かしこま)” の例文
そのうまがさ、わしべつうまめづらしうもないが、白痴殿ばかどの背後うしろかしこまつて手持不沙汰てもちぶさたぢやからいまいてかうとするとき椽側えんがはへひらりと
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
お百姓さんはきちんとかしこまって坐っていたのでしびれをきらしたらしく、一寸足を崩して私を見て笑った。とても邪気のない笑いだった。
遁走 (新字新仮名) / 小山清(著)
日吉は、板縁にかしこまって、声をかけた。——返辞はなかったが、主人の捨次郎も、御寮人も、そこに起きて坐っている気配がする。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なべから鍋へとったり来たりして、味をみ、意見を述べ、確信ある調子で料理の法を説明していた。普通なみの料理女はそれをかしこまって聞いていた。
それほど声はきびしくおさえつけるものがあった。われ知らず頭がさがって、心より先に身体が平たくかしこまったように見えた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
ハイ御免ごめんなさい。主人「へいこれはいらつしやい。客「両掛りやうがけ其方そつちへおあづかり下さい。主人「へい/\かしこまりました。客「おいてりますかな。 ...
(和)茗荷 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
火はこうして とねんごろに教えながら昼飯の支度をして、やがて飯ができたのでちょこなんとかしこまって給仕をしてくれる。
島守 (新字新仮名) / 中勘助(著)
何しろ折からの水がぬるんで、桜の花も流れようと云う加茂川へ、大太刀をいてかしこまった侍と、あの十文字の護符を捧げている異形いぎょうな沙門とが影を落して
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
かしこまりました、奥さま!」とフェチニヤは、羽根蒲団の上に敷布をかけ終ると、枕をそこにおきながら、言った。
書面しよめんにし訴へいで町奉行所にては是ぞ大坂にうはさの有者しか理不盡りふじんの振舞なりとて早速役人を出張せしめ速かに召連めしつれまゐるべし仰せかしこまり候とて手附てつきの與力兩人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
後へ続いて板の間にかしこまりながらも、理由わけを知らない丁稚は、芝居をしているようで今にも吹き出しそうだった。
それとは別に、首領らしい男が一人離れて立っていたが、色白く小柄こがらな男であるがこの男の前に皆かしこまっていた。ほかに、手下らしい下人が二、三十人ばかりいた。
女強盗 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
そこで交換局ではかしこまって早速接続すると女皇陛下は御満足で、ものの小半時間もゆるゆる後対話があった。
話の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
叩きおりしがお登和嬢振返ふりかえりて思わず言葉をかけ「大原さん、それでは叩きつぶすのです、叩くだけにして下さい」大原「ハイハイかしこまりました」とお登和嬢に口を
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「ハイ、かしこまりました。どうぞ此方へいらしって下さい」男は先に立って、とある部屋の前まで来ると
P丘の殺人事件 (新字新仮名) / 松本泰(著)
「ええ。かしこまりました。だが、この寒空さむぞらにこの土地で梨の実を手に入れる事は出来ません。しかし、わたくしは今梨の実の沢山になっているところを知っています。それは」
梨の実 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
「はあ」とかしこまって玄竜はばつ悪そうにもじもじするのだ。「それはもうよく分っているんです」
天馬 (新字新仮名) / 金史良(著)
濡縁に足跡をつけながら座敷にあがってくると、青年は縁端えんはなに近いところにかしこまってすわった。
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
矮小な正木博士が、大きな椅子の中一パイにハダカッているのに対して、巨大おおきな若林博士が、小さな椅子の中に恭しくかしこまっている光景は、いよいよ絶好の漫画材料で御座います。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しまはみんながりをやっている十二畳と自分の部屋との間の敷居近く膝を乗り出して、かしこまってはいるが、うつゝを抜かした人のように口を開けて若旦那たちの所作を眺めていました。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
がらがらがらと挽き込だる、人力車くるまは旦那か、南無三と、恠我の振りしてかしこまる。吉蔵よりもお園が当惑。ちやうどよいとこ、悪いとこ、奥様ならば、よいものを、旦那様とは、情けなや。
したゆく水 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
そういう時は、徳蔵おじは、いつもかしこまって奥様の仰事おおせごとうけたまわっているようでした。
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
誰にう伝言せよと命ずるからヘイ/\とかしこまりながら、心の中では舌を出して
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「然れども立ちたる矢をも抜き給はず、流るる血をも拭ひ給はず、敷皮の上に立ちながら大盃おにさかづきを三度傾けさせ給へば、木寺相模きでらさがみ、四尺三寸の太刀のきっさきに敵の首をさし貫いて宮の御前にかしこまり……」
