たゝみ)” の例文
旧字:
とこにも座敷ざしきにもかざりといつてはいが、柱立はしらだち見事みごとな、たゝみかたい、おほいなる、自在鍵じざいかぎこひうろこ黄金造こがねづくりであるかとおもはるるつやつた
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
え立てのたゝみうへに、丸い紫檀の刳抜盆くりぬきぼんが一つてゐて、なかに置いた湯呑には、京都の浅井黙語の模様ぐわけてあつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
蘿月らげつ紙入かみいれの中にはさんだ老眼鏡らうがんきやう懐中ふところから取り出して、づ洋装の教科書をば物珍ものめづらしく一冊々々ひろげて見てゐたが、するうちにばたりとたゝみの上に落ちたものがあるので
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
たく酒井伝吉さかゐでんきちといふ車ををとこがある、此男このをとこは力が九人力にんりきある、なぜ九人力にんりきあるかといふと、大根河岸だいこんがし親類しんるゐ三周さんしうへ火事の手伝てつだひにやつたところが、一人でたゝみを一度に九枚持出もちだしたから
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
夜中俄にたゝみをとりのけ桶鉢をけはちのるゐあるかぎりをならべてもりをうくる。
ひもせずひねるたゝみちりよりぞやまともつもるおもひの数々かず/\ひたしたしなどあらはにひし昨日きのふこゝろあさかりけるこゝろわれとがむればおとなりともはず良様りやうさまともはずはねばこそくるしけれなみだしなくばとひけんからごろもむねのあたりのゆべくおぼえてよる
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
つく/″\とれば無残むざんや、かたちのないこゑ言交いひかはしたごとく、かしらたゝみうへはなれ、すそうつばりにもまらずにうへからさかさまつるしてる……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「勇気がるのかい」と手につてゐた烟管きせるたゝみうへほうした。代助は膝頭ひざがしらを見詰めてだまつてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
春秋はるあき時候の変り目に降りつゞく大雨たいう度毎たびごとに、しば麻布あざぶの高台から滝のやうに落ちて来る濁水は忽ち両岸りやうがんに氾濫して、あばらの腐つた土台からやがては破れたたゝみまでをひたしてしまふ。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
夜中俄にたゝみをとりのけ桶鉢をけはちのるゐあるかぎりをならべてもりをうくる。
もみくちやにしたので、吃驚びつくりして、ぴつたりをついてたゝみうへで、手袋てぶくろをのした。よこしはつたから、引張ひつぱつて
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
枕元まくらもとを見ると、八重の椿つばき一輪いちりんたゝみの上に落ちてゐる。代助だいすけ昨夕ゆふべとこなかで慥かに此花の落ちるおとを聞いた。彼の耳には、それが護謨毬ごむまりを天井裏から投げ付けた程に響いた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
乱雑に置き直された家具の影が、よごれたたゝみ腰張こしばりのはがれた壁の上に動く。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
あはかゞみしてるやうな……おほきさはれば、たゝみ三畳さんでふばかりとゆる、……おとく、飛騨国ひだのくに吉城郡よしきごふり神宝かんたから山奥やまおくにありとふ、双六谷すごろくだにへる双六巌すごろくいはこれならむ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
似合にあふでせう」と云つた。野々宮さんは何とも云はなかつた。くるりとうしろを向いた。後ろにはたゝみ一枚程の大きな画がある。其画は肖像画である。さうして一面に黒い。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いや、なにわからん、ものはえん。が、五階ごかいのぼつて、かたたゝみうへつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)