って来た。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
実をいえば、私はおにしまへいくような気持をもって、ここまでやって来たのであるが、あの緑の樹でおおわれた突兀とっこつと天をする恰好のいい島影を海上から望んだ刹那せつな、そういう不安な考えは一時に消えてしまった。
暗号音盤事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
十二日の日も幸いにして晴天であった、午前三時頃露営の小屋を出でて仰ぎ見れば孤月高く天半に懸って、利尻山の絶頂は突兀とっこつとして月下に聳えている、この間の風物は何んとも言いようのない有様である、三時頃からして東の方が漸く明るくなって
利尻山とその植物 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
その一つは永年許されて来た変則語法と省略とがだんだんとえらくなったこと、次には俳諧が突兀とっこつ意外を常法とした結果、あまり附き過ぎるのを軽蔑する気風を生じたこと、談林派だんりんは勿論もちろんその功罪の七八割を負わねばならぬが
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その当時他の方面は知らなかったが、南から眺めると、上州方面で根利山と総称している袈裟丸山の連脈の奥に、左端のやや低い凹頭を突兀とっこつもたげているので、雪の多い季節には場所によっては、時として奥白根と間違えられることさえあった。
皇海山紀行 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
対岸にも突兀とっこつたる山々が次々に現れて来るが、ベアテンベルクとかいう山は大きな円錐の頭を斜めに截ち切ったような形で、その截断面の傾斜の上に家が飛び飛びにばら撒かれて、画に描いても斯んな景色は実在しないと疑われそうなおもしろさだった。
吹雪のユンクフラウ (新字新仮名) / 野上豊一郎(著)
『正保図』にも大水上山は突兀とっこつとして南に岩崖でも有るかの如くに描かれているし、「利根水源探検紀行」の著者すらも、「岩代の燧岳、越後の駒ヶ岳八海山等皆巍然として天に朝し、利根川水源たる大刀根岳は之と相頡頏して高さを争ふ」というている。
利根川水源地の山々 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
自由貿易主義と蒸気機関とは雲竜相逐うの勢いをなし、一の必要は一の発明を生じ、一の発明はさらに一の必要を生じ、進歩より進歩に進み、発明より発明に移り、僅々たる五十年、これらの大作用は実に突兀とっこつとして一の新世界を宇宙に湧出ようしゅつしたり。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
ほどなく洲崎鼻すのさきばな尽頭じんとう、東より西に走り来れる山骨さんこつが、海に没して巌角いわかど突兀とっこつたるところ、枝ぶり面白く、海へ向ってのした松の大木の枝の上に、例の般若の面をかぶって腰うちかけ、足を海上にブラ下げた清澄の茂太郎。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
何でも股野の家の座敷からは、大連が一目に見渡されるのみならず、海が手に取るように眺められるのみならず、海の向うにつらなる突兀とっこつ極まる山脈さえ、坐っていると、窓の中に向うから這入はいって来てくれるという重宝ちょうほううちなんだそうである。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
山の南側は、太古の大地変の痕跡こんせきを示して、山骨を露出し、急峻きゅうしゅんな姿をしているのであるが、大垣おおがきから見れば、それほど突兀とっこつたる姿をしていないだろうという事は、たとえば陸地測量部の五万分一の地形図を見ても、判断する事ができる。
伊吹山の句について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
しかるにハシは横に平に渡すものであるが、竪に上下に渡すものをもハシといい、前者と区別する為にハシタテと呼ばれたものが後の梯子のことである、すると石椅は石のハシタテの略されたもので、山が突兀とっこつとして聳えているところからの名を得たものと考えられる。
二、三の山名について (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
約三里の行程も、時には昼も暗い程に繁った森林を穿ち、或は脚下十丈の底に中房川の奔湍激流を、又は徂徠する雲の間から有明山の突兀とっこつたる姿を仰ぎなどして、鶯や時鳥ほととぎすの鳴く音に耳を傾けながら、三度目に中房川の釣橋を渡ると、間もなく中房温泉に達する。
紳士の随伴つれと見える両人ふたりの婦人は、一人は今様おはつとかとなえる突兀とっこつたる大丸髷、今一人は落雪ぼっとりとした妙齢の束髪頭、いずれも水際みずぎわの立つ玉ぞろい、面相かおつきといい風姿ふうつきといい、どうも姉妹きょうだいらしく見える。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
河中かわなかに岩石突兀とっこつとして橋を架ける便宜よすがが無いのと、水勢が極めて急激で橋台きょうだいを突き崩してしまうのとで、少しく広い山河やまがわには一種のかごを懸けて、旅人はの両岸に通ずる大綱おおづな手繰たぐりながら、畚に吊られて宙を渡って行く。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この寺の建築は小き者なれど此処の地形は深山の中にありてあるいは千仞せんじん危巌きがん突兀とっこつとして奈落をみ九天を支ふるが如きもあり、あるいは絶壁、屏風びょうぶなす立ちつづきて一水潺々せんせんと流るる処もあり、とにかくこの辺無双の奇勝として好事家こうずかの杖をく者少からず。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
たとえにも猫のひたいと云うくらいな地面へ、英雄の鼻柱が突兀とっこつとしてそびえたら、碁盤の上へ奈良の大仏をえ付けたようなもので、少しく比例を失するの極、その美的価値を落す事だろうと思います。御母堂の鼻はシーザーのそれのごとく、まさしく英姿颯爽えいしさっそうたる隆起に相違ございません。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)