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稍
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や
ふりがな文庫
“
稍
(
や
)” の例文
広瀬から
稍
(
や
)
や爪先上りの赤土道を、七、八町も行くと、原中に一本の大きな
水楢
(
みずなら
)
か何かの闊葉樹が生えている
側
(
そば
)
で路が二つに岐れる。
笛吹川の上流(東沢と西沢)
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
藻西の店は
余等
(
よら
)
が立てる所より僅か離れしのみにして店先の
硝子
(
がらす
)
に書きたる「模造品店、藻西太郎」の金文字も古びて
稍
(
や
)
や黒くなれり目科は余を
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
非常
(
ひじやう
)
に
甘味
(
うま
)
い
菓子
(
くわし
)
に
舌皷
(
したつゞみ
)
打
(
う
)
ちつゝ、
稍
(
や
)
や十五
分
(
ふん
)
も
※
(
すぎ
)
たと
思
(
おも
)
ふ
頃
(
ころ
)
、
時計
(
とけい
)
は
午後
(
ごご
)
の
六時
(
ろくじ
)
を
報
(
ほう
)
じて、
日永
(
ひなが
)
の五
月
(
ぐわつ
)
の
空
(
そら
)
も、
夕陽
(
ゆふひ
)
西山
(
せいざん
)
に
舂
(
うすつ
)
くやうになつた。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
しかし十三郎は才子である代りに、
稍
(
や
)
や放縦で、或る新聞縦覧所の女に思われた為めに騒動が起って新聞の続物に出た。
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
次第々々に減量して、
稍
(
や
)
や穏になるまでには三年も掛りました、と云うのは私が三十七歳のとき
酷
(
ひど
)
い熱病に
罹
(
かかっ
)
て、万死一生の幸を得たそのとき、友医の説に
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
▼ もっと見る
西比利亜では犬を「エンヌ」といふさうで
語音
(
ごいん
)
が
稍
(
や
)
や似通つておる。或は日本犬と同種族であるまいかといふ説があるさうだが、如何さま
宛
(
さ
)
もありさうな事だ
哩
(
わい
)
。
犬物語
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
(著)
然し
稍
(
や
)
や私が物を解しはじめた頃の先生は、——先生の態度は——私には不快でした。何故なら先生は私に対して、あまりに傲慢でそして不徹底でゐらしたからです。
S先生に
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
斯
(
こ
)
うなると、何だか
聞捨
(
ききずて
)
にもならぬような
意
(
き
)
もするので、安行も
稍
(
や
)
や真面目になった。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
家婦は
稍
(
や
)
や粗野な多情らしき女。——これから銭湯に行く。ああ、昨日大島健一中将に会った。一昨日は「ヒ」の家に泊った。此の日、秩父宮の結婚式、提燈行列で赤坂付近は
賑
(
にぎ
)
わった。
青べか日記:――吾が生活 し・さ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
稍
(
や
)
々大なる
石片
(
せきへん
)
を
採
(
と
)
り、打ち壞き小破片とし、
其中
(
そのなか
)
より目的に
適
(
かな
)
ひたるものを
撰
(
えら
)
み
出
(
だ
)
す迄は右に記せし所に
同樣
(
どうやう
)
なるべきも、夫より
後
(
のち
)
は或は
左手
(
さしゆ
)
に獸皮の小片を持ち
皮越
(
かはこ
)
しに
石片
(
せきへん
)
を
撮
(
つま
)
み
コロボックル風俗考
(旧字旧仮名)
/
坪井正五郎
(著)
月々、田舎から充分の仕送りがあるので、四畳半と六畳と八畳の、ひとり者としては、
稍
(
や
)
や大きすぎるくらいの家を借りて、毎晩さわいでいる。もっとも、騒ぐのは、男爵自身ではなかった。
花燭
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
茲
(
ここ
)
に猫は赤色を好むと言うて可かろう、
左
(
さ
)
りながら猫によりては少しも感ぜぬのがある、又年齢によりて相違がある、
而
(
しか
)
して其赤色に飛着くのは幼少な猫程早く
稍
(
や
)
や老いたるは
甚
(
はなは
)
だ遅かった
猫と色の嗜好
(新字新仮名)
/
石田孫太郎
(著)
本篇一四頁上段に
曰
(
いは
)
く「先に友の勧めしときは大臣の信用は屋上の
禽
(
とり
)
の如くなりしが今は
稍
(
や
)
やこれを得たるかと思はるゝ云々」と。ソモ屋上の禽とは
如何
(
いか
)
なる意味を有するや、予は之を解するに苦む。
舞姫
(新字旧仮名)
/
石橋忍月
(著)
稍
(
や
)
もすれば
病的
(
びやうてき
)
なことのみを
考
(
かんが
)
へたり
言
(
い
)
ツたりするのであらう。
虚弱
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
私は戀にもつかれ、詩作にも
稍
(
や
)
や飽きがきたからで。
歓楽
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
稍
(
や
)
やおくれたりといへども喜雨
到
(
いた
)
る
