盗賊どろぼう)” の例文
旧字:盜賊
小文さんもうまいことを言つたが、それを盗まなかつた盗賊どろぼうの方は、もつと目が高かつた。——それにまた盗賊どろぼうは腹が空いてゐたのだ。
『二ヶ月ぜんの様にますを取っておきますが、留守中盗賊どろぼうに見舞われてはかなわないね』と笑いながらドーブレクが云っていた、という。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
百両なんてえ金を持ってる気遣きづけえはねえ、彼様な奴が盗賊どろぼうだかんだか知れやアしない、此様こんな大きな石を入れて置きやアがって
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
どういうことか知らないけれど、一粒種の可愛いお前に、盗賊どろぼうの婿をったのは、わかい時の、罪のむくいだというんじゃないか。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まくればなお盗賊どろぼうに追い銭の愚を尽し、勝てば飯盛めしもりに祝い酒のあぶくぜにを費す、此癖このくせ止めて止まらぬ春駒はるごま足掻あがき早く、坂道を飛びおりるよりすみやか
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
盗賊どろぼうと言いたいところですが、青年に盗みごころがなければ狂人か白痴でしょう。これではどう見ても面会に来たお客さんとは言われません。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
もし巡査にでも見られた日には盗賊どろぼうの名を負わされたかも知れない。彼は最後の冒険を試みた——しかり冒険である。
愛か (新字新仮名) / 李光洙(著)
盗賊どろぼうが入ったといって、お歌さんがわめいた。乃公おれもお春さんも続いて下へ降りた。お島は隣の家へ馳付けた。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「はい、そうです」こたえながら先方さき此方こちらを向いて来て、二人が近寄ってみると、先刻さっき帰した書生なので、「君は、一躰いったい如何どうしたのだ、僕は盗賊どろぼうだと思ったよ」
怪物屋敷 (新字新仮名) / 柳川春葉(著)
盗賊どろぼう!』最初勝平は、そう叫ぼうかとさえ思ったが、彼の四十男に相当した冷静が彼の口を制したが、その次ぎに、ムラ/\と彼の心を閉したものは、漠然たる嫉妬しっとだった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
盗賊どろぼうは私を箱へ入れて、支那しなれて行かうと思ひましてねえ。乗せられたのですよ船へ、船に酔ふと苦しいものですよ。目が赤くなつて、足がひよろひよろになつてしまふのです。」
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
『——ただおどかされたのか?』と蕎麦売りはすげなく問うた『盗賊どろぼうにか?』
(新字新仮名) / 小泉八雲(著)
スワヤ盗賊どろぼうと怖気立ちたれど、血気の若ものやにはに手頃の棒を携へ来り天晴れ高名するつもりも、相手の庄太郎なるに心得られて、容易くは進みかねたれど、我が主人の危急には代へ難しと
心の鬼 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
「眼がきょろきょろしていますから、まだ盗賊どろぼうがやまないでしょう。」
嬰寧 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
何か物音がたと思うと眼が覚めた。さては盗賊どろぼうと半ば身体からだを起してきょろきょろと四辺あたりを見廻したが、しんとしてその様子もない。夢であったかうつつであったか、頭が錯乱しているので判然はっきりしない。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
探偵又は盗賊どろぼうなど総て忍びの職業をする者が用うる様な忍び提灯を高く差し附け門札の文字を読んで居る、爾して余の近づく足音に、其の者は直ちに提灯を消し、コソコソとやみの中へ隠れて了った
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
また今見た姿を隣人となりのひととは思ったが寝ぼけ眼の事だから、もしや盗賊どろぼうではないかと私はすぐ寝台ねだいから飛下とびおりて行ってドアじょうしらべると、ちゃんとかかっている、窓の方や色々いろいろと人の入った形跡を見たが
闥の響 (新字新仮名) / 北村四海(著)
「ええ、昨晩ゆうべ盗賊どろぼうにとられたもののことをつてるのでせう」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
しまいには盗賊どろぼうだって関わないとまで思った。
予が半生の懺悔 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
盗賊どろぼうだ、盗賊のかかり合いだ」
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と責めつけられても百姓は生命いのちより金の方が欲しいと見えて、「盗賊どろぼう々々」と云う声がこだまに響きますが、たれあっても助ける者はありません。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「いいえ、盗賊どろぼうすることも、する人もいけませんけれど、だって、あの方なんですもの。そしてもう、もう私、おかみさんになりました。」
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ワルゼエはよく淫売狩をもつた男で、何でもその当時巴里で名うての白首しろくびを情婦にして、内職には盗賊どろぼうを稼いでゐた。
政府へ納められて盗賊どろぼう役人だかも知れない役人の月給などになるのではなく、すぐに骨董屋さんへ廻って世間に流通するのであるから、手取早てっとりばやく世間の融通を助けて
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
此度こんど丁度ちょうど私の家と隣屋敷との境の生垣のあたりなので、少し横に廻って、こっそりと様子をうかがうと、如何どうも人間らしい姿が見えるのだ、こいつは、てっきり盗賊どろぼうと思ったので
