目覚めざ)” の例文
旧字:目覺
早朝、私の父の到着の知らせが私たちを目覚めざませた。私の母は私の父からはぐれていた。そうしていまだにその行方が分らなかった。
麦藁帽子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
それに目覚めざめたものは皆知識の実を喰べてしまったのである。それならどうしたら意識的な吾々が、正しい工藝を産む事が出来るか。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
が、このとしてはそうした方便ほうべん必要ひつよう毛頭もうとうなく、もともと純潔じゅんけつ小供こども修行しゅぎょうには、最初さいしょから幽界ゆうかい現実げんじつ目覚めざめさせるにかぎるのじゃ。
少なくとも真に人生に目覚めざめ、「いかに生くべきか」の道を考えるならば、何人もまず一度はどうしてもこの『心経』を手にする必要があります。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
んな影響が出て来るか、来て見なければ無論解りませんけれども、何しろ吾々がこれはと驚ろくやうな目覚めざましい結果は予期しにくいやうに思ひます。
点頭録 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ああ目覚めざましいと思う目に、ちらりと見たのみ、呉織くれはとり文織あやはとりは、あたかも一枚の白紙しらかみに、朦朧もうろうえがいた二個ふたつのその姿を残して余白を真黄色に塗ったよう。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
酔人目覚めざめて四顧しこ焦土となれるを見その身既に地獄にあるものと誤りなす一条の如きは、即ち仏教的悲哀と滑稽との特徴をしてはなはだ顕著ならしめたるものなり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
帝都の暗黒界からは鬼神きしんのように恐れられている警視庁の大江山捜査課長は、その朝ひさかたぶりのこころよ目覚めざめをむかえた。それは昨夜ゆうべの静かな雨のせいだった。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そして、「ラテンの不道徳」にたいする「貞節なるドイツ」の遺伝的偏見が、彼のうちに目覚めざめていた。
末の娘を負ぶった大きい妹が、二階の三畳に寝ている銀子の傍に坐って、姉の目覚めざめをじっと待っていたことも、彼女の頭脳あたまに日頃深く焼きついているのだった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
しかし、こうしたはなしがると、自由じゆうした本能ほんのうが、みんなのこころなか目覚めざめたのでした。
がん (新字新仮名) / 小川未明(著)
ひとたびその天職に目覚めざめると、チャイコフスキーの精進しょうじんは世にも目ざましいものであった。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
今日けふは日曜なので阿母おつかさんが貢さんをおこさずにそつと寝かして置いた。で、貢さんの目覚めざめたのは朝の九時頃であつた。十歳に成る貢さんはひとり衣服きものを着替へて台所へ出て来た。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
妙信 (不安に目覚めざめたるがごとく立ち上り)どうしたのだ、どこへ行こうというのだ。
道成寺(一幕劇) (新字新仮名) / 郡虎彦(著)
けれど、もっと大胆に、いいところをいってもいい、人間らしいところをはなしても、あの方の苦節にきずはつきはしない。お人形さんに、あの晩年の、目覚めざめてきた働きは出来ない。
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
それよりは心を静め思いを転じて、いきながら死せる気になり、万感まんかんを排除する事につとめしかば宿屋よりも獄中の夢安く、翌朝目覚めざめしは他の監房にて既に食事のみし頃なりき。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
が味方の手綱には大殿(義貞よしさだ)が仰せられたまま金鏈かなぐさりが縫い込まれてあッたので手綱を敵に切り離される掛念けねんはなかッた。その時の二の大将(義興)の打扮いでたち目覚めざましい物でおじゃッたぞ
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
これが真の人間性に目覚めざめた人間というものです。それらの人間から、天分に由って、専門の文学者、画家、音楽家となる女子も出るでしょう。また専門の科学者となる女子も出るでしょう。
文化学院の設立について (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
沼南は当時の政界の新人の領袖りょうしゅうとして名声藉甚せきじんし、キリスト教界の名士としてもまた儕輩せいはいされていたゆえ、主としてキリスト教側から起された目覚めざめた女の運動には沼南夫人も加わって
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「まあお気の毒さまねエ、明朝あすのお目覚めざにやりましょう。」
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
はちかつぎ、そらお目覚めざめだ。お手水ちょうずげないか。」
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
生死を達観して、人生永遠の生命に目覚めざめることが、なんといってもいちばん大切です。はらができたというのは、所詮この境地を指していったものです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
目覚めざめた日本はこの都を中心として前に進み進みました。国力は強まり、学問は励まれ、交通は開かれました。この勢いは世界の中に日本の存在を知らせました。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
ほど経て白糸は目覚めざましぬ。この空小屋あきごやのうちに仮寝うたたねせし渠のふところには、欣弥が半年の学資をおさめたるなり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
儂達の戦隊の活躍は、自分でいうのは少しおかしいが、実に目覚めざましいものだったよ。
恐しき通夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
いざとなれば目覚めざましいはたらきをしてくれますので、そのてんたいそう結構けっこうでございますが、ただあいとか、慈悲じひとかったような、さしい女性式じょせいしき天狗てんぐは、あまりこのくににはあらわれず
自分はくうに乗った俥の上で、彼のよく人を驚かせるのに驚いた。そう云えば彼が突然上京してお兼さんを奪うようにれて行ったのも自分を驚かした目覚めざましい手柄てがらの一つに相違なかった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
やまや、たにや、木立こだちまでがこのおといて、きゅう目覚めざめたものか、いままでにかんじないほど、よろこびと、かなしみのいろくしたのでした。また、くもまでが、したるように、あたまをたれるのでした。
しいたげられた天才 (新字新仮名) / 小川未明(著)
思想界にも文学界にもいろいろのイデオロギイやイズムの目覚めざましい興隆と絶えざる変遷があったが、その波にただよいながら独身時代の庸三の青壮年期も、別にぱっとしたこともなくて終りを告げ
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
目覚めざめてみれば既にその破片しか残ってはおらず
鳥料理 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
此処ここに世界のあらゆる目覚めざめた人人ひとびと
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
しかもこの真理に目覚めざめる時、私どもは、そこにはじめて国家、社会、人類の「恩」を感じ、「人生の尊さ」をハッキリ知ることができるのです。自分独りの自分ではない。私独りの私ではない。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
いつか自然は人間のうちから正しいものを目覚めざますにちがいない。日本がいつか正当な人倫じんりんに立つ日本となる事を信じたい。これはいずれの処を問わず、凡ての国家が懐抱する理想でなければならぬ。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
それからきつづいて敦子あつこさまは、こちらの世界せかい目覚めざめてからの一伍一什いちぶしじゅうわたくし物語ものがたってくれましたが、それは私達わたくしたちのような、月並つきなみ婦女おんなとうったみちとはたいへんにおもむきちがいまして、随分ずいぶん苦労くろうおお
あるのこと、おんなは、不思議ふしぎゆめから、おどろいて目覚めざめました。
星の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「お目覚めざめですの。お痛みですか」
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
夜更よふけては独り目覚めざめて
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
いつか自然は人間のうちから正しいものを目覚めざますにちがいない。日本がいつか正当な人倫じんりんに立つ日本となる事を信じたい。これはいずれの処を問わず、凡ての国家が懐抱する理想でなければならぬ。
朝鮮の友に贈る書 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
今ぞ目覚めざめて動くなる。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)