六百句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
イザルガ岳から
光
(
てかり
)
岳に至る間の尾根は、幅は
稍
(
や
)
や広いが木立が少し多いし、百間平や茶臼岳北方の俗称お花畑などは如何にも狭い。
高原
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
二階
(
にかい
)
に
稍
(
や
)
や
體裁
(
ていさい
)
よき
三個
(
みつつ
)
の
室
(
へや
)
、
其
(
その
)
一室
(
ひとま
)
の
窓
(
まど
)
に、
白
(
しろ
)
い
窓掛
(
まどかけ
)
が
風
(
かぜ
)
に
搖
(
ゆる
)
いで
居
(
を
)
る
所
(
ところ
)
は、
確
(
たしか
)
に
大佐
(
たいさ
)
の
居間
(
ゐま
)
と
思
(
おも
)
はるゝ。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
子供の時に Hydrocephalus ででもあったかというような頭の娘で、髪が
稍
(
や
)
や薄く、色が
蒼
(
あお
)
くて、
下瞼
(
したまぶた
)
が紫色を帯びている。性質は
極
(
ごく
)
勝気
(
かちき
)
である。
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
と云う
是
(
これ
)
にて見れば満更細君の意見にのみ心酔したる様にも有らねば余は
稍
(
や
)
や安心し
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
「𤢖を研究したい。」と、安行は
稍
(
や
)
や真面目になって、我子の顔を
凝
(
じっ
)
と
視
(
み
)
た。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
是れより以上醜行の
稍
(
や
)
や念入にして陰気なるは、召使又は
側室
(
そばめ
)
など称し、自家の内に妾を飼うて厚かましくも妻と雑居せしむるか、又は別宅を設けて之を養い一夫数妾得々自から居る者あり。
女大学評論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
下草は
蕗
(
ふき
)
が一面に生えていました。
稍
(
や
)
や遠く開けた両岸の山は、頂上近く迄真黒な針葉樹に鎧われて、物凄い程に静まり返っていました。
日本アルプスの五仙境
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
斯
(
かゝ
)
る
物語
(
ものがたり
)
に
不知不測
(
しらずしらず
)
夜
(
よ
)
を
更
(
ふか
)
し、
頓
(
やが
)
て
私
(
わたくし
)
の
遭難
(
さうなん
)
實談
(
じつだん
)
も
終
(
をは
)
ると、
櫻木大佐
(
さくらぎたいさ
)
は、
此時
(
このとき
)
稍
(
や
)
や
面
(
おもて
)
を
改
(
あらた
)
めて
私
(
わたくし
)
に
向
(
むか
)
つた。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
München の珈琲店を思い出す。日本人の群がいつも行っている処である。そこの常客に、
稍
(
や
)
や無頼漢肌の土地の好男子の連れて来る、
凄味
(
すごみ
)
掛かった別品がいる。
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
稍
(
や
)
や笹の深い所を通過して和田峠に続く尾根まで登ると、意外にも小土手を中央にして二条の防火線が造られてあるのを見た。
美ヶ原
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
こちらは西の
詰
(
つめ
)
が小さい
間
(
ま
)
になっている。その次が
稍
(
や
)
や広い。この二間が表側の床の間のある座敷の裏になっている。表側の次の間と玄関との裏が、半ば土間になっている台所である。
鶏
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
白馬山脈の最高峰は、中央より
稍
(
や
)
や南に偏している黒岳であって、水晶や紫水晶などを産する所から水晶山の名もある。
白馬岳
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
純一は何の
掴
(
つか
)
まえ処もない話だと思って
稍
(
や
)
や失望したが、帰ってから考えて見れば、大石の言ったより外に、別に何物かがあろうと思ったのが間違で、そんな物はありようがないのだと悟った。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
稍
(
や
)
や面白いと思われる三、五の例を拾い出したものであるが、国語による解釈は、故意に成る
可
(
べ
)
く避けるように努めた。
二、三の山名について
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
これを見た時は、八の目が
稍
(
や
)
や輝いた。
金貨
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
然
(
しか
)
るに途中で意外に時間を要した為に、此行も雁坂以東を放棄して栃本に下るの止むなきに至ったが、両門岩の上から、
稍
(
や
)
や開けた平坦らしい河原に
思い出す儘に
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
純一は
稍
(
や
)
やわざとらしい
笑
(
わらい
)
をした。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
其上は河原が
稍
(
や
)