怪物屋敷 (新字新仮名) / 柳川春葉(著)
盗賊どろぼうではない——盗賊どろぼうではない』とおじけた男は喘ぎながら云った『私は見たのだ……女を見たのだ——濠のふちで——その女が私に見せたのだ……ああ! 何を見せたって、そりゃ云えない』
(新字新仮名) / 小泉八雲(著)
「この人の眼は、ぎょろぎょろしてて、盗賊どろぼうみたいね。」
嬰寧 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
「では盗賊どろぼうでござんすか」
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それに金側きんがわの時計がございません、何うも腹ア切ったあとで、まさかあんな姿をしている処を盗賊どろぼうも掛りますまいとは思いますが
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
直接じかに攫徒に渡してやるもいかがなもんだよ。何よりもだね、そんな盗賊どろぼうとひそひそ話をして……公然とは出来んさ、いずれ密々話ひそひそばなしさ。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
長範は自分が盗賊どろぼうに来た事も忘れて理由わけを訊くと、坊さんは例の弥勒出世の大師の誓願を説いて聞かせた。
悪口をいえば骨董は死人の手垢てあかの附いた物ということで、余り心持の好いわけの物でもなく、大博物館だって盗賊どろぼうの手柄くらべを見るようなものだが、そんな阿房あほげた論をして見たところで
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
盗賊どろぼう!」
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
八「此の野郎呆れた野郎だ、己が身体利かねえようにして、己が荷物から脇差から大事でいじな書付まで盗みやがった、盗賊どろぼう々々、此の野郎々々」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
秋谷村には甘え柿と、苦虫あるを知んねえか、とわざと臆病に見せかけて、宵にげたは真田幸村さなだゆきむら、やがてもり返して盗賊どろぼうの巣を乗取のっと了簡りょうけん
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
先日こなひだの晩、小文さんがいつものやうにぶらつきに出掛けると、都合よくその盗賊どろぼうがなかに忍び込んだ。都合よくといつたのに何の不思議があらう、小文さんは談話はなしが好きだ。
角「なに五十両貸してくれと、己は数坂越かずさかごえを幾度もするが、われエような盗賊どろぼうがいるから旅人が難渋するのだ、さア名主へ連れてくから来い」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
いや、愛想の尽きた蛆虫うじむしめ、往生際の悪い丁稚でっちだ。そんな、しみったれた奴は盗賊どろぼうだって風上にも置きやしない、酒井の前は恐れ多いよ、帰れ!
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この筆法をもってすれば、情婦いろから来た文殻ふみがら紛込まぎれこんだというので、紙屑買を追懸おっかけて、慌てて盗賊どろぼうと怒鳴り兼ねまい。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
相「いえー孝助手前てめえのお蔭で屋敷を追出されて盗賊どろぼうをするように成った、今此処こゝで鉄砲で打ち殺すんだからそう思え」
「おじいさん、お前には御両親、おとっさんもおっかさんもないのだってね、おじいさんは何なの、その人が盗賊どろぼうだってことを知らないのかい。」
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それから君はおかみさんが邪魔になるものだから殺して置いて、盗賊どろぼう斬殺きりころしたというのだろう、そうでしょう/\
「ふむ、それでお前さん、盗賊どろぼうをすりゃ世話は無いじゃあないか。」と言って、心ありげに淋しいえみを含んだのである。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
相「なんだ、人違いだなぞと嘘をついて、嘘をつく者は盗賊どろぼうの始りナニうに盗賊にもう成っているのだから仕方がない、ぐに縄を掛けてお引きなさい」
ぐッすり寐込ねこんででもいようもんなら、盗賊どろぼう遁込にげこんだようじゃから、なぞというて、叩き起して周章あわてさせる。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おいねえさん、泣いたっていけねえ、おい、おめえ本当に今日ってかつぎ上げたのはひどい、盗賊どろぼう勾引かどわかしと思うだろうが、うでない、実は旦那が又惚れたんだ
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「いえ、頂こうというんじゃねえんで、そんな時だ、わっしあ、お嬢さんにどうにかすらあ。盗賊どろぼうでも、人殺でも、放火つけびでも何でもすらあ。ええ、お嬢さん、」
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
由「マヽ静かにして下さいまし、私共を同類だの盗賊どろぼうだのと仰しゃっちゃア困りますが、何う云う訳でげす」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その代り素ばらしいのを一名、こりゃ、華族で盗賊どろぼうだと申しますから、味方には誂向あつらえむき、いざとなりゃ、船の一そうぐらい土蔵を開けて出来るんでござります。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
清左衞門は実に呆然ぼんやりして、娘は盗賊どろぼうの汚名を受けこれを恥かしいと心得て入水じゅすい致した上は最早世にたのしみはないと遺書かきおきしたゝめ、家主いえぬしへ重ね/″\の礼状でございます
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)