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煎
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い
ふりがな文庫
“
煎
(
い
)” の例文
煎
(
い
)
りつくようなのどの乾きと、傷が生命を奪って行く、それとの戦い、疼痛などで、病室は、檻のようなわめきで、相呼応していた。
武装せる市街
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
夜半
(
よなか
)
に
咽喉
(
のど
)
が
煎
(
い
)
りつくような気がして、小平太は眼を覚した。気がついてみると、自分はちゃんと蒲団の上に夜着を
被
(
か
)
けて寝ていた。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
そんなことを思うと、身を
煎
(
い
)
られるような悩ましさに胸の動悸が躍って、ほとんどいても
起
(
た
)
ってもいられないほど女のことが思われる。
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
それから、清水で
巾
(
きん
)
をしぼって、そっと、側へすすめたり、
煎
(
い
)
り
麦
(
むぎ
)
のさまし湯を上げたりしたが、長話のうち、一度も手にしなかった。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
イナゴといふ虫は、お米のできる稲をあらす悪い虫ですが、それは
煎
(
い
)
つて食べるとおいしいので、近くの町へ売れるのでした。
栗ひろひ週間
(新字旧仮名)
/
槙本楠郎
(著)
▼ もっと見る
麁末
(
そまつ
)
なもの、と重詰の
豆府滓
(
とうふがら
)
、……
卯
(
う
)
の花を
煎
(
い
)
ったのに、
繊
(
せん
)
の
生姜
(
しょうが
)
で小気転を利かせ、酢にした
鯷鰯
(
しこいわし
)
で気前を見せたのを一重。
木の子説法
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
顔も手も足も、
煎
(
い
)
りあげるように熱い南の
陽
(
ひ
)
が、照っていて、ゆるやかな、ひだをたたんだ波の上を、生あたたかい
微風
(
そよかぜ
)
がかよって行った。
秘境の日輪旗
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
三枝は、「一寸失敬」と云うかと思えば、小さい四辻に
担荷
(
かつぎに
)
を卸して、豆を
煎
(
い
)
っている爺さんの処へ行って、
弾豆
(
はじけまめ
)
を一袋買って
袂
(
たもと
)
に入れる。
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
朝夕は
蜩
(
ひぐらし
)
の声で涼しいが、昼間は
油蝉
(
あぶらぜみ
)
の音の
煎
(
い
)
りつく様に暑い。涼しい
草屋
(
くさや
)
でも、九十度に上る日がある。家の内では大抵誰も
裸体
(
はだか
)
である。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
近所で、ラジオが、やかましく
煎
(
い
)
りつくやうに鳴つてゐる。ゆき子は外套をぬぎ、宿の
褞袍
(
どてら
)
を肩に引つかけて、吹き降りの廊下の外を眺めた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
……風のない、ぎらぎらと
煎
(
い
)
りつくような日が続いた、あるときは雷鳴が山峡にはためき、電光と白雨とが高原の野を狂気のように叩きつけた。
春いくたび
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
子供達は、ガタガタ
慄
(
ふる
)
えながら、土間の隅っこにちぢこまって、
煎
(
い
)
りつくような眼で、母が盛っている残飯を
睨
(
にら
)
めていた。
あまり者
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
でも食卓の周囲なぞは楽しくした方で、よくその食堂の
隅
(
すみ
)
のところに珈琲を
研
(
ひ
)
く道具を持出して、自分で
煎
(
い
)
ったやつをガリガリと研いたものだ。
刺繍
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
かつまた熟し立てをほうろく
煎
(
い
)
りにしたり塩うでにしたりして食べてもうまい味がある、ああいうのが味えなくなったのが如何にも残念である。
百姓弥之助の話:01 第一冊 植民地の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その麦を
煎
(
い
)
り、豆を煮たものへ、塩と水とを加え、大きな『こが』という桶に作り込み、その下へ口をつけて醤油を取る。
鳴雪自叙伝
(新字新仮名)
/
内藤鳴雪
(著)
しばらくは、
何処
(
どこ
)
をどう歩いているか夢中であった。その間代助の頭には今見た光景ばかりが
煎
(
い
)
り付く様に
踴
(
おど
)
っていた。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
或ひは御殿にて大豆を
煎
(
い
)
り給い——とあるのを見ると七、八歳の若君であればともかく、三十歳の将軍の遊びごととしては無邪気を通り越している。
『七面鳥』と『忘れ褌』
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