や開けて、行手に初めて甲武信岳の頂上が仰がれた。三、四町も行くと落葉松の多い平坦地に出る。
釜沢行
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
この機会にせめてそれだけでも
稍
(
や
)
や詳細に所信を述べて見たいと考えて、紙面の大部分をこれに費してしまった、文が冗長に流れたのはその為である。
山の今昔
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
此附近は木立も
稍
(
や
)
や繁っているし、天幕を張る位の平地は至る所に見られるから、野営地として恰好の場所である。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
然
(
しか
)
し
其等
(
それら
)
の説も後立山という一箇の山体が存在しているということを主として取扱ったものではなく、此立脚点から見れば
稍
(
や
)
や根本を離れたものであった。
後立山は鹿島槍ヶ岳に非ざる乎
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
一体に黒木の茂った唐松尾の連脈中で、頂上の露出した
稍
(
や
)
や高山的な地貌を有している山は此山の外にはない。
奥秩父の山旅日記
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
しかし間もなく晴となったが
稍
(
や
)
や蒸し暑い。昨日は終日快晴で、空は紺碧に澄み
亘
(
わた
)
り、山色鮮明であった。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
上部に於ては底は
稍
(
や
)
や平であるが、左右の岩壁は、鹿島槍側に竪立し、五竜側に二段に
剜
(
えぐ
)
れ込んでいる。
八ヶ峰の断裂
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
琵琶池のあたりは
稍
(
や
)
や広いが起伏があり過ぎる。
角間
(
かくま
)
川に沿うた熊の湯の上下には、多少の平地や緩斜地も見られるが、私には如何しても高原の感じが起らない。
那須、尾瀬、赤城、志賀高原
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
右に廻って一段高い
稍
(
や
)
や平な窪地に登った、道がある、枝の裂けた岳樺や膚のすりむけた深山榛の叢立ちは、残雪に押し窘められてまだ生命の閃きを見せない、八
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
其
(
その
)
真下よりは
稍
(
や
)
や上手に当って、四、五丈の瀑が全容を
露
(
あらわ
)
しながら、白く懸っているのが
瞰
(
のぞ
)
まれた。
黒部川を遡る
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
若
(
も
)
し
偃松
(
はいまつ
)
の途切れた間や、
短矮
(
たんわい
)
な
唐檜
(
とうひ
)
白檜
(
しらべ
)
のまばらに散生している窪地や斜面に、
稍
(
や
)
や広い草原が展開して、
兎菊
(
うさぎぎく
)
、
信濃金梅
(
しなのきんばい
)
、
丸葉岳蕗
(
まるばだけぶき
)
、車百合などが黄に紅に乱れ咲き
鹿の印象
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
乗鞍岳の右前にはここより少し高い
鉢伏
(
はちぶせ
)
山が尨大な山容を横たえて、
稍
(
や
)
や展望を遮ぎる。
美ヶ原
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
稍
(
や
)
や西に向って頂上を下り、二、三度小凸起を上下して、最後に下り切った所が此連嶺の最低鞍部である。附近は栂の大木が昼も暗い程に生い茂って、蹈む足の下には苔が柔い。
秩父の奥山
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
妙に息苦しいような圧迫をさえ感ずる。其湖畔の道は
稍
(
や
)
や富士山麓の本栖湖の南岸を辿る小径と似通っている所があるけれども、あれよりも
遥
(
はるか
)
に深刻である。大尻沼はわるくない。
尾瀬雑談
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
天狗平までどの道も五時間前後の行程であるが、燕温泉から北地獄に沿うものが
稍
(
や
)
や近い。天狗平から頂上迄は一時間半乃至二時間を要する。停車場から各温泉場まではバスがある。
那須、尾瀬、赤城、志賀高原
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
然
(
しか
)
し朝日岳の西北に在る
熊見曾根
(
くまみそね
)
の尖峰からは路はずっと楽になる。熊見曾根を北に下った
稍
(
や
)
や広い鞍部は、
大倉場
(
おおくらっぱ
)
又の名は清水平で、
偃松
(
はいまつ
)
に囲まれた湿地に水を湛えている、田代池という。
那須、尾瀬、赤城、志賀高原
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
国境の尾根は此処から東北に迂廻して、更に西北を指すようになるので、其方へ向って少し下ると笹が
稍
(
や
)
や深い。夫を押し分けて十二、三歩も進むと、俄然として
擂鉢
(
すりばち
)
状の小窪地に行き当った。
秋の鬼怒沼
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
稍
漢検1級
部首:⽲
12画
“稍”を含む語句
稍々
稍〻
稍深
稍霎時
稍難航
稍覚暖
稍羞
稍緒
稍疲
稍然
稍明
稍後
稍傲
稍仰向
稍事
稍久
稍与二月気候相似
稍〻物