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
もう二人、背広姿の若い男がいて、これは婦人の前にかしこまっていた。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と卓造君は袴を穿いてかしこまっていた。
村の成功者 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「はい、かしこまりました。」
蚊帳の釣手 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
「へい、かしこまりました。」
夢の国 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
岸本は彼の前にかしこまった。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
かしこまりました、船長」
流血船西へ行く (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「はい、かしこまりました」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
五ツ紋の青年わかものは、先刻さっき門内から左に見えた、縁側づきの六畳にかしこまって、くだんの葭戸を見返るなどの不作法はせず、うやうやしく手をいて
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
へいかしこまりました、書生しよせいさんのお世辞せじだよ、エヽ此手このてでは如何いかゞでげせう。ギイツと機械をねぢるとなかから世辞せじが出た。
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「今夜はまた、旦那さまの客呼びで、おらたちまで、お末にかしこまって、長談義を聞かねばならぬ晩だぞ」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それを見た閻魔大王は、すぐに鬼どもの方を向いて、荒々しく何か言ひつけると、鬼どもは一度にかしこまつて、忽ち杜子春を引き立てながら、森羅殿の空へ舞ひ上りました。
杜子春 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
カワウソかしこまって、創造神のもとへ戻って来たものの、天の神の言ったことはケロリと忘れて
えぞおばけ列伝 (新字新仮名) / 作者不詳(著)
と、出羽守の肩に手をかけていた小姓風の若侍が、その手を引いて、背後にかしこまった。
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
僕は、お主婦かみが何かかしこまっていっているのを聞き流して、梯子段を降りたのです。
島原心中 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
但しソレについては母が病気だと申遣もうしつかわせと云う御直おじきの厳命がくだったから、もとよりいなむことは出来ず、ただかしこまりましたと答えて、母にもそのよしを話して、ソレカラ従兄が私に手紙を寄送よこして
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
源右衛門『ええ?……………是非もない。仰せかしこまりましてござります』
取返し物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
かしこまりました」と老人は急ぎ足になっていた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
「はい、かしこまりました」
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その馬がさ、私も別に馬は珍しゅうもないが、白痴殿ばかどの背後うしろかしこまって手持不沙汰てもちぶさたじゃから今引いて行こうとする時縁側へひらりと出て
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
亭「へいかしこまりました、貴方此方こちらへお這入りなさい、そうして旦那、あの御婦人は御番所の前は手形が入りますぜ」
それを見た閻魔大王は、すぐに鬼どもの方を向いて、荒々しく何か言いつけると、鬼どもは一度にかしこまって、たちまち杜子春を引き立てながら、森羅殿の空へ舞い上りました。
杜子春 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
病魔を組み敷くつもりで、無理にかしこまって坐ってみる。——痛い。気が絶え入るほど痛いのだ。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
守るなと委細ゐさいに申付られしかば次右衞門三五郎の兩人は主命しゆめいかしこまり奉つると早速まづふれを出し直樣桐棒駕籠に打乘うちのり白布にて鉢卷と腹卷をなし品川宿じゆくより道中駕籠一挺に人足廿三人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
成程昨今のドルラルは安くない、しかし三井にはズットその前安い時に買入れた弗もあるだろう、拙者せっしゃのこの一歩銀いちぶぎんはその安い弗と両替して貰いたいと云うと、三井の手代は平伏して、かしこまりました
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
葛岡は判るのか判らないのかかしこまって聴いています。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
炉ばたにかしこまっていた従僕がはね起きた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)