小銃の音が豆を
煎
(
い
)
るように聞こえる。時々シュッシュッと耳のそばを
掠
(
かす
)
めていく。列の中であっと言ったものがある。
一兵卒
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
勝手もとを取り散らしてゐるおくみは、前垂れのはしで胡麻を
煎
(
い
)
つた
炮烙
(
ほうろく
)
を取り下して、考へ迷ふやうにかう言つた。
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
金「其んな堅い事を云わないでも
宜
(
よろ
)
しい、お茶を
煎
(
い
)
れて
羊羹
(
ようかん
)
でも切んなさい、なに無く成ったえ、何か切んなよ」
政談月の鏡
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
いつかのこと、そら豆の
煎
(
い
)
ったのを一握りずつ添えたことがあった。豆はいくらもなく、いねはざるの中を目分量で計り、大きい弟子の順に配って回った。
暦
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
逆に問いかけられて大野順平は
咽喉
(
のど
)
をふくらませた。言葉につまって、彼は
傍
(
かたわ
)
らを見た。その動作を追っかけ、阿賀妻の視線は安倍誠之助の面上に
煎
(
い
)
りついていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
しかし、
忽
(
たちま
)
ちにして世界は変った。豆
煎
(
い
)
り網のように大地は揺れ、地上のものはみな鳴り、小径から彼方の村へかけて裂いて投げつけるような女子供の叫び声が挙がる。
宝永噴火
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
茶を
煎
(
い
)
れて来た
梶
(
かじ
)
の妻は、
栖方
(
せいほう
)
の小父の松屋の話が出てからは
忽
(
たちま
)
ち二人は特別に親しくなった。
微笑
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
昔宮中で小官吏が
炬
(
かがり
)
に火を付けて大声に鼠
燻
(
いぶ
)
し鼠燻しと呼んで庭内を曳きずり廻した後、王様から穀物の
煎
(
い
)
ったのを入れた袋を賜わった事が民間に伝わったものであると。
十二支考:11 鼠に関する民俗と信念
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
あたしは
雨上
(
あまあが
)
りに三枚橋下へ小魚を
掬
(
すく
)
いにいったり、山内へ
椎
(
しい
)
の実を拾いにいって、夜になるとおばあさんの不思議な話をききながら
煎
(
い
)
ってもらって、椎の実の味を知った。
旧聞日本橋:12 チンコッきり
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
弥勒院
(
みろくいん
)
の野には忽ち人馬の馳せかう音、豆を
煎
(
い
)
る銃声、剣戟の響が天地をゆるがした。天野源右衛門三十騎計りで馳せ向うが、明軍は密集部隊であるから馬を入れる隙が無い。
碧蹄館の戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
荻生徂徠は
煎
(
い
)
り豆を噛んで古人を罵るのを快としてゐる。わたしは彼の煎り豆を噛んだのは倹約の為と信じてゐたものゝ、彼の古人を罵つたのは何の為か一向わからなかつた。
侏儒の言葉
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
私の盲腸は、はと麦と玄米と黒豆とを
煎
(
い
)
って
挽
(
ひ
)
いたものを煮てのむことで大分つれなくなりました。では又。寿江子のことを書くのを忘れた。この次、別に何でもないけれども。
獄中への手紙:05 一九三八年(昭和十三年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
二月二日 朝食=
煎
(
い
)
り卵と、コーンビーフ・ハッシュ。昼食=マカロニ・メキシカン、車海老のカレーライス。夕食=トマトクリームスープと、プラム・プディングが、よかった。
富士屋ホテル
(新字新仮名)
/
古川緑波
(著)
しかしてその無為にして化する
底
(
てい
)
の性質は、散弾の飛ぶもほとんどいずこの家に
煎
(
い
)
る豆ぞと思い
貌
(
がお
)
に過ぐるより、かの攻城砲は例よりもすみやかに持ち
出
(
いだ
)
されざるを得ざりしなり。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
甘党の松島は卓上電話で
紅谷
(
べにや
)
から生菓子を取り寄せ、玉露を
煎
(
い
)
れて呑んでいたが、
晩餐
(
ばんめし
)
には姐さんのためにてんやものの料理が決まって二三品食卓に並び、楽しい食事が始まるのだったが
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
蔭で強いのが役にはたたぬ、さあさあ一所に来たり来たり、それまた吹くわ、ああ恐ろしい、なかなか止みそうにもない風の景色、円道様も為右衛門様も定めし肝を
煎
(
い
)
っておらるるじゃろ
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
さて、皆さんは、町の子供たちが、よくこんな歌を唱つてゐるのを知つてますか。——男と女と
豆煎
(
まあめい
)
り、
煎
(
い
)
つても煎つても煎りきれない……(笑声)
可笑
(
をか
)
しくはありません。さういふ歌です。
ママ先生とその夫
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
お茶を
煎
(
い
)
れるからお
入来
(
いで
)
と云って呉れと命じたは、秋元の女房がその昔茶屋奉公したことのあるを、かねて小耳に挾んで居たので、三世相解の埋合せに、今買って来た藤村の最中から漕附ける
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
そうして、釜の火を
焚
(
た
)
け、油を沸かせと罵り合う声もきこえた。かれらは鉄をひきおとして油
煎
(
い
)
りにする計画であることが判ったので、彼も俄かに怖ろしくなったが、今更どうすることも出来ない。
中国怪奇小説集:12 続夷堅志・其他(金・元)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「塩豆だよ。塩でまぶしたあの
煎
(
い
)
り豆さ」
右門捕物帖:15 京人形大尽
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
煎
(
い
)
つてゐる
雛
(
ひな
)
のあられの花咲きつ
五百五十句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
晩には母が豆を
煎
(
い
)
っていた。
城のある町にて
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
山「じゃア一寸知らせて下さい、別にお礼の致し方は無いが、あなたの非番の時に
無代
(
たゞ
)
療治をして、
好
(
い
)
い茶を
煎
(
い
)
れて菓子を上げる位の事は致しますから」
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
もちろん料理茶屋などはないじぶんのことで、その
肴
(
さかな
)
も、めぼりで捕った
泥鰌
(
どじょう
)
と、煮びたしの野菜に卵を
煎
(
い
)
ったもの、それに漬物と梅びしおなどであった。
樅ノ木は残った:02 第二部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
越中島の砲術調練場でも、パチパチと、豆を
煎
(
い
)
るような小銃の間に遠雷のような、八
斤
(
サンチ
)
砲
(
ほう
)
の音がしていた。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
真実
(
ほんとう
)
に、あんな馬鹿々々しい目に
遇
(
あ
)
ったことは無い——考えたばかりでも
業
(
ごう
)
が
煎
(
い
)
れる」と嫂も言った。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
よそより菓子何にてももらえば、おれには隠してくれずして、おれが着物は一つこしらえると、世間へ
吹聴
(
ふいちょう
)
して、悪くばかり言い散らし、
肝
(
きも
)
が
煎
(
い
)
れてならなかった。
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
つづいて竹一と正と。いちばんおくれてきたのは富士子と仁太であった。仁太は用心ぶかく、シャツやズボンの四つのポケットを、そら豆の
煎
(
い
)
ったのでふくらましていた。
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
太陽は、船の
甲板
(
かんぱん
)
を焼き、とろとろと渦巻き流れている河の水を焼いて、はげしく照りかえし、英夫や、祥子や、謙一を、フライパンの上で
煎
(
い
)
りあげているように思われた。
秘境の日輪旗
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
荻生徂徠
(
おぎゅうそらい
)
は
煎
(
い
)
り
豆
(
まめ
)
を
噛
(
か
)
んで古人を罵るのを快としている。わたしは彼の煎り豆を噛んだのは倹約の為と信じていたものの、彼の古人を罵ったのは何の為か一向わからなかった。
侏儒の言葉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
こうだに因ってと、あるよあるよ。
白魚
(
しらお
)
をからりッと
煎
(
い
)
り上げて、
鷹
(
たか
)
の
爪
(
つめ
)
でお茶漬が、あっさりとして
異
(
おつ
)
う食わせる。可いかい。この辺に無かったら、吉造を
河岸
(
かし
)
へ見にやんな。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
醤油を作る用意の大豆を大鍋で
煎
(
い
)
ったり、そうかと思うと草刈り、畠に肥料をやり、広い家中の拭き掃除をし、食事の用意、一家のものの溜った洗濯物、それに夜は遅くまで修繕物だ。
夜の靴:――木人夜穿靴去、石女暁冠帽帰(指月禅師)
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
二月一日 朝食=オレンジ・ジュース、オートミール、
煎
(
い
)
り卵、コーヒー、トースト。昼食=オードヴル、ポタアジュ、車海老のフライ、鶏とヌードル。夜食=ローストビーフが、よし。
富士屋ホテル
(新字新仮名)
/
古川緑波
(著)
煎
常用漢字
中学
部首:⽕
13画
“煎”を含む語句
煎餅
香煎
煎汁
胆煎
瓦煎餅
豆煎
揚煎餅
肝煎
煎茶
煎薬
塩煎餅
煎餅布団
油煎
湯煎
煎藥
煎茶茶碗
煎鳥
煎法
鯛煎餅
煎詰
...